芹生琢也の発言 (行財政改革・税制等に関する特別委員会)

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○参考人(芹生琢也君) 連合で経済・産業政策を担当している芹生と申します。
 本日は、当委員会において私たちの意見を述べる機会を与えていただきましてありがとうございます。経済対策のあり方を中心にいたしまして連合の見解を申させていただきたいと思います。
 まず、今日の日本経済の現状でございますが、今デフレスパイラルの危機に直面しているということで、戦後最悪の不況だということはそれぞれ専門的な機関からも指摘されているとおりであります。そうした中で、雇用情勢、この三月の完全失業率は三・九%と統計史上最悪を記録しておりまして、有効求人倍率も〇・五八%、職を求める人二人について職にありつける人はほぼ一人といった状態が続いております。今有効な対策が打たれなければ、我が国においても大失業時代を招来しかねないという懸念があります。
 こうした深刻な不況を一日も早く打開し、雇用と国民生活の安定を図ることこそ今日の政治の最優先課題であるということを強調いたしたいというふうに思います。
 そしてもう一点、私が申したいのは、この不況の引き金を引いたのはほかならぬ政府であったということでございます。
 一年前の九七年度の予算では、財政構造改革元年と銘打ちまして、消費税率の引き上げあるいは特別減税の停止、医療負担増など九兆円に及ぶ国民負担増が行われました。その結果、個人消費が停滞し、さらに昨年秋以降、金融不安の高まりで景気が急速に失速する中で、昨年秋の臨時国会では財政構造改革法というのが成立いたしました。そのもとで、九八年度の予算というのはこれまた超緊縮で編成され、そして今国会で成立したところであります。
 確かに、今回の不況というのはいろいろな要因が重なっておりますけれども、景気に対する判断を誤り、デフレ政策をとった政府の政策の失敗というのをその大きな要因に挙げるべきではないかというふうに思います。その意味で、まさしく政策不況であると言うべきだというふうに考えます。
 政府も、九八年度予算が成立した後で、ことしの四月二十四日、総合経済対策を発表いたしました。この総合経済対策は、総事業費十六兆円超ということで過去最大の規模の対策となっております。しかし、これで十分なのか、この深刻な消費不況と高失業を打開できるのかというふうに問いますと、この経済対策の内容では残念ながら不十分と言わざるを得ないというふうに思います。
 景気を回復させるためには、GDPの約六割を占める個人消費の回復が不可欠であります。そのために最も有効な政策というのは所得減税であろうというふうに思います。今回、二兆円の特別減税が追加実施され、さらに来年度も二兆円の特別減税が実施をされるということでありますけれども、一時的な特別減税では消費刺激効果というのは限られたものにとどまらざるを得ないというふうに思います。こうした特別減税の小出しではなく、恒久的な制度減税として減税は実施されるべきであろうというふうに考えます。
 公共事業につきましても、二十一世紀につながる生活、環境、福祉基盤の拡充あるいは高度情報社会に向けた新社会資本の整備にシフトすべきであろうというふうに私たちは考えております。今回の景気対策として行われる公共事業が果たしてこのようなものになっておるかどうか、参議院選挙を控えて従来型のばらまきとなっていないかどうか検証する必要があろうかというふうに考えております。
 このような政府の経済対策に対しまして、私たち連合としては、雇用と生活安定のために以下のような経済対策を実行すべきであるというふうに考えております。
 まず第一には、先ほどからも申しております所得減税の制度化を中心にしまして、政策減税、投資減税を含めて総額六兆円規模の減税というのが実施されるべきであるというふうに考えております。あわせて、可処分所得や消費支出の落ち込みが顕著な子育て世帯あるいは高齢者に対する施策として、児童手当あるいはシルバー手当の支給というものが行われるべきであろうというふうに考えます。
 さらに、私たち労働組合の立場から特に強調いたしたいのは緊急雇用対策の実施であります。特に、当面は五十万人規模の雇用創出を目指した緊急雇用対策が実施されるべきであろうというふうに考えます。
 新しい雇用創出が期待できる分野としては、私たちは住宅あるいは情報通信、環境、福祉・医療といった分野を挙げているところですが、連合と日経連が共同して、こうした分野における新規事業あるいは新規雇用の創出対策というのを政府に求めているところであります。特に、福祉につきましては、新ゴールドプランの前倒し実施、さらにはスーパーゴールドプランというものを策定して介護マンパワーを確保するといった面の充実を図り、この面における雇用創出というものを図るべきであろうというふうに考えます。
 あわせて、新規雇い入れに対する助成策として特定求職者雇用開発助成金について、これは今回の総合経済対策の中でも年齢を四十五歳に引き下げるというふうになっておりますけれども、この年齢制限を外し、あるいは助成率についても思い切って引き上げるといった措置が必要であろうというふうに思います。
 そのほか、雇用調整助成金制度の拡大あるいは労働者個人を対象とした教育訓練の給付金制度の拡充、さらには地域雇用対策の強化といった対策というのが直ちに実行されるべきであろうというふうに考えます。
 私が強調したいのは、雇用と福祉に対する先行きの不安といったことが現在の国民の消費マインドを萎縮させているということであります。したがって、経済対策の基本は、雇用の安定と福祉の再構築を中心とする国民の暮らしの安定に置くべきだというふうに考えます。
 財政構造改革法の見直し問題ともこれは関連いたしますけれども、医療や年金に関するこの間の政府の政策あるいは政府首脳の言動というものを見ておりますと、社会保障に対する国民の不安をかき立て、先行きに対する不安から国民を自己防衛に向かわせ、消費を一層萎縮させる方向に働いているというふうに言わざるを得ません。
 私たちは、政府に対して、今後の少子・高齢社会のもとで国民が安心できる安定的な福祉、社会保障の全体像を示す二十一世紀福祉ビジョンというものを策定し、そのもとで負担と給付のあり方を検討するということを求めております。
 財政再建の必要から、毎年の社会保障費にキャップをかけるというのは転倒したあり方であろうというふうに考えます。二十一世紀福祉ビジョンのもとで必要となる社会保障費を確保するために歳出構造をどう変えていくか、そうした政策の優先順位を明らかにして、限られた財源を必要なところにシフトさせていくというのが本来の財政構造改革のあり方ではないかというふうに考えます。
 財政構造改革法について、私たちは従来から、第一に、この財政構造改革法の内容は、歳出の量的削減に傾斜して政策の優先順位に基づく歳出構造の改革とはなっていない、つまり構造改革の名に値しないということ。また、財政再建の基盤は経済成長なしにはあり得ません。中期的に持続する経済成長なしには財政再建というものは成功したためしがありません。そして、今の状況のもとで歳出削減を行うということは、不況を深刻化することになり、かえって財政再建を失敗に終わらせるということになるのではないかといった点を指摘してまいりました。
 今回の財政構造改革法の改正案を見ますと、まず第一に、経済情勢において特例公債の発行枠を弾力化する、そういう弾力化を可能とするといった措置、さらには財政健全化目標を二〇〇三年から二〇〇五年へ二年間延長する、さらには来年度当初予算において社会保障費のキャップを緩和するといったことが内容になっておりますけれども、いかにも中途半端であるというふうに言わざるを得ません。政府の改正案では恐らく制度減税には対応できないということは明らかであります。
 したがって、私たちは、財政構造改革法については、景気回復が確実となるまで、当面二年程度全面的にこれを凍結した上で、二十一世紀の少子・高齢社会に対応した財政構造とするために抜本的な修正というのを行うべきであろうというふうに考えます。
 いずれにしても、今日の深刻な不況を一日も早く打開し、雇用と国民生活の安定を図るためにどうか立派な政策をお願いしたいということを指摘しまして、私の意見表明を終わらせていただきたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 芹生琢也

speaker_id: 18744

日付: 1998-05-28

院: 参議院

会議名: 行財政改革・税制等に関する特別委員会