一井淳治の発言 (本会議)

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○一井淳治君 民主党の一井でございます。
 両法律案につきまして、それぞれの提案者及び政府に対し質問させていただきます。両案について、便宜、中山案、猪熊案と呼ばせていただきます。
 両案ともに、臓器移植を行うための法的環境を整備しようとされている点は同じであります。根本的な相違点は、脳死状態にある者を法律によって死体と見ることと定めるか否かにあります。そこで、まずこの点を中心に両案の提案者にお考えを伺い、最後に政府に対しても環境整備などについてお伺いしたいと思います。
 欧米などでは、心臓や肝臓の移植など既にそれぞれ数千例の移植が実施されており、また、日本人が高額の支払いのもとに外国で外国人の臓器の移植を受けて非難される事態も起きております。しかし、我が国では、脳死を人の死とする法律がまことに長い間検討にさらされるという経過をたどりました。脳死を人の死と法律で定めることに対して、国民は現実に不安や割り切れなさを持っています。このよりなことがどのよりなところから起こってくるとお考えなのか、猪熊案提案者にお伺いいたします。
 次に、中山案提案者に対し、以下幾つかお伺いいたします。
 多くの国民は、脳死を人の死と見ることに戸惑いを感じているのではないでしまうか。これまでの世論調査において、確かに脳死を人の死と見ることに肯定的な意見が多いわけでありますけれども、しかし、せいぜい六割近くのことであって、到底国民的合意ができているとは思われないのであります。衆議院の採決後には肯定的意見が上昇するはずでありますのに、ある世論調査では逆に低下しているようであります。したがって、私は脳死を人の死と法律の力で決めることは現段階では時期尚早と考えます。
 我が国では、心臓停止など三徴候から死の判定をすることが古くから自然の道理として確立いたしております。心臓が鼓動し、温かく顔色があり、医療保険の支給も受けて、これまで家族が必死の思いで治療に当たってきた脳死該当者を一つの法律で死者にしてしまうことは、社会通念上無理があるのではないでしょうか。
 次に、衆議院の審議において、臓器提供の手順の中で、患者側の了解なしにでも医師は脳死判定を行う旨政府委員が答弁され、不安が加わりましたが、国民の間に疑問や戸惑いのある状況下においては、猪熊案のように、脳死を人の死としないで移植医療の道が開かれるのならば、脳死を人の死とすることにこだわる必要はないのではないでしょうか。外国の考え方に追随することはないと思いますが、いかがでございましょうか。
 次に、脳死を人の死としないと医師は移植医療をやりにくいとか、患者が移植を受けにくいとかお考えなのでございましょうか。しかし、それでは本末転倒であります。移植医療の関係者の気持ちをおもんばかる余り、脳死を人の死とすることはできません。中山案においても、脳死体を通常の死体と区別しているのであります。端的な例が健康保険の適用であります。死体なら治療の必要がないのに、法律案では、当分の間適用するとされております。脳死を人の死としないで移植医療の道を開く方が素直であるし、現状を大幅に変更しないで済み、国民にも受け入れやすいのではないでしょうか。
 次に、中山案は当初案を修正されて、脳死者の生前の書面による意思表示を要件とされています。これは、脳死状態の者からの移植医療に不安があり、これを解消するためにとられた措置ではないでしょうか。また、当面これでいくが、移植医療の状況によってはもとの案に戻せばよいとお考えなのでしょうか。本音をお伺いしたいと思います。
 次に、我が国の移植に関する医療水準は、先進国に比較して著しくおくれており、本格的な移植手術を実施できる状況にはないとの指摘もあるとのことであります。脳死を人の死とすることを急ぐ必要はないのではないでしょうか。
 また、医療過誤が現実に起こるなど、我が国の医師や医療に対する不信には相当根深いものがあります。そこで、移植要件、要件確認方法などを相当厳重に整備し、カルテの公開など情報公開による公正の担保を図らねばならないと考えますが、どのように対処されるのでしょうか。
 次に、猪熊案提案者にお尋ねいたします。
 猪熊案は、脳死を人の死としないで移植医療の道を開こうとするものだと理解しております。そして、医師の行う移植医療は正当業務として違法性が阻却されるのだとお聞きしていますが、我が国では刑法に嘱託殺人罪が規定されているところ、どのような法理で正当化されるのでしょうか、まずお伺いしたいと思います。
 また、脳死は人の死であると法律で明確に定めないと、医師は移植手術をためらうようになるとか、患者は移植を受けにくいという議論があります。この点についても御所見をお伺いしたいと思います。
 次に、移植医療の要件などは、国民に不安を感じさせない、批判に十分たえられる厳重なものでなければなりません。中山案とはどのような違いがあるのでしょうか。移植の要件、正当業務となる要件、脳死判定の方法、カルテの公開など、医療の透明性の確保について、医療不信の根深い中で、どのような内容を予定されているのでしょうか。
 最後に、政府に対し質問をいたします。
 まず、移植医療に関する現状についてお伺いいたします。臓器移植に関しては、さまざまな疑問が提起されていますが、海外における移植医療の現状はどうなっているのか、日本の医療水準は臓器移植が実施できる状況にあるのか、政府の認識と見解を求めます。
 次に、政府は、臓器移植ネットワークの整備等幾つかの環境整備を行う必要があります。特に、ドナーカードの普及、公平公正なレシピェントの選択システム、コーディネーターの養成確保が不可欠であります。脳死判定を行うについての家族の同意を得るシステムについても同様であります。これらについてどのように考え、準備を進めてまいるのか、お伺いいたします。
 最後に、臓器の移植に関する法律案の審議に当たって、党議拘束が解かれ、会派でなく各議員のそれぞれの判断と責任による論議が始まろうとしています。特別委員会の皆様には大変御苦労いただきますが、そこでの新たな形の自由な議論が全議員のものに広がり、さらにこれが国民の間に浸透していくこと、そして、参議院の性格にかんがみ、党議拘束を解いて議論した経験が参議院改革の前進のために生かされていくことを祈念いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔衆議院議員五島正規君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114015254X02619970519_026

発言者: 一井淳治

speaker_id: 24804

日付: 1997-05-19

院: 参議院

会議名: 本会議