広瀬崇子の発言 (外交・防衛委員会)
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○参考人(広瀬崇子君) インドとパキスタンの間の関係が非常に相互不信で、これを乗り越えられるかという御質問なんですけれども、これは明石さんも御指摘になっていらっしゃいますように、インドとパキスタンというのは言ってみるならば兄弟国家なわけです。ですから、兄弟というのが兄弟げんかをすると他人がやるよりももっと激しくするんだというようなことをよくインド人なんかは言うわけですけれども、そういった傾向が多分にあると思うんです。
ですから、例えば前首相のグジュラール首相というのはパキスタン側から渡ったパンジャーブ人なんですが、現在のナワズ・シャリフ首相と同じ大学の同窓生同士なんです、年は親子ほどに離れていますけれども。それで、その地方の方言で話し合えるというぐらいに親しく話ができる、わかり合える仲だったということなんです。
ですから、インドとパキスタンというのを見ていますと、文化的には非常に近いわけです。特に、北インドの人ですと、言葉を共有する人も大勢います。ですから、会議なんかで会いますとインド人とパキスタン人というのは本当にかなり親しくしていることがあるんですが、事国家の安全保障とかという会議になりますと途端にけんかを始めるわけです。結局、国家の主権が絡んできたときにインドとパキスタンというのは本当に犬猿の仲、あるいは宿命の対決というふうになってしまうわけです。
そこで、どうやって乗り越えたらいいのかという御質問なんですけれども、これは非常に難しいんですけれども、一つは、国家の主権というか国家の枠というものがまさに対立の原因であるならば、それに余りこだわらない形の印パ関係というものを築ければそういう形で何か突破口ができるんじゃないか。
具体的に申し上げますと、南アジアには南アジア地域協力連合というSAARCというものがございます。これは、ちょうど九〇年代に入りましてから、それまでの政治的な色彩をなくしまして経済的なつながりを強化しようということで、特に貿易といった方面で動き出して、ちょうどいいところになったと思ったところに政権がインドでも変わったということもありましてここで後退した形なんですが、そういう形での経済協力というものを進めていくということが一つはあると思います。
それからもう一つは、インドというのは非常に広くてそして大きくて、しかも南アジアの国々とインドが全部国境を接していまして、他の国々は国境を接していないわけです。ですから、どうしても南アジアの中ではインドだけが物すごく大国だということになるわけです。そのインド対どこというふうになりますと、どうしても力のバランスが崩れてまいります。インドでも最近では地方分権あるいは州の権限というものが、連邦制の強化ということが進んでおりますので、そことすなわちインドの幾つかの州、例えば西ベンガル州というところがございますが、ここですと隣のバングラデシュとベンガル、ベンガルで言葉は同じなんですね。
ですから、西ベンガル州とバングラデシュが、あるいはそれにネパールが入って例えばヒマラヤの水域の開発を共同でやるとかそういった形の地域協力、こういうものに対する日本の経済援助、こういったようなことが少しは前向きに向かう一つの方法ではないかというふうに思います。
以前、インドとパキスタンと両方あわせて会議があったときに、歴史の解釈がやっぱり大きな問題ですので、歴史の教科書を両方で一緒に話し合ったらどうかというようなことも提案してみたんですが、これはどちらにも受け入れられませんでしたので、やはりそういうところからいきなり入るのは難しい。むしろ、経済的なものを通じて機能的に協力関係を進めていくというのがいい方法ではないかと思います。