黒田東彦の発言 (大蔵委員会)
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○説明員(黒田東彦君) アジア諸国を見てまいりますと、確かに御指摘のように最近非常に為替が弱くなっております。通貨が下落しております。昨年中も下落しておりましたし、殊にことしに入って急速に下落しているという状況にございます。したがって、こういった通貨価値を安定させるためにどうしたらいいかということは非常に重要な問題、ポイントであるというふうに思っております。
この問題を考える場合に特に念頭に置くべき点が二つあると思いますが、第一点は、アジア諸国は実は経済のファンダメンタルズを見ますと貯蓄率が非常に高い、例えば四割とか、一部の国は五割近い貯蓄率というふうになっておりまして、他の地域、先進国のみならず、ラテンアメリカあるいはアフリカその他の国と比べましても非常に高い貯蓄率があります。しかも勤勉な労働力を有しておりまして、また財政も実はほとんどの国が基本的に黒字でございます。
そういったことで、経済の基礎的な諸条件は良好でございまして、なお高い潜在成長力を維持しているというふうに認識しております。これは何も私どもが認識しているというだけではなくて、最近ございましたAPECの非公式首脳会談あるいは拡大ASEAN首脳会談等でもほとんどすべての国が、アジア以外の国も含めて同様な考え方を持っておりました。
もう一つ、それではどうしてこんなに通貨が激動しているかということでございますが、これにつきましては、この二、三年、あるいはもう少し長い期間をとった場合に、これら諸国の為替がドルにペッグするという形で過大評価になっていた、そのために経常収支の赤字が拡大し、また海外から流入した資金が不動産セクター等の分野で必ずしも生産的でなく使われた国があったというようなことから市場の信認が低下し、それがまた為替の下落、それによる金融セクターの困難ということで悪循環を生じて通貨・経済の変動が生じたというふうに思っております。
したがいまして、こういう潜在的な高い能力と現下の困難ということでございますので、やはり現在の局面を克服して、引き続き持続的な成長を達成するということが何よりも中長期的な為替、経済の安定にとって必要でございまして、そのためには適切なマクロ経済運営を行う、これは具体的には、IMFとの合意したプログラムに沿って、既に例えばタイ、インドネシア、韓国等が行っておりますけれども、適切なマクロ経済運営を行うということと、金融セクターを中心とした構造改革を進めていくということで市場の信認回復に努めていく努力が必要であるというふうに思っております。
こういった努力を通じて、必ずやこれら諸国の為替あるいは経済が安定し、潜在的な高い成長力を具現していくことができるというふうに確信をしております。