伊藤英成の発言 (本会議)
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○伊藤英成君 私は、民主党を代表して、経済対策について、橋本総理大臣及び関係大臣に質問を行います。
六兆円減税の実施等を柱とした我々の組み替え要求には一切耳を傾けず、政府・与党は平成十年度予算を原案のまま成立させました。その翌日四月九日、橋本総理は、恥も外聞もなく官邸で記者会見を行い、九八年分の二兆円の所得税、住民税の特別減税についてさらに二兆円上積みし、九九年も二兆円規模で継続する、経済対策の財政出動は計十兆円規模にする、赤字国債発行枠の弾力化などにより財政構造改革法を改正する等の考え方を明らかにして、公然と路線転換を行いました。
総理は、新方針を打ち出した理由について、財政構造改革の必要性は変わらないが、深刻な経済情勢にかんがみ、財革法の骨格は維持しながら、緊急避難的にどう対応するかを早急に検討すべきだと強弁し、政治責任の追及を恐れ必要な政策を推し進めなかったらその方が政治責任と政策転換への批判をかわし、国民の審判を受けることが責任を明らかにする最大の道だと参議院選挙などで信を問う考えを示しました。
橋本総理は、経済財政運営において、五つの大罪を犯しました。その責任を明らかにせず、軽々しく路線転換を行い、政権の座に居座り続けることは言語道断と言わざるを得ないのであります。(拍手)
総理が犯した第一の大罪は、我が国の厳しい経済金融情勢について誤った分析をし、対策を後手後手に回してきただけでなく、消費税率引き上げ、医療の保険料や自己負担の引き上げなど国民に負担増を強要し、日本経済を未曾有の危機に陥れたことであります。
第二は、金融機関の破綻が相次いだ昨年の秋に、しかも構造改革に値しない目先の財政均衡を推し進める財政構造改革法の成立を強行し、景気に冷水を浴びせたことであります。
第三は、金融不安を加速させたことであります。橋本内閣は、住専に加えて、汚職にまみれた金融機関救済のためにも責任を不明確にしたまま公的資金を投入する仕組みをつくり、我が国の金融市場に対する信頼をかえって損ねました。
第四は、国会の審議をないがしろにし、政治に対する信頼を損ねたことであります。国の最高指導者の総理が、最善の予算だと言っておきながら、その直後に手のひらを返したように方針を変えるのでは、国民が政治を信用しなくなるのももっともであります。自民党が予算案の審議中に十六兆円を超える規模の総合経済対策の基本方針を決定したり、予算成立の翌日に総理が路線転換を明確にしたことは、予算作成後緊要となった経費支出等に限定して補正予算を作成できるとする財政法二十九条を破るものでもあります。
第五は、傷口を自分で広げておいて、小手先の対策ばかりに終始していることであります。景気対策をちびり、経済を悪化させ、びほう策を重ねているだけです。橋本総理のやり方は、まさにツーリトル・ツーレートであります。昨年暮れ二兆円の特別減税を表明して、今回さらに二兆円を追加して減税を積み増す方策は、愚かしいと批判せざるを得ません。
総理は、これらの五つの大罪を犯したことをどう考え、どのように責任をとろうとしているのかを答弁していただきたい。
我が国の憲政史上に汚名を残すこれだけの失態を犯した総理は、辞任に値するものであります。路線転換をしたということは、総理が誤りを犯したということです。なぜこのことを正直に国民におっしゃらないのか。深刻な不況を招いた自分の政治責任を棚上げし、アジアの金融経済の混乱などをだしにして、内外の悪条件が重なったと人ごとのように強弁する橋本総理の姿勢は、卑劣きわまりないと断ぜざるを得ません。
かつてなかったことでありますが、最近、世界のリーダーたちやマスコミが、橋本総理や日本政府の政策策定、遂行能力に公然と疑念と不信感を表明してきているのは、極めて残念な事態であります。日本丸がタイタニック号のごとく氷山に激突することがわかっていても、経済の方向を速やかにシフトさせることができずにきた船長橋本総理と日本の政治ということであります。
総理は、一月十九日の衆議院予算委員会で、「本当に私がやめれば途端にぽんと景気が回復して、株価も上昇し、すべてがよくなるというんだったら、即刻でもかわります。」と答弁されました。四月八日の東京外為・株式市場で一時橋本辞任説が流れ、相場がこれを歓迎して上昇したと聞いております。景気対策としても、橋本総理の辞任が一番であります。総理は、この場で潔く辞任を表明すべきであります。いかがでありますか。
さて、大本営発表を続け、甘い経済分析を続けてきた経済企画庁の責任も極めて重いものであります。
尾身長官は、今月十日の月例経済報告閣僚会議に四月の月例経済報告を提出し、これまでの景気は停滞しているという表現に、「一層厳しさを増している。」とつけ加え、総括判断を一段と後退させました。
尾身長官といえば、桜の咲くころには景気は回復すると公言をしてきた人物であります。東京の桜は散っているのではありませんか。週刊東洋経済の三月二十一日号でも長官は、「四月から景気は回復軌道に乗る」と大見えを切って発言をされております。この責任をとって、尾身長官には桜とともに散っていただく、すなわち辞任をしていただくしかないと考えますが、いかがですか、答弁をいただきたい。(拍手)
次に、政府・自民党がまとめつつある経済対策、補正予算の内容について質問いたします。
我々は、一日も早く日本を経済・金融危機から脱出させることこそが今政治に課せられた喫緊の課題であると考えます。我々は、本来、経済政策は、一過性のばらまきに頼るものではなく、恒久的な構造改革を伴った減税や社会資本整備を断行し、民間支出主導による自律的経済成長を達成することが基本であると確信をいたします。しかるに、政府・自民党が取りまとめている経済対策は、参議院選挙目当てのばらまきと言わざるを得ません。
まず、特別減税そのものが減税のばらまき版であります。特別減税は一過性のものであること、すなわち、終われば即増税効果があり、景気回復への心理的効果は少なく、むしろ逆効果であります。今の我が国の税体系では、夫婦、子供二人の標準世帯で勤労者の年収が五百万円から七百万円になると、所得税、個人住民税額は一挙に二倍になります。このように累進性が高く勤労者の勤労意欲をそぐ税体系のひずみを正すことが先決であり、最高税率六五%の引き下げなど、抜本的な税率構造の見直しを中心とした減税を行うことを提言いたします。
総理は、法人税の実効税率は三年以内に国際的水準に引き下げると記者会見をいたしましたが、我々が主張したように、平成十年度改正で一挙にやることこそ必要だと考えます。所得税、法人税も含めて、少なくともトータルで六兆円の制度減税を実施しなければ、景気回復は望めません。
また、橋本総理は、公共事業に関して、真に必要な社会資本を整備したいと語って、ダイオキシン問題などの地球環境対策や少子・高齢化対策、科学技術、情報通信分野に重点配分すると会見で述べましたが、これまで自民党政府が根幹から公共投資の配分を変えたことはありません。結局、今度の景気対策も土木を中心としたばらまき型公共投資が中心となることは、火を見るより明らかであります。質量ともに二十一世紀の日本のための投資にしなければなりません。
さらに、我々は、包括交付金制度の導入によって公共事業の主体を地方に移すことを提唱しております。一々霞が関の役人が地方の公共事業にまで口を出す今のシステムを変えていかなければなりません。景気対策においても、財源を地方に回し、地方に社会資本整備の権限の重点を移すべきと考えます。
政府・自民党が打ち出している経済対策には市場もろくに反応をしておりません。例えば先週末には円安を食いとめるために、二千二百億ドルの外貨準備の中で日銀は一日に百億ドル、約一兆三千億円という膨大な規模の介入を行っていますが、大した効果も上がっておりません。為替レートを持続的に維持するためには、こうした小手先の介入ではなく、まともな政策を打ち出すことこそ必要であります。
今月十五日から始まるG7、十六日の二十二カ国蔵相・中央銀行総裁会議、十カ国蔵相・中央銀行総裁会議、国際通貨基金暫定委員会、十七日の世界銀行・IMF合同開発委員会と続きますけれども、橋本総理が表明した景気対策を持っていったぐらいで松永大蔵大臣は我が国に対する諸外国の不信感を払拭できるでありましょうか。
当初、政府は大蔵大臣のG7等への欠席を決めましたけれども、我が国が国際的責務を果たし国際批判を浴びないためにも、我が民主党を初めとする野党の要求によって、政府は判断ミスを改め、大蔵大臣の出席を決めました。それだけに、大蔵大臣には十分な成果を上げていただきたいと考えます。
以上の諸点について、総理及び大蔵大臣の御所見を求めます。
次に、財政構造改革法の改正についてお尋ねをいたします。
橋本総理は、九日の記者会見で、財革法について、深刻な経済情勢にかんがみ、財革法の基本は変更せずに、緊急避難的に最小の修正を行いたいと述べました。
そもそも財革法は、二〇〇三年までの間、硬直的な財政均衡を優先させ、毎年度赤字削減を義務づけるものであり、およそ財政構造改革とは無縁のものであります。国と地方の財政の役割分担、公共事業の配分、大蔵省主導の予算編成制度など、本質的な構造改革には全くメスが入っておりません。赤字国債だけを悪者にし、建設国債には歯どめをかけず、自民党が売り物としている公共事業には抜け道を残したずさんなものと言わざるを得ません。
菅直人代表が昨日の質問でただした際も、橋本総理は、みずからが言った財革法の基本ということが何かさえも明確にできず、他方、財政構造改革会議での議論に中身までもゆだねることを認めるなど、矛盾に満ちた答弁に終始をいたしました。
総理が記者会見で当初述べた赤字国債発行枠の弾力化程度の修正ではお話になりません。目先の特別減税の積み増しだけを切り抜けるために、赤字国債の発行額を前年度より削減する義務だけを何とかしたいというのが本音なのでしょうか。我々は、短期的には経済再建を最優先する一方、中長期的には財政再建を追求しなければならないと考えます。当面、二、三年間は財革法を凍結するとともに、その間に真の改革に値する新しい財革法を抜本的に再構築することを提唱いたします。
以上の我々の提言にどうこたえるのか、総理の御見解を伺います。
今、我が国においては、国民は不安な気持ちで日々を送っております。右肩上がりの経済成長、官主導の経済システム、年功序列・終身雇用制度が揺らぎ、未曾有の経済金融危機が起こっております。政治、経済、行政システム、至るところでほころんでおります。安心、安全な社会の神話も壊れ、少子・高齢社会、累増する財政赤字への対応もままならない状況であります。大蔵官僚が汚職で捕まり、子供がナイフで教師や警官を襲撃した事件に見られるように、我が国の社会は明らかに病んでおります。ちょっとした景気対策をやったところで、リストラの不安におののいている勤労者、異常な超低金利政策によって生活を脅かされている年金生活者が消費をふやすことはまずあり得ないと考えます。安心、安全な社会が確立していない限り、経済対策を実施したとしても効果は期待できません。
例えば、現在審議している国民健康保険法の一部を改正する法律案は、財革法に無理やり合わせるために老人医療拠出金の負担の見直しで三百六十億円、老人加入率上限の特例の見直しで二百億円の削減など、乾いたぞうきんをさらに絞り取るような財源捻出のための改正案であります。