中井洽の発言 (本会議)
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○中井洽君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました財政構造改革の推進に関する特別措置法案に対しまして、橋本総理に質問いたします。
まず初めに、この法案が政府の予算編成権を長期間にわたって拘束することについてであります。
総理、あなたの自民党総裁としての任期は、あと二年もありません。問題山積で、辞任説さえささやかれ出し、来年度予算編成ですらおできになるかどうかと言われています。その総理が後任の内閣に対し、二〇〇三年度まで、内閣の最大の機能の一つであります予算編成権を拘束しようというのであります。
我が国における予算制度のあり方から考えて、財政の構造・制度改革に関することを法律化し、その進捗状況を適宜に把握するなどの内容であれば、法制化することも妥当であります。しかし、この法案は、構造改革に関することはすべて抽象的な表現にとどめ、具体的な内容はなく、ただ単に年度ごとの縮減を義務づけているにすぎません。
我が国の予算制度の精神を阻害する法律であることについて、総理の御見解をお伺いします。
次に、本法案が今の日本経済に与える影響についてお尋ねします。
今日の日本経済は大変深刻な状況にあります。公定歩合〇・五%という超低金利政策を二年間変更できなかった異常な事態にあります。この低金利で、しかも、政府がしばしば穏やかな回復基調と発表しながら、株価は一万八千円台を大きく割り込んでいます。低金利で救われるはずの金融機関や建設業関係の不良債権の清算はいつまでたっても終わらず、倒産が相次ぎ、先行き不透明であります。一般消費に至っては、前年比マイナス一一%という二十数年ぶりの落ち込みです。どれを見ても、どれをとっても、日本経済に明るい面は何一つありません。
この悲惨とも言える状況をつくり出したのは、言うまでもなく橋本内閣の失政であります。私たち新進党の真剣な忠告を無視し、景気に対する診断を誤り、消費税や医療費のアップ、特別減税の廃止等で九兆円の国民負担増をあえて実行したことがすべてであります。超低金利政策で一年間四兆円以上の利息を値切られた上に、九兆円の負担増では、消費が低迷するのは当たり前であります。治りかけている病人に冷水を浴びせて肺炎を起こさせるような政策をおやりになったのであります。総理は、この明らかな経済運営の失敗をどう認識されているのか、率直にお尋ねいたします。
本法案では、二〇〇三年度に向かって毎年財政赤字と赤字国債を減少させることが義務づけられています。膨大な赤字国債や地方債の累積残等を考えたとき、当然、思い切った対策が必要であります。しかし、現在の激しい不況の中でこの法案に沿った経済財政運営を二〇〇三年度まで続けるとしたら、肝心の国民生活や我が国の経済がもちません。これこそ角を矯めて牛を殺すの例えそのものであります。今最も効果的な経済財政対策は、橋本内閣の大胆な政策転換であります。
総理はけさの閣議で、従来の発想にとらわれぬ景気対策を指示されたようでありますが、市場はそれを全く信頼せず、株価は午前も下落し、一万七千五百円を切っているのであります。
日本経済を短期的に潜在成長経路に戻すことを最優先にし、中期的な展望として、民間市場経済を拡大し、担税力を強化し、財政赤字を縮小するという考えをとるべきであります。経済活動を現在の閉塞状況から解放し、国民に安心と明るい展望をもたらすことが必要なのであります。特に、私たちがかねてから提言しています法人課税の実効税率を一〇%下げる四兆円の減税や、所得課税の二兆円の減税を速やかに実施すべきであります。(拍手)
私どもの減税による景気対策に懐疑的であった各界の人々から減税を求める声が日々に高まり、今や与党、自民党や社民党の中からさえも大幅な減税要求が出ているではありませんか。総理、減税を含む景気対策を早急に実施なさるおつもりはありませんか。それとも、あくまで現行の政策を続け、補正予算も組まず、日本経済の破綻に向かわれるのですか、お考えを承ります。
法案の内容についてお尋ねします。
本法案は、財政構造改革法案という名称にもかかわらず、内容的に構造改革と考えられる規定が全く見当たりません。当初予算のみが対象で、補正予算は対象外となっています。地方財政については抽象的な記述しかなく、特別会計については言及もありません。税源配分のあり方や方向性に関する具体的な規定もありません。要するに、本法案の実態は、単なる一般会計歳出及び赤字削減目標法案と言っても過言ではありません。
財政の構造改革を実効あらしめるためには、国と地方の行政や税の分担のあり方の見直し、規制緩和を断行する中で、行政と民間の役割分担の見直し、行政組織、人員、経費の見直し、特殊法人のあり方、公共事業や社会保障のあり方や長期的見直し等の諸改革が具体的に含まれたり、同時進行で実行されなければなりません。総理のお考えを具体的にお尋ねいたします。
次に、いわゆる公共事業についてであります。
国民にとって財政再建で一番わかりやすいことといえば、公共投資であります。この法案では、公共投資支出のテンポを落としているだけにすぎません。しかも、平成十年度を初年度とする公共投資は対象から除外されています。支出計画の中期的な構造を変えることなく、ただ単純に実施期間を二年間延長して七年とし、支出増加のテンポをおくらせているにすぎません。民間に比べ二割から三割も高いと指摘されている単価の引き下げや、補助金の一括交付などの制度的な改変についても全く盛り込まれておりません。
公共事業のあり方、特に単価の見直しについてどう考えるのか、また、入札制度について改革するつもりはないのか、公共事業の制度改革に関する御見解を伺います。
次に、社会保障についてであります。
社会保障についても、法案には増加額の抑制だけで、改革に相当する何らの具体的な記述はなく、これもまた量的縮減のみが規定されております。しかも、来年度の社会保障関係予算については、自然増分の八千億円を三千億円に圧縮するとしており、その根拠は全く不明であります。
さらに、雇用保険の高年齢求職者給付金の廃止を含めた見直しだけが具体的に規定され、それ以外の医療、年金等の制度改革はすべて「検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とのみ規定されているのであります。抜本的な改革を後回しにして、結局は国庫負担の削減や自己負担増など国民へのしわ寄せにつながるという危惧を抱かざるを得ません。
来年度の自然増分を三千億円に圧縮する根拠は何なのでしょうか。社会保障の制度改革に関する御見解とあわせてお尋ねをいたします。
次に、財政赤字の目標値として、対GDP比にSNA、国民経済計算上の貯蓄投資差額という概念を使っていることについてであります。
貯蓄投資差額を目標値とするのでは、一部の事業や融資の特別会計、公団、公庫、特殊法人などはSNA上の財政部門に入らないため、建設国債に裏づけられたこれらの赤字に財政赤字をしわ寄せして操作し、ごまかすことも可能となる余地を残しました。
現に、過去の実績値では、国債と地方債の発行額の合計よりも貯蓄投資差額の方が毎年度数兆円程度、対GDP比で言えば、最も大きいときでは、実に三%も貯蓄投資差額の方が少ないのであります。つまり、この目標値を使っただけで、何の努力もなく、対GDP比三%という目標は場合によって達成してしまうことになります。こうしたごまかしが、果たして財政健全化の目標と言えるのでしょうか。
なぜ明確に、国債と地方債の合計額としないのか。また、赤字国債の発行ゼロのみを目標として、建設国債にはなぜ何らの言及もないのか。法案の肝心かなめの目標の値として、操作可能な貯蓄投資差額を目標値として法律化した理由について、明確な答弁をお願いいたします。
さらに、単年度ごとのフローの目標値だけで、債務ストックの対GDP比は目標値として言及がありません。国鉄清算事業団や国有林野事業特別会計などのいわゆる隠れ借金への対応についても、具体的な記述はないのであります。債務の累積残高、ストックについての目標値を設定しないのはなぜか、総理の御見解を伺います。
この法案には、このほかにも多くの疑問点があり、財政改革の名に値しない法案であることは既に明らかであります。橋本総理の他の改革と同じく、国民に苦痛と負担増を押しつけながら、明るい見通しも夢も持てない改革であります。現状に対する甘い認識の中途半端なものであります。かつてない厳しさに直面している日本の現状を十分に把握され、早急な景気対策や、真に改革案にふさわしい諸改革に火だるまになって取り組まれることを総理に強く求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕