中原眞の発言 (経済活性化及び中小企業対策に関する特別委員会)

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○参考人(中原眞君) 中原でございます。このような機会をちょうだいして大変ありがたく存じております。
 まず、貸し渋りという問題につきまして申し上げたいと思います。
 この貸し渋りの問題の基本的背景でございますが、二つ挙げておきたいと思います。今既にクー参考人からもお話しございましたけれども、第一に、種々の条件からもたらされる銀行の自己資本の制約によりまして、どうしても資産を圧縮せざるを得ない状況に現在あるということでございます。それから第二は、景気の低迷の長期化によりまして企業の財務内容が悪化しておりまして、また担保価値が劣化するということで、銀行が貸し出しに慎重にならざるを得ない状況が現在の状況である、こういうことでございます。
 このうち、前者の資本面の制約につきましては、先般成立いたしました金融機能安定化緊急措置法、これによりましてラストリゾートとして公的資金による自己資本充実のスキームが用意されました。今後、平成十二年度末までは、基本的に健全な金融機関ということであれば必要に応じて資産圧縮を回避するためにこのスキームにより公的資金を利用させていただく道が開かれたと存じております。実際、この三月末に二十一行がこのスキームにより資本増強を行いましたことは御承知のとおりでございます。
 ただ、いわゆる貸し渋りにつきましては、その後も引き続き大変厳しい御批判をいただいておりまして、まことに遺憾に思っております。全銀協といたしましては、昨年十二月二十四日、全国銀行各行に通達を出しました。また、ことし三月十日には理事会の場におきまして全銀協会長から、金融円滑化に向けて適切な対応を求めたいということで話をしてございます。また、先月二十七日には大蔵大臣から改めて御要請をちょうだいしましたことを極めて重く受けとめておりまして、翌二十八日付で再び全銀協から通達を発出して大臣からの御要請の趣旨を各行にお伝えするとともに、特に大臣の方から御指摘のございました、この趣旨を現場の支店長レベルまで十分に徹底しろと、こういう話を傘下の銀行にお願いをいたしましたところでございます。
 貸し渋りの問題のいま一つの大きな原因は景気の低迷でございます。民間の信用調査機関、商工リサーチの調査によれば、企業倒産件数は二月が前年比二九・五%増、三月もふえ、そして四月も前年比二一・六%増と前年の件数を大変大きく上回っておると聞いております。
 企業の業績が悪化いたしますと、通常、金融機関は再建計画の提出を受けます。それによりまして再建のめどが立つと判断いたしますとその企業を全面的に支えるというのが一般的な銀行のビヘービアでございます。
 大蔵省がことし一月に全国銀行の貸し出しの自己査定の集計額を発表されましたけれども、分類債権総額七十六兆円、大変大きな数字ではございましたが、このうち第Ⅱ分類が六十五兆円ございました。第Ⅱ分類の中には一時的に業績が悪化いたしまして銀行から支援を受けている企業に対する貸し出し、それから再建計画が既にでき上がってその途上にあるというような企業に対する貸し出しが多く含まれております。先般発表されました日銀のレポートによりますと、このような第Ⅱ分類の銀行の支援を受けているような企業の中でも、三年以内にこれが不良化してしまう、本当に不良債権になってしまうというのは一六・七%にすぎない、こういうレポート結果が出ておりますが、裏を返せば大多数の企業は再建計画を達成し立派に立ち直るということが言えようかと思います。
 銀行としましても、こういうように企業を立ち直らせ、そして長きにわたり取引先の信頼をかち得る道を慎重にとっていくということ、この点に努力しておるところでございます。
 一方、再建の見込みが低い場合、あるいは企業が粉飾決算をしておる、あるいは実質的に債務超過である、こういった企業に新たに貸し出しを行う、あるいは担保条件を緩和するということは、法律的に言いますと経営者としての善管注意義務に違反する、あるいは背任行為ということで株主代表訴訟の対象となることがございます。民間金融機関といたしまして、この問題につきましてはこのような法的な限界がいろいろとあるということをぜひ御理解いただきたいと存じます。
 先般、総事業費十六兆六千五百億円の総合経済対策が発表されました。これは、総事業費が過去最大ということに加えまして、減税の上積みとか情報通信など新しい分野の社会資本の整備とか、創造的中小企業の支援、土地・債権流動化トータルプラン、あるいはアジア諸国の経済改革支援など大変幅広い具体的な政策が盛り込まれております。この総合経済対策を財政的に手当てする補正予算、あるいは税制改正関連法案の早期成立、これによりまして景気が一刻も早く自律的な回復軌道に乗ることを強く期待しておるところでございます。これこそまさに貸し渋りへの対応の最も有効な手段の一つであろうかと考える次第でございます。
 なお、貸し渋りにつきましては、従来にはなかったような明るい兆しがちょっと出てきたのではないかというふうに感じております。
 先週、五月二十二日に通産省が「貸し渋りの現状と今後の見通しについて」という調査を発表いたしました。中堅・大企業ではございますが、中堅・大企業におきましては貸し渋りを受けたとする企業の割合が五月時点では一四・九%と、三月時点が三一・九%ございましたので、これが半減しておるようでございます。もちろん、中小企業につきましてはいまだに厳しい見方が続いておるようでございましてこれからも引き続き対応が必要と思いますが、その中でも多少明るさを感じさせるニュースではなかったかと感じます。
 また、五月十一日に全銀協が発表いたしました四月末の預貸金速報、これによりますと、都銀、長信銀、信託の四月の月中貸し出し増加額は三兆三千億円、このうち都銀は二兆九千億円の増加となっております。こうした状況が今後も継続していくかどうかにつきましてはまだまだ予断を許しません。断言できませんが、金融機関の貸し出しに対する前向きな取り組みや政府の総合経済対策の早期実施によりまして、今後は貸し渋りの現象が次第に改善の方向に向かうのではないかというふうに考えております。
 次に、私ども東京三菱銀行の貸し出し姿勢、経営方針について若干お話をさせていただきたいと存じます。
 先ほど申し上げました貸し渋り問題に対する全銀協の通達を受けまして、私どもも頭取から全支店長に対しまして大臣の御要請を伝達しました。実体経済への円滑な資金供給が銀行業の重大な使命である、これを肝に銘じて、基本的に健全な取引先から貸し渋りという御批判を受けることのないよう、現場の末端に至るまで徹底するよう指示をいたしております。また、その中で、お取引先のすぐれた資質、技術、事業の強み、特徴、こういうものを支店長自身がしっかりと把握してきめの細かな、誠実な対応をお取引先に対して行うよう改めて指示をいたしました。
 私どもといたしましては、業績や財務内容が悪化して預金者からお預かりした資金をお貸し出しする先としては適当でないという場合はともかく、健全な経営を続けておる中小企業に資金が環流しないような事態はこれは絶対に回避する必要があると考えております。私ども、今年度も中小企業向け貸し出しは引き続き積極推進方針をとっております。また、一方で、自己資本比率という観点からは、リスク・アセットの圧縮のために大企業の貸し出し債権を中心に流動化を積極的に進めたいと考えております。
 景気の低迷が長期化する中で、不良債権処理の問題は引き続き経営の最重要課題として取り組んでまいりたいというふうに思います。今後は、単なる引き当てが済んだということではなくて、不良資産をバランスシートから落としていくという実質的な処理が重要でございます。
 不良債権の処理につきましては、基本的には問題債権一件一件お取引先とよく話し合いながら地道に着実に対応していくということでございますけれども、一方、不良債権をまとめて流動化するバルクセールというような手法を積極的に開発しましてできるだけ早く不良債権から脱却する、回収効率のアップを図るということに努めておる次第でございます。現在、SPC法案とかサービサー法、さらには総合経済対策の中での土地・債権流動化トータルプランというようなものの御検討が進んでおります。環境整備が進んでいるわけでございますが、私どもこのような制度を最大限活用しまして、できるだけ早く一層の不良債権の処理、圧縮に努めたいというふうに考えております。
 さて、この四月一日に改正外為法が施行されまして、今国会では日本版ビッグバンに伴う規制緩和措置を定めた金融システム改革法案を御審議いただいております。現在、欧米のマーケットでは、これまでに想像もできなかったようなダイナミックな大型再編、統合が起こっております。我が国の金融マーケットもこれらの有力な外資系金融機関、ほかの業態からの新規参入、こういう企業を含めましてまさに優勝劣敗の競争の時代に突入しているということだと思います。
 この競争を通じて、中小企業の皆様にも資金の調達、運用の両面でさまざまな金融サービスをより安い値段でお選びいただけるようになろうかと思います。ビッグバンのメリットというものも十分に御享受いただけるものと考えております。
 このように、日本版ビッグバンに対応し、日本の銀行が国際競争に勝ち抜いていくためにも、また不良債権の実質処理問題を一日も早く解決して資産を健全化させるためにも、私ども、経営の合理化策の着実な実行と収益力の向上が焦眉の急でございます。一刻も早く国際競争を戦い抜くための財務体質の構築を進めていくことが銀行にとっての私どもの課題だろうというふうに考えております。
 以上で、私の意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 114214079X00319980525_017

発言者: 中原眞

speaker_id: 25460

日付: 1998-05-25

院: 参議院

会議名: 経済活性化及び中小企業対策に関する特別委員会