松沢成文の発言 (本会議)
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○松沢成文君 民政党の松沢成文でございます。
私は、民友連を代表し、アジア欧州会合首脳会議(ASEM)の総理報告に関連して、アジア経済危機を初め世界経済に影響を及ぼす我が国の経済対策等について、橋本総理並びに小渕外務大臣に質問をいたします。
さて、政府・与党指導部のこの一年余りの経済、財政への取り組みを見ていますと、ツーリトル・ツーレイトという言葉に象徴されるような対応のみで、大胆かつ有効な対策が全く見られません。いたずらに問題を先送りし時を過ごす姿勢は、国民のみならず諸外国からも大きな不信を招き、結果として日本発世界不況の引き金にならないかという不安が募っております。
こうした状況の中で、今回のASEMでは、アジア経済危機に関連しておよそ次の三点に集約される議長声明が採択されました。
まず第一に、アジア経済危機を、地域を超えて世界全体に影響を及ぼす問題と位置づけ、欧州諸国もみずからの問題と認識し、日米両国と協力する姿勢を打ち出したことであります。
第二に、アジア諸国に対しては、国際通貨基金IMFと協調した改革努力を着実に進めることが重要と指摘し、自助努力とともにIMFの経済改革プログラムの完全なる実行を促しております。
第三に、アジア経済の回復のためには世界的な貿易・投資の拡大が重要として、アジアの一部に見られる関税の引き上げや欧州国内のアンチダンピング措置の発動が懸念される中で、欧州とアジア双方が貿易自由化に向けての努力を続けていくことの重要性を確認したことであります。
アジア経済危機に冷淡と見られていた欧州側が危機克服にはっきりと協力する姿勢を示したことが、今回のASEMにおける一応の成果と言えるでありましょう。
その中で橋本総理は、アジア経済危機への日本の取り組みとして世界銀行の日本特別基金などへの積み増しを表明し、アジア諸国に対し、貿易、金融面で支援することを明言いたしました。しかしながら、参加各国からは、日本自身の景気回復を実行することがアジア地域の経済危機を乗り越えるために極めて重要であるという意見が相次いだと報道されております。
さて、橋本総理、あなたは今回のASEMにおいてどのようなリーダーシップを発揮されたのか、また、参加各国によって日本に突きつけられたこうした強い要求についてどのようにお受け取りになられたのか、まずお伺いいたします。
ところで、橋本総理がASEMに出席するためロンドンに旅立った四月二日、日銀が発表した三月の企業短期経済観測調査いわゆる日銀短観は、企業の景況感が大幅に悪化し、消費低迷や金融不安による貸し渋りが複合して、景気をさらに後退させている状況にあることを示しました。
これを受けて三日の東京株式市場平均株価の終わり値は、前日比ことし最大の下げ幅を記録し、一万五千七百二円九十銭と、約二カ月ぶりに一万六千円を割り込みました。
また、アメリカの格付会社ムーディーズは、日本の国債の格付を安定的からネガティブに見直すことを発表し、格下げを示唆しているのであります。その理由は、課題となっている経済政策と財政収支の改革を図るための政策を政府が達成できるか不確定性が高いからとしております。山一証券はムーディーズ社の格付ダウンで一気に企業倒産まで追い込まれてしまったことは記憶に新しいところです。
さらに、為替相場も、円安が進行して六年ぶりの一ドル百三十五円台に達しました。
今、日本経済は、株安、円安、債券安のトリプル安で、まさに破綻の危機とも言える状況であります。こうした中、政府・与党は補正予算で十六兆円規模の景気対策を打つと伝えられておりますが、遅きに逸したと言うほかありません。今年度の予算編成において、経済成長率や景気回復の見通しを大きく見誤り、野党各党が示した大幅減税を初めとする実効的な政策提言には全く耳を傾けず、市場原理を無視した口先だけの株価操作を続けた結果が、今日のトリプル安という危機的状況を招いていると断言しなければなりません。市場の反応は、経済無策の橋本不況内閣への不信任のあらわれであり、速やかな退陣を求めている天の声だと言わざるを得ないのであります。
このように、日本経済の実態と政府の経済政策はASEM参加各国の期待感と余りにもかけ離れておりますが、橋本総理、あなたはこの市場の反応をどのように受けとめられているのでしょうか、お伺いをいたします。
さて、ASEMの議長国イギリスの高級紙ガーディアンは、橋本総理の到着を待つかのように、一面トップで日本経済崩壊という見出しをつけました。また、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は、クリントン大統領が五月のサミットまでに日本が大型減税を含む一段の景気対策を打ち出せとあからさまな表現で警告したことを伝えております。さらに、フランスのシラク大統領は、橋本総理との会談で、日本経済はどれぐらいの時期まで待てばダイナミックな成長ができるのかと述べ、日本経済の先行きに大きな懸念を示しました。これに対して総理は、いつということを明言せず、どういう政策を打ち出すことができるのかを考えているところだと答えたそうであります。まことに内容が乏しく、スピードとタイミングがずれているとしか言いようがありません。
ASEMでの共同声明を実現していくためには、まず、一日も早く財政構造改革法を見直し、大胆な所得税と法人税の減税、土地税制の改正、そして大幅な規制緩和など、内需拡大のための積極的景気対策を待ったなしに実行しなければなりません。改革はスピードとタイミングが重要です。日本経済を速やかに立て直してこそ欧米諸国の信頼をかち取り、アジア危機への信頼ある対応ができるのであります。
そこで、総理にお伺いいたしますが、今後打ち出す政府の経済対策はどれぐらいの規模で、どのような内容になるのでしょうか。
さらに、我々野党や諸外国の要望にこたえて大型減税を打ち出すとすれば、総理がこれまで堅持、推進してきた財政構造改革法の改正は避けられないと考えますが、いかがでしょうか。
そして、こうした大幅な政策転換は橋本総理の政治責任に直結する問題と考えますが、総理はどうお考えでしょうか。私たちは、総理は責任をとって辞職すべきと考えます。さらに自民党内の一部にも同様の声が上がっているようですが、この問題についての総理の見解を求めます。
次に、この際に日本が取り組むべき重要かつ緊急の外交課題であります北朝鮮による日本人拉致疑惑問題に対する政府の対応についてお伺いをいたします。
これまで、北朝鮮による日本人拉致疑惑問題が解決へ向けて進展しない限り日朝国交正常化交渉や本格的な食糧支援は行わないという姿勢が、政府・自民党も含めた超党派的コンセンサスとして存在しておりました。
しかし、去る三月下旬に派遣された自民党訪朝団は、今後拉致という表現は使わず、行方不明者という言葉を使うことで北朝鮮側と一致したと伝えられています。さらに、日航機よど号ハイジャック犯の帰国が実現すれば、ピョンヤンに日本政府の連絡事務所を開設するとの構想を北朝鮮側に提起したとも報道されております。このような不可解な態度は、北朝鮮に対する我が国の立場を弱める以外の効果を持たないものと考えますが、自民党訪朝団が北朝鮮で行った約束について、政府としてはどのように受けとめていくつもりなのか、小渕外務大臣の見解を伺います。
北朝鮮による日本人拉致疑惑への新たな展開として、先月下旬、北朝鮮の元工作員で平成五年五月に韓国に亡命した安明進氏が来日いたしました。安氏は、北朝鮮による外国人拉致工作の実態について、報道機関のインタビューなどさまざまな場で、拉致工作の実態について生々しい証言をしております。その証言の内容を分析すれば、北朝鮮政府や朝鮮総連の言うようなでっち上げとは全く考えられません。これまでの警察当局や民間人が調査収集してきた情報とほとんどの点で一致しているのであります。
その一方で、北朝鮮による拉致被害者家族会など諸団体が、米国の有力紙であるニューヨーク・タイムズに拉致疑惑に関する意見広告を掲載し、拉致被害者の救出に向けた世界的な流れをつくるべく行動を始めました。
しかしながら、被害者の家族の声を吸い上げ、真っ先に行動を起こすべきは日本政府ではありませんか。日本国民の生命と人権を守ることなくして、国家の責務を果たしたと言えるのでしょうか。被害者の家族は、政府がまさに国益をかけて、正面からこの問題の解決に当たることを強く望んでいるのです。
政府は、これまで集めた捜査資料を公表し、具体的な根拠を、国内だけでなく国連人権委員会を初め世界に向けても明らかにして、国際世論に訴えていくことが重要ではないでしょうか。さらに、北朝鮮に最も影響力のあるアメリカ、中国に対して拉致の根拠を具体的に示し、協力を求めていくべきではないでしょうか。
国家というものは国民を守るものです。理不尽な暴虐の犠牲となって泣いて暮らす自国民が目と鼻の先にいるのに、彼らを助け出すことのできない国が国家といえるのでしょうか。
これまで、国交がないからという言いわけがしばしば使われてきましたが、北朝鮮は、国交がない日本、アメリカ、さらには休戦状態の韓国からも、人道を理由に莫大な食糧・経済援助を取りつけているのです。なぜ日本政府は、同じ理由で北朝鮮に対して、拉致被害者の所在確認、救出を断固要求できないのでしょうか。我が国政府としては、北朝鮮政府に対し、これまで以上の強い姿勢で拉致疑惑問題解決に向けて交渉すべきと考えますが、政府の今後の取り組み方について、その決意と方針を小渕外務大臣にお聞きいたします。
最後に、総理の政治姿勢に対して一言苦言を申し上げます。
早いもので、ペルー日本大使館公邸占拠事件がペルー軍特殊部隊の救出作戦によって解決を見てから一年がたとうとしています。この不幸な事件に対する第一義的な責任は、駐在大使館の安全を保障すべきペルー政府にあります。しかし、それと同時に、テロ多発国家において余りにも無防備にパーティーを開催した日本大使館、すなわち日本政府としてもその責任の一端を負うべきことは言うまでもありません。
にもかかわらず、政府は、この事件に巻き込まれ、五カ月以上にわたり人質として死と隣り合わせの極限の生活を強いられた方々に対して、解放後、何ら対応をとっていないのであります。人質の中には日本企業の関係者も多く、企業はその対応に多額の出費を強いられました。こうした方々に対して、政府・外務省から見舞金はおろか見舞いの言葉すらありません。関係者からは強い不満や批判の声も上がっていると聞いております。
橋本総理は、当時、外務省内に設けられた対策本部にあんパンを差し入れて激励をいたしました。それも結構なことでしょうが、しかし、人質として極限の生活を強いられた方々に対しては、何の見舞いの言葉もないというのは一体どういうことでしょうか。外務省の職員の労はねぎらうが、被害者の方々には何のねぎらいもないというのはどうしてでしょうか。こうした橋本総理の誠実さに欠ける態度に、私は強い憤りを覚えるのであります。
ペルー日本大使館事件で人質となられた邦人の方々に、なぜ政府はこの一年間、何の対応もされなかったのか、総理の御意見をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕