武山百合子の発言 (本会議)
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○武山百合子君 私は、自由党を代表して、労働基準法の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
橋本内閣のもたらした政策不況によって、国民経済は深刻な状況に立ち至っております。昨年一年間の企業倒産は一万七千件を超え、十二年ぶりの高水準となりました。ことし二月の完全失業者は、前月より六万人ふえ二百四十六万人となり、戦後最悪を記録いたしました。完全失業率も三・六%で過去最悪であります。
雇用の安定は国民生活の基盤であります。労働基準法改正を提案する前に、まず、みずからの政策によってこれだけ多くの労働者を路頭に迷わせた責任を、総理御自身が明らかにすることが先決ではありませんか。先日の総理辞任のうわさが兜町を駆けめぐったときの株価のはね上がりと、その後の急落に象徴されるように、総理、あなたが退陣されることが最大の景気対策であるとお思いになりませんか。総理の御見解をまずお伺いいたします。
さて、戦後間もなく労働基準法がつくられてから半世紀が経過し、社会経済情勢は大きく変化いたしました。制定当時は前近代的な制度が残っておりました。強制労働、タコ部屋、中間搾取、ピンはねなど、今考えれば非人間的な労働慣行が横行していた時代でありました。労働基準法は、弱い労働者を保護するとともに、我が国の雇用環境改善に大きな役割を果たし、勤勉な国民性、労使協調の努力などとあわせて、日本経済の発展と国民の福祉の向上に大きく貢献してまいりました。
今日、日本経済のボーダーレス化、国際化が進むとともに、情報通信分野などの目覚ましい技術革新によって、国民の働き方も、また意識も大きく変化してきております。今や、中小企業の労働者であっても、当然の権利として完全週休二日制を要求できる時代となりました。フレックスタイムや在宅勤務などの雇用形態も急速に普及する気配を見せております。これからは、二十一世紀の少子・高齢化社会をにらみつつ、我が国の活力を増大させていくために、高齢者や女性の進出が強く求められる時代となります。
こうした状況の変化を考えれば、戦後半世紀の間、労働基準法の改正がほとんどなされないまま今日に至っているのは不思議なくらいです。その見直しを行うのはむしろ当然であります。この法改正は国民の働き方を変えるものであります。二十一世紀の我が国の繁栄と国民生活に直結するものであるだけに、先を見越した改正の必要性があります。
このような認識に立った上で、以下、質問いたします。
初めに、規制緩和との関連について伺います。
現在、我が国では、実態はともかく、規制緩和が声高に叫ばれており、職場も大きく変わりつつあります。よき慣行として労使を支えてきた終身雇用制が崩れ、勤労者の働く意識も変わりました。労働移動が進み、パートや派遣労働などの不安定な雇用もふえています。こうした動きを、政府は規制緩和の流れの中で当然のことと位置づけ、施策を講じられるのか、あるいは一定の歯どめが必要と考えるのか。その場合、規制緩和で発生するであろう国際化、情報化、技術革新など、新たな雇用の受け皿にどのように労働移動を図っていこうとするのか。また、陰の部分として発生する失業の増大、労働条件の低下、格差拡大といった問題をどのように食いとめるのか。これらについて総理の御見解をお尋ねいたします。
二十一世紀の日本は、間違いなく労働力が不足する時代を迎えます。少子・高齢社会の進展をにらめば、経済社会の活力を増大させていく上で、働く女性を補助的と見るのではなく、正規の労働力と見るべきではありませんか。
男女雇用機会均等法が施行されて十年以上が経過し、働く女性は二千七百万人を超え、うち女性雇用者数は二千百万人を突破いたしました。しかし、管理職に占める女性の割合は、部長クラスはわずか一・四%、課長クラスは三・一%、係長クラスは七・三%にとどまっております。かつて、マーガレット・サッチャー・イギリス首相はイギリス・タイム誌のインタビューに答え、「女性は家庭の管理者です。だから管理経験を持つ点で女性の方が男性よりずっと上です。責任を転嫁することなく、自分で決断することを経験しています」と述べています。
能力があるにもかかわらず、特に我が国において女性の管理職が少ないのは、家事や育児、介護などの責任が女性にだけしわ寄せされている現実があります。働く女性のための環境整備がおくれています。これらの働く女性のための条件整備について、総理はどのようにお考えでしょうか。
私は、条件整備には、保育環境を整え、育児・介護施設を大幅に充実させるべきと思いますが、小泉厚生大臣のお考えをお伺いします。
また、子育てが一段落した女性たちが今育児に追われ育児の手助けを必要とする人を支援する、労働省が始めた有償ボランティア制度の充実を図るべきであります。労働大臣の御見解をお尋ねします。
次に、女子保護規定撤廃と時間外労働の問題について伺います。
今回の改正に当たり、労使が最も対立したのが時間外労働時間の上限規制の問題であります。特に、男女雇用機会均等法の改正に伴って女性の時間外・深夜労働を制限する労基法のいわゆる女子保護規定が撤廃されることになりますが、政府案では、新たな上限規制を設け、現在年間三百六十時間とし目安となっていたものを、労基法に根拠を置く基準に改めます。女性の働く環境が欧米に比べ整備されていない日本での女子保護規定撤廃は、特に共働きの女性にとって大きな負担となります。過労死に象徴されるような男性の労働環境を、そのまま女性に押しつけることになります。職業生活の一方で、家事、育児も担っている現状から、仕事と家庭の両立が困難になることは火を見るよりも明らかです。
時間外労働の問題は男性の長時間労働の問題であり、これが女性の職場進出を阻んでいる側面もあります。時間外労働の基準については、法律で規定するかしないかは別としても、労働者側が主張したように、三年後に年間百五十時間になるよう残業減らしを進めるべきと思いますが、労働大臣の御見解を求めます。
次に、裁量労働制の問題について伺います。
具体的な成果や実績で一定時間働いたとみなす裁量労働制でありますが、既に一部ホワイトカラーの職場に拡大されています。希望する人に対して、自分で時間配分を考え、主体的に仕事をできるようにする働き方は、選択肢の一つとして考えるべきです。自分で時間管理ができる人を机の前にいつまでも拘束する必要はありません。しかし、裁量労働は一定の成果が要求されることになります。達成できなければ、長時間労働になり、家に仕事を持ち帰るサービス残業がふえると思います。過剰な忠誠心と労働を強要するという日本の労働慣行のマイナス面を、さらに悪化させることになりかねません。サービス残業イコール強制的な長時間労働を合法化するとの意見もあるぐらいです。
政府案では、職場に労使委員会を設置し、そこで働き過ぎの防止措置など決議することを導入要件としております。決議は労働基準監督署に届けることになっておりますが、特に、労働組合のない中小企業で労使委員会を有効に機能させることができるのかという疑問があります。裁量労働制を導入して、サービス残業がふえ、労使委員会が十分に機能しない場合、この制度を再検討し、見直すことも含め、慎重に対応することが必要であります。労働大臣の御見解をお聞かせください。
次に、中小企業における労働時間短縮について伺います。
労働時間の短縮が進まないのは理解できないではありません。ただでさえ不況で、経営環境の厳しい中、中小企業が労働時間を短縮するのは容易なことではありません。しかし、今、不況だからと中小企業労働者の人件費負担増を理由に実現を渋り、景気がよくなると人手不足だからと実現を渋っていたのでは、いつまでたっても労働条件は向上しません。また、中小企業の労働時間短縮が難しい原因として、大企業による発注方法の問題があります。週末に発注することが多い上、発注内容を頻繁に変更するといったことが長時間労働の原因となっています。
現在、若者は休日の労働条件を重視しており、時短は有能な人材確保のため有効であります。政府は、意欲のある中小企業を支援するため、週四十時間労働への誘導策を充実すべきと考えますが、総理の御見解をお聞かせください。
今、なりふり構わず働くことを目標とした時代から、仕事への適性や、働きがいのある、ゆとりある時間を大切にする時代へと、国民の意識も大きく転換しつつあります。
ところが、残念ながら、我が国の労働時間はまだまだ長いのが実態です。フランス、ドイツより三百から四百時間も長い労働時間を短縮する工夫が求められます。週四十時間労働が実施されない中小企業は数多く、サービス残業も依然なくなりません。法律では縛ることのできない国民の意識や雇用慣行を是正するための努力が必要です。年次有給休暇の消化率が平均六割にも達しないのは、欧米諸国では考えられません。周囲に気兼ねせず退社したり、休暇をとる環境づくりも必要です。こうした環境づくりのために、総理は、どのような施策が必要とお考えでしょうか。
一つの提案として、私は、祝日三連休を挙げます。年間十四日ある国民の祝日のうち、日にちを動かすことが可能で、三連休にすることによって祝日の意義が高められる四祝日、すなわち、成人の日、海の日、敬老の日、体育の日を決まった週の月曜日に移すというものであり、これは欧米では広く普及している制度であります。
休日が二日、三日と長くなれば、ドライブやアウトドア、郊外のスポーツが盛んになることは余暇開発センターの調査からも明らかになっております。また、ボランティア活動にも積極的に参加する人がふえると思います。三連休を過ごしてみると、不思議と労働意欲がわくものです。家族との交流、読書、学習、調べものといった、団らんや自分を充電するゆとりの時間が国民には必要です。
既に、私たちは、この国会に法案を提出しております。連休の日数がふえれば、ふだんやりたくてもできないことがやれます。そうした希望を多くの女性が持っております。ゆとりある社会にするため、祝日三連休を実現すべきと考えますが、総理のお考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕