外交・防衛委員会
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会
会議録情報#0
平成十年六月十一日(木曜日)
午後零時四十分開会
―――――――――――――
委員の異動
六月四日
辞任 補欠選任
大野つや子君 服部三男雄君
鈴木 正孝君 林田悠紀夫君
六月五日
辞任 補欠選任
林田悠紀夫君 鈴木 正孝君
前川 忠夫君 竹村 泰子君
泉 信也君 田村 秀昭君
―――――――――――――
出席者は左のとおり。
委員長 及川 順郎君
理 事
須藤良太郎君
武見 敬三君
吉田 之久君
高野 博師君
委 員
岩崎 純三君
塩崎 恭久君
鈴木 正孝君
二木 秀夫君
宮澤 弘君
竹村 泰子君
広中和歌子君
田 英夫君
立木 洋君
田村 秀昭君
佐藤 道夫君
国務大臣
内閣総理大臣 橋本龍太郎君
政府委員
外務政務次官 高村 正彦君
外務大臣官房長 浦部 和好君
外務省総合外交
政策局軍備管
理・科学審議官 阿部 信泰君
事務局側
常任委員会専門
員 大島 弘輔君
参考人
大東文化大学国
際関係判部教授 広瀬 崇子君
野村総合研究所
研究創発セン
ター主任研究員 森本 敏君
外務省参与
国連小火器政府
専門家グループ
議長 堂ノ脇光朗君
広島市立大学広
島平和研究所所
長 明石 康君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
○外交、防衛等に関する調査
(核廃絶に関する件)
(世界的な核廃絶推進の行動を求める決議の件
)
―――――――――――――
この発言だけを見る →午後零時四十分開会
―――――――――――――
委員の異動
六月四日
辞任 補欠選任
大野つや子君 服部三男雄君
鈴木 正孝君 林田悠紀夫君
六月五日
辞任 補欠選任
林田悠紀夫君 鈴木 正孝君
前川 忠夫君 竹村 泰子君
泉 信也君 田村 秀昭君
―――――――――――――
出席者は左のとおり。
委員長 及川 順郎君
理 事
須藤良太郎君
武見 敬三君
吉田 之久君
高野 博師君
委 員
岩崎 純三君
塩崎 恭久君
鈴木 正孝君
二木 秀夫君
宮澤 弘君
竹村 泰子君
広中和歌子君
田 英夫君
立木 洋君
田村 秀昭君
佐藤 道夫君
国務大臣
内閣総理大臣 橋本龍太郎君
政府委員
外務政務次官 高村 正彦君
外務大臣官房長 浦部 和好君
外務省総合外交
政策局軍備管
理・科学審議官 阿部 信泰君
事務局側
常任委員会専門
員 大島 弘輔君
参考人
大東文化大学国
際関係判部教授 広瀬 崇子君
野村総合研究所
研究創発セン
ター主任研究員 森本 敏君
外務省参与
国連小火器政府
専門家グループ
議長 堂ノ脇光朗君
広島市立大学広
島平和研究所所
長 明石 康君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
○外交、防衛等に関する調査
(核廃絶に関する件)
(世界的な核廃絶推進の行動を求める決議の件
)
―――――――――――――
及
及川順郎#1
○委員長(及川順郎君) ただいまから外交・防衛委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る四日、大野つや子さんが委員を辞任され、その補欠として服部三男雄君が選任されました。
また、去る五日、前川忠夫君及び泉信也君が委員を辞任され、その補欠として竹村泰子さん及び田村秀昭君が選任されました。
―――――――――――――
この発言だけを見る →まず、委員の異動について御報告いたします。
去る四日、大野つや子さんが委員を辞任され、その補欠として服部三男雄君が選任されました。
また、去る五日、前川忠夫君及び泉信也君が委員を辞任され、その補欠として竹村泰子さん及び田村秀昭君が選任されました。
―――――――――――――
及
及川順郎#2
○委員長(及川順郎君) 外交、防衛等に関する調査を議題といたします。
本日は、核廃絶に関する件について、初めに橋本内閣総理大臣から発言を求め、次に四名の参考人から意見を聴取した後、参考人に対する質疑を行いたいと存じます。
それでは、まず橋本内閣総理大臣から本件についての所見を求めます。橋本内閣総理大臣。
この発言だけを見る →本日は、核廃絶に関する件について、初めに橋本内閣総理大臣から発言を求め、次に四名の参考人から意見を聴取した後、参考人に対する質疑を行いたいと存じます。
それでは、まず橋本内閣総理大臣から本件についての所見を求めます。橋本内閣総理大臣。
橋
橋本龍太郎#3
○国務大臣(橋本龍太郎君) 本日、参議院外交・防衛委員会が開催されるに当たり、先般のインド、パキスタン両国の核実験実施を受けた政府の基本的姿勢に関し所見を申し上げます。
我が国は、第二次大戦後、平和国家として歩み続けることを決意し、みずからは非核三原則、武器輸出三原則を初めとして世界に例がないほど徹底した平和的外交政策を追求するとともに、国際的な軍備管理・軍縮、核不拡散の推進に向けてさまざまな努力を積み重ねてまいりました。その一環として、特に核軍縮・不拡散の分野では、近年の核拡散防止条約の無期限延長、包括的核実験禁止条約の採択に際しても積極的な外交努力を行いました。これは、我が国が世界で唯一の被爆国であり、核の悲惨さをだれよりも強く認識していることに加え、核軍縮・不拡散の推進が世界の平和と安定のために望ましいものであるとの考えに基づくものであります。
先般のインド及びパキスタンによる核実験の実施は、みずから非核三原則を維持し、また国際的な核軍縮・不拡散を推進してきた我が国としては全く容認できないものであり、また、核兵器のない世界を目指す国際社会の努力に逆行する極めて遺憾な行為であります。両国による核実験は、国際的な核不拡散体制に対する挑戦であると同時に、南アジアを中心とした地域的な平和と安定を損ない得るという重大な影響を持つものであり、国際社会が一致してこの暴挙に厳格かつ的確に対処する必要があります。
我が国としては、これまで両国に厳しく抗議し、また経済協力面を中心に厳しい措置をとったところですが、引き続き核不拡散体制の堅持、強化及び南アジアを中心とした地域の平和と安定の維持のために積極的な役割を果たしていく所存です。
本日は、この外交・防衛委員会の場をおかりし、本件に関する我が国の基本姿勢を御説明し、あわせて委員各位の御理解と御支持を得たくお願い申し上げます。
まず、国際的な核不拡散体制の堅持、強化に向けた姿勢であります。
これについては、第一に、国際社会が一致してインド、パキスタン両国に対し核不拡散に向けた強い働きかけを継続すること、第二に、国際的な核不拡散体制の堅持、強化に向けて国際社会の努力を結集していくことという二つの視点が必要であります。
第一の核不拡散に向けたインド、パキスタン両国への働きかけという視点からは、国際社会が一致して両国の今回の行為を非難しつつ、両国に対して核実験の停止、核兵器及びその運搬手段たるミサイルの開発、配備の停止を求めること、並びにNPT及びCTBTの無条件の締結を求めることが必要です。それとともに、両国に対しカットオフ条約交渉への参加を求めていくことが重要です。
第二の国際的な核不拡散体制の堅持、強化という視点からは、国際社会が一致して核拡散の防止に取り組み、NPT及びCTBTを中心とした現行の核不拡散体制を支えていくことが重要であります。私が参加したバーミンガム・サミット、また、累次にわたる国連安保理での議論及び決議や先日の国連安保理常任理事国外相会合においても、現行の体制を堅持していくことの必要性が確記されております。現行の核不拡散体制は平和で安全な世界の実現に向けた戦後の国際社会の努力が結集されたものであります。世界の大多数の諸国の参加を得ているこの体制を国際社会が結束して堅持、強化していくべきであることを訴えたいと思います。
また、インド、パキスタン両国からの、あるいは両国への核及びミサイル関連物資・技術の移転を阻止することの重要性についても指摘したいと思います。特に、核兵器及びその運搬手段であるミサイルの不拡散を目的とする国際的な輸出管理体制である原子力供給国グループやミサイル輸出管理レジームに参加していない国に対して、不拡散に向けた取り組みを強化するよう訴えていきたいと考えます。
さらに、我々は、インド、パキスタン両国による核実験のごとき不拡散体制への挑戦が結局は大きな不利益が伴う選択であることを世界に明確に示す必要があります。そのためにも、両国が現行の体制上のいわば特別な地位を得ることにより両国に核実験の恩恵が与えられることはあってはならないと考えます。
今回の事態の原因をつくったのはインド、パキスタン両国であることは明白な事実ですが、その上で、次に、核兵器国による核軍縮の推進の必要性に言及したいと思います。
核軍縮の着実な進展はより安全な世界の実現にとり不可欠であります。我が国は、究極的に核兵器のない世界の実現を目指し、国際社会が具体的かつ現実的な措置を通じて核軍縮を一歩一歩着実に進める必要があることを訴え続けてまいりました。今後とも、明確に目に見える形での核軍縮の進展が求められており、具体的には我が国として、米ロ両国に対してはSTARTⅡの早期締結及びSTARTⅢの早期交渉開始を、米国、ロシア、中国に対してはCTBTの早期批准を、また米ロ以外の核兵器国に対しても、現在の核兵器をふやさず、さらにこれを削減するための努力を一層強化するよう求めているところであります。政府としては、かかる働きかけを今後とも粘り強く続けてまいる考えです。
以上述べた我が。国の基本的な考え方については、さきの国連安保理常任理事国、いわゆるP5の外務大臣会合に先立ち、各国に伝達いたしました。そこで得られた一連の成果は我が国の基本的立場と軌を一にするものであり、我が国としてもその成果を積極的に評価しております。
また、我が国としては、国連において独自のイニシアチブを発揮しました。すなわち、国連安保理において、国際的な核不拡散体制の堅持を確認し、南アジアその他の地域の平和と安全の維持に対する脅威に対処することなどを内容とする決議が全会一致で採択されました。この決議は、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する国連安保理が今回の危機に緊急に対処する必要があるとの認識のもとに、我が国が共同提案国としてその採択に至るまで主導的な役割を果たしてきたものであります。内容面でも、両国の核実験への非難と最大限の自制要請に始まり、いわば今次危機に直面しての国際社会全体の認識が表明されたものとなっております。
私としては、最も普遍的な国際機関である国連においてこのような明確な意思表明ができたことは極めて重要と考えております。今次危機への対処の一環として我が国の努力が結実したことは極めて喜ばしく、改めてその意義を強調したいと思います。
さらに、我が国として先般、日本国際問題研究所及び広島平和研究所などの協力により、内外の有識者の参加を得た国際的なプロジェクトとして、核軍縮・不拡散に関する緊急行動会議を発足させることを政府として明らかにしたところです。今後一年のうちに我が国で一連の会議を開催し、不拡散体制の堅持、強化及び核軍縮の促進につき世界に向けた提言を得たいと思っております。この我が国のイニシアチブに対する皆様方の御理解と御支援を賜りたく存じます。
次に、南アジア地域の平和と安定の維持に向けた取り組みであります。
我が国としては、インド、パキスタン両国の緊張の高まりは単に二国間の問題にとどまらず、南アジアの安全保障、さらには国際社会全体の平和と安定に影響を与える問題としてその推移に重大な懸念を抱いております。また、両国間の緊張が高まれば、南アジアの地域経済協力の推進をおくらせ、地域諸国の社会経済発展及び民生の向上に悪影響を与えかねません。こうした影響を回避する上でまず必要なことは、インド、パキスタン両国が真剣な対話を開始し、相互不信の増大を抑え、軍拡競争を防ぐべく努力することです。具体的には、両国が外務次官級協議の再開を模索するなど対話の糸を保つよう努力し、また、軍事面の透明性の向上などの信頼醸成措置をとることが大切でしょう。
今回の一連の事態は、独立以来の根深い両国の対立にその主たる要因を求めることができます。この両国の対立は双方の国家的威信や宗教、民族的要因も絡んでおり、これを解きほぐすのは容易な作業ではないでしょう。それでも、地域紛争の両当事国が核実験を行ったという新たな現実を前に、国際社会としても原点に立ち返り、カシミール問題を初めとする両国の対立の要因をなす諸問題に強い関心を持ち、南アジアの安全保障のあり方を考えていくこと、その上で、意味のある両国対話を慫慂していくことが必要となっていることを改めて訴えたいと思います。明日のG8外務大臣会合においても、G8として両国関係に関心を持ち、両国の緊張緩和に向けた対話を側面から支援していく必要があることを我が国から訴えたいと思います。
明十二日のロンドンにおけるG8外務大臣会合については、国会の御了承をいただき小渕外務大臣が出席いたします。国際社会をリードすべき立場にあるG8の外務大臣がその英知を結集し、今回の事態に対応することを期待しております。我が国としても、核軍縮・不拡散問題に関し、これまで率先して行ってきた取り組みと積み上げた経験を生かし、以上述べた基本的立場に基づき今後とも明確な主張を行ってまいりたいと考えます。
以上、インド、パキスタン両国の核実験の実施への対応に関する私の所見を申し述べてまいりました。本委員会におかれまして、今後とも有意義で建設的な議論が行われることを祈り、また、この問題への政府の取り組みに対する皆様方の御支持と御理解が得られるよう願いつつ、所見を締めくくらせていただきます。
この発言だけを見る →我が国は、第二次大戦後、平和国家として歩み続けることを決意し、みずからは非核三原則、武器輸出三原則を初めとして世界に例がないほど徹底した平和的外交政策を追求するとともに、国際的な軍備管理・軍縮、核不拡散の推進に向けてさまざまな努力を積み重ねてまいりました。その一環として、特に核軍縮・不拡散の分野では、近年の核拡散防止条約の無期限延長、包括的核実験禁止条約の採択に際しても積極的な外交努力を行いました。これは、我が国が世界で唯一の被爆国であり、核の悲惨さをだれよりも強く認識していることに加え、核軍縮・不拡散の推進が世界の平和と安定のために望ましいものであるとの考えに基づくものであります。
先般のインド及びパキスタンによる核実験の実施は、みずから非核三原則を維持し、また国際的な核軍縮・不拡散を推進してきた我が国としては全く容認できないものであり、また、核兵器のない世界を目指す国際社会の努力に逆行する極めて遺憾な行為であります。両国による核実験は、国際的な核不拡散体制に対する挑戦であると同時に、南アジアを中心とした地域的な平和と安定を損ない得るという重大な影響を持つものであり、国際社会が一致してこの暴挙に厳格かつ的確に対処する必要があります。
我が国としては、これまで両国に厳しく抗議し、また経済協力面を中心に厳しい措置をとったところですが、引き続き核不拡散体制の堅持、強化及び南アジアを中心とした地域の平和と安定の維持のために積極的な役割を果たしていく所存です。
本日は、この外交・防衛委員会の場をおかりし、本件に関する我が国の基本姿勢を御説明し、あわせて委員各位の御理解と御支持を得たくお願い申し上げます。
まず、国際的な核不拡散体制の堅持、強化に向けた姿勢であります。
これについては、第一に、国際社会が一致してインド、パキスタン両国に対し核不拡散に向けた強い働きかけを継続すること、第二に、国際的な核不拡散体制の堅持、強化に向けて国際社会の努力を結集していくことという二つの視点が必要であります。
第一の核不拡散に向けたインド、パキスタン両国への働きかけという視点からは、国際社会が一致して両国の今回の行為を非難しつつ、両国に対して核実験の停止、核兵器及びその運搬手段たるミサイルの開発、配備の停止を求めること、並びにNPT及びCTBTの無条件の締結を求めることが必要です。それとともに、両国に対しカットオフ条約交渉への参加を求めていくことが重要です。
第二の国際的な核不拡散体制の堅持、強化という視点からは、国際社会が一致して核拡散の防止に取り組み、NPT及びCTBTを中心とした現行の核不拡散体制を支えていくことが重要であります。私が参加したバーミンガム・サミット、また、累次にわたる国連安保理での議論及び決議や先日の国連安保理常任理事国外相会合においても、現行の体制を堅持していくことの必要性が確記されております。現行の核不拡散体制は平和で安全な世界の実現に向けた戦後の国際社会の努力が結集されたものであります。世界の大多数の諸国の参加を得ているこの体制を国際社会が結束して堅持、強化していくべきであることを訴えたいと思います。
また、インド、パキスタン両国からの、あるいは両国への核及びミサイル関連物資・技術の移転を阻止することの重要性についても指摘したいと思います。特に、核兵器及びその運搬手段であるミサイルの不拡散を目的とする国際的な輸出管理体制である原子力供給国グループやミサイル輸出管理レジームに参加していない国に対して、不拡散に向けた取り組みを強化するよう訴えていきたいと考えます。
さらに、我々は、インド、パキスタン両国による核実験のごとき不拡散体制への挑戦が結局は大きな不利益が伴う選択であることを世界に明確に示す必要があります。そのためにも、両国が現行の体制上のいわば特別な地位を得ることにより両国に核実験の恩恵が与えられることはあってはならないと考えます。
今回の事態の原因をつくったのはインド、パキスタン両国であることは明白な事実ですが、その上で、次に、核兵器国による核軍縮の推進の必要性に言及したいと思います。
核軍縮の着実な進展はより安全な世界の実現にとり不可欠であります。我が国は、究極的に核兵器のない世界の実現を目指し、国際社会が具体的かつ現実的な措置を通じて核軍縮を一歩一歩着実に進める必要があることを訴え続けてまいりました。今後とも、明確に目に見える形での核軍縮の進展が求められており、具体的には我が国として、米ロ両国に対してはSTARTⅡの早期締結及びSTARTⅢの早期交渉開始を、米国、ロシア、中国に対してはCTBTの早期批准を、また米ロ以外の核兵器国に対しても、現在の核兵器をふやさず、さらにこれを削減するための努力を一層強化するよう求めているところであります。政府としては、かかる働きかけを今後とも粘り強く続けてまいる考えです。
以上述べた我が。国の基本的な考え方については、さきの国連安保理常任理事国、いわゆるP5の外務大臣会合に先立ち、各国に伝達いたしました。そこで得られた一連の成果は我が国の基本的立場と軌を一にするものであり、我が国としてもその成果を積極的に評価しております。
また、我が国としては、国連において独自のイニシアチブを発揮しました。すなわち、国連安保理において、国際的な核不拡散体制の堅持を確認し、南アジアその他の地域の平和と安全の維持に対する脅威に対処することなどを内容とする決議が全会一致で採択されました。この決議は、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する国連安保理が今回の危機に緊急に対処する必要があるとの認識のもとに、我が国が共同提案国としてその採択に至るまで主導的な役割を果たしてきたものであります。内容面でも、両国の核実験への非難と最大限の自制要請に始まり、いわば今次危機に直面しての国際社会全体の認識が表明されたものとなっております。
私としては、最も普遍的な国際機関である国連においてこのような明確な意思表明ができたことは極めて重要と考えております。今次危機への対処の一環として我が国の努力が結実したことは極めて喜ばしく、改めてその意義を強調したいと思います。
さらに、我が国として先般、日本国際問題研究所及び広島平和研究所などの協力により、内外の有識者の参加を得た国際的なプロジェクトとして、核軍縮・不拡散に関する緊急行動会議を発足させることを政府として明らかにしたところです。今後一年のうちに我が国で一連の会議を開催し、不拡散体制の堅持、強化及び核軍縮の促進につき世界に向けた提言を得たいと思っております。この我が国のイニシアチブに対する皆様方の御理解と御支援を賜りたく存じます。
次に、南アジア地域の平和と安定の維持に向けた取り組みであります。
我が国としては、インド、パキスタン両国の緊張の高まりは単に二国間の問題にとどまらず、南アジアの安全保障、さらには国際社会全体の平和と安定に影響を与える問題としてその推移に重大な懸念を抱いております。また、両国間の緊張が高まれば、南アジアの地域経済協力の推進をおくらせ、地域諸国の社会経済発展及び民生の向上に悪影響を与えかねません。こうした影響を回避する上でまず必要なことは、インド、パキスタン両国が真剣な対話を開始し、相互不信の増大を抑え、軍拡競争を防ぐべく努力することです。具体的には、両国が外務次官級協議の再開を模索するなど対話の糸を保つよう努力し、また、軍事面の透明性の向上などの信頼醸成措置をとることが大切でしょう。
今回の一連の事態は、独立以来の根深い両国の対立にその主たる要因を求めることができます。この両国の対立は双方の国家的威信や宗教、民族的要因も絡んでおり、これを解きほぐすのは容易な作業ではないでしょう。それでも、地域紛争の両当事国が核実験を行ったという新たな現実を前に、国際社会としても原点に立ち返り、カシミール問題を初めとする両国の対立の要因をなす諸問題に強い関心を持ち、南アジアの安全保障のあり方を考えていくこと、その上で、意味のある両国対話を慫慂していくことが必要となっていることを改めて訴えたいと思います。明日のG8外務大臣会合においても、G8として両国関係に関心を持ち、両国の緊張緩和に向けた対話を側面から支援していく必要があることを我が国から訴えたいと思います。
明十二日のロンドンにおけるG8外務大臣会合については、国会の御了承をいただき小渕外務大臣が出席いたします。国際社会をリードすべき立場にあるG8の外務大臣がその英知を結集し、今回の事態に対応することを期待しております。我が国としても、核軍縮・不拡散問題に関し、これまで率先して行ってきた取り組みと積み上げた経験を生かし、以上述べた基本的立場に基づき今後とも明確な主張を行ってまいりたいと考えます。
以上、インド、パキスタン両国の核実験の実施への対応に関する私の所見を申し述べてまいりました。本委員会におかれまして、今後とも有意義で建設的な議論が行われることを祈り、また、この問題への政府の取り組みに対する皆様方の御支持と御理解が得られるよう願いつつ、所見を締めくくらせていただきます。
及
及川順郎#4
○委員長(及川順郎君) 橋本内閣総理大臣の所見発言は終わりました。
大臣におかれましては、会議の合間を縫いまして本委員会に出席を賜り、まことにありがとうございました。
続きまして、参考人からの意見聴取及び質疑を行います。
本日は、参考人として大東文化大学国際関係学部教授広瀬崇子さん、野村総合研究所研究創発センター主任研究員森本敏君、外務省参与・国連小火器政府専門家グループ議長堂ノ脇光朗君及び広島市立大学広島平和研究所所長明石康君に御出席をいただいております。
この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人の皆様におかれましては、御多用のところ本委員会に御出席を賜り、まことにありがとうございました。
本日は、インドとパキスタンが強行した地下核実験によってNPT・CTBT体制の形骸化が言われる中で、核廃絶に向けた国際世論の再構築に向け、唯一の原爆被爆国であり非核三原則を国是とする非核国として、我が国が今後世界にいかなる発信をし具体的にどう行動すべきか、また国際の平和と安全の確立のためにいかなる努力を傾注すべきかなどにつきまして、参考人の方々より忌憚のない御意見を伺い、今後の我が国の非核政策確立に資する調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方でございますけれども、本参考人質疑の趣旨を踏まえまして、全体的な展開を考え、参考人の方々の冒頭発言の順序をあらかじめ当方で決めさせていただきましたので、御理解と御協力をお願い申し上げます。
まず、参考人の方々からお一人十五分程度で御意見をお述べいただきます。その後、各委員との質疑に応じていただき、委員会の終了時刻はおおむね午後四時を目途といたしております。
なお、御発言は着席のままで結構でございますので、よろしくお願いいたします。
我が国の非核政策確立に対しまして、何とぞ実り多い御発言をよろしくお願いいたしたいと存じます。
それでは、まず広瀬参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。広瀬参考人。
この発言だけを見る →大臣におかれましては、会議の合間を縫いまして本委員会に出席を賜り、まことにありがとうございました。
続きまして、参考人からの意見聴取及び質疑を行います。
本日は、参考人として大東文化大学国際関係学部教授広瀬崇子さん、野村総合研究所研究創発センター主任研究員森本敏君、外務省参与・国連小火器政府専門家グループ議長堂ノ脇光朗君及び広島市立大学広島平和研究所所長明石康君に御出席をいただいております。
この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人の皆様におかれましては、御多用のところ本委員会に御出席を賜り、まことにありがとうございました。
本日は、インドとパキスタンが強行した地下核実験によってNPT・CTBT体制の形骸化が言われる中で、核廃絶に向けた国際世論の再構築に向け、唯一の原爆被爆国であり非核三原則を国是とする非核国として、我が国が今後世界にいかなる発信をし具体的にどう行動すべきか、また国際の平和と安全の確立のためにいかなる努力を傾注すべきかなどにつきまして、参考人の方々より忌憚のない御意見を伺い、今後の我が国の非核政策確立に資する調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方でございますけれども、本参考人質疑の趣旨を踏まえまして、全体的な展開を考え、参考人の方々の冒頭発言の順序をあらかじめ当方で決めさせていただきましたので、御理解と御協力をお願い申し上げます。
まず、参考人の方々からお一人十五分程度で御意見をお述べいただきます。その後、各委員との質疑に応じていただき、委員会の終了時刻はおおむね午後四時を目途といたしております。
なお、御発言は着席のままで結構でございますので、よろしくお願いいたします。
我が国の非核政策確立に対しまして、何とぞ実り多い御発言をよろしくお願いいたしたいと存じます。
それでは、まず広瀬参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。広瀬参考人。
広
広瀬崇子#5
○参考人(広瀬崇子君) 広瀬でございます。
本日は、核の専門家の方がいらっしゃいますので、私はインド・パキスタン関係、特にカシミール問題を中心にお話しさせていただこうと思います。
まずは、核実験が行われたということの要因なんですが、これを言っていますと時間がなくなりますので、簡単に項目だけ挙げさせていただきます。
インドが核実験を行ったことの対外的な要因といたしましては、世間で言われておりますように、核体制、NPT・CTBT体制に対する批判をみずから行動で示した、これが第一点でございます。それから第二点といたしましては、インドの対中国の対等の地位を要求する、そういう宿願といいますか、こういったインドの希望がございました。それから第三番目には、中国とパキスタンの核及びミサイルにおける協力関係、これに対するインドの反発、これは特にパキスタンのガウリ・ミサイルの発射実験の結果ということが言えるかと思います。これが対外的な要因でございます。
それから、対内的には、強いインドということを唱えております新政権、インド人民党が中心になっております新政権の誕生ということがまず大きな要因になるかと思います。
それから第二番目には、連立政権内部、これははっきりいたしておりませんが、現在約二十政党というくらいの連立政権になっておりますので、その中でのごたごたをおさめるために一気に強い指導力を発揮したい、これが現在のバジパイ首相の思惑であっただろうと考えられます。
それから第三番目には、核実験を通しまして、バジパイ首相及びインド人民党の政権が国民の間にナショナリズムを喚起させたい、こういうことを考えていたのだろうと思います。そのためには、核実験というのは国民の間で既にコンセンサスがインドではできておりまして、一番反対のない争点であった、そこでこの核実験に踏み切った、こういうふうに考えられます。これが核実験のインド側の要因でございます。それに対しましてパキスタンは、これはただインドへの対抗という一言に尽きるかと思います。
何でそんなにインドとパキスタンがライバルになるかということが、これは二番目の議題でございますが、インドとパキスタンの分離独立という問題、これがカシミール紛争の最も根源にある問題なんですけれども、これを考えなければいけないと思います。
インドとパキスタンは、御承知のように一九四七年にイギリスの植民地支配から分離独立したわけですけれども、その分離独立のときに新しく国境線が引かれました。これは西と東と両方でございますが、今のバングラデシュもパキスタンでございました。そこを通りまして、パキスタンサイドからはヒンズー教徒とシーク教徒が、それからインドサイドからはイスラム教徒、ムスリムが国境線を渡りまして移住したわけです。その数は、はっきりはいたしませんけれども約一千五百万人というふうに言われております。
それで、分離独立の際にあっちこっちで暴動が起きました。道を通るすれ違いざまもありますし、あるいは近所で、例えばヒンズーの居住地区だとムスリムの家を焼き討ちするとか、そういったものも含めまして、暴動が主ですが、その暴動の犠牲となった人の数が約百万人と言われております。これは想像を絶する数でして、しかも暴動というのは目の前で殺し合うわけですので、そういう形で百万人が犠牲になったというその後遺症が現在でも残っている。特に北インドあるいはパキスタンにいる人たちは近親者あるいは知人、そういった人のだれかが殺されているといったような状況がございます。それが現在の国民感情としてインドとパキスタンの間の問題になっております。
それから、分離独立をいたしましたが、その際に、パキスタンはイスラム教徒の国、すなわちムスリムの国としてヒンズーが支配するところにはいられないということで国を出て分離独立いたしました。それに対抗いたしまして、インドの方は、別にヒンズーの国家をつくるわけではない、政教分離国家、セキュラー国家といいますけれども、政教分離の国家、宗教、信仰の自由を認める国家をつくるのだと、こういう形でセキュラー国家インドとムスリム国家パキスタンが誕生いたしました。
この誕生というのは、単にそういう国であるという以上の重みを持っております。
まずはインドの方では、ムスリムが大量にパキスタンに出ていったにもかかわらずまだ大勢のムスリムがインド側に残りました。現在でも一億人以上のムスリムがインドには住んでおります。そういうムスリムも平和に暮らせるのだということをインドとしては示す必要があります。
それからパキスタンの方は、ムスリム国家として出たわけですから、セキュラー国家インドの中にいるよりもムスリム国家パキスタンの中にいる方がムスリムは幸せなのだ、こういうことを国民に訴えなければなりません。すなわち、この分離独立によって、セキュラリズムとそれからイスラムというきずな、こういうものが国家のアイデンティティーになったわけです。
ですから、インドとパキスタンの間が対立いたしますと即自分の国のナショナルアイデンティティーにもはね返ってくるという非常に重要な問題になりますので、インドとパキスタンの間は単なる外交関係というような形よりは、むしろ国内問題、国内政治の延長というふうにとらえる必要があるかと思います。
そして、カシミールなんですけれども、実はパキスタンという言葉はもともと清らかな国という意味なんです。実はこのパキスタンの頭文字というのは、当時の英領インド時代のムスリムの多住州の、つまりパキスタンが国家を構想しましたときにムスリムが多住地域であったというところの頭文字をとっております。
ちなみに、Pはパンジャブ、Aはアフガンなんですが、これはアフガンとの国境地帯にございます現在パキスタンの北西辺境州というところです。これはパシュトゥン人なんですけれども、アフガン人のマジョリティーと同じ民族です。それからこのKがカシミールなわけです。それで、Iは飛ばしまして、Sはシンド、TANというのは、現在バルーチスタン州というのがございますが、そのTAN。すなわち、その頭文字と最後のところを合わせましてパキスタンという言葉ができております。したがって、パキスタンの方といたしましてはカシミールというのは最初から、独立のときから構想に入っていたということになります。
ちなみに、インドから見ますとカシミール州というのは唯一のムスリムの多住州です。ほかの州ではヒンズーがマジョリティーを占めております。ところが、唯一カシミールだけがムスリムがマジョリティーになっております。このムスリムが多住であるということだけの理由でもしパキスタンに行くのであるならば、セキュラー国家インドというもののアイデンティティーはどうなるんだろう、こういうことになってくるわけです。ですから、カシミール問題というのは単なるヒマラヤ山ろくの領土問題というよりもパキスタンとインドの両方の国家の存亡をかけた戦いになると。それほど深刻な問題だということをおわかりいただきたいと思います。
それでは、カシミールがどうしてこういう形で紛争になったのだろうか。この辺は経過が長くなりますので簡単に御説明いたしますと、もともとカシミールというのは藩王国すなわちマハラジャの支配した国でした。これはイギリス統治時代に半独立を与えられていたところで、イギリスと条約があったわけですけれども、インドとパキスタンが独立する際にすべての藩王国はインドかパキスタンかどちらかに入らなければならないということになりました。
それで、ほとんどの国は地理的な要因とかそれから宗教的な要因で帰属を決めたわけですが、カシミールの場合には藩王マハラジャがヒンズーでして、そして住民の多数がムスリムでした。そこで、どちらにつくか、あるいはマハラジャとしましては独立という夢もあったということで、帰属がなかなか決まらなかったということです。ただ、ここで一つ御注意いただきたいことは、必ずしもムスリムの住民すべてがパキスタンを望んでいたわけではないということです。すなわち、既にマハラジャに対して民主化運動が英領のころから起こっていまして、そのときに一番そこの中心になっていた人が実はネルーの親友であった、そしてインド回民会議派と非常に近い関係にあったというところからムスリムの組織はパキスタンへの帰属を望んでいなかった、こういう事情がございます。
それで、マハラジャが決断を渋っているうちにインドとパキスタンが独立いたしました。パキスタンは、当然カシミールはパキスタンに来ると思っておりましたので、それで独立後にパキスタンの一部の部族がカシミールに武力侵入いたしました。そこで、慌てたマハラジャは帰属文書に調印しまして、インドに帰属するということに決まりまして、その帰属を受けてインドが軍隊を送って、そこでパキスタン側から来た部族と戦う。そこへ最終的にはパキスタンの正規軍が介入いたしまして第一次印パ戦争ということになったわけです。この経過は年表にまとめてありますので後で御質問にお答えしたいと思います。これで国連の調停などもございました。
それから、一九六五年にはこの問題をめぐって再び第二次印パ戦争が戦われております。それから七一年には第三次印パ戦争が戦われております。これはバングラデシュの独立戦争ですけれども、やはりカシミールが戦場となりました。そして、最終的にはその第三次印パ戦争の結果結ばれたシムラ協定、一九七二年ですが、そこでカシミール問題ということははっきり言っていないんですが、二国間の係争は二国間の話し合いで平和的手段により解決する、こういう条項がシムラ協定にはございます。これがインド側の主張する根拠になっております。
ちなみに、第一次印パ戦争のときに国連決議というのが出まして、これでは、住民投票をして最終的に住民の意思でもってインドかパキスタンへの帰属を決める、こういうことになっております。ですから、これがパキスタンの主張の根拠になっておりまして、片やシムラ協定というのはインドの主張になっております。すなわち、パキスタンは国連その他の介入を経てカシミール問題を国際化して、そして最終的には国連監視のもとで住民投票をする、これがパキスタンの従来からの主張でございます。今回もその主張は変えておりません。それに対しまして、インドはあくまで二国間で話し合って問題を解決する。こういう形で、カシミール問題に関する話し合いについては入り口のところで常に対立がございます。この点を押さえていただきたいと思います。
それで、最終的に結論的なことを申しますと、まずこのカシミール問題と核問題、核実験があったのでカシミール問題というのも注目を浴びているわけですけれども、核問題を解決するためにカシミール問題の解決も一挙にしてしまおうというのはこれは無理だろうと私は個人的には考えております。すなわち、カシミール問題というのは半世紀にわたって続いているわけでして、これまでに国連あるいはその他の国々が仲介を試みたことも随分ございます。しかし、それもすべて失敗に終わりました。
ですから、カシミール問題が解決しなければ今度は核戦争になるというそこの論理の飛躍は気をつけなければいけない。すなわち、今後することというのは、核問題は核問題で別に扱い、そしてカシミール問題はやはり二国間で対話を持ってもらわないことには解決はできないだろう、しかも、これはそう簡単に短期的に解決のつく問題ではないだろうというふうに考えております。そうしますと、今度は核戦争になるのではないかという危惧が出てくるわけですけれども、この危惧に関しましては、例えば先制攻撃をしないとか、そういった形で核問題は別個に扱った方がよろしいのではないか、これが私の意見でございます。
その場合に、じゃ日本は一体何ができるかということなんですが、日本は経済制裁をいたしました。インドの新聞などを読んでおりますと、もちろんこれは織り込み済みなんですけれども、経済的には確かに打撃を受けております。それから、パキスタンの方はもっと厳しい打撃を受けているだろうというふうに考えられます。ただ、これは、経済制裁はもともと覚悟の上で行った核実験ですし、それから、例えばパキスタンのある人が言ったのは、経済は困るかもしれないけれども、生きていれば食べなければいけないけれども死んでしまったら食べる必要はないのだと、こういうことを言っておりました。すなわち、もしインドが核兵器で攻撃してきたならば死んでしまう、そうなれば経済発展もあるいは食糧の供給もそんなものは問題でないんだと、このくらいの危機感をパキスタンは持っていたということなんです。
ですから、経済援助の停止というのは長期的には確かにある程度の長期的には打撃はあるんですけれども、国民生活を圧迫するわけですけれども、それによってインドとパキスタンが核政策を変えるということはまずあり得ないだろうというふうに思います。
ですから、軍縮に関して日本が対話を促進するということは重要かと思いますが、その際に、インドとパキスタンを決して孤立化しないということが重要なことだろうと思います。インドとパキスタンが核実験をして保有国であるという宣言をしたという、これは事実としてございますので、これを無視してはなかなか核の問題というのは解決しないだろうというふうに私は考えます。その際に、経済援助の停止は武器にはならないというふうに考えております。
そして、カシミール問題は、日本が仲介というより、パキスタンは常にどこの国に対しても仲介をしてもらいたい、特に国連あたりが大々的に介入することを望んでいるわけですけれども、これにはインドがうんと言わないだろう、イエスとは言わないだろうということでございます。もしそれを強行すれば、インドをある程度敵に回すということを覚悟しなければならない。それで、片方のパーティーが同意しない場合には仲介というのは成功する確率はほとんどないので、日本が仲介してということはかなり難しいだろう、有効性は限られているだろうというふうに私は考えております。
以上でございます。
この発言だけを見る →本日は、核の専門家の方がいらっしゃいますので、私はインド・パキスタン関係、特にカシミール問題を中心にお話しさせていただこうと思います。
まずは、核実験が行われたということの要因なんですが、これを言っていますと時間がなくなりますので、簡単に項目だけ挙げさせていただきます。
インドが核実験を行ったことの対外的な要因といたしましては、世間で言われておりますように、核体制、NPT・CTBT体制に対する批判をみずから行動で示した、これが第一点でございます。それから第二点といたしましては、インドの対中国の対等の地位を要求する、そういう宿願といいますか、こういったインドの希望がございました。それから第三番目には、中国とパキスタンの核及びミサイルにおける協力関係、これに対するインドの反発、これは特にパキスタンのガウリ・ミサイルの発射実験の結果ということが言えるかと思います。これが対外的な要因でございます。
それから、対内的には、強いインドということを唱えております新政権、インド人民党が中心になっております新政権の誕生ということがまず大きな要因になるかと思います。
それから第二番目には、連立政権内部、これははっきりいたしておりませんが、現在約二十政党というくらいの連立政権になっておりますので、その中でのごたごたをおさめるために一気に強い指導力を発揮したい、これが現在のバジパイ首相の思惑であっただろうと考えられます。
それから第三番目には、核実験を通しまして、バジパイ首相及びインド人民党の政権が国民の間にナショナリズムを喚起させたい、こういうことを考えていたのだろうと思います。そのためには、核実験というのは国民の間で既にコンセンサスがインドではできておりまして、一番反対のない争点であった、そこでこの核実験に踏み切った、こういうふうに考えられます。これが核実験のインド側の要因でございます。それに対しましてパキスタンは、これはただインドへの対抗という一言に尽きるかと思います。
何でそんなにインドとパキスタンがライバルになるかということが、これは二番目の議題でございますが、インドとパキスタンの分離独立という問題、これがカシミール紛争の最も根源にある問題なんですけれども、これを考えなければいけないと思います。
インドとパキスタンは、御承知のように一九四七年にイギリスの植民地支配から分離独立したわけですけれども、その分離独立のときに新しく国境線が引かれました。これは西と東と両方でございますが、今のバングラデシュもパキスタンでございました。そこを通りまして、パキスタンサイドからはヒンズー教徒とシーク教徒が、それからインドサイドからはイスラム教徒、ムスリムが国境線を渡りまして移住したわけです。その数は、はっきりはいたしませんけれども約一千五百万人というふうに言われております。
それで、分離独立の際にあっちこっちで暴動が起きました。道を通るすれ違いざまもありますし、あるいは近所で、例えばヒンズーの居住地区だとムスリムの家を焼き討ちするとか、そういったものも含めまして、暴動が主ですが、その暴動の犠牲となった人の数が約百万人と言われております。これは想像を絶する数でして、しかも暴動というのは目の前で殺し合うわけですので、そういう形で百万人が犠牲になったというその後遺症が現在でも残っている。特に北インドあるいはパキスタンにいる人たちは近親者あるいは知人、そういった人のだれかが殺されているといったような状況がございます。それが現在の国民感情としてインドとパキスタンの間の問題になっております。
それから、分離独立をいたしましたが、その際に、パキスタンはイスラム教徒の国、すなわちムスリムの国としてヒンズーが支配するところにはいられないということで国を出て分離独立いたしました。それに対抗いたしまして、インドの方は、別にヒンズーの国家をつくるわけではない、政教分離国家、セキュラー国家といいますけれども、政教分離の国家、宗教、信仰の自由を認める国家をつくるのだと、こういう形でセキュラー国家インドとムスリム国家パキスタンが誕生いたしました。
この誕生というのは、単にそういう国であるという以上の重みを持っております。
まずはインドの方では、ムスリムが大量にパキスタンに出ていったにもかかわらずまだ大勢のムスリムがインド側に残りました。現在でも一億人以上のムスリムがインドには住んでおります。そういうムスリムも平和に暮らせるのだということをインドとしては示す必要があります。
それからパキスタンの方は、ムスリム国家として出たわけですから、セキュラー国家インドの中にいるよりもムスリム国家パキスタンの中にいる方がムスリムは幸せなのだ、こういうことを国民に訴えなければなりません。すなわち、この分離独立によって、セキュラリズムとそれからイスラムというきずな、こういうものが国家のアイデンティティーになったわけです。
ですから、インドとパキスタンの間が対立いたしますと即自分の国のナショナルアイデンティティーにもはね返ってくるという非常に重要な問題になりますので、インドとパキスタンの間は単なる外交関係というような形よりは、むしろ国内問題、国内政治の延長というふうにとらえる必要があるかと思います。
そして、カシミールなんですけれども、実はパキスタンという言葉はもともと清らかな国という意味なんです。実はこのパキスタンの頭文字というのは、当時の英領インド時代のムスリムの多住州の、つまりパキスタンが国家を構想しましたときにムスリムが多住地域であったというところの頭文字をとっております。
ちなみに、Pはパンジャブ、Aはアフガンなんですが、これはアフガンとの国境地帯にございます現在パキスタンの北西辺境州というところです。これはパシュトゥン人なんですけれども、アフガン人のマジョリティーと同じ民族です。それからこのKがカシミールなわけです。それで、Iは飛ばしまして、Sはシンド、TANというのは、現在バルーチスタン州というのがございますが、そのTAN。すなわち、その頭文字と最後のところを合わせましてパキスタンという言葉ができております。したがって、パキスタンの方といたしましてはカシミールというのは最初から、独立のときから構想に入っていたということになります。
ちなみに、インドから見ますとカシミール州というのは唯一のムスリムの多住州です。ほかの州ではヒンズーがマジョリティーを占めております。ところが、唯一カシミールだけがムスリムがマジョリティーになっております。このムスリムが多住であるということだけの理由でもしパキスタンに行くのであるならば、セキュラー国家インドというもののアイデンティティーはどうなるんだろう、こういうことになってくるわけです。ですから、カシミール問題というのは単なるヒマラヤ山ろくの領土問題というよりもパキスタンとインドの両方の国家の存亡をかけた戦いになると。それほど深刻な問題だということをおわかりいただきたいと思います。
それでは、カシミールがどうしてこういう形で紛争になったのだろうか。この辺は経過が長くなりますので簡単に御説明いたしますと、もともとカシミールというのは藩王国すなわちマハラジャの支配した国でした。これはイギリス統治時代に半独立を与えられていたところで、イギリスと条約があったわけですけれども、インドとパキスタンが独立する際にすべての藩王国はインドかパキスタンかどちらかに入らなければならないということになりました。
それで、ほとんどの国は地理的な要因とかそれから宗教的な要因で帰属を決めたわけですが、カシミールの場合には藩王マハラジャがヒンズーでして、そして住民の多数がムスリムでした。そこで、どちらにつくか、あるいはマハラジャとしましては独立という夢もあったということで、帰属がなかなか決まらなかったということです。ただ、ここで一つ御注意いただきたいことは、必ずしもムスリムの住民すべてがパキスタンを望んでいたわけではないということです。すなわち、既にマハラジャに対して民主化運動が英領のころから起こっていまして、そのときに一番そこの中心になっていた人が実はネルーの親友であった、そしてインド回民会議派と非常に近い関係にあったというところからムスリムの組織はパキスタンへの帰属を望んでいなかった、こういう事情がございます。
それで、マハラジャが決断を渋っているうちにインドとパキスタンが独立いたしました。パキスタンは、当然カシミールはパキスタンに来ると思っておりましたので、それで独立後にパキスタンの一部の部族がカシミールに武力侵入いたしました。そこで、慌てたマハラジャは帰属文書に調印しまして、インドに帰属するということに決まりまして、その帰属を受けてインドが軍隊を送って、そこでパキスタン側から来た部族と戦う。そこへ最終的にはパキスタンの正規軍が介入いたしまして第一次印パ戦争ということになったわけです。この経過は年表にまとめてありますので後で御質問にお答えしたいと思います。これで国連の調停などもございました。
それから、一九六五年にはこの問題をめぐって再び第二次印パ戦争が戦われております。それから七一年には第三次印パ戦争が戦われております。これはバングラデシュの独立戦争ですけれども、やはりカシミールが戦場となりました。そして、最終的にはその第三次印パ戦争の結果結ばれたシムラ協定、一九七二年ですが、そこでカシミール問題ということははっきり言っていないんですが、二国間の係争は二国間の話し合いで平和的手段により解決する、こういう条項がシムラ協定にはございます。これがインド側の主張する根拠になっております。
ちなみに、第一次印パ戦争のときに国連決議というのが出まして、これでは、住民投票をして最終的に住民の意思でもってインドかパキスタンへの帰属を決める、こういうことになっております。ですから、これがパキスタンの主張の根拠になっておりまして、片やシムラ協定というのはインドの主張になっております。すなわち、パキスタンは国連その他の介入を経てカシミール問題を国際化して、そして最終的には国連監視のもとで住民投票をする、これがパキスタンの従来からの主張でございます。今回もその主張は変えておりません。それに対しまして、インドはあくまで二国間で話し合って問題を解決する。こういう形で、カシミール問題に関する話し合いについては入り口のところで常に対立がございます。この点を押さえていただきたいと思います。
それで、最終的に結論的なことを申しますと、まずこのカシミール問題と核問題、核実験があったのでカシミール問題というのも注目を浴びているわけですけれども、核問題を解決するためにカシミール問題の解決も一挙にしてしまおうというのはこれは無理だろうと私は個人的には考えております。すなわち、カシミール問題というのは半世紀にわたって続いているわけでして、これまでに国連あるいはその他の国々が仲介を試みたことも随分ございます。しかし、それもすべて失敗に終わりました。
ですから、カシミール問題が解決しなければ今度は核戦争になるというそこの論理の飛躍は気をつけなければいけない。すなわち、今後することというのは、核問題は核問題で別に扱い、そしてカシミール問題はやはり二国間で対話を持ってもらわないことには解決はできないだろう、しかも、これはそう簡単に短期的に解決のつく問題ではないだろうというふうに考えております。そうしますと、今度は核戦争になるのではないかという危惧が出てくるわけですけれども、この危惧に関しましては、例えば先制攻撃をしないとか、そういった形で核問題は別個に扱った方がよろしいのではないか、これが私の意見でございます。
その場合に、じゃ日本は一体何ができるかということなんですが、日本は経済制裁をいたしました。インドの新聞などを読んでおりますと、もちろんこれは織り込み済みなんですけれども、経済的には確かに打撃を受けております。それから、パキスタンの方はもっと厳しい打撃を受けているだろうというふうに考えられます。ただ、これは、経済制裁はもともと覚悟の上で行った核実験ですし、それから、例えばパキスタンのある人が言ったのは、経済は困るかもしれないけれども、生きていれば食べなければいけないけれども死んでしまったら食べる必要はないのだと、こういうことを言っておりました。すなわち、もしインドが核兵器で攻撃してきたならば死んでしまう、そうなれば経済発展もあるいは食糧の供給もそんなものは問題でないんだと、このくらいの危機感をパキスタンは持っていたということなんです。
ですから、経済援助の停止というのは長期的には確かにある程度の長期的には打撃はあるんですけれども、国民生活を圧迫するわけですけれども、それによってインドとパキスタンが核政策を変えるということはまずあり得ないだろうというふうに思います。
ですから、軍縮に関して日本が対話を促進するということは重要かと思いますが、その際に、インドとパキスタンを決して孤立化しないということが重要なことだろうと思います。インドとパキスタンが核実験をして保有国であるという宣言をしたという、これは事実としてございますので、これを無視してはなかなか核の問題というのは解決しないだろうというふうに私は考えます。その際に、経済援助の停止は武器にはならないというふうに考えております。
そして、カシミール問題は、日本が仲介というより、パキスタンは常にどこの国に対しても仲介をしてもらいたい、特に国連あたりが大々的に介入することを望んでいるわけですけれども、これにはインドがうんと言わないだろう、イエスとは言わないだろうということでございます。もしそれを強行すれば、インドをある程度敵に回すということを覚悟しなければならない。それで、片方のパーティーが同意しない場合には仲介というのは成功する確率はほとんどないので、日本が仲介してということはかなり難しいだろう、有効性は限られているだろうというふうに私は考えております。
以上でございます。
及
森
森本敏#7
○参考人(森本敏君) 外交・防衛委員会に参考人としてお招きいただき大変光栄に存じます。またお礼も申し上げたいと思います。
私は、本件、インド、パキスタンの核問題を特に安全保障上の側面から申し述べてみたいと思います。とりわけ我が国として安全保障上の見地からいかなる対応と措置があり得るのかということに焦点を絞ってお話をしたいのですが、その前提条件として、この問題をどう認識するかという基本的な考え方をまず申し述べ、しかる後に、我が国として対応すべき基本的な考え方について申し述べたいと思います。
広瀬教授の御指摘のとおり、今回のインドとパキスタンの核開発は、ともに国内政治上の要因と国家の安全保障上の要因が含まれているという指摘どおりであると思います。
国内政治上の要因については、広瀬先生がるる申し述べられましたので私は省略しますが、安全保障上の要因から見ますと、明らかにインドは、広瀬先生の御指摘のとおり、NPT体制の不平等性というものに対する批判として行ったものであり、さらに軍事的に言えば、従来から中国の核開発計画に大変大きな脅威を受けていたこと及びその中国が隣国パキスタンに核やミサイルの技術を供与していたことに対する反発として核開発を進めたというふうに考えられます。そしてパキスタンは、このインドの核能力に対応することをねらいとして行ったものというふうに考えられます。
しかしながら、ここで果たしてインドはその本来のねらいが今回の核実験や従来から進めている核開発計画によってどれだけ達成できたのかということを考えてみますと、なかなか判断が難しいところであると考えます。
特に、NPTが不平等であるということは、そもそも一九七〇年にこの条約が署名され発効されたときからわかっていたことであり、現在のNPT体制とは、そもそも五つの核兵器国のみの独占によるという不平等性はそれはそれとして、それよりもその他の国が核兵器国になること、すなわち核拡散が進むということを防ぐことの方がむしろ重要である。つまり、最善の策ではないが次善の策であるという認識に基づいて締結されたものであり、インドが今さらのごとくNPTが不平等であると言ってみても、そのこと自体余り説得力がないし、しかも核実験によってこの不平等性が是正されたのかということになりますと、いささか疑問とするところであります。
もちろん、中国のパキスタンに対する核やミサイルの技術協力がインドの核実験によって阻止あるいは防止できたとも思えず、結局、インドの言い分はかなり言いわけじみたものであるというふうに考えられます。
ただ、その中で最も率直に述べているのは、明らかにインドが従来から中国の核開発計画に大変大きな国家安全保障上の脅威を受けていた、これに対して、大国インドがどうしてもそれに対抗するに必要な核抑止力を持ちたいとして今回の核実験並びに核開発計画に進んだというのであれば、それなりにそこは理解できるということだろうと思います。
さて、この両国の核開発計画によってNPT体制が崩壊したあるいは崩壊していないという議論は、そもそも余り意味がない議論であると思います。しかしながら、本来NPT体制は、先ほど申し述べたように、六〇年代当初に当時の核兵器国であった五つのたまたま国連の常任理事国のみに核兵器国としての地位をいわばとどめるという体制をすべての国が認め合ってつくった体制であります。今日、この五つの国以外に核兵器を保有したという宣言を行った国が厳然として出現したという事実を踏まえれば、現在まで国際社会が堅持してきたNPT体制は今や根本的な見直しを迫られていると判断せざるを得ないと思います。
特に、インド、パキスタン両国が言葉による説得で核兵器国としての地位といいますか、あるいは持っておる核兵器を放棄したり廃棄したりすることは、現時点ではほとんど考えにくいわけで、しからばNPT体制の中に入れるのかというと、NPT体制の中で核兵器国としてこれを認知するということは到底できない話であります。同時に、それでは核兵器国でないのかというと、非核兵器国でもないというこの状態をいかようにして問題解決するかということが最も難問であると思います。
総理大臣の御発言のように、インドとパキスタンをNPT体制のもとで核兵器国として特別なステータスを与えることはできないというのはまさにそのとおりであります。しかし、むしろインドとパキスタンが核開発を進めたことによってかえって強い核兵器の管理体制に組み入れられ、核開発を進めたことによって得られる利点をむしろ失うような立場に追い込む方法がないものかと思うわけです。
すなわち、この両国に核兵器国でもないが非核兵器国でもないステータスを与える。例えば大変有名な会員制のゴルフクラブに入ってみた。しかし、入ってはみたものの会費もべらぼうに高く、かつ自分の資産も丸裸になって公開させられ、しかも十分にプレーもさせてくれない。ハンディキャップも低い。プレーのマナーも悪いとことごとく言われて、これだったら入らなかった方がよかったと後で思うような立場にどうやったら追い込めるのかということが、これからの人類の知恵というものなのではないかと考えるわけです。
いずれにしろ重要なことは、繰り返して申し上げますが、NPT体制が崩壊しているあるいは崩壊していないとかという議論をすることは余り意味がなく、今までのNPT体制をもう一回根本に返って見直してみる必要があるのではないかと考えます。
CTBTにつきましては、CTBTの中にインドとパキスタンを速やかに招き入れる必要があるという立場を米国や日本の政府はとっています。しかし、よく考えてみると、CTBTという枠組みの外で核実験に成功して核兵器国としての宣言をした国をCTBTの中に招き入れなければならないということは、CTBTの持っておる一つの内部矛盾であります。
例えばこの部屋で、みんなが暴力を振るわないということを約束し合って署名捺印するときに、ある人が部屋の外にある人を連れ出して思い切り暴力を振るって、私はもうすべて気が済んだ、これでもうすっきりしました、それでは入りましょうといって部屋の中に入ってきて署名捺印する。これを歓迎することが果たして正しい道なのかどうかということは、大変私は疑問に思うわけです。しかもその国を入れないとこのCTBTが発効しないということは、そもそもCTBTの中に大きな矛盾というものがあったのではないかと思うわけです。
今の状態ではCTBTに批准する国もこれ以上ふえそうになく、かつ厳然としてCTBTが発効しない状況が続く限り、CTBTの外で核実験をすることが国際法上違法でないという状況が続くということは決して望ましくなく、私はCTBTというものを速やかに発効させるよう、CTBTそのものを改正するための知恵というものを出す必要があるのではないかと考えます。
カットオフ条約につきましては、もちろんこれを進めることが重要と考えますが、それ以外に今回、例えばパキスタンの核実験のデータなどがイスラム教国あるいは北朝鮮などに移転されるというふうなことがあったのでは、これはCTBTを幾ら発効させても実効上の意味がなくしたがって、このような事態に至った今、核実験データの移転を禁止する条約というものも早急に考えてみないといけないのではないかと考えます。
さて最後に、核軍縮というものを進めるためには五つの核兵器国、特に中国の協力が不可欠であります。二十一世紀中ごろにはインドは中国の人口を抜き十五億を超える人口になり、アジアで中国とインドという計三十億の人口を抱える大国が今や核兵器国になったという現実を踏まえて、我々は、アジアと我が国の安全保障を考えるときに中国とインドの核の関係をどう考えるかということが極めて重要な問題であるというふうに思わざるを得ないわけです。
以上の認識に立って、私は二、三点提言を申し述べたいと思います。
第一は、総理の先ほどの御発言のごとく、このような状況に至った今、NPTやCTBT体制を含む核軍縮や核軍備管理、あるいは核抑止の理論のあり方について再検討を行うための国際会議を開く必要があり、そのことは、ここに御同席の明石所長の御尽力によって、今後日本がこの種のプログラムやプロジェクトを進めることによって国際社会全体の専門家の知恵を結集し、今後行われる国連総会あるいはジュネーブの軍縮会議、あるいは今後行われる軍縮特別総会などに具体的な提言をまとめていく必要があると思います。
さらに御案内のとおり、アメリカはことしの春先から、一九九四年に既に明らかにしていたニュークリア・ポスチャー・レビューという核体制の見直し政策をさらに見直して、冷戦後の核抑止理論をどのようにして再構築するかという作業を進めていた矢先に今回のインドとパキスタンの核実験が行われたことにかんがみれば、アメリカの核政策を修正するまでに我が国が特に緊密な日米協議を進めることが必要であると考えます。
さらに、先ほど申し上げましたように、インドの核開発は結局のところ中国の核開発計画というものに大きく依拠しているということを前提に考えれば、この問題に関する日中協議も特別に必要であると考えます。
さらにARFにおいては、特にパキスタンや北朝鮮を今後ARFのメンバーあるいはオブザーバーとして加えることによって、これらの問題すなわち核問題や南西アジアの地域問題をARFの議題としていくということも必要であると思います。
委員長、最後に私は特に本委員会で申し上げたいことがあります。それは、我が国のTMD計画についてです。
間もなく日米両国はTMDの共同技術研究を開始するとも伝えられておりますが、この研究結果の結論を速やかに出すことによって我が国としてはTMD計画を促進する必要があると思います。
しかるに、このTMD計画については中国が極めて強い反対をしていることは御案内のとおりであります。私は先週、カナダにおける国際会議に出席しておりましたが、中国外務省の担当官が日本のTMD計画について、これはアジアにおける軍拡競争を再燃させ、そしてアメリカのシステムの中にTMDを組み入れ、防御兵器と言いながら攻撃兵器に使うこのようなプログラムはアジアを極めて不安定にするという、やや事実認識において誤りのある極めて強い批判を我が方にしてきたわけですが、このことは今に限ったことではなく、過去二年にわたって国際会議でことごとくこの種の経験をしております。
中国の本音は、日本のTMD配備が中国のIRBMという中距離弾道ミサイルを無力化させ、さらに日本がTMDを配備しやがて台湾がTMDを配備すれば、アメリカの早期警戒システムの中にアメリカ、日本、台湾という防衛システムが組み入れられることは中国にとって受け入れざるものであると考えているのではないかと思います。そのことは、日米防衛協力のガイドラインや周辺事態法とは次元の違う大きな懸念を中国が持っていることは明らかであると思います。
しからば、TMDをそれほど中国が懸念しているということなのであれば、それはTMDの配備が効果があるということを意味するものであり、我が国としてはぜひともこれを進める必要がある。
といいますのは、一九七九年、当時NATOは二重決定というものを行って、ソ連のSS20の脅威に対抗するために、アメリカがパーシングⅡと地上発射の巡航ミサイルを欧州に配備することによってこれに対抗しようとしたわけです。もちろんソ連は、一九八一年レーガン大統領第一期政権のときの米ソの軍備管理交渉からINFを配備するときにウオークアウトして、後にこの交渉に返ってきて、結果として一九八七年にグローバルゼロが達成できた。この経験をアジアに持ち込んでみた場合、日本としては、TMDの配備を決定し、このことをてこに中国を米国やロシアのみならず五つの核保有国の軍備管理交渉に招き入れる必要があるのではないかと思います。
このことは、日本や台湾のTMD配備を中止することの見返りに中国が持っておるIRBMのゼロ配備というものを求める大変大きなてこになり、もしそれが達成できればインドとしてはこれ以上の核開発を進める必要がないという意味において、大変大きな言いわけあるいはメンツを与えることができる。したがって、TMDの計画というのは、我が国の安全保障のみならずグローバルな軍備管理交渉のてことなり得、同時に南西アジア、特に中国とインドの核開発の抑制に大きな貢献をすることができると考えます。もし、それができなくても、最低限我が国の安全保障に貢献するということになると思います。
したがって、我が国としては、これからTMDの配備計画というものにグローバルな戦略的思考を持ち込んで進めていくという必要があるのではないかと思います。
以上が私の存念でございます。
委員長、ありがとうございました。
この発言だけを見る →私は、本件、インド、パキスタンの核問題を特に安全保障上の側面から申し述べてみたいと思います。とりわけ我が国として安全保障上の見地からいかなる対応と措置があり得るのかということに焦点を絞ってお話をしたいのですが、その前提条件として、この問題をどう認識するかという基本的な考え方をまず申し述べ、しかる後に、我が国として対応すべき基本的な考え方について申し述べたいと思います。
広瀬教授の御指摘のとおり、今回のインドとパキスタンの核開発は、ともに国内政治上の要因と国家の安全保障上の要因が含まれているという指摘どおりであると思います。
国内政治上の要因については、広瀬先生がるる申し述べられましたので私は省略しますが、安全保障上の要因から見ますと、明らかにインドは、広瀬先生の御指摘のとおり、NPT体制の不平等性というものに対する批判として行ったものであり、さらに軍事的に言えば、従来から中国の核開発計画に大変大きな脅威を受けていたこと及びその中国が隣国パキスタンに核やミサイルの技術を供与していたことに対する反発として核開発を進めたというふうに考えられます。そしてパキスタンは、このインドの核能力に対応することをねらいとして行ったものというふうに考えられます。
しかしながら、ここで果たしてインドはその本来のねらいが今回の核実験や従来から進めている核開発計画によってどれだけ達成できたのかということを考えてみますと、なかなか判断が難しいところであると考えます。
特に、NPTが不平等であるということは、そもそも一九七〇年にこの条約が署名され発効されたときからわかっていたことであり、現在のNPT体制とは、そもそも五つの核兵器国のみの独占によるという不平等性はそれはそれとして、それよりもその他の国が核兵器国になること、すなわち核拡散が進むということを防ぐことの方がむしろ重要である。つまり、最善の策ではないが次善の策であるという認識に基づいて締結されたものであり、インドが今さらのごとくNPTが不平等であると言ってみても、そのこと自体余り説得力がないし、しかも核実験によってこの不平等性が是正されたのかということになりますと、いささか疑問とするところであります。
もちろん、中国のパキスタンに対する核やミサイルの技術協力がインドの核実験によって阻止あるいは防止できたとも思えず、結局、インドの言い分はかなり言いわけじみたものであるというふうに考えられます。
ただ、その中で最も率直に述べているのは、明らかにインドが従来から中国の核開発計画に大変大きな国家安全保障上の脅威を受けていた、これに対して、大国インドがどうしてもそれに対抗するに必要な核抑止力を持ちたいとして今回の核実験並びに核開発計画に進んだというのであれば、それなりにそこは理解できるということだろうと思います。
さて、この両国の核開発計画によってNPT体制が崩壊したあるいは崩壊していないという議論は、そもそも余り意味がない議論であると思います。しかしながら、本来NPT体制は、先ほど申し述べたように、六〇年代当初に当時の核兵器国であった五つのたまたま国連の常任理事国のみに核兵器国としての地位をいわばとどめるという体制をすべての国が認め合ってつくった体制であります。今日、この五つの国以外に核兵器を保有したという宣言を行った国が厳然として出現したという事実を踏まえれば、現在まで国際社会が堅持してきたNPT体制は今や根本的な見直しを迫られていると判断せざるを得ないと思います。
特に、インド、パキスタン両国が言葉による説得で核兵器国としての地位といいますか、あるいは持っておる核兵器を放棄したり廃棄したりすることは、現時点ではほとんど考えにくいわけで、しからばNPT体制の中に入れるのかというと、NPT体制の中で核兵器国としてこれを認知するということは到底できない話であります。同時に、それでは核兵器国でないのかというと、非核兵器国でもないというこの状態をいかようにして問題解決するかということが最も難問であると思います。
総理大臣の御発言のように、インドとパキスタンをNPT体制のもとで核兵器国として特別なステータスを与えることはできないというのはまさにそのとおりであります。しかし、むしろインドとパキスタンが核開発を進めたことによってかえって強い核兵器の管理体制に組み入れられ、核開発を進めたことによって得られる利点をむしろ失うような立場に追い込む方法がないものかと思うわけです。
すなわち、この両国に核兵器国でもないが非核兵器国でもないステータスを与える。例えば大変有名な会員制のゴルフクラブに入ってみた。しかし、入ってはみたものの会費もべらぼうに高く、かつ自分の資産も丸裸になって公開させられ、しかも十分にプレーもさせてくれない。ハンディキャップも低い。プレーのマナーも悪いとことごとく言われて、これだったら入らなかった方がよかったと後で思うような立場にどうやったら追い込めるのかということが、これからの人類の知恵というものなのではないかと考えるわけです。
いずれにしろ重要なことは、繰り返して申し上げますが、NPT体制が崩壊しているあるいは崩壊していないとかという議論をすることは余り意味がなく、今までのNPT体制をもう一回根本に返って見直してみる必要があるのではないかと考えます。
CTBTにつきましては、CTBTの中にインドとパキスタンを速やかに招き入れる必要があるという立場を米国や日本の政府はとっています。しかし、よく考えてみると、CTBTという枠組みの外で核実験に成功して核兵器国としての宣言をした国をCTBTの中に招き入れなければならないということは、CTBTの持っておる一つの内部矛盾であります。
例えばこの部屋で、みんなが暴力を振るわないということを約束し合って署名捺印するときに、ある人が部屋の外にある人を連れ出して思い切り暴力を振るって、私はもうすべて気が済んだ、これでもうすっきりしました、それでは入りましょうといって部屋の中に入ってきて署名捺印する。これを歓迎することが果たして正しい道なのかどうかということは、大変私は疑問に思うわけです。しかもその国を入れないとこのCTBTが発効しないということは、そもそもCTBTの中に大きな矛盾というものがあったのではないかと思うわけです。
今の状態ではCTBTに批准する国もこれ以上ふえそうになく、かつ厳然としてCTBTが発効しない状況が続く限り、CTBTの外で核実験をすることが国際法上違法でないという状況が続くということは決して望ましくなく、私はCTBTというものを速やかに発効させるよう、CTBTそのものを改正するための知恵というものを出す必要があるのではないかと考えます。
カットオフ条約につきましては、もちろんこれを進めることが重要と考えますが、それ以外に今回、例えばパキスタンの核実験のデータなどがイスラム教国あるいは北朝鮮などに移転されるというふうなことがあったのでは、これはCTBTを幾ら発効させても実効上の意味がなくしたがって、このような事態に至った今、核実験データの移転を禁止する条約というものも早急に考えてみないといけないのではないかと考えます。
さて最後に、核軍縮というものを進めるためには五つの核兵器国、特に中国の協力が不可欠であります。二十一世紀中ごろにはインドは中国の人口を抜き十五億を超える人口になり、アジアで中国とインドという計三十億の人口を抱える大国が今や核兵器国になったという現実を踏まえて、我々は、アジアと我が国の安全保障を考えるときに中国とインドの核の関係をどう考えるかということが極めて重要な問題であるというふうに思わざるを得ないわけです。
以上の認識に立って、私は二、三点提言を申し述べたいと思います。
第一は、総理の先ほどの御発言のごとく、このような状況に至った今、NPTやCTBT体制を含む核軍縮や核軍備管理、あるいは核抑止の理論のあり方について再検討を行うための国際会議を開く必要があり、そのことは、ここに御同席の明石所長の御尽力によって、今後日本がこの種のプログラムやプロジェクトを進めることによって国際社会全体の専門家の知恵を結集し、今後行われる国連総会あるいはジュネーブの軍縮会議、あるいは今後行われる軍縮特別総会などに具体的な提言をまとめていく必要があると思います。
さらに御案内のとおり、アメリカはことしの春先から、一九九四年に既に明らかにしていたニュークリア・ポスチャー・レビューという核体制の見直し政策をさらに見直して、冷戦後の核抑止理論をどのようにして再構築するかという作業を進めていた矢先に今回のインドとパキスタンの核実験が行われたことにかんがみれば、アメリカの核政策を修正するまでに我が国が特に緊密な日米協議を進めることが必要であると考えます。
さらに、先ほど申し上げましたように、インドの核開発は結局のところ中国の核開発計画というものに大きく依拠しているということを前提に考えれば、この問題に関する日中協議も特別に必要であると考えます。
さらにARFにおいては、特にパキスタンや北朝鮮を今後ARFのメンバーあるいはオブザーバーとして加えることによって、これらの問題すなわち核問題や南西アジアの地域問題をARFの議題としていくということも必要であると思います。
委員長、最後に私は特に本委員会で申し上げたいことがあります。それは、我が国のTMD計画についてです。
間もなく日米両国はTMDの共同技術研究を開始するとも伝えられておりますが、この研究結果の結論を速やかに出すことによって我が国としてはTMD計画を促進する必要があると思います。
しかるに、このTMD計画については中国が極めて強い反対をしていることは御案内のとおりであります。私は先週、カナダにおける国際会議に出席しておりましたが、中国外務省の担当官が日本のTMD計画について、これはアジアにおける軍拡競争を再燃させ、そしてアメリカのシステムの中にTMDを組み入れ、防御兵器と言いながら攻撃兵器に使うこのようなプログラムはアジアを極めて不安定にするという、やや事実認識において誤りのある極めて強い批判を我が方にしてきたわけですが、このことは今に限ったことではなく、過去二年にわたって国際会議でことごとくこの種の経験をしております。
中国の本音は、日本のTMD配備が中国のIRBMという中距離弾道ミサイルを無力化させ、さらに日本がTMDを配備しやがて台湾がTMDを配備すれば、アメリカの早期警戒システムの中にアメリカ、日本、台湾という防衛システムが組み入れられることは中国にとって受け入れざるものであると考えているのではないかと思います。そのことは、日米防衛協力のガイドラインや周辺事態法とは次元の違う大きな懸念を中国が持っていることは明らかであると思います。
しからば、TMDをそれほど中国が懸念しているということなのであれば、それはTMDの配備が効果があるということを意味するものであり、我が国としてはぜひともこれを進める必要がある。
といいますのは、一九七九年、当時NATOは二重決定というものを行って、ソ連のSS20の脅威に対抗するために、アメリカがパーシングⅡと地上発射の巡航ミサイルを欧州に配備することによってこれに対抗しようとしたわけです。もちろんソ連は、一九八一年レーガン大統領第一期政権のときの米ソの軍備管理交渉からINFを配備するときにウオークアウトして、後にこの交渉に返ってきて、結果として一九八七年にグローバルゼロが達成できた。この経験をアジアに持ち込んでみた場合、日本としては、TMDの配備を決定し、このことをてこに中国を米国やロシアのみならず五つの核保有国の軍備管理交渉に招き入れる必要があるのではないかと思います。
このことは、日本や台湾のTMD配備を中止することの見返りに中国が持っておるIRBMのゼロ配備というものを求める大変大きなてこになり、もしそれが達成できればインドとしてはこれ以上の核開発を進める必要がないという意味において、大変大きな言いわけあるいはメンツを与えることができる。したがって、TMDの計画というのは、我が国の安全保障のみならずグローバルな軍備管理交渉のてことなり得、同時に南西アジア、特に中国とインドの核開発の抑制に大きな貢献をすることができると考えます。もし、それができなくても、最低限我が国の安全保障に貢献するということになると思います。
したがって、我が国としては、これからTMDの配備計画というものにグローバルな戦略的思考を持ち込んで進めていくという必要があるのではないかと思います。
以上が私の存念でございます。
委員長、ありがとうございました。
及
堂
堂ノ脇光朗#9
○参考人(堂ノ脇光朗君) 本日は、参議院の外交・防衛委員会に参考人としてお招きいただきまして、大変光栄に存じております。
まず最初に、自己紹介がてら簡単に私の経歴から申しますと、私は、平成元年にジュネーブの軍縮会議の日本政府代表大使に任命されまして以来今日に至るまで、政府代表として、あるいは国連事務総長の軍縮諮問委員会委員としまして、そしてまた最近ではそれに加えて国連の小火器政府専門家会合の議長としまして、絶えずといいますか空白期間なしに数多くの軍縮関係の国際会議に出席してきておる次第でございます。
本日は、そうした経験を踏まえまして、私が肌で感じてきております日本の軍縮分野での役割に対する国際社会の期待といったものを中心にお話をさせてもらいたいと思います。
このほどインド、パキスタンの核実験を契機としまして、我が国がこれまで核廃絶に向けて行ってきた努力があたかも失敗に終わったかのような論調が見られるわけでございます。
我が国は、今日まで唯一の被爆国として世界に核廃絶を訴えてきたのでございますけれども、世界に共感を呼ぶはずの唯一の被爆国という我が国の特殊性が、かえって特殊な国が言っているのだからとして共感を呼ばない理由となっているのではないか、そういった議論まで行われている状況でございます。しかし、こうした悲観的な見方は当たっていないのでございまして、正しくもないと考える次第でございます。
実際のところ、第二次大戦後、平和憲法のもとで再出発しました我が国は、日米安保条約上の同盟国である米国を含めましてすべての核兵器国に対して一貫して核廃絶を訴えてきたわけでございます。特に、核実験に関しましては、旧ソ連とか中国の核実験だけではなくて、米国の核実験に対しましても、昭和二十九年の第五福竜丸のビキニ環礁での被爆事件もございましたし、その都度何百回となく抗議を行ってきた、そういう歴史を持っているわけでございます。また、我が国は、よく知られていますとおり、非核三原則を堅持してきているのでございまして、沖縄返還に際しましてもあくまでも核抜き返還ということを主張して、安易な妥協をすることはせず、米国もこうした我が国の国民感情に配慮せざるを得なかった、そういう経緯もあるわけでございます。
要するに、我が国は唯一の核被爆国として、アメリカを含むすべての核兵器国に対して一貫して核軍縮を求めてきたのでございまして、それゆえにこそ我が国の主張は、冷戦時代を通じまして、アメリカを含む西側同盟諸国の間ではもちろんでございますが、第三世界の非同盟諸国においても国際社会の良識を代表する声であるとして高く評価されてきたわけでございます。核軍縮に関する提案でございますと、例えば西側陣営から出されたものに対しては東側陣営が反対し非同盟諸国側も賛成しないとか、あるいは逆に非同盟諸国から出された提案には東側陣営は賛成しても西側陣営が賛成しない、そういう状況にございまして、西側の一員とはいえ日本がイニシアチブをとりますと皆が耳を傾ける、そういう場面を私は何度も体験してまいりましたけれども、何度となく繰り返されてきているのが実情でございます。
冷戦後は、大まかに言いますと、核兵器諸国対非核兵器諸国の対立、そういった図式になっているわけでございますが、そのような冷戦後の今日におきましても、核軍縮分野での我が国が国際社会の良心とかあるいは良識を代表して主導的な役割を果たす、そういうことに対する国際社会の期待は高まりこそすれ、減少することにはなっていないというふうに考える次第でございます。
これは、先ほど総理も触れられました、先週土曜日に我が国などが提案して採択されるに至りました安保理決議千百七十一号の成立の経過を見ても明らかなのでございます。核不拡散体制の危機が叫ばれておりますこうした時期にこそ、我が国は自信を持って臆せず発言していくべきであるというふうに考えるわけでございます。
次に、我が国は、核軍縮に関しては従来から幅広い活動を行ってきておりまして、インド、パキスタンに対する働きかけも見過ごしてきてはいないわけでございます。
例えば、平成四年に、当時のインドのラオ首相、それからパキスタンのシャリフ首相が来日されました際に、当時の宮澤総理が日印・日パキスタン不拡散協議を開始することを申し入れまして、平成五年の初めからこれが開始されるに至ったのでございます。その第一回の協議に日本政府を代表して出かけてまいりましたのが、当時外務省で軍縮大使をしておりました私なのでございます。
この第一回協議の席では、インド、パキスタン両国とも核兵器開発能力は持っているけれども核兵器は持っていないなどと述べておりましたので、こちらの方からは、NPT条約に加盟すべきであること、少なくとも核疑惑を払拭するために個別具体的な行動で透明性を高めるべきであるなど、いろいろな提案を行いまして鋭意説得を試みたわけでございます。我が国やその他の諸国によるこのような説得が続けられてきたにもかかわらず、今回両国が核実験を行うに至ったことはまことに遺憾なことでございます。
既に行われたことの動機を今さらせんさくしてみても余り意味がないかもしれませんが、パキスタンは以前から、インドがNPT条約に加盟するならばパキスタンもこれに加盟するという立場をとってきておりました。そしてまた最近ではCTBT条約にも署名したのでございます。こうしたことから見まして、インドさえ実験を行わなかったならばパキスタンによる実験もなかったであろうと悔やまれる次第でございます。
問題は、今後我が国として何をするべきかということでございます。
我が国は、今回のインド、パキスタン両国による核実験はNPT条約を中心とする核不拡散体制に対する極めて無謀でかつ危険な挑戦である、そういう認識の上に立ちまして、ほかに追随するような国が出てこないようにするために国際世論を結集して、断固としてこれを非難するということにまず力を注ぐべきだろうと考えるわけでございます。インド、パキスタンを核兵器国として認めるということなどは犯罪者に御褒美を出すようなものでございまして、核兵器国増大への道を開き、NPT条約を中心とする核不拡散体制を崩壊に導くことにほかならないと考える次第でございます。
NPT条約は、国際社会の長年の努力の結果、インド、パキスタンなどのごく少数の国を除く百八十六もの諸国が加盟するに至っている極めて重要で国際規範的な条約なのでございます。そして、我が国は、核軍縮に関しては国際社会の良心を代表する国としてこの不拡散体制の強化発展のために多くのイニシアチブをとり貢献をしてきたという実績もあるわけでございます。そうした意味で、先週土曜日に安保理決議を我が国が提案して、全会一致で成立させたことの意義は決して小さくないと考える次第でございます。
なお、その反面、しばしば指摘されておりますように、NPT体制は、核兵器国と非核兵器国の間に差別を設けた一種の不平等条約であるという面もございます。そして、インド、パキスタンがこれに加盟しようとしない最大の理由として指摘しておりますのもこの点であることを忘れてはならないと思います。
我が国としましては、それゆえにこそ、核兵器諸国がNPT条約第六条の核軍縮義務を忠実に果たすよう鋭意働きかけていく必要があると考えるものです。そのような方法で不平等性を徐々に解消していくのが最も現実的な方法である、そういう了解の上にでき上がっているのがNPT条約を中心とする核不拡散体制にほかならないと考える次第でございます。
私は、一昨年十二月には、三十カ国ほどが集まりましたけれども、京都での核軍縮に関する国際会議の議長を務めたことがございまして、その際にも痛感したのでございますが、核廃絶への道は極めて厳しく険しく、かつ長い道のりなのでございます。そのために、特にNPT条約の無期限延長後の今日におきまして、核軍縮の進みが遅いことに対する一種の無力感とかいら立ちとかが強まってきていることは紛れのない事実でございます。こうしたことから、今回のインド、パキスタン両国による核実験を痛快に思う風潮が一部の非同盟諸国の間にあることも確かでございます。さらに、インド、パキスタンがこれを利用しようとしているということも事実だろうと思います。
しかし、これは極めて危険なことでございます。核兵器諸国はこの事実を冷厳に受けとめて、口先だけでなくて実際に本腰を入れて核軍縮に取り組むべきでございます。そして我が国は、インド、パキスタンによる核実験を非難するばかりでなくて、米ロに対してはもちろん、その他の核兵器諸国、すなわち中国、フランス、イギリスに対してもあらゆる手段を尽くして核軍縮を促進するよう働きかけていく必要がある、そういうふうに考える次第でございます。
委員長、どうもありがとうございました。
この発言だけを見る →まず最初に、自己紹介がてら簡単に私の経歴から申しますと、私は、平成元年にジュネーブの軍縮会議の日本政府代表大使に任命されまして以来今日に至るまで、政府代表として、あるいは国連事務総長の軍縮諮問委員会委員としまして、そしてまた最近ではそれに加えて国連の小火器政府専門家会合の議長としまして、絶えずといいますか空白期間なしに数多くの軍縮関係の国際会議に出席してきておる次第でございます。
本日は、そうした経験を踏まえまして、私が肌で感じてきております日本の軍縮分野での役割に対する国際社会の期待といったものを中心にお話をさせてもらいたいと思います。
このほどインド、パキスタンの核実験を契機としまして、我が国がこれまで核廃絶に向けて行ってきた努力があたかも失敗に終わったかのような論調が見られるわけでございます。
我が国は、今日まで唯一の被爆国として世界に核廃絶を訴えてきたのでございますけれども、世界に共感を呼ぶはずの唯一の被爆国という我が国の特殊性が、かえって特殊な国が言っているのだからとして共感を呼ばない理由となっているのではないか、そういった議論まで行われている状況でございます。しかし、こうした悲観的な見方は当たっていないのでございまして、正しくもないと考える次第でございます。
実際のところ、第二次大戦後、平和憲法のもとで再出発しました我が国は、日米安保条約上の同盟国である米国を含めましてすべての核兵器国に対して一貫して核廃絶を訴えてきたわけでございます。特に、核実験に関しましては、旧ソ連とか中国の核実験だけではなくて、米国の核実験に対しましても、昭和二十九年の第五福竜丸のビキニ環礁での被爆事件もございましたし、その都度何百回となく抗議を行ってきた、そういう歴史を持っているわけでございます。また、我が国は、よく知られていますとおり、非核三原則を堅持してきているのでございまして、沖縄返還に際しましてもあくまでも核抜き返還ということを主張して、安易な妥協をすることはせず、米国もこうした我が国の国民感情に配慮せざるを得なかった、そういう経緯もあるわけでございます。
要するに、我が国は唯一の核被爆国として、アメリカを含むすべての核兵器国に対して一貫して核軍縮を求めてきたのでございまして、それゆえにこそ我が国の主張は、冷戦時代を通じまして、アメリカを含む西側同盟諸国の間ではもちろんでございますが、第三世界の非同盟諸国においても国際社会の良識を代表する声であるとして高く評価されてきたわけでございます。核軍縮に関する提案でございますと、例えば西側陣営から出されたものに対しては東側陣営が反対し非同盟諸国側も賛成しないとか、あるいは逆に非同盟諸国から出された提案には東側陣営は賛成しても西側陣営が賛成しない、そういう状況にございまして、西側の一員とはいえ日本がイニシアチブをとりますと皆が耳を傾ける、そういう場面を私は何度も体験してまいりましたけれども、何度となく繰り返されてきているのが実情でございます。
冷戦後は、大まかに言いますと、核兵器諸国対非核兵器諸国の対立、そういった図式になっているわけでございますが、そのような冷戦後の今日におきましても、核軍縮分野での我が国が国際社会の良心とかあるいは良識を代表して主導的な役割を果たす、そういうことに対する国際社会の期待は高まりこそすれ、減少することにはなっていないというふうに考える次第でございます。
これは、先ほど総理も触れられました、先週土曜日に我が国などが提案して採択されるに至りました安保理決議千百七十一号の成立の経過を見ても明らかなのでございます。核不拡散体制の危機が叫ばれておりますこうした時期にこそ、我が国は自信を持って臆せず発言していくべきであるというふうに考えるわけでございます。
次に、我が国は、核軍縮に関しては従来から幅広い活動を行ってきておりまして、インド、パキスタンに対する働きかけも見過ごしてきてはいないわけでございます。
例えば、平成四年に、当時のインドのラオ首相、それからパキスタンのシャリフ首相が来日されました際に、当時の宮澤総理が日印・日パキスタン不拡散協議を開始することを申し入れまして、平成五年の初めからこれが開始されるに至ったのでございます。その第一回の協議に日本政府を代表して出かけてまいりましたのが、当時外務省で軍縮大使をしておりました私なのでございます。
この第一回協議の席では、インド、パキスタン両国とも核兵器開発能力は持っているけれども核兵器は持っていないなどと述べておりましたので、こちらの方からは、NPT条約に加盟すべきであること、少なくとも核疑惑を払拭するために個別具体的な行動で透明性を高めるべきであるなど、いろいろな提案を行いまして鋭意説得を試みたわけでございます。我が国やその他の諸国によるこのような説得が続けられてきたにもかかわらず、今回両国が核実験を行うに至ったことはまことに遺憾なことでございます。
既に行われたことの動機を今さらせんさくしてみても余り意味がないかもしれませんが、パキスタンは以前から、インドがNPT条約に加盟するならばパキスタンもこれに加盟するという立場をとってきておりました。そしてまた最近ではCTBT条約にも署名したのでございます。こうしたことから見まして、インドさえ実験を行わなかったならばパキスタンによる実験もなかったであろうと悔やまれる次第でございます。
問題は、今後我が国として何をするべきかということでございます。
我が国は、今回のインド、パキスタン両国による核実験はNPT条約を中心とする核不拡散体制に対する極めて無謀でかつ危険な挑戦である、そういう認識の上に立ちまして、ほかに追随するような国が出てこないようにするために国際世論を結集して、断固としてこれを非難するということにまず力を注ぐべきだろうと考えるわけでございます。インド、パキスタンを核兵器国として認めるということなどは犯罪者に御褒美を出すようなものでございまして、核兵器国増大への道を開き、NPT条約を中心とする核不拡散体制を崩壊に導くことにほかならないと考える次第でございます。
NPT条約は、国際社会の長年の努力の結果、インド、パキスタンなどのごく少数の国を除く百八十六もの諸国が加盟するに至っている極めて重要で国際規範的な条約なのでございます。そして、我が国は、核軍縮に関しては国際社会の良心を代表する国としてこの不拡散体制の強化発展のために多くのイニシアチブをとり貢献をしてきたという実績もあるわけでございます。そうした意味で、先週土曜日に安保理決議を我が国が提案して、全会一致で成立させたことの意義は決して小さくないと考える次第でございます。
なお、その反面、しばしば指摘されておりますように、NPT体制は、核兵器国と非核兵器国の間に差別を設けた一種の不平等条約であるという面もございます。そして、インド、パキスタンがこれに加盟しようとしない最大の理由として指摘しておりますのもこの点であることを忘れてはならないと思います。
我が国としましては、それゆえにこそ、核兵器諸国がNPT条約第六条の核軍縮義務を忠実に果たすよう鋭意働きかけていく必要があると考えるものです。そのような方法で不平等性を徐々に解消していくのが最も現実的な方法である、そういう了解の上にでき上がっているのがNPT条約を中心とする核不拡散体制にほかならないと考える次第でございます。
私は、一昨年十二月には、三十カ国ほどが集まりましたけれども、京都での核軍縮に関する国際会議の議長を務めたことがございまして、その際にも痛感したのでございますが、核廃絶への道は極めて厳しく険しく、かつ長い道のりなのでございます。そのために、特にNPT条約の無期限延長後の今日におきまして、核軍縮の進みが遅いことに対する一種の無力感とかいら立ちとかが強まってきていることは紛れのない事実でございます。こうしたことから、今回のインド、パキスタン両国による核実験を痛快に思う風潮が一部の非同盟諸国の間にあることも確かでございます。さらに、インド、パキスタンがこれを利用しようとしているということも事実だろうと思います。
しかし、これは極めて危険なことでございます。核兵器諸国はこの事実を冷厳に受けとめて、口先だけでなくて実際に本腰を入れて核軍縮に取り組むべきでございます。そして我が国は、インド、パキスタンによる核実験を非難するばかりでなくて、米ロに対してはもちろん、その他の核兵器諸国、すなわち中国、フランス、イギリスに対してもあらゆる手段を尽くして核軍縮を促進するよう働きかけていく必要がある、そういうふうに考える次第でございます。
委員長、どうもありがとうございました。
及
明
明石康#11
○参考人(明石康君) 第二次世界大戦後の悲惨な記憶、その中でも広島、長崎における核被爆の耐えがたい経験は、当然のことでありますけれども戦後日本のあり方に大きな影響を持ってきております。核兵器のない世界を目指すこの日本の悲願が、先月のインドとパキスタンの相次ぐ核実験によって大きな衝撃を受けたのは言うまでもありません。NPTとCTBTから成る現在の体制は、大きなチャレンジにさらされております。核兵器が世界じゅうに拡散すればそれだけ核戦争の危険は深まることになり、したがって核不拡散の目的維持は極めて重要であります。
しかしながら、現在の体制は、核保有国による核の独占的な維持を許容するという消しがたい不平等性を含んでおります。また、冷戦時代には、矛盾をはらみながらも、それ以外に有効な安全保障の道がないということで核抑止の思想は是認されてきました。しかし、米国と旧ソ連を中心とする冷戦が終わりを告げた現在におきましては、むしろ中小国による地域紛争の可能性や開発途上国国内に頻発する民族的、宗教的対立や内戦が多数を占めております。そういったような状況における核兵器保有の意義については多大の疑問が抱かれます。また、そうした兵器が誤用されたり乱用されたりする危険についても大いに警戒しなければなりません。
インドやパキスタンに続いて核兵器を持とうとする国々が出る可能性も、すぐということではないにしろ考えておくべきでありましょう。国と国との間の紛争には事欠きませんし、現在の力関係に不満を持ち、また自国の安全に脅威を感じる国も後を絶っておりません。また、核兵器なしては主権国家としての威信を保てないと感じる国もなきにしもあらずであります。グローバリゼーションの波が国境の垣根を低くし、国家主権のあり方を問い直すことを余儀なくしておりますが、それと同時に、強烈なナショナリズムや原理主義も各地に根強くはびこっており、それを利用しようとする極右民族主義指導者もかなりおります。
言いかえますと、我々は今、五十年という極めて長い間ダモクレスの剣のもとに維持されてきた、不完全ではありましたけれども、ともかく全面戦争を回避することのできた戦後秩序への大きな挑戦を受けていると言えましょう。これを我々は正面から受けとめ、かつ対策を練ることが急務であります。
まず、短期的な対策といたしましては、インドとパキスタンによる核実験を踏まえまして、国際社会が、事情がどうあろうともそうした行為が決して許されないことを明確にし、両国が核兵器の実戦配備をしないように働きかけ、両国に対する関連軍事技術援助を停止し、また両国が誤解とか誤算によって核戦争に突入することがないように、アメリカとかロシアなどが中心に助言を呈すべきだと思います。
アメリカとロシアによる核対立に比べまして、中小国の場合は、偶発戦争勃発の危険と先制攻撃への誘惑は、特に核開発の初期において甚だしいものがあると思われます。しかし、インドとパキスタンの間には、その抜きがたい相互不信とともに、指導層がともに同じ言語を話し自由に交友するという特徴もありますから、外交面での率直な対話再開の可能性は十分にあるように思われます。
広瀬先生が御指摘のように、カシミール紛争の解決は至難であり、私もまた下手に手を出すとやけどをすると思いますけれども、イギリスとアイルランドが最近、北アイルランドに関してまとめた調停案などが印パに対してもあるいは参考になるのではないかというふうにも考えております。
中長期的な観点から申しますと、何といってもアメリカとロシアがそれぞれ所有する核兵器の数を急速にしかも大幅に減少する必要があります。既に締結されておりながらロシアがまだ批准していないSTARTⅡはもとより、STARTⅢ、STARTⅣを締結することによって核兵器を減少し、それを千個ないしはそれ以下に減少することが望まれます。それによって他の核保有国であります中国、フランス、イギリスなどを多角的核軍縮交渉に参加させるように努力すべきでありましょう。
この交渉は難しく、また、一たん同意された核兵器を破壊するのは、実施面で複雑な解体処理の問題や関係した研究者の再就職の問題などがあり、その解決は容易ではありません。これについては、我が国を含む国際的支援体制が維持され、さらに強化される必要があると思います。こうした核軍縮プログラムを真剣に行うことはNPT条約第六条に合致しておりますし、非核保有国の懸念とか不安を払拭するのに役立つことになるでありましょう。
CTBTに関しましても、未臨界核実験は条約で禁止されていないという解釈が有力でありますけれども、それが核兵力の質的向上につながる以上、核戦力の垂直的拡散ではないかという疑問にはっきり答えなくてはなりません。核軍縮が進むにつれて、その実施状況を見きわめる厳正な査察制度と、核実験を外から察知する手段をより一層完備することも望まれます。
非核保有国の核武装を思いとどまらせるためには、何といってもこれらの国々が直面しておる安全保障上の問題を無視することはできません。隣国との領土問題や民族自決の問題などを抱え、歴史的な深い不信感を抱いておる場合、核兵器及び化学・生物兵器など、大量破壊兵器を持とうとする衝動にかられることは理解できることです。そうした国は、資源の合理的な使い方からいってむだになると知っていても、どうしても国の存亡にかかわるならば核兵器を持つしかないと考える場合がございます。
パキスタンの場合がまさにそうだったのではないかと思います。堂ノ脇大使が今言われましたとおり、核保有に関してパキスタンはインドに比べてはるかに受け身でありました。インドの場合はこれと違いまして、むしろ北の中国との間の過去からの経緯とか大国としての誇りに根差し、右翼政党を中心とする連立政権の内政上の事情から核武装に走ったものと考えられます。
こうした場合、国際社会に必要なものは紛争解決のメカニズムを完備することでありますけれども、これは現在のところ関係国の同意を待って機能することがほとんどであります。カシミールや中東問題を見ればわかるように、そうした同意を取りつけるのは容易ではありません。こうした限界のもとでは、関係国が同意するならば地域的に非核兵器地帯をつくることが有益であります。これには核保有国の協力も欠かせないわけでありますけれども、ラテンアメリカに始まり、南太平洋、アフリカ、東南アジア等に広がった非核地帯は、詳細においては互いに異なっておりますけれども、核の拡散を防ぐ上である役割を果たしているということは言えましょう。
また、韓国、北朝鮮は、非核武装に関し一九九一年に合意に達しておりますけれども、それの実施を見守るための検証措置はできておりません。北東アジアのように核兵器を所有した国々が互いに接近している場合は、これらの国々の領土の全部ないしは一部を包含する非核兵器地帯でなければその効用はかなり限られてしまうことになるでありましょう。
私は、核の拡散を防ぐためには、非核保有国の安全保障について国際社会がより一層努力すべきであると考えます。これには、核保有国が非核保有国に対して核兵器を使用しないという消極的安全保障と、核兵器によって攻撃された場合これらの国々を守ってやるという積極的安全保障がございます。
しかし、これらの約束が説得力を持つためには法的拘束力を持たなくてはいけませんし、また現在のところ積極的安全保障は安保理事会の決定を待つものでありますから、大国の拒否権によってこれが阻まれることがございます。したがって、より信頼できる積極的安全保障対策というものについて、我々は真剣に考える必要があるのではないかと思われます。
一九四五年をもって人類は核兵器の時代に突入しました。それ以来、我々は核の悪夢にうなされて今日に至っております。核兵器の存在しない世界という我々の願望を達成する道程には幾つもの大きな障害が横たわっております。
科学技術がますますグローバルに浸透するに至った世界において、核の秘密を魔法の箱に閉じ込めることはもはや不可能になりました。CTBT、NPTを中心とする核の不拡散体制は、関連の科学技術の移転、輸出入、科学者や技術者の海外移動を含む包括的で精密なものになる必要がございます。それは高価なものになるでありましょう。しかし、核兵器製造にはある程度以上の施設が必要となるという点から申しますと、極めて簡単に実験室なんかでも製造できる化学兵器とか生物兵器の製造施設の検証よりは易しいと言えるかもしれません。
一度魔法の箱から出てしまった核の技術を再び箱に閉じ込めることが不可能であるとしましても、核兵器とその関連技術を究極的には一つの超国家的な国際機関に集中するという一九四六年の雄大なバルーク・プランなどを想起しながら、核軍縮の最終段階においては、現存する国家体制を超越する強力な取り組みを考える必要が出てくるでありましょう。
核軍縮プランは既に幾つか出されております。これらを冷静に批判的に吟味してみることも必要だと思われます。しかし、インドが求めるように、核廃絶のきちんとしたタイムリミットを今の段階で明確にすることは恐らく現実的ではありません。むしろ、そのプロセスを幾つかの段階に区切って、それぞれの段階での要件が満たされた時点で、より進んだ段階に進むという漸進的な方法が説得力を持つのではないかと思います。
しかし、このプロセスはかなり長期かつ複雑であるとともに、危険を内包しております。政府以外の非合法団体ないしはテロリストグループの手に核兵器が入る可能性にも配慮しておく必要があるのではないかと思います。
結論的に言いますと、核廃絶を目指す核軍縮と核不拡散は、世界の平和を守るために最も緊急の課題であると言えます。しかし、それに到達する道は複雑をきわめ、息の長い粘り強い努力が要請されます。
核兵器の洗礼を浴びた唯一の国として、我が国はこの目的を達成するため、世界の先頭を切って行動する権利とまた責務を負わされていると言えましょう。我々は、よく考え抜かれた提案を勇気を持って発信すべきであります。また、CTBTの査察やIAEAの検証制度などに既に利用されている日本の高度な科学技術は、国際的検証制度の一層の強化と完成に役立つに違いありません。
平和憲法を持ち、非核三原則を標榜し、核兵器の製造能力を持ちながらもそれを持つことをしない我が国の政治的決意は、国際的に評価されていると考えます。核軍縮のイバラの道を切り開くためには政府間の努力が不可欠でありますが、同時に、国際政治における新しいプレーヤーになったNGOや研究者団体などの活動も見逃せないものになっております。この点、昨年採択された対人地雷廃止条約の道程でNGOが果たした役割が想起されます。
終わりに、本日、参議院の外交・防衛委員会の委員長を初め皆様方が示された関心に敬意を表したいと存じます。
ありがとうございました。
この発言だけを見る →しかしながら、現在の体制は、核保有国による核の独占的な維持を許容するという消しがたい不平等性を含んでおります。また、冷戦時代には、矛盾をはらみながらも、それ以外に有効な安全保障の道がないということで核抑止の思想は是認されてきました。しかし、米国と旧ソ連を中心とする冷戦が終わりを告げた現在におきましては、むしろ中小国による地域紛争の可能性や開発途上国国内に頻発する民族的、宗教的対立や内戦が多数を占めております。そういったような状況における核兵器保有の意義については多大の疑問が抱かれます。また、そうした兵器が誤用されたり乱用されたりする危険についても大いに警戒しなければなりません。
インドやパキスタンに続いて核兵器を持とうとする国々が出る可能性も、すぐということではないにしろ考えておくべきでありましょう。国と国との間の紛争には事欠きませんし、現在の力関係に不満を持ち、また自国の安全に脅威を感じる国も後を絶っておりません。また、核兵器なしては主権国家としての威信を保てないと感じる国もなきにしもあらずであります。グローバリゼーションの波が国境の垣根を低くし、国家主権のあり方を問い直すことを余儀なくしておりますが、それと同時に、強烈なナショナリズムや原理主義も各地に根強くはびこっており、それを利用しようとする極右民族主義指導者もかなりおります。
言いかえますと、我々は今、五十年という極めて長い間ダモクレスの剣のもとに維持されてきた、不完全ではありましたけれども、ともかく全面戦争を回避することのできた戦後秩序への大きな挑戦を受けていると言えましょう。これを我々は正面から受けとめ、かつ対策を練ることが急務であります。
まず、短期的な対策といたしましては、インドとパキスタンによる核実験を踏まえまして、国際社会が、事情がどうあろうともそうした行為が決して許されないことを明確にし、両国が核兵器の実戦配備をしないように働きかけ、両国に対する関連軍事技術援助を停止し、また両国が誤解とか誤算によって核戦争に突入することがないように、アメリカとかロシアなどが中心に助言を呈すべきだと思います。
アメリカとロシアによる核対立に比べまして、中小国の場合は、偶発戦争勃発の危険と先制攻撃への誘惑は、特に核開発の初期において甚だしいものがあると思われます。しかし、インドとパキスタンの間には、その抜きがたい相互不信とともに、指導層がともに同じ言語を話し自由に交友するという特徴もありますから、外交面での率直な対話再開の可能性は十分にあるように思われます。
広瀬先生が御指摘のように、カシミール紛争の解決は至難であり、私もまた下手に手を出すとやけどをすると思いますけれども、イギリスとアイルランドが最近、北アイルランドに関してまとめた調停案などが印パに対してもあるいは参考になるのではないかというふうにも考えております。
中長期的な観点から申しますと、何といってもアメリカとロシアがそれぞれ所有する核兵器の数を急速にしかも大幅に減少する必要があります。既に締結されておりながらロシアがまだ批准していないSTARTⅡはもとより、STARTⅢ、STARTⅣを締結することによって核兵器を減少し、それを千個ないしはそれ以下に減少することが望まれます。それによって他の核保有国であります中国、フランス、イギリスなどを多角的核軍縮交渉に参加させるように努力すべきでありましょう。
この交渉は難しく、また、一たん同意された核兵器を破壊するのは、実施面で複雑な解体処理の問題や関係した研究者の再就職の問題などがあり、その解決は容易ではありません。これについては、我が国を含む国際的支援体制が維持され、さらに強化される必要があると思います。こうした核軍縮プログラムを真剣に行うことはNPT条約第六条に合致しておりますし、非核保有国の懸念とか不安を払拭するのに役立つことになるでありましょう。
CTBTに関しましても、未臨界核実験は条約で禁止されていないという解釈が有力でありますけれども、それが核兵力の質的向上につながる以上、核戦力の垂直的拡散ではないかという疑問にはっきり答えなくてはなりません。核軍縮が進むにつれて、その実施状況を見きわめる厳正な査察制度と、核実験を外から察知する手段をより一層完備することも望まれます。
非核保有国の核武装を思いとどまらせるためには、何といってもこれらの国々が直面しておる安全保障上の問題を無視することはできません。隣国との領土問題や民族自決の問題などを抱え、歴史的な深い不信感を抱いておる場合、核兵器及び化学・生物兵器など、大量破壊兵器を持とうとする衝動にかられることは理解できることです。そうした国は、資源の合理的な使い方からいってむだになると知っていても、どうしても国の存亡にかかわるならば核兵器を持つしかないと考える場合がございます。
パキスタンの場合がまさにそうだったのではないかと思います。堂ノ脇大使が今言われましたとおり、核保有に関してパキスタンはインドに比べてはるかに受け身でありました。インドの場合はこれと違いまして、むしろ北の中国との間の過去からの経緯とか大国としての誇りに根差し、右翼政党を中心とする連立政権の内政上の事情から核武装に走ったものと考えられます。
こうした場合、国際社会に必要なものは紛争解決のメカニズムを完備することでありますけれども、これは現在のところ関係国の同意を待って機能することがほとんどであります。カシミールや中東問題を見ればわかるように、そうした同意を取りつけるのは容易ではありません。こうした限界のもとでは、関係国が同意するならば地域的に非核兵器地帯をつくることが有益であります。これには核保有国の協力も欠かせないわけでありますけれども、ラテンアメリカに始まり、南太平洋、アフリカ、東南アジア等に広がった非核地帯は、詳細においては互いに異なっておりますけれども、核の拡散を防ぐ上である役割を果たしているということは言えましょう。
また、韓国、北朝鮮は、非核武装に関し一九九一年に合意に達しておりますけれども、それの実施を見守るための検証措置はできておりません。北東アジアのように核兵器を所有した国々が互いに接近している場合は、これらの国々の領土の全部ないしは一部を包含する非核兵器地帯でなければその効用はかなり限られてしまうことになるでありましょう。
私は、核の拡散を防ぐためには、非核保有国の安全保障について国際社会がより一層努力すべきであると考えます。これには、核保有国が非核保有国に対して核兵器を使用しないという消極的安全保障と、核兵器によって攻撃された場合これらの国々を守ってやるという積極的安全保障がございます。
しかし、これらの約束が説得力を持つためには法的拘束力を持たなくてはいけませんし、また現在のところ積極的安全保障は安保理事会の決定を待つものでありますから、大国の拒否権によってこれが阻まれることがございます。したがって、より信頼できる積極的安全保障対策というものについて、我々は真剣に考える必要があるのではないかと思われます。
一九四五年をもって人類は核兵器の時代に突入しました。それ以来、我々は核の悪夢にうなされて今日に至っております。核兵器の存在しない世界という我々の願望を達成する道程には幾つもの大きな障害が横たわっております。
科学技術がますますグローバルに浸透するに至った世界において、核の秘密を魔法の箱に閉じ込めることはもはや不可能になりました。CTBT、NPTを中心とする核の不拡散体制は、関連の科学技術の移転、輸出入、科学者や技術者の海外移動を含む包括的で精密なものになる必要がございます。それは高価なものになるでありましょう。しかし、核兵器製造にはある程度以上の施設が必要となるという点から申しますと、極めて簡単に実験室なんかでも製造できる化学兵器とか生物兵器の製造施設の検証よりは易しいと言えるかもしれません。
一度魔法の箱から出てしまった核の技術を再び箱に閉じ込めることが不可能であるとしましても、核兵器とその関連技術を究極的には一つの超国家的な国際機関に集中するという一九四六年の雄大なバルーク・プランなどを想起しながら、核軍縮の最終段階においては、現存する国家体制を超越する強力な取り組みを考える必要が出てくるでありましょう。
核軍縮プランは既に幾つか出されております。これらを冷静に批判的に吟味してみることも必要だと思われます。しかし、インドが求めるように、核廃絶のきちんとしたタイムリミットを今の段階で明確にすることは恐らく現実的ではありません。むしろ、そのプロセスを幾つかの段階に区切って、それぞれの段階での要件が満たされた時点で、より進んだ段階に進むという漸進的な方法が説得力を持つのではないかと思います。
しかし、このプロセスはかなり長期かつ複雑であるとともに、危険を内包しております。政府以外の非合法団体ないしはテロリストグループの手に核兵器が入る可能性にも配慮しておく必要があるのではないかと思います。
結論的に言いますと、核廃絶を目指す核軍縮と核不拡散は、世界の平和を守るために最も緊急の課題であると言えます。しかし、それに到達する道は複雑をきわめ、息の長い粘り強い努力が要請されます。
核兵器の洗礼を浴びた唯一の国として、我が国はこの目的を達成するため、世界の先頭を切って行動する権利とまた責務を負わされていると言えましょう。我々は、よく考え抜かれた提案を勇気を持って発信すべきであります。また、CTBTの査察やIAEAの検証制度などに既に利用されている日本の高度な科学技術は、国際的検証制度の一層の強化と完成に役立つに違いありません。
平和憲法を持ち、非核三原則を標榜し、核兵器の製造能力を持ちながらもそれを持つことをしない我が国の政治的決意は、国際的に評価されていると考えます。核軍縮のイバラの道を切り開くためには政府間の努力が不可欠でありますが、同時に、国際政治における新しいプレーヤーになったNGOや研究者団体などの活動も見逃せないものになっております。この点、昨年採択された対人地雷廃止条約の道程でNGOが果たした役割が想起されます。
終わりに、本日、参議院の外交・防衛委員会の委員長を初め皆様方が示された関心に敬意を表したいと存じます。
ありがとうございました。
及
及川順郎#12
○委員長(及川順郎君) どうもありがとうございました。
以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
それでは、これより質疑を行います。
本日は、あらかじめ質疑者を定めず、委員各位に自由に質疑を行っていただきます。
質疑を希望される方は挙手を願い、私の指名を待ってから御発言願いたいと存じます。
なお、時間が限られており、より多くの委員が発言できますよう、委員各位の御協力を心よりお願い申し上げます。
それでは、質疑のある方は挙手を願います。
この発言だけを見る →以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
それでは、これより質疑を行います。
本日は、あらかじめ質疑者を定めず、委員各位に自由に質疑を行っていただきます。
質疑を希望される方は挙手を願い、私の指名を待ってから御発言願いたいと存じます。
なお、時間が限られており、より多くの委員が発言できますよう、委員各位の御協力を心よりお願い申し上げます。
それでは、質疑のある方は挙手を願います。
宮
宮澤弘#13
○宮澤弘君 自民党の宮澤でございます。私は、特に国連を背景としたということを前提にして御質問を申し上げたいので、お答えを願いますのは堂ノ脇参考人とそれから明石参考人に主として承りたいと思います。
問題の一つは、お二人ともおっしゃいましたけれども、今のNPT条約というのは差別条約である、こういう認識を世界では持たれているわけでございます。そこで、核を廃絶するためには、このNPT条約の六条で核軍縮義務というものが書かれているわけでありますけれども、お二人とも核保有国がそれを果たすことが必要なんだということをおっしゃって、それは恐らくだれもそういう理解を持っている。ところが、それが具体的には一向に進んでいないというのが現実ではなかろうかと思います。
そこで、それを現実的に進ませるためにはどういう手段が具体的にあるのだろうか。特に、私が国連を背景にしてということを申し上げましたのは、国連の中でそういうことについてどういう議論なり検討なりというようなことが行われており、また将来行われなければならないであろうかということを伺いたいのが第一点でございます。
それからもう一つは、これは外交政策的にも非常に大きな問題で、お答えをしていただくことがどこまでできるかというふうに思っておりますけれども、先ほど明石参考人がお話しになりました非核保有国の安全保障の問題で、それに国際社会が一層努力をすべきだと。そこで、消極的安全保障と積極的安全保障ということでお話がございました。それに関連をいたしまして、我が国が世界唯一の被爆国であり、非核三原則を持っている国であるということを申しますと、あなたの方の国はアメリカの傘のもとにあるのではないかということがしばしば言われております。それについて、やはり国連を背景にして、どういう認識というか意識を持ったらいいのであろうか。この二点を伺いたいと思います。
この発言だけを見る →問題の一つは、お二人ともおっしゃいましたけれども、今のNPT条約というのは差別条約である、こういう認識を世界では持たれているわけでございます。そこで、核を廃絶するためには、このNPT条約の六条で核軍縮義務というものが書かれているわけでありますけれども、お二人とも核保有国がそれを果たすことが必要なんだということをおっしゃって、それは恐らくだれもそういう理解を持っている。ところが、それが具体的には一向に進んでいないというのが現実ではなかろうかと思います。
そこで、それを現実的に進ませるためにはどういう手段が具体的にあるのだろうか。特に、私が国連を背景にしてということを申し上げましたのは、国連の中でそういうことについてどういう議論なり検討なりというようなことが行われており、また将来行われなければならないであろうかということを伺いたいのが第一点でございます。
それからもう一つは、これは外交政策的にも非常に大きな問題で、お答えをしていただくことがどこまでできるかというふうに思っておりますけれども、先ほど明石参考人がお話しになりました非核保有国の安全保障の問題で、それに国際社会が一層努力をすべきだと。そこで、消極的安全保障と積極的安全保障ということでお話がございました。それに関連をいたしまして、我が国が世界唯一の被爆国であり、非核三原則を持っている国であるということを申しますと、あなたの方の国はアメリカの傘のもとにあるのではないかということがしばしば言われております。それについて、やはり国連を背景にして、どういう認識というか意識を持ったらいいのであろうか。この二点を伺いたいと思います。
堂
堂ノ脇光朗#14
○参考人(堂ノ脇光朗君) ただいまの宮澤先生の御質問に、まず先に私からお答えいたしたいと思います。
第一点でございますが、NPT条約第六条によります核兵器諸国の核軍縮義務、これがいかに果たされているかということにつきましては、しばしば、例えばNPT条約の再検討会議の場とかいろいろな国連の場で、アメリカ、ロシアなどはこれまでSTARTIに合意した、STARTIに合意した、現にどれだけの核兵器が解体されつつあるとかそういう話をするわけでございます。
しかし、米、ロシア間の核軍縮の実際の姿を見てまいりますと、初めは紀元二〇g二年と言っておりましたけれども、今では七年と申しておりまして、七年までにSTARTIが完全に実施されますと米ソ両国が六千五百発。それから、それにSTARTⅡを加えて実施されますと米ソ両国がそれぞれ三千からⅢ千五百発。それから、さらにSTARTⅢが合意されて実施されますと紀元二〇〇七年の段階で二千発から二千五百発ということでございます。
これはなぜそういうふうに、数は減るけれどもなかなか一挙に減らないかと申しますと、核兵器の解体は技術的にも非常にお金もかかるし手間もかかるし、機密の問題もあるし、それから危険性も伴うということで進まないのが一つと、それから、ロシアの場合でございますとSTARTⅡの批准すらできていない。いろんな事情があるわけでございまして、そういうふうに考えていくと、非常に進展が遅いということがいつも言われているわけでございます。そういう米、ロシアの核兵器の大幅な削減がなければ、中国もフランスもイギリスも自分たちは何もする必要はないと言っている。そういうところで、非常に核軍縮義務の履行が行われているかどうか問題があると言われるわけでございます。
具体的にそれでは何をすればいいかといいますと、一つは、そういうロシアによる核兵器の解体がSTART条約によって行い得るよう技術協力とか、場合によっては資金協力とかを日本もある程度行っておりますけれども、そういうことをすることが一つございます。それからほかにも、核軍縮に関しましてはよく話題になります軍事用核物質の生産停止の問題、カットオフ条約と言っておりますけれども、これを早く開始すべきであるということがあるわけです。
これはジュネーブの軍縮会議の場でこの数年間懸案になっておりますけれども、なかなか進んでいない。それで日本は、これを進めるためにカットオフ条約の技術的側面をまず討議したらどうかと。条約そのものの交渉になかなかみんなが乗ってこないものですから、技術的側面で何があるのかということで、IAEAの専門家とかそういう人を招きまして、ことしの五月に既にそういう会議をやっております。
これはなぜそういうことをしたかと申しますと、CTBT条約に先立って地震の専門家が集まって二十年来専門家会合をやってきて、これがCTBTの検証制度を可能にさせたという背景がございます。その例に従って日本が提案して、幸いアメリカとか主要な国の参加者があったわけでございますが、こういうことを行っている実情がございます。
なかなかはかばかしい核軍縮の進展というものはないのでございますけれども、それについて非同盟諸国とか非核兵器諸国がフラストレーションを起こさないように説得をする必要もあるし、逆に核兵器国に対しては何とか早く先に進むようにと説得する必要もある。まだるっこいといえばまだるっこいのでございますが、それが実情かと思います。
第二点の御質問でございますが、アメリカの核の傘のもとにあるのに日本が核軍縮などと言っているのは自己矛盾ではないかということはよく聞かれる議論でございまして、特に一九五五年、六年、中国が核実験を行っておりますときに我が国が抗議をいたしましたが、それに対する反論として中国側が使った議論であることは皆様御記憶だと思います。
この点に関しまして、私は例え話で答えるのが一番いいのかなと。日本が核の傘の下にあるのは、核兵器で襲われる危険性があるから一種の保険としてやっているんです、戸締まりなんです、それを外しなさいというのは何ですかと、そういうことですね。
もっと具体的に言いますと、世界に今二百ぐらいの国がございますが、二百人の人口の村があって、その中に五人だけがピストルを持っているということがあったとします。それで、そのうちの一人はピストルの練習をしなきゃいかぬといって練習をする。それで日本が抗議をする、そういうものはやめてくださいと。そうすると、その人が、おまえは何を言っているんだ、おまえはもう一人のピストルを持っている用心棒みたいな人に守ってもらっているからそんなことを言っているんじゃないかと。そっちの方は、守っているおまえの用心棒は千回も撃つ練習をしている、私はまだ十遍ぐらいしかやっていないんだから何を言うかとか、そういう議論でございます。
それに対しては、日本はそういう武器をなくしてほしいんです、それは私の用心棒にもそう言っているんです、みんながなくしてほしいんですと言うのは当然だと思うんですね。それで、しかもその一人が実際に唯一の被害者だ、何年前か知らないけれども、実際に被害を受けたんです、私は。だからなくしてほしいんですと。それがなぜいけないか。少しも矛盾がないと私は考えております。
この発言だけを見る →第一点でございますが、NPT条約第六条によります核兵器諸国の核軍縮義務、これがいかに果たされているかということにつきましては、しばしば、例えばNPT条約の再検討会議の場とかいろいろな国連の場で、アメリカ、ロシアなどはこれまでSTARTIに合意した、STARTIに合意した、現にどれだけの核兵器が解体されつつあるとかそういう話をするわけでございます。
しかし、米、ロシア間の核軍縮の実際の姿を見てまいりますと、初めは紀元二〇g二年と言っておりましたけれども、今では七年と申しておりまして、七年までにSTARTIが完全に実施されますと米ソ両国が六千五百発。それから、それにSTARTⅡを加えて実施されますと米ソ両国がそれぞれ三千からⅢ千五百発。それから、さらにSTARTⅢが合意されて実施されますと紀元二〇〇七年の段階で二千発から二千五百発ということでございます。
これはなぜそういうふうに、数は減るけれどもなかなか一挙に減らないかと申しますと、核兵器の解体は技術的にも非常にお金もかかるし手間もかかるし、機密の問題もあるし、それから危険性も伴うということで進まないのが一つと、それから、ロシアの場合でございますとSTARTⅡの批准すらできていない。いろんな事情があるわけでございまして、そういうふうに考えていくと、非常に進展が遅いということがいつも言われているわけでございます。そういう米、ロシアの核兵器の大幅な削減がなければ、中国もフランスもイギリスも自分たちは何もする必要はないと言っている。そういうところで、非常に核軍縮義務の履行が行われているかどうか問題があると言われるわけでございます。
具体的にそれでは何をすればいいかといいますと、一つは、そういうロシアによる核兵器の解体がSTART条約によって行い得るよう技術協力とか、場合によっては資金協力とかを日本もある程度行っておりますけれども、そういうことをすることが一つございます。それからほかにも、核軍縮に関しましてはよく話題になります軍事用核物質の生産停止の問題、カットオフ条約と言っておりますけれども、これを早く開始すべきであるということがあるわけです。
これはジュネーブの軍縮会議の場でこの数年間懸案になっておりますけれども、なかなか進んでいない。それで日本は、これを進めるためにカットオフ条約の技術的側面をまず討議したらどうかと。条約そのものの交渉になかなかみんなが乗ってこないものですから、技術的側面で何があるのかということで、IAEAの専門家とかそういう人を招きまして、ことしの五月に既にそういう会議をやっております。
これはなぜそういうことをしたかと申しますと、CTBT条約に先立って地震の専門家が集まって二十年来専門家会合をやってきて、これがCTBTの検証制度を可能にさせたという背景がございます。その例に従って日本が提案して、幸いアメリカとか主要な国の参加者があったわけでございますが、こういうことを行っている実情がございます。
なかなかはかばかしい核軍縮の進展というものはないのでございますけれども、それについて非同盟諸国とか非核兵器諸国がフラストレーションを起こさないように説得をする必要もあるし、逆に核兵器国に対しては何とか早く先に進むようにと説得する必要もある。まだるっこいといえばまだるっこいのでございますが、それが実情かと思います。
第二点の御質問でございますが、アメリカの核の傘のもとにあるのに日本が核軍縮などと言っているのは自己矛盾ではないかということはよく聞かれる議論でございまして、特に一九五五年、六年、中国が核実験を行っておりますときに我が国が抗議をいたしましたが、それに対する反論として中国側が使った議論であることは皆様御記憶だと思います。
この点に関しまして、私は例え話で答えるのが一番いいのかなと。日本が核の傘の下にあるのは、核兵器で襲われる危険性があるから一種の保険としてやっているんです、戸締まりなんです、それを外しなさいというのは何ですかと、そういうことですね。
もっと具体的に言いますと、世界に今二百ぐらいの国がございますが、二百人の人口の村があって、その中に五人だけがピストルを持っているということがあったとします。それで、そのうちの一人はピストルの練習をしなきゃいかぬといって練習をする。それで日本が抗議をする、そういうものはやめてくださいと。そうすると、その人が、おまえは何を言っているんだ、おまえはもう一人のピストルを持っている用心棒みたいな人に守ってもらっているからそんなことを言っているんじゃないかと。そっちの方は、守っているおまえの用心棒は千回も撃つ練習をしている、私はまだ十遍ぐらいしかやっていないんだから何を言うかとか、そういう議論でございます。
それに対しては、日本はそういう武器をなくしてほしいんです、それは私の用心棒にもそう言っているんです、みんながなくしてほしいんですと言うのは当然だと思うんですね。それで、しかもその一人が実際に唯一の被害者だ、何年前か知らないけれども、実際に被害を受けたんです、私は。だからなくしてほしいんですと。それがなぜいけないか。少しも矛盾がないと私は考えております。
明
明石康#15
○参考人(明石康君) 今の宮澤先生の二つの御質問でございますけれども、第一のNPT条約第六条が核保有国によってまだはかばかしいそういう核軍縮に向かった具体的な措置にあらわれていない、それをどういうふうに進めたらいいのか、国連を通じて何ができるかということであります。
非常に難しい核兵器解体に伴う問題については、まさに堂ノ脇元大使が言われたとおりでありまして、技術的な問題、資金的な問題、特にロシアの場合は非常に深刻な問題がありますから、これに対する国際的な援助、我が国を含むそういう支援体制が要請されておると思います。そういう支援体制が整っても、なおかつ毎年本当に廃棄、解体できる核兵器の数というものは、我々にとっては非常にもどかしい思いをするくらいでありますけれども、二千個くらいが現在の能力では限度ではないかということが言われておるわけであります。しかしながら、支援体制がもっと強固なものになればスピードアップできるということは言えるんじゃないかと思います。
国連を通じて何ができるかといいますと、核保有国は国連ところかジュネーブにあります軍縮会議がこの核軍縮のプロセスに口を出すというのを嫌っておりまして、核軍縮というのは核保有国同士の間でやるべきであって、マルチの場でこれを審議すべきではない、口出しすべきではないという態度を堅持しておりますので、そのバイの形でやる核交渉というものにいかにして国連ないしは国連以外のマルチの国々が参加できるかというのは一つの大きな課題であろうかと思います。そういう意味で、この印パの核実験が終わった今という時点が、あるいはその一つのきっかけになりはしないかという感じがしますけれども、核保有国の組むがっちりとしたスクラムを崩せるかということになりますと、これは大変に難しいことであろうかとは思います。
第二の点、非核保有国の安全保障、消極的安全保障と申しますと、つまりそれは核保有国が非核保有国に対して核による攻撃をしないという約束であり、積極的な安全保障というのは非核保有国が核による攻撃ないしは脅威を受けた場合に核保有国がこれを守ってやるというふうに単純化して言えるんじゃないかと思います。
核の傘というのは積極的安全保障の一つのあり方でありますけれども、私はアメリカがかざす核の傘を将来においてユニバーサルな核の傘みたいなものに転化できるかどうか。さっき申し上げたとおり、安保理事会を通じるそういう安全保障措置というものは採択されておりますけれども、私が申しましたとおり、これは現在の体制では拒否権に抵触してきますから、一〇〇%安全なそういう保障措置ではございません。
こういったようなものをどういうふうに除去していくかということについても、私は日本発の提言をじっくりと考えた上でしてもいいんではないかと思います。その達成の難しさを考慮に入れつつも、こういったような点について考えるということは決してむだではないと思います。
それに関連して、最近東京を訪れた国連のパキスタン人の幹部職員と話しておりましたときに、ちょうどそれはパキスタンが核実験を行う数時間前でありましたけれども、この幹部職員は実は、パキスタンのシャリフ首相に自分は私信を今書いて出したところだと。
一つは、核実験をするような金があったらこれをパキスタンの民衆の福祉のために使うべきだと。それから、日本と同じようにパキスタンも核の傘のもとに入ってしまえばいいじゃないかという二つの提案をしたと言っておりました。そういう意味での非核保有国の安全保障をどう確保するかというのは、これからもっと国際的に考えてよろしい問題ではないかと思います。
この発言だけを見る →非常に難しい核兵器解体に伴う問題については、まさに堂ノ脇元大使が言われたとおりでありまして、技術的な問題、資金的な問題、特にロシアの場合は非常に深刻な問題がありますから、これに対する国際的な援助、我が国を含むそういう支援体制が要請されておると思います。そういう支援体制が整っても、なおかつ毎年本当に廃棄、解体できる核兵器の数というものは、我々にとっては非常にもどかしい思いをするくらいでありますけれども、二千個くらいが現在の能力では限度ではないかということが言われておるわけであります。しかしながら、支援体制がもっと強固なものになればスピードアップできるということは言えるんじゃないかと思います。
国連を通じて何ができるかといいますと、核保有国は国連ところかジュネーブにあります軍縮会議がこの核軍縮のプロセスに口を出すというのを嫌っておりまして、核軍縮というのは核保有国同士の間でやるべきであって、マルチの場でこれを審議すべきではない、口出しすべきではないという態度を堅持しておりますので、そのバイの形でやる核交渉というものにいかにして国連ないしは国連以外のマルチの国々が参加できるかというのは一つの大きな課題であろうかと思います。そういう意味で、この印パの核実験が終わった今という時点が、あるいはその一つのきっかけになりはしないかという感じがしますけれども、核保有国の組むがっちりとしたスクラムを崩せるかということになりますと、これは大変に難しいことであろうかとは思います。
第二の点、非核保有国の安全保障、消極的安全保障と申しますと、つまりそれは核保有国が非核保有国に対して核による攻撃をしないという約束であり、積極的な安全保障というのは非核保有国が核による攻撃ないしは脅威を受けた場合に核保有国がこれを守ってやるというふうに単純化して言えるんじゃないかと思います。
核の傘というのは積極的安全保障の一つのあり方でありますけれども、私はアメリカがかざす核の傘を将来においてユニバーサルな核の傘みたいなものに転化できるかどうか。さっき申し上げたとおり、安保理事会を通じるそういう安全保障措置というものは採択されておりますけれども、私が申しましたとおり、これは現在の体制では拒否権に抵触してきますから、一〇〇%安全なそういう保障措置ではございません。
こういったようなものをどういうふうに除去していくかということについても、私は日本発の提言をじっくりと考えた上でしてもいいんではないかと思います。その達成の難しさを考慮に入れつつも、こういったような点について考えるということは決してむだではないと思います。
それに関連して、最近東京を訪れた国連のパキスタン人の幹部職員と話しておりましたときに、ちょうどそれはパキスタンが核実験を行う数時間前でありましたけれども、この幹部職員は実は、パキスタンのシャリフ首相に自分は私信を今書いて出したところだと。
一つは、核実験をするような金があったらこれをパキスタンの民衆の福祉のために使うべきだと。それから、日本と同じようにパキスタンも核の傘のもとに入ってしまえばいいじゃないかという二つの提案をしたと言っておりました。そういう意味での非核保有国の安全保障をどう確保するかというのは、これからもっと国際的に考えてよろしい問題ではないかと思います。
高
高野博師#16
○高野博師君 四人の参考人の先生方の非常に貴重な御意見をお伺いしまして、大変ありがとうございます。
簡単にお伺いしたいと思うんですが、冷戦後の国際情勢が変化して、その中で核兵器に対する考え方、核兵器に対する認識を変える必要があるんではないか。インド、パキスタンのあの情勢を見ると、核兵器を使用する可能性が極めて高いんではないかと私は見ているんです。特に、両国が持っている核保有の規模とか質から見ると、人類が滅びるほどではないとも言われておりますので、そういう意味では非常に危険があるんではないかと見ております。
そこで、最初に広瀬先生にお伺いしたいんですが、先ほどのお話の中で、経済制裁は余り効果がないと。生きていれば食べなくてはならないけれども、死んでしまえば食べなくてもいいという、そのくらい強烈な、我が身が滅びるのも顧みないほどの憎しみを持っている、あるいは相互の不信がある、強烈なナショナリズムがあるわけです。カシミール問題も半世紀以上解決していないというような現状で、この両国の国民がこういう憎しみを乗り越えられる方法というのはこの二つの国に関して言えばあるのかどうか、非常に難しいと思うんですが、具体的な何か方法でもあるのであればぜひお聞かせ願いたいと思います。
それから森本先生に、TMDのお話ですが、このTMD、戦域ミサイル防衛構想については、私は基本的には反対の考えを持っております。
なぜかというと、力をもって力に対抗するという、まさにバランス・オブ・パワーの論理をもってこれに対抗するような防衛手段をとっていくというのは、これはやはり軍拡につながるんではないか、そういう考えを持っております。そういう中で、特に不拡散じゃなくて、対拡散という考え方も、これもやはり同じようなパワーバランスの考え方に立っているんではないかと思うんです。そういう中で、アジア太平洋の平和と安全という観点で、新しいガイドラインあるいはその関連法案という議論が今盛んにされているのでありますが、このTMD計画と日米ガイドラインとの関係はどういうふうに位置づけられるのか、これについてお伺いいたします。
それから、明石所長にはNGOの役割ですが、対人地雷では非常に世界的にこのNGOの役割が大きかったわけです。国家とか政府を超えたNGOがこの核兵器廃絶という問題に大きな役割を果たし得るのかどうか、果たし得るとすればどういうことがポイントになるのか、簡単で結構でございますのでお伺いいたします。
以上です。
この発言だけを見る →簡単にお伺いしたいと思うんですが、冷戦後の国際情勢が変化して、その中で核兵器に対する考え方、核兵器に対する認識を変える必要があるんではないか。インド、パキスタンのあの情勢を見ると、核兵器を使用する可能性が極めて高いんではないかと私は見ているんです。特に、両国が持っている核保有の規模とか質から見ると、人類が滅びるほどではないとも言われておりますので、そういう意味では非常に危険があるんではないかと見ております。
そこで、最初に広瀬先生にお伺いしたいんですが、先ほどのお話の中で、経済制裁は余り効果がないと。生きていれば食べなくてはならないけれども、死んでしまえば食べなくてもいいという、そのくらい強烈な、我が身が滅びるのも顧みないほどの憎しみを持っている、あるいは相互の不信がある、強烈なナショナリズムがあるわけです。カシミール問題も半世紀以上解決していないというような現状で、この両国の国民がこういう憎しみを乗り越えられる方法というのはこの二つの国に関して言えばあるのかどうか、非常に難しいと思うんですが、具体的な何か方法でもあるのであればぜひお聞かせ願いたいと思います。
それから森本先生に、TMDのお話ですが、このTMD、戦域ミサイル防衛構想については、私は基本的には反対の考えを持っております。
なぜかというと、力をもって力に対抗するという、まさにバランス・オブ・パワーの論理をもってこれに対抗するような防衛手段をとっていくというのは、これはやはり軍拡につながるんではないか、そういう考えを持っております。そういう中で、特に不拡散じゃなくて、対拡散という考え方も、これもやはり同じようなパワーバランスの考え方に立っているんではないかと思うんです。そういう中で、アジア太平洋の平和と安全という観点で、新しいガイドラインあるいはその関連法案という議論が今盛んにされているのでありますが、このTMD計画と日米ガイドラインとの関係はどういうふうに位置づけられるのか、これについてお伺いいたします。
それから、明石所長にはNGOの役割ですが、対人地雷では非常に世界的にこのNGOの役割が大きかったわけです。国家とか政府を超えたNGOがこの核兵器廃絶という問題に大きな役割を果たし得るのかどうか、果たし得るとすればどういうことがポイントになるのか、簡単で結構でございますのでお伺いいたします。
以上です。
広
広瀬崇子#17
○参考人(広瀬崇子君) インドとパキスタンの間の関係が非常に相互不信で、これを乗り越えられるかという御質問なんですけれども、これは明石さんも御指摘になっていらっしゃいますように、インドとパキスタンというのは言ってみるならば兄弟国家なわけです。ですから、兄弟というのが兄弟げんかをすると他人がやるよりももっと激しくするんだというようなことをよくインド人なんかは言うわけですけれども、そういった傾向が多分にあると思うんです。
ですから、例えば前首相のグジュラール首相というのはパキスタン側から渡ったパンジャーブ人なんですが、現在のナワズ・シャリフ首相と同じ大学の同窓生同士なんです、年は親子ほどに離れていますけれども。それで、その地方の方言で話し合えるというぐらいに親しく話ができる、わかり合える仲だったということなんです。
ですから、インドとパキスタンというのを見ていますと、文化的には非常に近いわけです。特に、北インドの人ですと、言葉を共有する人も大勢います。ですから、会議なんかで会いますとインド人とパキスタン人というのは本当にかなり親しくしていることがあるんですが、事国家の安全保障とかという会議になりますと途端にけんかを始めるわけです。結局、国家の主権が絡んできたときにインドとパキスタンというのは本当に犬猿の仲、あるいは宿命の対決というふうになってしまうわけです。
そこで、どうやって乗り越えたらいいのかという御質問なんですけれども、これは非常に難しいんですけれども、一つは、国家の主権というか国家の枠というものがまさに対立の原因であるならば、それに余りこだわらない形の印パ関係というものを築ければそういう形で何か突破口ができるんじゃないか。
具体的に申し上げますと、南アジアには南アジア地域協力連合というSAARCというものがございます。これは、ちょうど九〇年代に入りましてから、それまでの政治的な色彩をなくしまして経済的なつながりを強化しようということで、特に貿易といった方面で動き出して、ちょうどいいところになったと思ったところに政権がインドでも変わったということもありましてここで後退した形なんですが、そういう形での経済協力というものを進めていくということが一つはあると思います。
それからもう一つは、インドというのは非常に広くてそして大きくて、しかも南アジアの国々とインドが全部国境を接していまして、他の国々は国境を接していないわけです。ですから、どうしても南アジアの中ではインドだけが物すごく大国だということになるわけです。そのインド対どこというふうになりますと、どうしても力のバランスが崩れてまいります。インドでも最近では地方分権あるいは州の権限というものが、連邦制の強化ということが進んでおりますので、そことすなわちインドの幾つかの州、例えば西ベンガル州というところがございますが、ここですと隣のバングラデシュとベンガル、ベンガルで言葉は同じなんですね。
ですから、西ベンガル州とバングラデシュが、あるいはそれにネパールが入って例えばヒマラヤの水域の開発を共同でやるとかそういった形の地域協力、こういうものに対する日本の経済援助、こういったようなことが少しは前向きに向かう一つの方法ではないかというふうに思います。
以前、インドとパキスタンと両方あわせて会議があったときに、歴史の解釈がやっぱり大きな問題ですので、歴史の教科書を両方で一緒に話し合ったらどうかというようなことも提案してみたんですが、これはどちらにも受け入れられませんでしたので、やはりそういうところからいきなり入るのは難しい。むしろ、経済的なものを通じて機能的に協力関係を進めていくというのがいい方法ではないかと思います。
この発言だけを見る →ですから、例えば前首相のグジュラール首相というのはパキスタン側から渡ったパンジャーブ人なんですが、現在のナワズ・シャリフ首相と同じ大学の同窓生同士なんです、年は親子ほどに離れていますけれども。それで、その地方の方言で話し合えるというぐらいに親しく話ができる、わかり合える仲だったということなんです。
ですから、インドとパキスタンというのを見ていますと、文化的には非常に近いわけです。特に、北インドの人ですと、言葉を共有する人も大勢います。ですから、会議なんかで会いますとインド人とパキスタン人というのは本当にかなり親しくしていることがあるんですが、事国家の安全保障とかという会議になりますと途端にけんかを始めるわけです。結局、国家の主権が絡んできたときにインドとパキスタンというのは本当に犬猿の仲、あるいは宿命の対決というふうになってしまうわけです。
そこで、どうやって乗り越えたらいいのかという御質問なんですけれども、これは非常に難しいんですけれども、一つは、国家の主権というか国家の枠というものがまさに対立の原因であるならば、それに余りこだわらない形の印パ関係というものを築ければそういう形で何か突破口ができるんじゃないか。
具体的に申し上げますと、南アジアには南アジア地域協力連合というSAARCというものがございます。これは、ちょうど九〇年代に入りましてから、それまでの政治的な色彩をなくしまして経済的なつながりを強化しようということで、特に貿易といった方面で動き出して、ちょうどいいところになったと思ったところに政権がインドでも変わったということもありましてここで後退した形なんですが、そういう形での経済協力というものを進めていくということが一つはあると思います。
それからもう一つは、インドというのは非常に広くてそして大きくて、しかも南アジアの国々とインドが全部国境を接していまして、他の国々は国境を接していないわけです。ですから、どうしても南アジアの中ではインドだけが物すごく大国だということになるわけです。そのインド対どこというふうになりますと、どうしても力のバランスが崩れてまいります。インドでも最近では地方分権あるいは州の権限というものが、連邦制の強化ということが進んでおりますので、そことすなわちインドの幾つかの州、例えば西ベンガル州というところがございますが、ここですと隣のバングラデシュとベンガル、ベンガルで言葉は同じなんですね。
ですから、西ベンガル州とバングラデシュが、あるいはそれにネパールが入って例えばヒマラヤの水域の開発を共同でやるとかそういった形の地域協力、こういうものに対する日本の経済援助、こういったようなことが少しは前向きに向かう一つの方法ではないかというふうに思います。
以前、インドとパキスタンと両方あわせて会議があったときに、歴史の解釈がやっぱり大きな問題ですので、歴史の教科書を両方で一緒に話し合ったらどうかというようなことも提案してみたんですが、これはどちらにも受け入れられませんでしたので、やはりそういうところからいきなり入るのは難しい。むしろ、経済的なものを通じて機能的に協力関係を進めていくというのがいい方法ではないかと思います。
森
森本敏#18
○参考人(森本敏君) 高野先生の御質問につきましては、私は、TMDはパワーバランスのコンテクストで力をもって力で対抗する手段というふうには必ずしも考えておりません。
TMDというのは、本来ある国に対して地域で脅威を受ける、つまりその国に対して飛来する弾道ミサイル、それが核ミサイルであれ何であれ、弾道ミサイルをミサイルのシステムで迎撃するということによってこれを抑止あるいは排除するシステムで、入ってくる兵器が核兵器であっても通常兵器のシステムによってこれを防御するという純粋の防御手段であります。したがって、周りの国がいかように大きな弾道ミサイルの脅威があっても、これを最も効果的に排除する通常兵器のシステムとして開発されようとしているものであるというふうに考えております。
したがって、TMDで相手の国を攻撃できるというのはTMDの技術的な可能性から見て極めて可能性が低く、あくまで相手の脅威をこちらが振り払うための純粋防御的な手段であって、力に対して力で対抗する手段というふうには考えておりません。
そもそもガイドラインというのは日米同盟の抑止機能を強化するものですが、このガイドラインというものは、日本及び日本の周辺におけるいろいろな事態に日米両国がどのように協力をして、日本の国家並びに北東アジアの安定をいかにして維持するかというための基本的な枠組みとして日米両国で協議されたものです。その際、TMDというのは、そのような事態に立ち至った場合、周りの国からミサイルの脅威を受けることを、いわば最も効果的に排除するシステムとして開発されようとしているわけです。
極端に言いますと、TMDがあるとガイドラインに基づく日米同盟の抑止機能が強化されるということにはなります。しかし、物事を単純化して申し上げますと、TMDがなければガイドラインが成り立たないかというと、そういうものではないというふうに考えます。したがって、ガイドラインというものがあれば、アメリカのいわゆる核の抑止機能というものをむしろ通常兵器のシステムによって強化するというシステムであります。
このようなシステムというのは、従来日本が不拡散政策といって世界に大量破壊兵器が拡散しないように進めている政策だけで国家の安定が維持できればいいのですが、それができない場合、国家にとって深刻な脅威が生起する場合、これを排除する手段というものを同時に持ちつつ不拡散政策を進めるということがぜひとも肝要である。その意味において私は、従来の不拡散政策というものをむしろカウンタープロリフィレーションというか、こちらで不拡散政策を進めつつ、こちらで実際にあり得べき脅威に対して抑止の機能をきちっと持つという二つの、ダブルトラックのアプローチがむしろ今から必要なのではないかという趣旨で申し上げたつもりでございます。
この発言だけを見る →TMDというのは、本来ある国に対して地域で脅威を受ける、つまりその国に対して飛来する弾道ミサイル、それが核ミサイルであれ何であれ、弾道ミサイルをミサイルのシステムで迎撃するということによってこれを抑止あるいは排除するシステムで、入ってくる兵器が核兵器であっても通常兵器のシステムによってこれを防御するという純粋の防御手段であります。したがって、周りの国がいかように大きな弾道ミサイルの脅威があっても、これを最も効果的に排除する通常兵器のシステムとして開発されようとしているものであるというふうに考えております。
したがって、TMDで相手の国を攻撃できるというのはTMDの技術的な可能性から見て極めて可能性が低く、あくまで相手の脅威をこちらが振り払うための純粋防御的な手段であって、力に対して力で対抗する手段というふうには考えておりません。
そもそもガイドラインというのは日米同盟の抑止機能を強化するものですが、このガイドラインというものは、日本及び日本の周辺におけるいろいろな事態に日米両国がどのように協力をして、日本の国家並びに北東アジアの安定をいかにして維持するかというための基本的な枠組みとして日米両国で協議されたものです。その際、TMDというのは、そのような事態に立ち至った場合、周りの国からミサイルの脅威を受けることを、いわば最も効果的に排除するシステムとして開発されようとしているわけです。
極端に言いますと、TMDがあるとガイドラインに基づく日米同盟の抑止機能が強化されるということにはなります。しかし、物事を単純化して申し上げますと、TMDがなければガイドラインが成り立たないかというと、そういうものではないというふうに考えます。したがって、ガイドラインというものがあれば、アメリカのいわゆる核の抑止機能というものをむしろ通常兵器のシステムによって強化するというシステムであります。
このようなシステムというのは、従来日本が不拡散政策といって世界に大量破壊兵器が拡散しないように進めている政策だけで国家の安定が維持できればいいのですが、それができない場合、国家にとって深刻な脅威が生起する場合、これを排除する手段というものを同時に持ちつつ不拡散政策を進めるということがぜひとも肝要である。その意味において私は、従来の不拡散政策というものをむしろカウンタープロリフィレーションというか、こちらで不拡散政策を進めつつ、こちらで実際にあり得べき脅威に対して抑止の機能をきちっと持つという二つの、ダブルトラックのアプローチがむしろ今から必要なのではないかという趣旨で申し上げたつもりでございます。
明
明石康#19
○参考人(明石康君) 高野先生から核廃絶に至る過程においてNGOが果たし得る役割について御質問がございました。それに関連して、対人地雷廃止条約のときにNGOは非常に効果的な役割を果たしたという御指摘がありました。それはそのとおりでございます。
対人地雷の場合にNGOがあれだけ影響力を発揮できだというのは、一つには対人地雷の犠牲になる無事の民衆というものが非常に具体的な形で、目に見える形で世界じゅうの人々にアピールしたということもあるでしょうし、対人地雷が持つ非常に限られた軍事的な効用というものもその一つの理由であったのではないかと思います。それからもう一つ、世界のNGOのみならず赤十字国際委員会ICRCあたりが、この対人地雷の廃止に向かって非常に積極的に働きかけたということもあったと思います。
それで、私は、核兵器の場合は対人地雷と同じように物を考えることは必ずしもできないわけですし、少なくともアメリカその他の核保有国はやはり核兵器の存在というものを自国の安全保障政策の中心に置いておりますので、マージナルな武器ということにはなりませんので抵抗も相当あるんじゃないかと思います。
しかしながら、私は、世界のNGOと地方自治体、それから研究団体、こういったようなものの横のつながりを強化するという道をとることによって、また、そういったようなものが単に核廃絶を叫ぶだけではこれは余り説得力がございませんので、現実的な段階的な説得力のある提言をまとめることができれば話は違ってくるんじゃないかと思います。
その点、可能性は幾つかあると思いますし、私の冒頭発言で申しましたとおり、アメリカあたりにもそういう現実的な段階的な核廃絶論がぼつぼつ出てきております。そういうことで、可能性はあるんじゃないかと思います。
また、政府とNGOとの中間にあります。そういうICRC的な団体の存在、これも重要であります。私は、核の問題に関しましては、例えばWHOあたりが人体に及ぼす核被害というものをきちんと把握し、これを世界じゅうに伝えてくれれば非常によろしいと思いますけれども、国連機関の中でも核被害については必ずしも意見は一致しておりません。例えば、ウィーンにあります国際原子力機構、IAEAあたりはチェルノブイルの核被害に関しましても非常に被害を何か小さくとらえる傾向がありはしないかと思います。
そういう意味で、国連関連機関が一致した形で何か見解を述べられるようになればよろしいわけだと思いますし、またその点、国際司法裁判所、ICJがこの核兵器の合法性について勧告的意見を出しております。この勧告的意見は読み方がいろいろございまして、ある意味では非常に進んだ意見であるというふうにとれる面もありますし、国連憲章五十一条に言及することによって、自衛のためには、もう本当に迫られたときにはそれを使用することも非合法ではないというふうにとらえる面もありまして、ある意味では玉虫色の勧告でありますけれども、そういったような国際機関がいろんな形で発言するということも情勢を変える要因になろうかと思います。
そういうことで、NGOの役割というのは、これから鋭意さらに考え、また横の連帯というものを強めていく点で可能性を潜めておることだと思います。
この発言だけを見る →対人地雷の場合にNGOがあれだけ影響力を発揮できだというのは、一つには対人地雷の犠牲になる無事の民衆というものが非常に具体的な形で、目に見える形で世界じゅうの人々にアピールしたということもあるでしょうし、対人地雷が持つ非常に限られた軍事的な効用というものもその一つの理由であったのではないかと思います。それからもう一つ、世界のNGOのみならず赤十字国際委員会ICRCあたりが、この対人地雷の廃止に向かって非常に積極的に働きかけたということもあったと思います。
それで、私は、核兵器の場合は対人地雷と同じように物を考えることは必ずしもできないわけですし、少なくともアメリカその他の核保有国はやはり核兵器の存在というものを自国の安全保障政策の中心に置いておりますので、マージナルな武器ということにはなりませんので抵抗も相当あるんじゃないかと思います。
しかしながら、私は、世界のNGOと地方自治体、それから研究団体、こういったようなものの横のつながりを強化するという道をとることによって、また、そういったようなものが単に核廃絶を叫ぶだけではこれは余り説得力がございませんので、現実的な段階的な説得力のある提言をまとめることができれば話は違ってくるんじゃないかと思います。
その点、可能性は幾つかあると思いますし、私の冒頭発言で申しましたとおり、アメリカあたりにもそういう現実的な段階的な核廃絶論がぼつぼつ出てきております。そういうことで、可能性はあるんじゃないかと思います。
また、政府とNGOとの中間にあります。そういうICRC的な団体の存在、これも重要であります。私は、核の問題に関しましては、例えばWHOあたりが人体に及ぼす核被害というものをきちんと把握し、これを世界じゅうに伝えてくれれば非常によろしいと思いますけれども、国連機関の中でも核被害については必ずしも意見は一致しておりません。例えば、ウィーンにあります国際原子力機構、IAEAあたりはチェルノブイルの核被害に関しましても非常に被害を何か小さくとらえる傾向がありはしないかと思います。
そういう意味で、国連関連機関が一致した形で何か見解を述べられるようになればよろしいわけだと思いますし、またその点、国際司法裁判所、ICJがこの核兵器の合法性について勧告的意見を出しております。この勧告的意見は読み方がいろいろございまして、ある意味では非常に進んだ意見であるというふうにとれる面もありますし、国連憲章五十一条に言及することによって、自衛のためには、もう本当に迫られたときにはそれを使用することも非合法ではないというふうにとらえる面もありまして、ある意味では玉虫色の勧告でありますけれども、そういったような国際機関がいろんな形で発言するということも情勢を変える要因になろうかと思います。
そういうことで、NGOの役割というのは、これから鋭意さらに考え、また横の連帯というものを強めていく点で可能性を潜めておることだと思います。
高
広
広中和歌子#21
○広中和歌子君 四人の参考人がすばらしいプレゼンテーションをしてくださいまして、私の頭の中はいまだにどのような形で御質問していいのかということで混乱しているわけでございます。
広瀬参考人、これは特に質問ではないんですが、私は六、七年前にパキスタンを参議院の議員団の一人として四つの州を訪問したわけですけれども、そのときに、歓迎レセプションなどでその国の首相またはそれにかわる方々が必ずと言っていいほどこのカシミール問題を取り上げ、そしてインドに対する敵がい心、敵意、そういうものをあらわにされることに非常な驚きを覚えたわけでございまして、その印象が強い中で、今、先生のすばらしいプレゼンテーションをいただいて大変に参考になったところでございます。
それで、御質問になるかどうかわからないんですが、日本に第二次世界大戦で核爆弾が落とされてから、世界は核の恐怖というものに本当に苦しみながら今日に至っているわけです。
この核爆弾の恐ろしいところは、その原理というのは非常に簡単でちょっと利口な物理学の学生であれば簡単につくれてしまう、少なくともテロ、威嚇のレベルではこういうことが使える。そういうことで、核保有五カ国以外にも原子爆弾をつくる能力のある国というのは幾らでも存在するだろうとか、それから現に持っているだろうとかということは容易に想像できていたわけですね。だけれども、それに知らぬふりしながら、五つの核保有国がNPTとかCTBT体制をつくった。
森本先生は、このパキスタン、インド両国の核実験によってその体制が崩れたとおっしゃるわけでございますけれども、逆に私はもっとこの偽善ぶりというんでしょうか、今まで知らぬふりしていたものを表に出すきっかけになったことでよかったと考えていいんじゃないかと思うんです。
パキスタン、インド以外にも北朝鮮とかイラクとか、疑いを持たれた国もあったわけで、そしてさらにイスラエルという国もあるわけです。こういう国々が、私たちは核爆弾を持っていますよということを表に出し、先ほど森本先生がおもしろいことをおっしゃっていましたけれども、ちゃんとテーブルに着いて自分たちの主張するべきことは主張した上で、五つの国が特権的な態度で全世界における核に関する問題を支配するのではなくて、やはり仲間に入れてやっていく必要があるのではないかなという感じがするわけでございます。
どなたでもよろしゅうございますから、お答えいただければありがたいと思うわけでございます。
この発言だけを見る →広瀬参考人、これは特に質問ではないんですが、私は六、七年前にパキスタンを参議院の議員団の一人として四つの州を訪問したわけですけれども、そのときに、歓迎レセプションなどでその国の首相またはそれにかわる方々が必ずと言っていいほどこのカシミール問題を取り上げ、そしてインドに対する敵がい心、敵意、そういうものをあらわにされることに非常な驚きを覚えたわけでございまして、その印象が強い中で、今、先生のすばらしいプレゼンテーションをいただいて大変に参考になったところでございます。
それで、御質問になるかどうかわからないんですが、日本に第二次世界大戦で核爆弾が落とされてから、世界は核の恐怖というものに本当に苦しみながら今日に至っているわけです。
この核爆弾の恐ろしいところは、その原理というのは非常に簡単でちょっと利口な物理学の学生であれば簡単につくれてしまう、少なくともテロ、威嚇のレベルではこういうことが使える。そういうことで、核保有五カ国以外にも原子爆弾をつくる能力のある国というのは幾らでも存在するだろうとか、それから現に持っているだろうとかということは容易に想像できていたわけですね。だけれども、それに知らぬふりしながら、五つの核保有国がNPTとかCTBT体制をつくった。
森本先生は、このパキスタン、インド両国の核実験によってその体制が崩れたとおっしゃるわけでございますけれども、逆に私はもっとこの偽善ぶりというんでしょうか、今まで知らぬふりしていたものを表に出すきっかけになったことでよかったと考えていいんじゃないかと思うんです。
パキスタン、インド以外にも北朝鮮とかイラクとか、疑いを持たれた国もあったわけで、そしてさらにイスラエルという国もあるわけです。こういう国々が、私たちは核爆弾を持っていますよということを表に出し、先ほど森本先生がおもしろいことをおっしゃっていましたけれども、ちゃんとテーブルに着いて自分たちの主張するべきことは主張した上で、五つの国が特権的な態度で全世界における核に関する問題を支配するのではなくて、やはり仲間に入れてやっていく必要があるのではないかなという感じがするわけでございます。
どなたでもよろしゅうございますから、お答えいただければありがたいと思うわけでございます。
堂
堂ノ脇光朗#22
○参考人(堂ノ脇光朗君) それでは、私から最初に答えさせていただきます。
私、最初に申しましたとおり、NPT体制のもとでは核兵器国と非核兵器国の差別がございまして、その核兵器国である条件というのがNPT条約では一九六七年一月までに核実験を行った国というふうになっているわけです。
これは、その三年前に中国が核実験を行っておりまして、インドの核実験は七四年ですからその後でございます。インドが中国に対して非常に怨念といいましょうか対抗心を燃やしているのは、実はこのためなんですね。そこで線が引かれているからなんです。しかも、そのころは中印戦争というのがございまして、一九六〇年代の初めでございますけれども、インドにとっては中国は現実の脅威だったわけです。
そのインドが悪いと思っている中国が核実験をした。しかも、まだ当時は国連のメンバーでもなかったんです。そういう国がどうして核兵器国になったのか。自分たちの方が当然国際社会の中ではもっと立派な国なんだからという不満があるわけなんです。一九七二年に中国は国連加盟を実現します。それまでは台湾が安保理のメンバーだったんですけれども、まさに中国が安保理のメンバーになって、それでインドの方はだめだという条約であるわけなんですね、このNPT条約は。
ですから、インドの持つ不満は非常によくわかるわけでございますけれども、インドが言っているのは、NPT条約は不平等条約だから書きかえなさいと言っているわけです。そうしなければ入りませんよと。
ということは、もしそのとおりインドが核兵器国であるということを認めてしまいますと、NPT条約は何だったんですかと。ああいうふうに絞ったんだけれども、もう実績をつくったからそれを手直しして入れますか、パキスタンも入れますか、イスラエルも入れますかと。そうすると、NPT条約というのは核兵器国をこれ以上ふやさないためにつくったのに、わざわざ手直しをして入れるのでございましたらばほかの国もまだやっていいわけです。どんどん広がっていってしまう。それは本来の趣旨に反する。
したがって、NPT条約は一切直しません。それから、核実験をやったことに対しては御褒美は出しません。これが、百八十七と申しますともう国連の加盟国ほとんど全部でございまして、あと五、六カ国しか残っておりませんから、そういう流れというのは二十年もかかってつくってきたわけでございまして、それをここで御破算にするというのはやっぱり正しくない、そういうふうに日本政府は考えていると思いますし、世界の大多数も考えております。
それから、今度の安保理の決議を見ましても、NPT条約に入りなさい、条約を直すことなく入りなさいと。それから、インドとパキスタンは実験をやったことによって核兵器国になる資格はありません、そういうようなことをP5でも宣言しておりますし、それから安保理決議でも言っている、そういう実情でございます。
もちろん、それはおかしいじゃないかという御議論もあると思いますけれども、日本政府の立場といいますか、それから核兵器諸国の立場はそうでございまして、こういうときだからこそNPT体制を強化すべきである、そういう発想でございます。私から御説明申し上げるとそういうことになります。
この発言だけを見る →私、最初に申しましたとおり、NPT体制のもとでは核兵器国と非核兵器国の差別がございまして、その核兵器国である条件というのがNPT条約では一九六七年一月までに核実験を行った国というふうになっているわけです。
これは、その三年前に中国が核実験を行っておりまして、インドの核実験は七四年ですからその後でございます。インドが中国に対して非常に怨念といいましょうか対抗心を燃やしているのは、実はこのためなんですね。そこで線が引かれているからなんです。しかも、そのころは中印戦争というのがございまして、一九六〇年代の初めでございますけれども、インドにとっては中国は現実の脅威だったわけです。
そのインドが悪いと思っている中国が核実験をした。しかも、まだ当時は国連のメンバーでもなかったんです。そういう国がどうして核兵器国になったのか。自分たちの方が当然国際社会の中ではもっと立派な国なんだからという不満があるわけなんです。一九七二年に中国は国連加盟を実現します。それまでは台湾が安保理のメンバーだったんですけれども、まさに中国が安保理のメンバーになって、それでインドの方はだめだという条約であるわけなんですね、このNPT条約は。
ですから、インドの持つ不満は非常によくわかるわけでございますけれども、インドが言っているのは、NPT条約は不平等条約だから書きかえなさいと言っているわけです。そうしなければ入りませんよと。
ということは、もしそのとおりインドが核兵器国であるということを認めてしまいますと、NPT条約は何だったんですかと。ああいうふうに絞ったんだけれども、もう実績をつくったからそれを手直しして入れますか、パキスタンも入れますか、イスラエルも入れますかと。そうすると、NPT条約というのは核兵器国をこれ以上ふやさないためにつくったのに、わざわざ手直しをして入れるのでございましたらばほかの国もまだやっていいわけです。どんどん広がっていってしまう。それは本来の趣旨に反する。
したがって、NPT条約は一切直しません。それから、核実験をやったことに対しては御褒美は出しません。これが、百八十七と申しますともう国連の加盟国ほとんど全部でございまして、あと五、六カ国しか残っておりませんから、そういう流れというのは二十年もかかってつくってきたわけでございまして、それをここで御破算にするというのはやっぱり正しくない、そういうふうに日本政府は考えていると思いますし、世界の大多数も考えております。
それから、今度の安保理の決議を見ましても、NPT条約に入りなさい、条約を直すことなく入りなさいと。それから、インドとパキスタンは実験をやったことによって核兵器国になる資格はありません、そういうようなことをP5でも宣言しておりますし、それから安保理決議でも言っている、そういう実情でございます。
もちろん、それはおかしいじゃないかという御議論もあると思いますけれども、日本政府の立場といいますか、それから核兵器諸国の立場はそうでございまして、こういうときだからこそNPT体制を強化すべきである、そういう発想でございます。私から御説明申し上げるとそういうことになります。
明
明石康#23
○参考人(明石康君) 今、広中先生のおっしゃったことにちょっとだけ反論させていただきますと、先生はインド、パキスタンの核実験によって、もやもやしたものがあからさまになってよかったのではないか、透明性が導入されたという見地からお話しになったわけです。そういう見方も確かにあるのでありましょうけれども、最善の策としては私はインドとパキスタンが核兵器を持たなかったことが一番よかったとは思います。
核実験を行うことによってあからさまにみずからの核兵器保有を世界じゅうに知らしめるよりは、そういう形でNPT体制に挑戦するよりは、私はインドとパキスタンが核兵器を持っているのか持っていないのか、核保有国としての敷居を越えたのか越えていないのか、そういうあいまいさを残しておいた方が、決していいことではありませんけれども、余りこういう核兵器保有の事実が青天のもとに露呈されるよりはよかったのではないか。つまり、国際関係においてはあいまいさ、アンビギュイティーというのがいい場合もございます。
そういうことで、私は、インドが核実験を行うことによってパキスタンは、ギリシャ悲劇のように対抗措置としてやらざるを得なかったというふうに考えておりますけれども、核をインドとパキスタンと両方が持つことによってどちらが不利になったかといいますと、印パの関係で見ますと、私はインドの方にとってむしろ不利になったのではないかと思います。といいますのは、通常兵器においてインドはパキスタンに対して圧倒的な優位を既に持っていたわけでありますから、それをある意味で核は両者の間を平等にすることになりかねないわけです。
そういう意味では、私は今のようになったことは非常に不幸なことであり、むしろ前のようなそういうあいまいさを残しておいてほしかったというふうに考えるわけです。
イスラエルに関してもそうであります。イスラエルが核兵器を持っているであろう、しかもその核兵器の数は石ないし二百に達しているであろうというのは、国際的にほぼ受け入れられていることでありますけれども、おれは核兵器を持っている、また核実験をやるということにイスラエルがなりましたら、当然その周囲のアラブ諸国は対抗措置を公然ととらざるを得ないのでありましょうし、そういう意味では今のようなあいまいさというものの持つ一つの効用についても我々は考えておく必要がありはしないかと思います。
ありがとうございました。
この発言だけを見る →核実験を行うことによってあからさまにみずからの核兵器保有を世界じゅうに知らしめるよりは、そういう形でNPT体制に挑戦するよりは、私はインドとパキスタンが核兵器を持っているのか持っていないのか、核保有国としての敷居を越えたのか越えていないのか、そういうあいまいさを残しておいた方が、決していいことではありませんけれども、余りこういう核兵器保有の事実が青天のもとに露呈されるよりはよかったのではないか。つまり、国際関係においてはあいまいさ、アンビギュイティーというのがいい場合もございます。
そういうことで、私は、インドが核実験を行うことによってパキスタンは、ギリシャ悲劇のように対抗措置としてやらざるを得なかったというふうに考えておりますけれども、核をインドとパキスタンと両方が持つことによってどちらが不利になったかといいますと、印パの関係で見ますと、私はインドの方にとってむしろ不利になったのではないかと思います。といいますのは、通常兵器においてインドはパキスタンに対して圧倒的な優位を既に持っていたわけでありますから、それをある意味で核は両者の間を平等にすることになりかねないわけです。
そういう意味では、私は今のようになったことは非常に不幸なことであり、むしろ前のようなそういうあいまいさを残しておいてほしかったというふうに考えるわけです。
イスラエルに関してもそうであります。イスラエルが核兵器を持っているであろう、しかもその核兵器の数は石ないし二百に達しているであろうというのは、国際的にほぼ受け入れられていることでありますけれども、おれは核兵器を持っている、また核実験をやるということにイスラエルがなりましたら、当然その周囲のアラブ諸国は対抗措置を公然ととらざるを得ないのでありましょうし、そういう意味では今のようなあいまいさというものの持つ一つの効用についても我々は考えておく必要がありはしないかと思います。
ありがとうございました。
森
森本敏#24
○参考人(森本敏君) 今の堂ノ脇参考人、明石参考人、両参考人の御意見に特別につけ加えることはないのでございますが、私は少しニュアンスが違いまして、NPT条約はそのまま堅持すべきであるし、しかもインド、パキスタンをNPT体制下で核兵器国として認めるわけにはいかないという論理はそれは正しいと思います。それではインドとパキスタンという両国が核兵器を保有したと宣言してしまったこの事態をどのように扱うのかということは、単にNPTから排除するということだけでは問題解決にならないというふうに思うわけです。
そうしたらどういう方法があるのか、私には妙案がありませんが、一度インドでの核の国際会議に入ったことがあります。この国際会議はアメリカのある機関が主催をしたのですが、その国際会議は、かつて核兵器を開発した経験がある国、あるいはその意図を持った国、あるいは極めて高い能力を持った国だけが呼ばれているという不思議な会議で、その会議の場で南アフリカの核兵器開発の最高責任者が、いかようにして国際社会の目をくぐり抜けて核開発に成功したかということをるる説明し、いかなる理由でこれを廃棄したか、廃棄した後NPTに入ったか、それにどれぐらいの金がかかりどれぐらい気を使って核開発をやったかということを説明するのを、アメリカがインドにその実例を見せるという極めて意図的な国際会議に参加したわけです。
この例を見ますと、明石参考人の御指摘のように、核の抑止力というのは本来、持っているか持っていないかよくわからないが持っているに違いないし、とても大きな能力を持っていると思わせることによってむしろ抑止の機能が高まるわけで、どこにどれだけの能力を持っているかということを青天白日のもとに明らかにするということは、いわば核の抑止の理論からいうと一番愚かなやり方なので、国際政治の現実から見るとインドとパキスタンは余りに正直過ぎるのかなとさえ思うわけです。
この両国が持ってしまった核兵器をどのようにしてみずからの意思で廃棄していくのかということを考えた場合に、NPTの核兵器国の中に入れないというだけで問題は解決せず、やっぱり開発したけれども間違っていた、これはみずからの手で廃棄した方が国家の安全保障上にも役に立つし国際社会の中に受け入れられる、国内政治上も有利であると思わせるようにするにはどうすればよいのかということを考えることが一番重要です。いわばインドのメンツが立つように、しかもインドが核兵器を開発したことによってどうも利益がなかったと根底から思わせるような方法がどのようにしてできるのか、これが今からの知恵の出しどころだと思います。
その観点で、広中先生のおっしゃるように核疑惑国というのがありますが、私は核疑惑国というよりむしろ核兵器を持ったかもしれないという国ではない機関、例えばある団体や反政府ゲリラあるいはテロといったものが、宣言もしてくれずに、しかし持っているに違いないと周りに思われるような状態が生起することをどのようにしてこれから国際社会の中で管理していくかこれが非常に大きな問題として今挙がっているのではないかというふうに考えます。
以上でございます。
この発言だけを見る →そうしたらどういう方法があるのか、私には妙案がありませんが、一度インドでの核の国際会議に入ったことがあります。この国際会議はアメリカのある機関が主催をしたのですが、その国際会議は、かつて核兵器を開発した経験がある国、あるいはその意図を持った国、あるいは極めて高い能力を持った国だけが呼ばれているという不思議な会議で、その会議の場で南アフリカの核兵器開発の最高責任者が、いかようにして国際社会の目をくぐり抜けて核開発に成功したかということをるる説明し、いかなる理由でこれを廃棄したか、廃棄した後NPTに入ったか、それにどれぐらいの金がかかりどれぐらい気を使って核開発をやったかということを説明するのを、アメリカがインドにその実例を見せるという極めて意図的な国際会議に参加したわけです。
この例を見ますと、明石参考人の御指摘のように、核の抑止力というのは本来、持っているか持っていないかよくわからないが持っているに違いないし、とても大きな能力を持っていると思わせることによってむしろ抑止の機能が高まるわけで、どこにどれだけの能力を持っているかということを青天白日のもとに明らかにするということは、いわば核の抑止の理論からいうと一番愚かなやり方なので、国際政治の現実から見るとインドとパキスタンは余りに正直過ぎるのかなとさえ思うわけです。
この両国が持ってしまった核兵器をどのようにしてみずからの意思で廃棄していくのかということを考えた場合に、NPTの核兵器国の中に入れないというだけで問題は解決せず、やっぱり開発したけれども間違っていた、これはみずからの手で廃棄した方が国家の安全保障上にも役に立つし国際社会の中に受け入れられる、国内政治上も有利であると思わせるようにするにはどうすればよいのかということを考えることが一番重要です。いわばインドのメンツが立つように、しかもインドが核兵器を開発したことによってどうも利益がなかったと根底から思わせるような方法がどのようにしてできるのか、これが今からの知恵の出しどころだと思います。
その観点で、広中先生のおっしゃるように核疑惑国というのがありますが、私は核疑惑国というよりむしろ核兵器を持ったかもしれないという国ではない機関、例えばある団体や反政府ゲリラあるいはテロといったものが、宣言もしてくれずに、しかし持っているに違いないと周りに思われるような状態が生起することをどのようにしてこれから国際社会の中で管理していくかこれが非常に大きな問題として今挙がっているのではないかというふうに考えます。
以上でございます。
広
広瀬崇子#25
○参考人(広瀬崇子君) 私は、今の広中先生のお考えに割合近いんです。といいますのは、NPT体制に矛盾があるということはみんなわかっていたわけですけれども、このインドとパキスタンの核実験が行われるまで真剣にこういう問題に取り組もうということはなかったわけでして、日本もある程度そういうところがありますし、それから核保有国の方もそういうことがかなりあります。ですから、そういう意味で、必ずしも私は核実験を是認しているわけではないですけれども、結果的にはそういう効果というものはあっただろうというふうに思います。
それで、先ほど明石さんがおっしゃった、インドが対パキスタンではというのはまさにそのとおりなんですけれども、インドの論理で言いますと、今度は中国に対して対等になれる、こういうものがあったわけです。もともとインドの核開発というのは中国を念頭に置いたものですから、パキスタンは昔から通常兵器だけで核兵器なんかなくても勝てるということをインドは必ず言っていたわけですから、今回の核実験というのは中国と対等になるため。それだったら本当に核バランスで対等になれるかそこまでは考えていないんです。ですから、抑止力として使うためには何も核戦力が対等にならなくてもいい、これがインド人の論理であるわけです。
それで、NPT体制ということは堅持すべきだということがよく言われるんですけれども、やはりそれはある意味では強者の論理であって、非同盟諸国とかあるいは非保有国、特に発展途上国の間では、このインドの核実験を相当支持している、あるいは喜んでいる国があるんだということは少なくともインド人の間では認識されているということなんです。それが本当かどうかはわかりませんけれども。
ということは、現状維持をどうするかということではなくて、現在の矛盾というものに対して声が上げられなかった国々の立場というものも日本としては理解していくべきではないか。そういうところに今回の実験をこのままで終わらせないで前向きに生かすという意味があるんではないかと思います。
この発言だけを見る →それで、先ほど明石さんがおっしゃった、インドが対パキスタンではというのはまさにそのとおりなんですけれども、インドの論理で言いますと、今度は中国に対して対等になれる、こういうものがあったわけです。もともとインドの核開発というのは中国を念頭に置いたものですから、パキスタンは昔から通常兵器だけで核兵器なんかなくても勝てるということをインドは必ず言っていたわけですから、今回の核実験というのは中国と対等になるため。それだったら本当に核バランスで対等になれるかそこまでは考えていないんです。ですから、抑止力として使うためには何も核戦力が対等にならなくてもいい、これがインド人の論理であるわけです。
それで、NPT体制ということは堅持すべきだということがよく言われるんですけれども、やはりそれはある意味では強者の論理であって、非同盟諸国とかあるいは非保有国、特に発展途上国の間では、このインドの核実験を相当支持している、あるいは喜んでいる国があるんだということは少なくともインド人の間では認識されているということなんです。それが本当かどうかはわかりませんけれども。
ということは、現状維持をどうするかということではなくて、現在の矛盾というものに対して声が上げられなかった国々の立場というものも日本としては理解していくべきではないか。そういうところに今回の実験をこのままで終わらせないで前向きに生かすという意味があるんではないかと思います。
鈴
鈴木正孝#26
○鈴木正孝君 自民党の鈴木正孝でございます。きょうは各参考人から大変示唆に富んだ御意見をいただき、また先般来各委員の先生から非常にいい点をついたお話も出ておりますけれども、いささか後になりましたものですから重複するところが若干あるかもしれませんが、幾つか御質問をしたいというふうに思います。
今回のインド、パキスタンの核実験ということ、考えてみますと、従来の核保有五大国との性格の違いといいましょうか、そういうところがやはりかなり強くあるように一つは思うんです。従来の抑止力としての核、それから今回はどうもカシミール問題を含めて何回か戦火を具体的に交えている、そういう地域にかなり密着した具体的な武器としての核、そういうような位置づけであるということ。したがいまして、先制的な攻撃あるいは現実に使われるのではないかという危険、誘惑、そういうようなものが混在しているというようなところにかなり特色があるというふうに実は思うわけです。
また、今お話もありましたけれども、言ってみますと核疑惑国といいましょうか、アメリカの議会報告やなんかでも調査局あたりの報告を見ましても、かなりの国が現実に恐らく保有しているのではないか、あるいは明確な計画を持っているのではないかというような問題もあって、どちらにしてもこれ以上の核拡散ということは何としてでも防止をしなけりゃいかぬということが最大の現実的な眼目だろうというふうに思います。
そういう意味で、NPT体制あるいはCTBT体制を維持して、あるいは国際的な世論を盛り上げてそこに追い込んでいく、押し込んでいくということがソフト面で非常に大事なことだということが、各委員の先生方の御意見あるいは参考人の皆様方の御意見のような、そういう思いもするわけでございます。
そんな中で、森本参考人にちょっとハード面で、先ほどBMD、TMDのお話も出ましたし、委員の先生によっては若干の異論もあるかと思いますが、実は先月二十八日のこの委員会で私も、本当に偶然に一致したといえばそれまでの話かもしれませんが、二十八日にパキスタンの第一回目の核実験があったその直前に、ここでBMDがやはり必要ではないか、TMDが必要ではないかという質問をいたしました。
私自身、いろんな意味で日本の多角的な選択肢というものを持っていかなければ、やはり流動化しているアジアの安全保障体制・環境の構築の中で、日本が積極的に果たしていく役割の中の大変大事なハード面での一つの選択肢ではないか、専守防衛ということも考えながら。ということであれば、余りちゅうちょしないでぼちぼち選択肢としてそういうものに取り組んでいくということが大事なことではないかというふうに思ったわけでございます。
そんな中で考えてみますと、核兵器そのものもさることながら、運搬手段としてのミサイル、弾道ミサイルそのものを日本が開発するということはあり得ない話ということにはなりますけれども、そういうものについての各国の国際的な抑止のための取り組みといいましょうか、阻止するための取り組みというものが大事なんだろうというふうに思います。
代表的なものがMTCR、いわゆるミサイルの関連品目の輸出規制というようなもの、そういうものもあります。あるいはBC兵器と言われているものについても同じようなものがあり、あるいは原子力関連品目についても同じようなものがある。あるいは通常兵器でもあるわけでございますが、その中でやっぱり中国がすべてのところに加入をしていないという現実が片方であるわけです。
そんなようなことを考えてみますと、どなたでも結構ですけれども、明石先生でも堂ノ脇先生でもどちらでも構いませんけれども、そういう運搬手段をやはり何とかしないと、片方ではぐあいが悪いんではないかという思いが一つございます。
その質問と、それからもう一つ、これは国民の多くの方が考えられていることの中に、率直な疑問といたしまして、日本が日米安保体制の中で核の傘に入りながら核保有国の核廃絶を訴えることの自己矛盾といいましょうか矛盾性といいましょうか、そういう意識を国民の方々が結構持っているんではないか、庶民感覚風に言って。そういうものに対してどんなような思いをしているのか。
それから、先ほどちょっとお話しございましたけれども、経済制裁を日本は印パ両国に対して直ちにとったというところがあるわけですが、これは国によっては経済制裁は余り意味がないんではないかということを先ほどパキスタンに絡んで広瀬先生からお話しございましたけれども、そういうことにつきまして参考人の皆様方はどのようにお考えになっているか、聞かせていただければありがたいと思います。
この発言だけを見る →今回のインド、パキスタンの核実験ということ、考えてみますと、従来の核保有五大国との性格の違いといいましょうか、そういうところがやはりかなり強くあるように一つは思うんです。従来の抑止力としての核、それから今回はどうもカシミール問題を含めて何回か戦火を具体的に交えている、そういう地域にかなり密着した具体的な武器としての核、そういうような位置づけであるということ。したがいまして、先制的な攻撃あるいは現実に使われるのではないかという危険、誘惑、そういうようなものが混在しているというようなところにかなり特色があるというふうに実は思うわけです。
また、今お話もありましたけれども、言ってみますと核疑惑国といいましょうか、アメリカの議会報告やなんかでも調査局あたりの報告を見ましても、かなりの国が現実に恐らく保有しているのではないか、あるいは明確な計画を持っているのではないかというような問題もあって、どちらにしてもこれ以上の核拡散ということは何としてでも防止をしなけりゃいかぬということが最大の現実的な眼目だろうというふうに思います。
そういう意味で、NPT体制あるいはCTBT体制を維持して、あるいは国際的な世論を盛り上げてそこに追い込んでいく、押し込んでいくということがソフト面で非常に大事なことだということが、各委員の先生方の御意見あるいは参考人の皆様方の御意見のような、そういう思いもするわけでございます。
そんな中で、森本参考人にちょっとハード面で、先ほどBMD、TMDのお話も出ましたし、委員の先生によっては若干の異論もあるかと思いますが、実は先月二十八日のこの委員会で私も、本当に偶然に一致したといえばそれまでの話かもしれませんが、二十八日にパキスタンの第一回目の核実験があったその直前に、ここでBMDがやはり必要ではないか、TMDが必要ではないかという質問をいたしました。
私自身、いろんな意味で日本の多角的な選択肢というものを持っていかなければ、やはり流動化しているアジアの安全保障体制・環境の構築の中で、日本が積極的に果たしていく役割の中の大変大事なハード面での一つの選択肢ではないか、専守防衛ということも考えながら。ということであれば、余りちゅうちょしないでぼちぼち選択肢としてそういうものに取り組んでいくということが大事なことではないかというふうに思ったわけでございます。
そんな中で考えてみますと、核兵器そのものもさることながら、運搬手段としてのミサイル、弾道ミサイルそのものを日本が開発するということはあり得ない話ということにはなりますけれども、そういうものについての各国の国際的な抑止のための取り組みといいましょうか、阻止するための取り組みというものが大事なんだろうというふうに思います。
代表的なものがMTCR、いわゆるミサイルの関連品目の輸出規制というようなもの、そういうものもあります。あるいはBC兵器と言われているものについても同じようなものがあり、あるいは原子力関連品目についても同じようなものがある。あるいは通常兵器でもあるわけでございますが、その中でやっぱり中国がすべてのところに加入をしていないという現実が片方であるわけです。
そんなようなことを考えてみますと、どなたでも結構ですけれども、明石先生でも堂ノ脇先生でもどちらでも構いませんけれども、そういう運搬手段をやはり何とかしないと、片方ではぐあいが悪いんではないかという思いが一つございます。
その質問と、それからもう一つ、これは国民の多くの方が考えられていることの中に、率直な疑問といたしまして、日本が日米安保体制の中で核の傘に入りながら核保有国の核廃絶を訴えることの自己矛盾といいましょうか矛盾性といいましょうか、そういう意識を国民の方々が結構持っているんではないか、庶民感覚風に言って。そういうものに対してどんなような思いをしているのか。
それから、先ほどちょっとお話しございましたけれども、経済制裁を日本は印パ両国に対して直ちにとったというところがあるわけですが、これは国によっては経済制裁は余り意味がないんではないかということを先ほどパキスタンに絡んで広瀬先生からお話しございましたけれども、そういうことにつきまして参考人の皆様方はどのようにお考えになっているか、聞かせていただければありがたいと思います。
堂
堂ノ脇光朗#27
○参考人(堂ノ脇光朗君) ただいまの鈴木先生の御質問についてでございますが、まず核兵器の運搬手段の規制が非常に大事である、全く御指摘のとおりでございまして、お話のございましたとおり、MTCR体制と申しましょうか、それが一つの運搬手段の規制のための仕組みなんでございます。ただ、これにはなかなか中国が、アメリカの説得などもあって首を縦に振ったかと思うと途中からまた横に振るということで、なかなか乗ってこないということがございます。
それからまた、MTCRでは、たしか射程三百キロメートルでしたか、それからスローウエートが五百キロとか、そういうことで制限しておりますけれども、ミサイルは平和利用の宇宙衛星打ち上げなどにも使われて、いろんな国が持ちたいと思っていて、それを規制することに対して抵抗する国も確かにあるということで、なかなかすんなりと世界的な規制体制というものが確立てきない、そういう問題があるわけでございます。
ただ、大陸間弾道ぐらいのミサイルになりますと、その発射は探知できるし、規制していく方法もあるわけでございまして、何とかそういう体制の整備と申しますか強化ということが必要なので、日本としてもこのMTCRの強化のためのイニシアチブもとったりしてきているということかと思います。
核の傘の話は、さっき私から申し上げたとおり必要ないのかといえば、確かに現在では冷戦時代のような旧ソ連からの脅威はなくなってきた。しかし、イラクのような、英語ではローグステートと言っておりますけれども、危険国というのが出てくるかもしれない。テロリストといいますと非常に限られできますけれども、やっぱり国家自体がテロリストみたいなことになりますと非常に強くて核兵器を持てる。そういうものに対する保障という点からいいますと、森本参考人の言われましたような考え方も真剣に考えてみる必要があるということかなと思います。
核の傘にありながら核軍縮を言うのは矛盾であるという点は、さっき私がお答えしたとおりでございます。
それから、経済制裁はこれまでも、ベトナム戦争当時もそうでございましたけれども、いろんなところで行われて実効性は乏しい。経済制裁を行うと、戦争中の日本、かっての日本でございますけれども、かえって国民を団結させて闘争心を強めてしまうとか、それが一つございます。それから、監視して実効を確かめる方法が非常に難しい場合が多いわけです。ですから、効果がないということが言われております。しかし、何もしないのかとなりますと、やっぱりけしからぬ行動に対する見せしめといいましょうか、ジェスチャーとして行われることが非常に多いというのが経済制裁の実態がなというふうに考えております。
この発言だけを見る →それからまた、MTCRでは、たしか射程三百キロメートルでしたか、それからスローウエートが五百キロとか、そういうことで制限しておりますけれども、ミサイルは平和利用の宇宙衛星打ち上げなどにも使われて、いろんな国が持ちたいと思っていて、それを規制することに対して抵抗する国も確かにあるということで、なかなかすんなりと世界的な規制体制というものが確立てきない、そういう問題があるわけでございます。
ただ、大陸間弾道ぐらいのミサイルになりますと、その発射は探知できるし、規制していく方法もあるわけでございまして、何とかそういう体制の整備と申しますか強化ということが必要なので、日本としてもこのMTCRの強化のためのイニシアチブもとったりしてきているということかと思います。
核の傘の話は、さっき私から申し上げたとおり必要ないのかといえば、確かに現在では冷戦時代のような旧ソ連からの脅威はなくなってきた。しかし、イラクのような、英語ではローグステートと言っておりますけれども、危険国というのが出てくるかもしれない。テロリストといいますと非常に限られできますけれども、やっぱり国家自体がテロリストみたいなことになりますと非常に強くて核兵器を持てる。そういうものに対する保障という点からいいますと、森本参考人の言われましたような考え方も真剣に考えてみる必要があるということかなと思います。
核の傘にありながら核軍縮を言うのは矛盾であるという点は、さっき私がお答えしたとおりでございます。
それから、経済制裁はこれまでも、ベトナム戦争当時もそうでございましたけれども、いろんなところで行われて実効性は乏しい。経済制裁を行うと、戦争中の日本、かっての日本でございますけれども、かえって国民を団結させて闘争心を強めてしまうとか、それが一つございます。それから、監視して実効を確かめる方法が非常に難しい場合が多いわけです。ですから、効果がないということが言われております。しかし、何もしないのかとなりますと、やっぱりけしからぬ行動に対する見せしめといいましょうか、ジェスチャーとして行われることが非常に多いというのが経済制裁の実態がなというふうに考えております。
森
森本敏#28
○参考人(森本敏君) ミサイルの規制というのは、ミサイルという運搬手段である特定のウエポンシステム、これを規制するというのは現実の問題としては大変難しく、いわば冷戦期を通じてこれに成功した例というのは、米ソで交渉が成立しましたINFがその代表的な例であると思います。
もちろん、現実の問題としては先生御指摘のようにMTCRその他がありますけれども、ミサイルというのは、ミサイルそのものよりもミサイルの弾頭にいかなる兵器が積まれるかということが非常に重要な意味を持っている。したがって、ミサイルだけではなく、弾頭の部分に搭載される可能性のある大量破壊兵器そのものをまず規制するとともに、ミサイルそのものについての規制というのを考えていかないといけないということなわけで、現実の問題としてこの問題を多国間で規制する枠組みというのは大変難しいのだろうと思います。
しかしながら、地域の安定のためにはミサイルの規制というものがどうしても必要で、アジアについていえば、中国や北朝鮮がまずMTCRに加盟し、しかる後にそのミサイルの規制というものの枠組みがもしでき得るのであれば、そのような枠組みの中にどのようにして招き入れるかということが重要なかぎであると思います。
もう一つの問題の、実は核の傘というのはどのようにして説明をしたらいいのかということは大変難しいんですが、物事を単純化して言いますと、核の傘というのは結局は核の抑止力なんです。
核の抑止力というのはどういった条件のもとで成り立つのかということを考えてみますと、核の脅威を受けた場合に、核の脅威を相手に与えたことによって得る利益よりもその脅威を与えたことによって反撃される、つまり第二撃の報復の方がはるかに損害が大きく、結果として核の威嚇もしくは核の先制使用をした方が利益がないという現実の状態をつくること。そのためには相手方に常に第二撃の報復能力、しかも確実に生き残っている報復能力が常に存在するということ、そしてそれが政治的なシステムの中で常に間断なく相手に撃ち込めるというシステムが確立していること。第三に、そのことをお互いに理解していて、こちらから撃ったら必ず相手からそれを上回る報復が来て、撃ち込むことの方がむしろ利点がないと相手に思わせる、この三つが成立しないと実は核の傘というものが成り立たないわけです。
我が国が日米安全保障体制のもとで米国の核抑止力の核の傘の中にあるということは、米国が、これは大統領と我が国の首相の累次の声明の中に明記されているように、日米安全保障体制のもとで我が国に核の抑止の機能を常に約束しているということによって、もしある国が我が国に核の脅威を与えたり威嚇を与えたりした場合に、確実にアメリカの報復戦力の被害をこうむるという現実の枠組みの中で核の傘が維持されているわけです。裏返して言うと、そのような脅威が理論的にほとんどないという状態になるのであれば、核の傘に頼る必要はないということになります。
しからば、我が国にいかなる核の脅威があり得るのかというと、もちろん冷戦時代は旧ソ連邦がその最大のものでありましたが、今日ではロシアや中国のみならずその他の核疑惑国の核脅威に対応しなければならないということであり、そのような累次の米国のコミットメントによって核の傘が維持されているということなわけです。
問題は、その核の傘が維持されているということは、その前提として今申し上げたような機能が常に働いているということが重要なのですが、その核の傘に依存している程度というのは、もし中国やロシア並びにその他の核疑惑国が著しく核軍縮を進め、ほとんど核の脅威がなくなるという状態になれば、核の傘に依存する程度がそれだけ減るということになるわけです。したがって、その意味において核の傘と核軍縮というのは関連しているということなんです。裏返して言うと、核軍縮が極めて進み核の脅威がなくなったら、核の傘に頼る必要はないという理屈になるわけですから、そこには何らの論理矛盾はないということになるんだろうと思います。
この発言だけを見る →もちろん、現実の問題としては先生御指摘のようにMTCRその他がありますけれども、ミサイルというのは、ミサイルそのものよりもミサイルの弾頭にいかなる兵器が積まれるかということが非常に重要な意味を持っている。したがって、ミサイルだけではなく、弾頭の部分に搭載される可能性のある大量破壊兵器そのものをまず規制するとともに、ミサイルそのものについての規制というのを考えていかないといけないということなわけで、現実の問題としてこの問題を多国間で規制する枠組みというのは大変難しいのだろうと思います。
しかしながら、地域の安定のためにはミサイルの規制というものがどうしても必要で、アジアについていえば、中国や北朝鮮がまずMTCRに加盟し、しかる後にそのミサイルの規制というものの枠組みがもしでき得るのであれば、そのような枠組みの中にどのようにして招き入れるかということが重要なかぎであると思います。
もう一つの問題の、実は核の傘というのはどのようにして説明をしたらいいのかということは大変難しいんですが、物事を単純化して言いますと、核の傘というのは結局は核の抑止力なんです。
核の抑止力というのはどういった条件のもとで成り立つのかということを考えてみますと、核の脅威を受けた場合に、核の脅威を相手に与えたことによって得る利益よりもその脅威を与えたことによって反撃される、つまり第二撃の報復の方がはるかに損害が大きく、結果として核の威嚇もしくは核の先制使用をした方が利益がないという現実の状態をつくること。そのためには相手方に常に第二撃の報復能力、しかも確実に生き残っている報復能力が常に存在するということ、そしてそれが政治的なシステムの中で常に間断なく相手に撃ち込めるというシステムが確立していること。第三に、そのことをお互いに理解していて、こちらから撃ったら必ず相手からそれを上回る報復が来て、撃ち込むことの方がむしろ利点がないと相手に思わせる、この三つが成立しないと実は核の傘というものが成り立たないわけです。
我が国が日米安全保障体制のもとで米国の核抑止力の核の傘の中にあるということは、米国が、これは大統領と我が国の首相の累次の声明の中に明記されているように、日米安全保障体制のもとで我が国に核の抑止の機能を常に約束しているということによって、もしある国が我が国に核の脅威を与えたり威嚇を与えたりした場合に、確実にアメリカの報復戦力の被害をこうむるという現実の枠組みの中で核の傘が維持されているわけです。裏返して言うと、そのような脅威が理論的にほとんどないという状態になるのであれば、核の傘に頼る必要はないということになります。
しからば、我が国にいかなる核の脅威があり得るのかというと、もちろん冷戦時代は旧ソ連邦がその最大のものでありましたが、今日ではロシアや中国のみならずその他の核疑惑国の核脅威に対応しなければならないということであり、そのような累次の米国のコミットメントによって核の傘が維持されているということなわけです。
問題は、その核の傘が維持されているということは、その前提として今申し上げたような機能が常に働いているということが重要なのですが、その核の傘に依存している程度というのは、もし中国やロシア並びにその他の核疑惑国が著しく核軍縮を進め、ほとんど核の脅威がなくなるという状態になれば、核の傘に依存する程度がそれだけ減るということになるわけです。したがって、その意味において核の傘と核軍縮というのは関連しているということなんです。裏返して言うと、核軍縮が極めて進み核の脅威がなくなったら、核の傘に頼る必要はないという理屈になるわけですから、そこには何らの論理矛盾はないということになるんだろうと思います。
明
明石康#29
○参考人(明石康君) 今、鈴木先生の幾つかの御質問に関しましては堂ノ脇参考人並びに森本参考人からの御発言がありまして、ミサイルの開発に関しては、開発そのものを妨げるということは難しいにしろ、技術移転をできるだけ抑えること、そのための国際的な協力の枠組みに日本も参加し、またそれを強化する必要があろうという点で私は全く同感であります。
それから、核の傘に入っていることについての問題でありますけれども、これは宮澤先生からの御質問にありました。それは決して望ましいことではないかもしれませんけれども、ほかにそれではどういう道があるかと言いますと、核の傘に入るかわりに単独核武装の道を選ぶのかということになりますと、これはまた大変なマイナスの問題が山積してきます。私は、次善の策として、核の傘に入っておるというのは望ましいことではないにしろやむを得ないことであり、また私が先ほど申し上げたとおり、核の傘自体を、アメリカ単独で日本に対してかざす核の傘からマルチの形の、できればユニバーサルな核の傘というものに次第に進化させていく道を探るべきではないかというふうに考えております。
経済制裁の問題は、堂ノ脇参考人から御指摘のように、いろいろマイナス面がございます。パキスタンが核実験をしたときのシャリフ首相の記者会見の面持ちは非常に沈痛でありました。彼は、日本、アメリカその他から受けるそういう制裁を十分覚悟した上で、なおかつインドに対する対抗措置として核実験をせざるを得ないという選択を迫られたという、その苦悩を十分に意識しておりました。
確かに、経済制裁というのは余りいい手段ではありません。堂ノ脇さんがおっしゃったとおり、為政者はちっとも困らないところか、また為政者に対して国民をむしろ団結させることもあり得るでしょう。また、何の罪もない国民自体が非常な制裁の被害を受けるということにもなりかねません。それから、制裁が効果を発揮するためには非常に時間がかかります。また、インドとパキスタンに関して言いますと、最初に核実験をやったインドの方は割と困らないし、二番目にやったパキスタンの方がよりその被害を受けるという問題もあります。
しかしながら、ではほかにどういう道があるか。国連なんかも武力制裁、外交制裁、経済制裁、いろんな道を考えておりますけれども、やはり武力制裁にはもっとマイナスの影響が考えられますし、そういう意味ではこれまた次善の策として経済制裁が実施されることが町々あるわけであります。
また、経済制裁に関しても、いかにして民衆への影響、被害を最小にするか。例えば、食糧、医薬品、そういったようなものを除くかというふうに、かなり精細なものに制裁自体がなりつつあるわけであります。現在の段階では、国際社会がある国の行っておる行為を是認しておらないということを示す手段として、経済制裁、その他限られた少数のものしかないということはあると思いますけれども、一国のバイタルな安全に関することについてはどんな貧しい国であっても、経済制裁があっても自分がやるべきだと思った防衛措置をとるというのは今度の印パの事件が示しておるとおりだと思います。
この発言だけを見る →それから、核の傘に入っていることについての問題でありますけれども、これは宮澤先生からの御質問にありました。それは決して望ましいことではないかもしれませんけれども、ほかにそれではどういう道があるかと言いますと、核の傘に入るかわりに単独核武装の道を選ぶのかということになりますと、これはまた大変なマイナスの問題が山積してきます。私は、次善の策として、核の傘に入っておるというのは望ましいことではないにしろやむを得ないことであり、また私が先ほど申し上げたとおり、核の傘自体を、アメリカ単独で日本に対してかざす核の傘からマルチの形の、できればユニバーサルな核の傘というものに次第に進化させていく道を探るべきではないかというふうに考えております。
経済制裁の問題は、堂ノ脇参考人から御指摘のように、いろいろマイナス面がございます。パキスタンが核実験をしたときのシャリフ首相の記者会見の面持ちは非常に沈痛でありました。彼は、日本、アメリカその他から受けるそういう制裁を十分覚悟した上で、なおかつインドに対する対抗措置として核実験をせざるを得ないという選択を迫られたという、その苦悩を十分に意識しておりました。
確かに、経済制裁というのは余りいい手段ではありません。堂ノ脇さんがおっしゃったとおり、為政者はちっとも困らないところか、また為政者に対して国民をむしろ団結させることもあり得るでしょう。また、何の罪もない国民自体が非常な制裁の被害を受けるということにもなりかねません。それから、制裁が効果を発揮するためには非常に時間がかかります。また、インドとパキスタンに関して言いますと、最初に核実験をやったインドの方は割と困らないし、二番目にやったパキスタンの方がよりその被害を受けるという問題もあります。
しかしながら、ではほかにどういう道があるか。国連なんかも武力制裁、外交制裁、経済制裁、いろんな道を考えておりますけれども、やはり武力制裁にはもっとマイナスの影響が考えられますし、そういう意味ではこれまた次善の策として経済制裁が実施されることが町々あるわけであります。
また、経済制裁に関しても、いかにして民衆への影響、被害を最小にするか。例えば、食糧、医薬品、そういったようなものを除くかというふうに、かなり精細なものに制裁自体がなりつつあるわけであります。現在の段階では、国際社会がある国の行っておる行為を是認しておらないということを示す手段として、経済制裁、その他限られた少数のものしかないということはあると思いますけれども、一国のバイタルな安全に関することについてはどんな貧しい国であっても、経済制裁があっても自分がやるべきだと思った防衛措置をとるというのは今度の印パの事件が示しておるとおりだと思います。