羽田孜の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○羽田孜君 私は、民主党、自由党、日本共産党を代表しまして、ただいま議題となりました橋本内閣に対する不信任決議案について、提案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、決議案の案文を朗読いたします。
橋本内閣不信任決議
本院は、橋本内閣を信任せず。
右決議する。
〔拍手〕
二十一世紀を目前にして、我が国は今や戦後最大の経済危機に見舞われています。長引く不況、相次ぐ企業倒産により、失業率は過去最高の四・一%、二百九十万人に上っております。倒産や失業により生きる希望を失い、みずから命を絶つ人々が後を絶たず、昨日の警察庁の発表によると、中高年を中心に三千五百人を占め、この三年間で五〇%近くふえております。(発言する者あり)恥を知りなさい。
十日に大蔵省が発表した一―三月期の法人企業統計によりますと、全産業の売上高は前年同期に比べ六・八%減と三四半期連続で減少し、一九五五年に調査を始めてから最大の減少幅となっております。
ついに、本日午前の株価の終わり値は一万四千八百六十五円九十八銭まで下落し、為替も百四十三円九十八銭もの円安状態は、明らかに市場が、橋本売り、日本売りという形で橋本内閣の経済政策の失敗に対して完全に見放しております。
世論調査も、内閣支持率は二十数%そこそこであり、国会を除いてすべての声が内閣交代を要求しているのであります。新たな企業倒産が起こる可能性さえ予測されております。このような現状で、果たして我が国は希望を持って二十一世紀を迎えることができるのでしょうか。
このようなことになったのは、決して循環的なものではありません。橋本内閣自身の経済政策の失敗にあり、また自由民主党の執行部でもあります、判断の誤りと適切な対応ができなかった、まさしく失政の結果であり、世界じゅうから政策不況、橋本不況、自民党不況と極めて不名誉なそしりを受けており、しかも橋本政権と与党が犯した数々の失政を国民の前に正直にわびることもなく、国民を犠牲にすることによってのみ政権の延命を図ってきたのであります。
もはや、橋本総理は、戦後最悪のリーダーとして実に不名誉な汚名を歴史に残すことは間違いありません。我が国が輝かしい未来を切り開いていくためには、総理の友人としてつらく残念なことではありますが、これまでの失政の責任をとり、速やかに総辞職し、我々野党に政権をゆだねることが最善の道であると確信するものであります。日本と世界を危機から救うため、一刻も早く退陣することをここに要求するものであります。(拍手)
以下、具体的にその理由を申し上げます。
まず第一に、今日の経済不況を招いた原因は、橋本内閣の誤った状況認識による経済運営によるものであることは明らかであります。
その最たるものが、昨年の第百四十一回臨時国会において、我々野党各党の反対を押し切って成立を強行した財政構造改革法であります。我々も、財政構造改革の必要性を否定するものではありません。しかし、現下の経済情勢下にあっては、まさに車のブレーキとアクセルを同時に踏む政策であり、まさしく橋本不況の元凶であります。
しかも、橋本内閣は、なし崩しに政策態度を変え続け、一たん打ち切った特別減税を年末になって突如復活させました。その理由は、アジア各国の首脳から苦衷を訴えられたからということでありました。ちょうどその日は、クアラルンプールからお帰りになった日でありました。しかも、その午前中には、こういった減税について、三党の合意によってこれは反対である、減税はやらないということを自民党の執行部の方がテレビを通じて話されていたはずであります。
また、予算につきまして、二月十八日の本会議で私が指摘したほか、その後、各党議員が本会議や予算委員会等でこの予算をデフレ的と指摘し、所得税、法人税の恒久減税、政策減税を盛り込む組み替えをすべきとの指摘に対して、総理は、今年度の予算を最善のものと言い続け、かつ、この予算を一日でも、あるときには一分一秒でも早く成立させていただくことが最大の景気対策であると答弁をされております。
財政構造改革法についても、二年の凍結とこの間に見直すようにとの提案に対しても、孫、子の代にツケを残すことはやるべきではなく、改正の意思のないことを我々に対してお説教のごとく述べられました。
しかるに、予算が成立した次の四月九日の記者会見では、財政構造改革法の一部見直しと新たな十六兆円もの景気対策を発表し、補正予算を組むことを突如宣言したのであります。四月九日の記者会見による発言の内容は、明らかに総理自身の前日までの国会での発言をみずから翻し、明確な政策転換を言明したのであります。何ら反省も謝罪もなく、開き直ったのであります。これは国会の答弁じゃありません。国会の答弁と違うことを記者会見で発言したのであります。このことは、総理自身が国権の最高機関であるあなた方国会を否定し、主権者たる国民を欺いたとも言えるのであります。(拍手)
しかも、政策転換の中身たるや、財政構造改革法の小手先の見直しの制約により、結局は参議院選挙目当ての、従来型土木中心の公共事業の追加と特別減税の積み増しというだけの、場当たり的な内容になっております。いたずらに額は大きくても、個人消費の拡大や民間設備投資の活性化も全く期待ができないのです。
むしろ、景気は今日、各調査にあらわれているように、危機的な状況をたどっていると申し上げても過言ではありません。総理が政策転換を発表した記者会見直後、市場はまた下落したのであります。このことは、市場が明確に橋本内閣の景気判断や経済政策を信用していないあらわれであり、市場が橋本内閣への不信任を突きつけたということであります。
加えて、鳴り物入りで提案された補正予算は、財政構造改革法の改正に次いで審議すべきという野党の主張を退けて、国会運営上のみの理由で、今日までこの補正予算は一カ月近く、与党みずからの意思でたなざらしにしていたのであります。まさに、この補正予算は腐ってしまっておるものであるとも言え、敏感な経済に対して、あくまでも鈍感でのうてんきな政権と与党と申し上げざるを得ません。
第二に、橋本内閣が、金融不安解消のための不良債権問題等の抜本的な解決、処理策を何ら講じることなく、楽観的な見通しを持ち続けてきたことが、昨年秋以来の金融不安の拡大を招いたのであります。
また、アジアの経済危機に対しても何ら有効な対策が打ち出されずにいる中、円安が急激に進行し、このままでは我が国が世界恐慌の引き金を引くのではないかという懸念が現実のものとなろうとしています。最近になって、ようやく事態の深刻さに気づきましたが、橋本総理のバーミンガム・サミットでの発言は、かえってみずからの無能あるいは無策ぶりを世界じゅうに披瀝したに等しいと申し上げることができます。
橋本内閣は、金融システム安定化という大義名分のもと、銀行救済のため国民の血税十三兆円を投入するという金融安定化措置法を、我々野党の反対を押し切って成立させました。
言うまでもなく、厳しく裁かれねばならないのは、銀行業界と金融行政を指導した橋本政権であります。バブル経済を生み出し、バブル経済の崩壊とともに多額の不良債権を発生させ、その不良債権を長年にわたって開示することもなく、自己保身のため貸し渋りを行い、多くの健全な企業までをも倒産に追い込み、我が国経済を今日の危機的状況に追い込んだのであります。これら不良債権処理に対し、我々が主張してきたように日本版RTCなど司法制度により対応することなく、密室で対処するというやり方でありました。言うならば、加害者の罪を被害者に償わせるのかという率直な声さえ聞こえてきております。
また、与党のゼネコン救済のために再び公的資金の導入が言われていますが、これを聞いた国民の中から怒りの声が上がってきております。バブル経済の崩壊は、資産としての値打ちが下がった住宅ローンをまじめに支払い続けている人々、中小零細企業の多くの人も被害者であることを皆さんは知るべきであります。
第三に、橋本内閣は、中央省庁等改革基本法を強引に成立させましたが、この基本法は単なる看板のかけかえによる数合わせであり、一府十二省庁への変更は、中央集権をさらに強めるおそれさえあるのであります。
本来、地方分権を柱に据え、十年後のデザイン、哲学を示して、分権連邦国家により新たな時代の日本の形を示すことで省庁再編を行うべきであります。基本法は、およそ行政改革の名に値しない法律であります。
ところが、橋本内閣が示した中身は、自民党族議員に振り回された結果、巨大な開発官庁である国土交通省や目的不明の総務省などの設置が盛り込まれるなど、まさに醜悪そのものであります。表面的に省庁間の数合わせをしたものであり、行政改革の本質とはほど遠いものになっており、橋本総理の行政改革に対する熱意とリーダーシップの欠如を露呈したものであると言えます。
第四に、政治倫理の欠如であります。
橋本総理が総裁を務める与党自民党の幹部が巨額の違法献金を受けたと言われる泉井違法献金疑惑に対しましても、橋本内閣は何ら真実を明らかにしようとしません。有罪判決を受けた議員を国務大臣にした橋本総理自身に政治倫理を望むことが無理なのは当然と言えます。
また、政官財の癒着構造により、官僚までがモラルに欠けるようになりました。その原因をつくったのは我々政治家にも責任があるというふうに考えます。泉井問題についても、民間人は証人喚問を行って、政治家は非公開の政治倫理審査会で済ましてしまうようなことでは、国民の政治家に対する不信感を払拭することは到底できません。政治家みずからがうみを出すことによって、官にも産業界にも自浄作用を呼ぶことになるのであります。
第五に、橋本総理は、外交面でも失敗の連続であります。
米軍普天間基地返還では、代替地問題の最終判断を沖縄県に責任転嫁したあげくに完全に行き詰まり、米国からは信頼を失う一方、県民にも不信感を助長させる結果を招いているのであります。
インド、パキスタンが核実験に至ったことは、バーミンガム・サミットにおいて、唯一の被爆国である日本が率先して、核保有国である米ロ英仏に対して核軍縮問題を提議することやインドへの経済制裁措置を共同して提示するなど、成果を上げることができたならば、その後の核実験を防ぐことになったと私は信じます。それが、見るべき成果もないどころか、話す案件がなくなったということで、サミット出席の各国の首脳とテレビでサッカーの試合に打ち興じていたという報道に接し、私自身、政治家として愕然とした気持ちを持ったのであります。橋本総理が示したのは、アリバイづくり以外の何物でもありません。
さらに、不自然なODAによる資金援助に絡んで、中国人女性との交流がささやかれるという話も伝わっております。このような疑惑が出されること自体が総理としての資質を問われることであり、日本の国益を考えるとき、総理は速やかに辞職することこそ、最高責任者としてとるべき道であります。(拍手)
以上、五項目にわたって申し上げたように、橋本内閣は、内政、外政全般にわたって戦後最悪の失政を重ね、世界における日本の信用を著しく失墜させ、国民の政治への信頼、ひいては議会制民主主義への信頼を失わせた責任は極めて重大であります。今後も橋本内閣に日本のかじ取りをゆだねることは、未来への無限の可能性を持つこの国を沈没させることにつながると思います。
失政に対して正直でなく、責任をとらない橋本内閣に対する国民の怒りは極限に達しております。橋本内閣は、国民と世界のためにも直ちに退陣をすべきであります。与党の幹部の中には、自民党に橋本総理にかわる人材がいないから橋本続投という発言さえも聞こえてまいります。しかし、皆さん、そのことは与党のおごりであります。今問われているのは、総理のみならず、自民党そのものが問われているのであります。政治は結果責任であり、憲政の常道に従い、速やかに野党に政権を渡すべきであります。我々野党には多くの優秀な人材があり、いつでも政権を担い、必ずや日本の明るい未来を開いていくことを申し上げることができます。
よって、ここに橋本内閣の不信任決議案を提出するものであります。良識ある議員の諸君、どうか子や孫たちの時代に思いをはせ、それぞれの立場を乗り越え、勇気を持って御賛同くださることを促し、趣旨弁明を終わります。(拍手)
―――――――――――――