荒木清寛の発言 (本会議)
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○荒木清寛君 私は、平成会を代表いたしまして、ただいま議題となりました財政構造改革の推進に関する特別措置法案につきまして、法案に反対の立場から討論を行います。
去る二十四日、四大証券の一つである山一証券が自主廃業を大蔵省に申請いたしました。長引く業績の低迷に加え、これまで否定してきた多額の簿外債務が社内に存在することが明らかになったこと、海外の有力格付会社から社債の格付を投機的な評価に引き下げられ、市場からの資金調達が困難になったことから自主廃業を余儀なくされたのであります。証券会社の経営破綻としては本年で既に四社目であり、今月三日に会社更生法を申請した三洋証券に次ぐものであります。現在、山一証券には大蔵省の検査が行われており、財務内容はまだ確定しておりませんが、報道によれば、負債総額は約三兆五千億円、関連会社を含めた従業員数は約一万一千人、会社の事実上の倒産の規模としては戦後最大であります。
自主廃業のきっかけとなった簿外債務については、顧客会社から引き取った有価証券を関連会社につけかえるいわゆる飛ばしと呼ばれる不正行為から生じたものが大半を占めているようであります。山一証券に二千六百四十八億円の簿外債務が存在することは十月六日に主力銀行である富士銀行に知らされました。しかるに大蔵当局は、今月十七日に山一証券からの報告を受けて初めてこの事実を知ったとしておりますが、本当でしょうか。このような重要な情報を富士銀行だけで抱え、大蔵当局に連絡がなかったとは信じられません。
平成七年八月に大和銀行からニューヨーク支店の不祥事の報告を受けながら事態を放置し、四十日間経過した後やっとFRBに報告するという失態を大蔵省は演じました。この結果、大和銀行はFRBから米国からの追放という最も重い処分を受けたのであります。山一証券の再建か廃業かを模索する過程で、大蔵当局は大和銀行事件を教訓としないまま、今回もまた情報を秘匿していた疑いがあります。
このような日本の金融行政に対する不信もあって、山一証券破綻前から邦銀に対して課せられていたジャパン・プレミアムの上乗せ金利は急上昇しております。
私は、建前では金融ビッグバン、すなわち金融の自由化を進めるそぶりをしながら、実際は大蔵省主導の裁量行政を継続してきたツケが山一証券の自主廃業にあらわれたものと考えます。このような大蔵当局の裁量行政を容認してきた大蔵大臣の責任はまことに重大であります。
一昨日、仙台市を本店とする徳陽シティ銀行が仙台銀行に営業を譲渡すると発表いたしました。去る十七日に北海道拓殖銀行が破綻して以来、十日間だけで三つの金融機関が破綻し、日銀の特別融資額を含めた資金供給額は既に五兆円を超えると言われております。相次ぐ金融機関の破綻は、国民の金融システムに対する不安を増幅させ、ただでさえよくない景気の状況を一層悪化させつつあることは否定できません。
現在の不況をもたらしたものは、言うまでもなく、経済の現況を顧みず、消費税率引き上げなど九兆円に及ぶ負担を国民に押しつけた橋本内閣の政策判断の誤りであり、このことは、既に多くのエコノミストや報道機関だけではなく、大多数の国民が認めるところとなっております。
現下の厳しい経済状況の中で、私たちは所得税減税、法人税減税など即効性ある景気対策を要求してまいりました。去る十八日に政府は緊急経済対策を発表いたしましたが、即効性を持つ減税などの対策が盛り込まれなかったことから、市場はほとんど関心を示さず、私どもの主張の正しさを証明したのであります。
景気の現状を踏まえるならば、本法律案を一時的に棚上げし、少なくとも二兆円の所得税減税を速やかに決定するべきであります。それにもかかわらず財政至上主義に固執する橋本内閣に対しましては、早期退陣こそが最大の景気対策であるという声が上がるのは当然のことであると言わなければなりません。
さて、本法律案は、当面の措置として執行が凍結されるべきものでありますが、その内容にも問題があり、到底、財政構造改革の名に値しないものであります。
以下、具体的な反対理由について申し上げます。
反対の第一の理由は、本法律案は、現在の経済状況を考慮せず、平成七年十一月の経済審議会答申で示された三・五%の名目経済成長率を無条件に踏襲しているからであります。現政権の経済運営のもとで、今後我が国が三・五%の名目経済成長を遂げていくと考えることは余りにも非現実的であります。本法律案が成立すれば一層経済は縮小し、輸出主導の経済運営を余儀なくされ、対米摩擦の再燃、金融不安のリスクの拡大、失業率の増大が予想されるのであります。経済成長率が低下すれば税収が不足することになりますが、本法律案はこのような歳入面での手当てを全く行っておらず、欠陥法案と言わざるを得ません。
第二の理由は、本法律案は国民生活に対し不当な影響を及ぼすからであります。現在行われている省庁再編論議は、単なる数合わせの論議にとどまり、大胆な行革や政府自身が身を削ろうとする意欲は全く感じられません。それにもかかわらず、本法律案では、平成十年度に発生する社会保障予算の自然増を三千億円に圧縮するなどの目標を設定しており、しかも委員会の審議においても、どのような制度改正を行うかについて政府から具体的な方向は一切示されませんでした。行政に痛みが帰属する行政改革が不十分なままに、このような形で納税者に痛みを押しつけることは極めて不当であります。
第三の理由は、本法律案には財政構造改革にふさわしい内容が何も入っていないからであります。例えば、本法律案で示されている公共事業関係の規定は、各種の公共事業長期計画について、その内容について踏み込むことなく、計画を一律に二年ないし四年延長することとするにとどまっております。財政構造改革を言うのであれば、長年にわたってシェアが固定化されている公共事業の省庁間比率を見直すなどの抜本的な改革、あるいは地方分権につながる補助金制度の改革を行うべきであるのに、本質的な制度改革に踏み込むことは避けております。
第四の理由は、平成十五年度をめどに、国、地方の財政赤字を対国内総生産比率で三%以内にとどめるという目標の実効性が疑わしいからであります。大蔵省が提出いたしました「財政事情の試算」によれば、この法律案に示された歳出削減を行うとしても、平成十年度予算編成においては、なお二兆円から三兆円の要調整額が生じるとされております。この要調整額は、平成十一年度以降一層増加することが見込まれますが、大蔵大臣は、予算編成を行う過程で解決されるべきものとするだけで、明確な答弁を行いませんでした。この要調整額を解消するために、政府は一層の歳出削減を行うのか、それとも国民に増税を強いるつもりなのか、その対応は全く不明であります。
その他、本法律案には、第二の予算である財政投融資のあり方について何ら触れられていないこと、国、地方を通じる四百七十六兆円にも上る長期債務及び隠れ借金の縮減、解消の方向を示していないこと、国鉄清算事業団の長期債務、国有林野の累積債務の処方策が示されていないこと、数値目標が達成できない場合の責任が明記されていないこと、補正予算を拘束する規定がないことなど数多くの問題点が残されていることを指摘して、私の反対討論を終わります。(拍手)