穀田恵二の発言 (本会議)
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○穀田恵二君 私は、日本共産党を代表し、政府提出の財政構造改革特別措置法案について、橋本総理に質問いたします。
まず冒頭に、この法案は、九兆円もの負担増で国民が苦しみ、景気の落ち込みが深刻さを増しているこのときに、さらに追い打ちをかけ、社会保障を切り捨て、国民生活と日本の経済に打撃を与えるものであり、かつてない悪法であることを明らかにしておきたいと思います。
財政再建が国政上の急務であることを否定する者はだれもいません。問題は、財政危機の根本原因を明らかにし、ここにメスを入れるかどうかです。政府は、財政危機の原因を欧州並みの社会保障制度にありとし、真っ先に社会保障の給付を引き下げようとしています。果たしてそうでしょうか。
予算委員会で我が党の志位書記局長は、日本の公共事業費は社会保障費の約二倍で、公共投資が社会保障を食いつぶすという異常な財政構造があること、国民の負担に比べて社会保障給付水準が極端に低いことを明らかにし、ここに正すべき一番の財政のゆがみがあることを指摘しました。
総理、あなたは、一般政府ベースの社会保障移転の対GDP比で見た場合、アメリカ、イギリスと比べて遜色ないと答弁し、その際、ドイツ、フランスはわざわざ省きました。日本が一二・七%に対し、ドイツは一八・二%、フランスは二三・三%という歴然とした事実があります。これでもあなたは遜色ないと言えますか。
より正確なILO基準の社会保障給付で各国の国民所得に占める割合を比較すると、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスは、日本の一・三倍から二・四倍です。日本の社会保障の給付水準は格段に低いではありませんか。
受益と負担の点でも同様です。税、保険料等の負担に対する社会保障給付の割合を欧米並みに引き上げるだけで、日本の社会保障給付は十九兆円から二十七兆円もふやすことができます。これでも遜色ないと言い張るのですか。この際、明確にお答えください。
国、地方を合わせた公共投資が社会保障費の二倍などという国は日本だけです。浪費的ゼネコン型公共投資が社会保障を食いつぶすという逆立ちした財政構造を転換することこそ急務ではありませんか。
総理、あなたは、公共投資が諸外国と比べて高いと認めました。しかし、単に高いというだけでなく、異常な高さであり、その構造にメスを入れなければ改善がないということです。
ところが法案は、六百三十兆円公共投資基本計画の総額は変えず、それを三年延長するだけです。この計画を指標にして決める各種の公共事業長期計画は軒並み増額しています。その結果、目標とする二〇〇三年でも、公共投資額が社会保障公費負担額の約二倍というゆがんだ構造は何ら変わらないのではないでしょうか。
ゼネコン奉仕型の公共事業のあり方も変えなければなりません。東京を例にとった場合、臨海部開発では九六%以上が大手ゼネコンへの発注でした。これに対して、都住宅局や福祉局の発注は、六割から七割が中小企業に対するものでした。大型プロジェクト中心ではなく、生活密着型に転換すれば、むだを削りつつ中小企業の仕事を確保し、潤いのある地域と国民生活を築くことができます。総理の答弁を求めます。
正すべき第二は、軍事費の膨張です。
別枠のSACO関係経費を加えたら、これまで以上の軍備拡張を進めるということになります。政府が軍拡を合理化する唯一の理由であったソ連脅威論が成り立たなくなったもとで、大幅軍縮になぜ転換しないのか。中期防衛力整備計画をなぜ中止できないのか。国民生活にかかわる予算まで大幅に削りながら、なぜ米軍のための予算には手をつけないのか。本来、安保条約、地位協定上の義務もない思いやり予算の廃止になぜ踏み出さないのか。明確な答弁を求めます。
次に、むだと浪費の構造を温存したまま、その一方で、国民が生き、生活していく上でぜひとも必要な分野には、聖域なしとして無慈悲に削減している問題です。
まず第一は、社会保障関係費の削減です。
医療保険で見ると、ことし九月実施の制度改悪による予算の削減額は約三千億円です。国民の負担増は約二兆円です。厚生省の来年度概算要求では、ことしの制度改悪を上回る四千二百億円も削減していますが、今回に匹敵する負担増を来年も国民に押しつけるつもりですか。今回の制度改悪と同じような負担を三年連続して国民に強いるものではありませんか。戦後の歴史上、このような大幅な国民負担増を伴う社会保障制度の改変が連続的に行われたことがありましたか。
政府・与党は、入院給食費や高額療養費制度の自己負担限度額の引き上げを計画しています。それに続き、老人医療費を定額制から定率負担にするだけでなく、現在は扶養家族となっている三百四十万人のお年寄りからも新たに保険料を取り立てる計画や、健保本人に三割、大病院の場合五割の負担さえ検討しています。
九月からの医療費患者負担の大幅引き上げを機に、医者ではなく患者が、自分の体のぐあいより懐ぐあいを見ながら治療するかどうかを決めるという、命を削るような状況が生じています。この法案が実施されたら、この事態を一気に加速させるのではありませんか。児童扶養手当についても、母子家庭などの命綱さえ断ち切ろうというのですか。法案では、高齢者に係る雇用保険給付の打ち切りの検討に加え、年金給付水準の引き下げ、支給開始年齢の引き上げを強要しようとしています。
以上のようなやり方は、社会保障の向上、増進を国に義務づけている憲法二十五条に真っ向から背くものではありませんか。(拍手)
第二は、文教予算の削減です。
国立大学予算や私学助成の厳しい抑制は、学費値上げにつながります。高校生、大学生の子を持つ働き盛りの中堅層には大きな打撃です。経済企画庁の九六年度国民生活白書は、下宿私立大生一人の学生生活費が家計可処分所得の四二・五%にも達することを明らかにしています。今や学費負担の大きさゆえに進学の夢まで絶たれるという事例も少なくありません。経済的事情によって若者の学問への志が摘み取られてもやむを得ないとお考えなのですか。
第三は、中小企業対策費です。
ことし上半期の企業倒産は七千九百六件、前年同期比で約一二%増、負債総額は倍増し、史上最悪の五兆九千三百億円に上っています。このように深刻な状況にある中小企業、業者に対する支援策こそ求められています。ところが、中小企業対策費は、この間年々減らされ、今年度は八二年度に比べ金額では四分の三に、一般会計に占める比重では半分以下に切り下げられました。法案は、戦後最悪の危機にある中小企業への予算をさらに削減しようとしています。これでどうして活力ある経済を実現することになるのですか。はっきりお答えいただきたいと思います。
第四に、農業分野も例外ではありません。市場原理の活用が強調されていますが、市場原理に任せた結果、自主流通米価格は軒並み大幅に下落し、政府米価格さえ下回る銘柄が続出する深刻な事態となっています。このままでは日本農業の存立が脅かされ、今でも危機的な状況にある食糧自給率の低下に拍車をかけることは必至です。農林水産省予算の中で、公共事業費は五五%にまで膨れ上がっています。この中で、多くの干拓事業や農道空港など、その浪費は目に余るものがあります。そこにメスを入れ、農産物価格保証対策を充実させる農業予算構造へと転換することこそ急ぐべきではありませんか。
結局、法案は、制度改悪による国民への一層の大幅負担増を三年連続して行うのを手始めに、浪費は温存、犠牲と負担増は国民にというレールを将来にわたって引いてしまおうというものではありませんか。しかも附則で、当面の目標とする二〇〇三年度までの財政健全化の進捗状況を点検し、国民向け歳出のこれ以上の切り捨て、改悪があり得ることを規定しています。一体どこまで国民に負担を押しつけるつもりなのですか。はっきりお答えください。
最後に、収支の健全化のもう一面、歳入に関連してお聞きします。
法案は、歳出面の削減に触れているにすぎず、最初から歳入についての改革を放棄するという根本的欠陥を持っています。歳入の見通しを持たずして、いかにして収支の健全化が達成できるというのですか。
最近の大蔵省の資料でも、二〇〇三年度赤字国債発行ゼロという政府の目標達成は困難と認めています。総理は、増税なき再建をたびたび表明していますが、歳入にはメスを入れないまま、歳出カットだけでは目標が達成できないとして、消費税を増税しようとする布石ではありませんか。正直にお答えください。
歳入の改革で求められていることの一つは、不公平税制の是正です。政府税制調査会の法人課税小委員会報告ですら指摘する、外国税額控除制度や課税ベースを狭くしている各種引当金や準備金などを大胆に縮小して、大企業に対する優遇税制を改めるべきではないでしょうか。
二つとして、個人消費を拡大し、景気をよくして税収を安定させることです。今日の深刻な景気後退は、二十三年ぶりという国民の消費の落ち込みが最大の要因です。それは、空前の負担増を国民に押しつけた結果にほかなりません。歳出カットで国民に一層の負担と犠牲を強いる計画は、景気回復に新たな冷や水をかけようとするものであり、財政の再建の道にも逆行するものです。不況、税収不足、負担増、消費の冷え込み、不況の深刻化という悪循環を断ち切るべきです。
その道は明白です。国民の消費購買力の拡大と中小企業への支援策こそ、何よりの景気回復の道です。今、緊急に消費税率をもとに戻す、医療負担増をやめる、これらのことを強く要求します。
財政再建を行うためには、公共投資五十兆円、社会保障二十兆円という世界に類例のない逆立ちした財政構造のゆがみを正さねばなりません。
今回の法案は、むだと浪費の構造を将来にわたって続け、国民生活と社会保障を切り捨てるというとんでもないものです。法案を速やかに撤回し、国民本位の財政再建の道へ転換することを強く主張して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕