中村英夫の発言 (国会等の移転に関する特別委員会)

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○参考人(中村英夫君) 中村でございます。
 本日は、この国会等の移転に関する特別委員会に参考人として意見を述べる機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。
 実は私、阪神・淡路大震災、三年少し前になりますが、あの当時、土木学会という会員が三万八千人おります大変大きな学会の会長をたまたまやっておりました。そして、地震が起こったということですぐに会員の多くの専門家と一緒に神戸方面に入りまして、そこでの調査に携わり、その後の地震の復旧対策あるいは復興対策等に学会としていろいろお手伝いをする機会を持ったわけでございます。
 実は私、その地震に遭う前は、この首都機能の移転というのに必ずしも一〇〇%賛成の意見を持っていたわけではございません。どちらかというと、まだまだ問題が多いというふうにも思っていたわけでございます。しかし、あの地震で大被害を受けた阪神地区に入り、つぶさに調査をいたしました。そしてその間、大きな地震が来るこの日本を今後安全な、そして安定的なものにするためには一体どういうふうなことをすればいいのかということを本当に毎日考え、悩んでいたというのが実情でございます。そういうふうな中で、どうしても一つ必要な仕事であるというふうに思っているのがこの首都機能の移転ということでございます。
 そんなわけで、きょうは私は、その阪神地区での経験をまず最初に皆さんにもう一度見ていただき、そしてその後、なぜ地震対策上首都機能を移転させた方がいいのかという私の意見を述べさせていただきたいと思います。なるべくわかりやすくということでスライドを持ってまいりましたので、初めにまことに恐縮ですが部屋を少し暗くさせていただいて、スライドで見ていただきたいと思います。
 実は、この写真は東京でございます。東京のちょうど山手線のすぐ外側ぐらいでございます。東京だけではありません、大阪もそうでありますし、それ以外の日本の大都市は大体どれもこれも似たり寄ったりでありますが、こういうふうな大変密集した市街地でございます。これはもう皆さん日常よく御存じのとおりでございます。そこには大きな道路も本当に数少ないわけですし、公園等オープンスペースも大変少ないわけであります。
 これも同じような場所であります。これは実は中野付近であります。東京では、どちらかというと住宅地としては高級な方に当たる場所だと言っていいかと思います。そこも同じでございます。十分な街路もなく、オープンスペースもなく、ただ個々の建物は大変立派なのが多いわけですが、実に乱雑に並んでいるというのが実情でございます。
 東京だけでなくてほかの大都市も同じでありますが、そういうふうなところにどんどん近代的なビルも建ってきました。それと同時に、以前からのこういうふうな電柱を初めとして、いろんなライフラインあるいはケーブル、そういったものが所狭しと並んでいるわけでございます。そして、その中で通っている道路はといいますと、大概の道路はこういうふうな幅の道路であります。バス二台がすれ違うのが大変困難であるというふうな道路が多いわけでございます。東京も横浜も大阪も、みんな同じ状況でございます。もう少し狭い道になりますと、こういうふうなある意味では大変温かみのある風景でございますが、しかし地震のときには大変危険な場所が大変多いのが現状でございます。
 これが阪神地区で起こった住宅地の被害の一例でございます。
 木造の家屋は見るも無残に倒壊し、破壊されているわけでございます。そして、その地区に建っている数多くの電柱は倒れ、その倒れた電柱のために狭い道はふさがれ、その倒れた地区の中から脱出するにもこのとおりであります。外から救援に行くにも自動車は全く入れないという状況であります。少し道が広くなっても大体状況は同じでございます。きょうはたまたま電柱が倒れた風景が多いわけですが、電柱だけでなくて道路の方の陥没等もたくさんあるわけでございます。建物がふさいだのもたくさんある。
 そして、阪神の場合には御承知のように早朝の地震でございました。そのために火が出ることは大変少なかったわけであります。しかし、これは本当に僥幸と言うべきであって、ほかの時間なら間違いなくこういうふうなところから各所に火が出るわけであります。
 一たん火が出ると、その火は次々と燃え移る。特に、たくさんの自動車が地区の中には駐車していますし、また走っております。そういうふうな自動車に引火する。そうすると、その中は本当に火の海になるわけであります。そして、そこから脱出しようとしてもさっきのような状況であります。道路はふさがれておるわけであります。外から消防車が入ろうにも入れないわけであります。救急車ももちろん来れないわけであります。
 そういうふうなわけで、大変大きな被害が出る大きな可能性を持っていると言わざるを得ないのであります。
 住宅地は今のような状況でありました。それでは、オフィス等はどうであるかといいますと、これは御承知のように神戸市役所であります。神戸市役所の建物も、こういうふうな形で一つのフロアが完全につぶれされてしまうという状況になりました。それから、道路、鉄道等のいわゆる交通インフラストラクチャーも大変大きな被害を受けたわけでございます。
 私は、初めに申しましたように土木学会の会員であり、土木技術を研究してきた者であります。実は、こういうふうな壊れ方をするとは全く思ってなかったわけでございます。我々の技術を過信していたといって非難を受けてもいたし方ないわけでございますが、ともかく私どもの想像を超えた大きな力がかかり、大きな破壊が起こったと言わざるを得ないわけであります。
 こういうふうな破壊が、特に昭和四十年代中期ぐらいまでにできた構造物にたくさん生じたわけであります。そのころまでは、日本の構造物というのはまだまだ経済的に豊かでない状況の中で苦労してつくってきた構造物が多いわけであります。そういうふうなこともあって、比較的強度的に劣るものも多いわけであります。そういうふうなものの多くが破壊されたわけでございます。
 それでは、すべてがあのようになみのかというと、私は全くそうでないというふうに思っているわけであります。
 実は、これも東京でございます。これは東京の多摩ニュータウンであります。多摩ニュータウンであの地震が起こるということを考えると、神戸で起こったような悲惨な状態というのははるかに少なくなると言って間違いないかと思います。
 一つ一つの建物が丈夫であるということもございます。だけれども、それ以上に、そこでは計画的に建物が建てられ、オープンスペースがつくられ、避難する通路が確保されということでございます。
 もう少し近くへ寄ってそのニュータウンの中を見ると、こういうふうな状況であります。神戸の住宅地で起こったようなことがここではほとんど起きないであろうということは想像できるところでございます。
 実は、これは日本ではございません。ドイツの田舎の一つの小さな都市であります。人口にしますと三万人とか、そういった都市であります。ドイツを初めとして、ヨーロッパの国にはこういうふうな小規模な都市が大変多いわけであります。そして、そこには十分の街路がとられ、オープンスペースがとられ、建物は計画的に整然と配置されているわけであります。
 こういうようなところで、例えばヨーロッパには地震はほとんどございませんが、日本のようにもし地震があったとしても、個々の建物はもちろん耐震設計がされているわけでないわけですから弱いんですが、これを強いものにさえすれば日本の都市よりもはるかに危険の少ないものになるということは間違いないわけであります。
 そして、そこはただ防災上安全だというだけでなくてはるかに快適な都市であるということも間違いないわけであります。これは委員の先生方、いろいろな機会に御見聞されて御実感されているところであろうというふうに思います。
 そして今、新首都として考えているのは、実はクラスターシステムというのが前の調査会の段階で提案されて、そういうふうな方向で考えられているわけでございます。
 クラスターというのは、塊とでも訳せばいいんでしょうか。こういうふうな小さな都市が幾つもある。そして、こういうふうな都市が五つとか十とか、場合によっては十五とか、そういうふうな数が集まって一つの都市が形成されるという状況であります。すなわち、一つの小都市の中にこういうふうな、ある場合は官庁がありますし、あるいはある場合はいろいろな住宅地等があるわけであります。そしてまた、山を一つ外れたところにこういうふうな町ができると。こういうふうなのが幾つかできた上で、全体としてそれが道路、鉄道等の交通機関でつながれて高速でつながれ、通信網が完備され、そして全体として一つの新しい首都を形成するという形でございます。
 こういうふうな形というのは、段階的にその都市をつくっていくというときもつくりやすいわけであります。あるいは、用地を取得していくというときもつくりやすいわけであります。ある場所の用地が取得できなければそれをやめていくと、別なところを先にやっていくということもできるわけであります。そしてまた、快適な町をつくれる。自然と大変近いものがつくれるという意味でも一つのすぐれた構想であろうというふうに思っているわけでございます。
 こういうふうな形の小規模な都市の集まったもの、それぞれの小規模な都市は計画的につくられている、そして個々の建物は十分耐震性の強いものがつくられているというふうなのが、今考えておられる新しい首都機能を持った都市の一つのイメージでございます。
 ここまでは、私の神戸での経験を踏まえての感想を言わせていただいたというふうにお考えいただければと思います。
 そしてこれからは、首都機能を移転したときと移転しなかったときと、その両方で阪神・淡路大地震のような大きな地震が起こったときどういうふうな違いがあるのかというのを考えてみたものでございます。
 例えば、今ここでは関東大震災クラス、すなわちマグニチュード七・九というふうな大きさの地震が相模湾を震源として起こったというときを想定いたします。
 こういうふうな地震の想定を国土庁は数年前にやって、そのシミュレーション結果を出しているわけでございます。そこで出されたものは、死者が十五万人であります。そして、建物の中大破、焼失を含めますと、三百四十万戸が燃えたり壊れたりするというふうな結果を出しております。
 実は、この想定といいますかシミュレーションは、この神戸の地震の前に行われたものであります。神戸の地震では、先ほど申しましたように、我々が日ごろ考えていたよりもはるかに大きな破壊力が働いているわけであります。したがって、場合によってはこれ以上のものが起こらないとも言えないわけであります。
 特に、それが東京でこういうふうなのが起こったときというのは木造密集地域、それは先ほど写真をお見せいたしました。実は、その木造密集地域というのは東京都の区部、二十三区の約四〇%も占めているわけであります。もう中野も杉並も足立も豊島も台東区もそういうふうな、どこも本当にたくさんの木造密集地域があるわけであります。そういうようなところに先ほど見ていただいたような壊滅的な被害が起こるということを考えると、本当に恐ろしくなるわけでございます。
 そして、そのときはもちろん鉄道、道路にも被害が出てまいります。
 実は、この三年前の大地震の後、御承知のように、東京の首都高速道路を初めとして大事な交通機関では補強対策をやってまいりました。随分その補強対策は進んできたと思います。その間に何事もなかったのは大変幸いであったと思いますが、まだ完全には終わっておりません。そして、補強対策はそれ相応の効果を持つことは間違いないわけであります。しかし、だからといって地震が起こったとき、それが無傷であるなんということは全く考えられないわけであります。
 電車が落っこちたり自動車が落っこちたりするような大きな被害はほとんどないかというふうに思います。しかし、そこの上に、さっきお話ししましたように建物が倒れる、あるいは電柱が倒れる、そういったことを初めとして、あるいは橋げたが部分的に破壊するというふうなことで道路が使えなくなる、鉄道が走らなくなるというのがすべてにわたって起こることは間違いないわけであります。
 そうしたとき、それが例えば昼間起こったとしたら、帰宅できない人が先ほどのシミュレーションでは二百四十三万人の人がいると。特に都心三区、千代田、中央、港の三区だけでも百万人近くの人は家へ帰れなくなるというふうになるわけであります。そして、この家へ帰れない人は、自分たちの家が被害を受けているというニュースだけはもらうわけであります。皆さん、ともかく自分たちの家族が被害を受けているところへ一刻も早く帰りたいというふうに願うわけであります。
 そして、この地震がもし夜間に起こったら、逆に多くの人はそれぞれの家庭におられるわけですが、例えばその中で首都機能の関連に従事している人たち、その多くは国家公務員でありますが、国家公務員あるいはこの国会の議員の先生方、職員の方々、みんなそうでありますが、出てくることができなくなるわけであります。これがまた大変大きな問題であります。
 そして、もちろん先ほどの神戸市役所の写真で見ていただきましたように、この霞が関の建物もほとんどの建物が決して丈夫な建物とは言えないわけであります。神戸市役所よりもはるかに丈夫だと言えるものはほとんどないと言っていいと思います。そういうふうなところの多くも被災するわけであります。もちろん民間の施設、それはオフィスであり商店であり、そして工場であるわけですが、そういったのも被災して操業は全く困難になってくるわけであります。
 そういうふうな被害の結果、どんなことが起こってくるのかというのを考えてみたいと思います。
 ともかく、首都機能は混乱するわけであります。国会ももちろん正常に機能しないわけであります。したがって、国会も中央省庁の行政も混乱をしてしまうわけであります。
 そして、情報を集めるといっても、日本の一番大きな問題の一つは情報がほとんど東京に集中し東京から発信されることだと言われているわけですが、その収集・発信機能は大幅に低下するわけであります。これがその地域の中でも、そして広くは国際的にもいろんな憶測を呼び不安を呼びしていくわけであります。
 そしてまた、被災地自治体、例えば東京都であります。東京都と国との連携、これもああいうふうなオフィスが壊れ、職員たちが正常に勤務できないというふうな状況では連携ができないというのも当然のことであります。多くの被災地での救援救助そしてその後の復旧・復興、そういった業務もこれはもちろん地方自治体の大きな役割であります。しかし、地方自治体の仕事というのは、国の立法機関そして国の中央行政機関との緊密な連携なしにはなかなか進められないのも実情でございます。
 さらに、金融機能、産業機能の混乱、活動低下が起こります。
 株式市場が閉鎖される、あるいは金融機関等のコンピューターが支障する、そういったことを初めとして金融機能が十分に働かなくなってくる、混乱してくる、また産業施設の多くは被害を受けるということで、活動は大幅に低下していくわけであります。
 あるいは、救助救援の調整能力も低下するわけであります。
 救助救援というのは実にさまざまな組織、さまざまな人々が入ってくるわけであります。自衛隊のような国の大変強力な組織からボランティア活動のようなものまで入ってくるわけであります。そして、医療機能も入ってくれば、食糧、衣類等を供給するような仕事に携わる人も入ってくるわけであります。あるいは、国内だけでなくて、国内もその地区だけでなくて全国さまざまなところから参りますが、それ以外にも外国からも、この前の神戸の例に見られるようにたくさんの救援の申し込みが入ってくる。そして、そういったのは調整しないことには十分に機能しないわけであります。その調整をやるとなると、これはどうしても行政機能がしっかりしていないと調整というのは大変難しくなってくるわけであります。そして、もちろんこの復旧・復興対策もその地域での立法・行政機能が混乱すると、そういった対策はおくれおくれになっていくわけであります。
 この前の神戸のときは、そうした対策が大変おくれたというふうに非難されたわけであります。それでも、あのときは中央省庁が全く無傷のまま東京にあったわけであります。国会は全く正常に機能していたわけであります。そして、比較的短期間の間に多くの法律を成立させ、計画をつくり、予算を成立させていった。それがその後の復旧・復興に大変大きな力になったことは間違いないわけであります。
 そのときのことに関しましてさまざまな批判ももちろんたくさんあるわけであります。もっと早くできたんではないか、もっとよくできたんではないかという思いもどなたもお持ちであろうかと思います。だけれども、それがもし同じところに、国会や中央省庁が神戸にあったときということを考えれば、これはもう全くはるかに迅速に行われたと言っていいかと思います。
 そしてさらに、我々の首都機能というのは、これは何もその首都のある地域だけの仕事をやっているわけでないわけで、全国をやっているわけであります。
 東京は大変大きな人口を抱えておりますが、全国の一割であります。首都圏一都三県といえど全国の二五%であります。残りの七五%の仕事というのは、これは首都に地震が来ようが来るまいが日常どおりそれを遂行していくことが必要になってくるわけであります。そして、対外的な業務もたくさんそういうふうな形で遂行しなければいけない。それが停滞するということが起こりかねないわけであります。
 その結果、今申しました首都機能のさまざまな混乱の結果、そこには金融不安が起こる、さらに企業倒産が起こるという可能性が非常に大きくなるわけであります。
 金融不安、企業倒産というのはたちまちのうちに全国に波及していきます。そして、昨今ではそれが全国にとどまらず世界へ拡大していきます。それは株式市場や為替市場を通して非常に短期間に世界に波及していくわけであります。そしてまた、国内外からの支援もおくれがちになるわけであります。我が国の社会秩序が首都機能の麻痺のために混乱するというふうなことになりますと、これはもう大変ゆゆしい問題になるわけで、我が国への信頼性も大幅に低下するわけであります。そうした混乱というのは、治安、外交、経済、多方面にわたる可能性があるわけであります。
 そしてまた、被災者対策の遅延というのが起こります。救助、救急医療、食糧、衣類、住宅等の供給、こういったものは大変おくれてくるということになるわけであります。そして、先ほど申しました復興対策の法案、予算、計画の設定の遅滞が起こるということになります。
 そういうようなことになりますと、長期的には日本経済の長期的低落が起こります。そして、東京そのものの経済的地位は大幅に低下し、それが戻らなくなってくるわけであります。また、日本の国際的信用は低下するわけでありますし、人命被害の拡大そして避難生活の長期化というふうなことになる。そして、果ては全国にわたって国民の生活の質の低下、所得水準も減る、医療、福祉、その他全面にわたっての水準の低下ということにつながるわけであります。
 そういうふうなとき、東京から首都機能が別の新しい都市へ移転していたらというふうなことを考えますと、東京の生活、生産機能の被害は相変わらず甚大であります。しかし、それと同時に、移転跡地を活用する、そしてそういうふうに東京は非常に危険だということで、その移転跡地を利用してのそれぞれの都市改造、防災強化、そういったものが進みます。そして、人々のそういうような機運も進むということで、それと同時に東京の防災対策の予算も増加させていくことが必要でありますが、結果的に防災性はかなり向上する。そしてまた、元首都の機能のあったところの移転跡地の利用等もあって、都心への居住もそういった機会にふえていくということでありますから、被害は首都が東京にあったときよりもかなり軽減するということは期待していいと思います。
 それ以上にはるかにもう一つ大きいのは、新首都は正常に運営されていくということであります。
 もちろん、危機管理機能は正常に機能し、それが発揮されるわけであります。治安、外交その他は正常に機能しますし、必要な場合には自衛隊の投入がされるわけであります。情報の収集と発信も正常であると。必要な金融・経済不安対策を政府から即刻全世界ヘアナウンスするということの効果が大変大きいのは申すまでもございません。そして、救急救援・支援、そういったものを調整するということで、必要な場所に必要な要員、資材を送り込むということをここですることができるわけであります。
 大変大きいのは、金融、経済の正常化対策が新しい首都機能でもって行われるということであります。場合によってはモラトリアムの発動も必要となるかもしれません。あるいは、日銀特融の実施も必要だということになるかもしれません。そういうふうにして金融不安の回避をどうしても行わなければいけないわけであります。
 そのためには、国会が、内閣が、そして中央省庁が正常に機能しているということが全く大事なことであるわけであります。そうしたところに働いている人々が、自分たちの家が壊されることなく、そして自分たちの家族が、家庭が被害を受けているということを気にすることなく、専心この被災地の復旧・復興のために、そしてまた日本の安全、安定のために働くということができるわけであります。そしてまた、復旧・復興対策の法案と予算をそうした形でもって早期に成立させる。さらには、先ほど言いましたように、被災地だけでなくて全国あるいは被害を受けていない地域に対しての業務を正常に進めていくということになるわけであります。
 その結果、金融不安の回避は可能となります。そして、被災したインフラストラクチャーの早期の復旧も可能となるわけであります。道路、鉄道その他の復旧も早期に可能となるわけであります。
 その結果、被災した東京も、そうした交通機能その他の機能の早期の回復によって経済の復旧もずっと早く進めることができるわけであります。そして、社会秩序と我が国に対しての信頼性は、それだけの大きな地震があってもそう大きく落ち込むことなく維持できるというふうに考えるわけであります。
 そして、東京におきましては人命被害は減少することができます。被災住民の生活確保も、首都機能が同時に被災するよりもはるかに早く実現できるわけでございます。その結果、東京の復興は促進され、経済機能の早期回復が可能であるというふうに思うわけであります。
 それじゃ、新しい首都機能を持ったところ、新首都と一応呼ばせてもらいますが、被災したらどうなるのかというわけであります。
 そのとき、東京はもちろん被害はございません。新首都の被害はといいますと、先ほど最初にお見せしたように、これを計画的につくる、計画的に土地利用する、配置する、そしてまたそれぞれの建物を十分耐震性のあるものをつくっていく。実は、一九八一年以後の新しい耐震設計基準でつくられた建物というのは壊れるものが非常に少なかったわけでございます。したがって、今の基準でつくれば大きく壊れるものというのは本当に少ないと言っていいかと思います。そして、首都機能関連の職員は、夜起こればすぐにオフィスに出てくることができるわけであります。あるいは昼間起これば、自分の家庭のことを考えることなく専心その業務に邁進できるわけであります。
 そういうふうにして首都機能は正常に機能します。そして、万一周りの都市が被災したら、そこに対しては迅速な救援ができるわけであります。
 最後に、首都機能移転に際して実施すべきことを地震対策という見地から一言つけ加えさせていただきます。
 一つは、もちろん計画的な新首都整備であります。これはもう言うまでもないことであります。それと同時に、新首都の整備と裏腹の関係と言っていいかと思いますが、東京を初めとする大都市の防災対策事業を十分実施するということが大事であります。
 新首都が安全であっても、東京が今までと全く変わらないというのでは困るわけであります。防災対策事業を十分実施するその契機にというふうに思うわけであります。そしてまた、東京等との通信機能は十分安全に確保しておくということであります。
 さらに、この事業は始めましても二年三年ですぐ終わるものではございません。始めるまでに何年かかかる、始めてからもまだ十年十五年、場合によっては二十年とかかるわけであります。その途中でいつ地震がどこに起こるかわからないわけであります。きょう夜に起こるかもしれませんし、あるいは我々の生きている間には全く起こらないかもしれないわけでありますが、ともかくその事業の途中でも地震が起こるということを想定して、情報通信のバックアップ機能の先行整備も必要でありましょう。それからまた、ここに書き忘れましたが、地震が起こる前に地震の後の復興計画というのも綿密につくっておくということも大変必要なことであろうかと思います。
 一応私の説明、大変大ざっぱでございましたが、これで終わらせていただきます。

発言情報

speech_id: 114214298X00319980312_004

発言者: 中村英夫

speaker_id: 23774

日付: 1998-03-12

院: 参議院

会議名: 国会等の移転に関する特別委員会