喜多洋三の発言 (国民福祉委員会)

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○参考人(喜多洋三君) おはようございます。大阪府守口市長の喜多でございます。現在、全国市長会の社会文教分科会委員長をいたしております。
 本日は、参議院国民福祉委員会の皆さんに、国民健康保険法改正案につきまして、国保保険者として意見を申し述べる機会を与えていただきましたことに対し感謝いたしております。
 さて、今回の改正案のうち、特に老人保健拠出金と医療費の不正請求対策の二点につきまして意見を申し述べたいと思います。
 まず、老人保健拠出金についてでございますが、現在の医療保険制度の危機と言われるものは、実は老人医療費の問題でもあると考えております。
 若い方の五倍という多額の老人医療費をどのように負担していくのか、この問題の処理のためにつくられたのが老人保健制度でございます。しかし、その前提である医療保険制度間の不公平などの欠陥是正に手をつけず、各健康保険からの財源の拠出と保険者間での複雑な財政調整により解決を図ったわけでございますが、昭和五十八年に制度が発足して以来、拠出金をめぐっては国会での審議段階から現在に至るまで争いがあり、二、三年に一度は拠出金計算方法の修正を繰り返しています。
 社会保障としていかにあるべきかという視点が隅に追いやられ、財源負担をめぐっての国民健康保険側と被用者保険側の無用のせめぎ合いだけが目立つような事態は不幸なことと言わざるを得ません。このような欠陥のある制度を十五年間維持できたのも、高い経済成長という歴史的には特異な環境に支えられたからであります。これからの低成長、少子・高齢化社会に耐え得る制度とするには、部分的な改革ではなく、医療保険全般に切り込むことが必要であります。
 健康保険制度間の年齢や所得の格差が是正されていれば、さらに言えば、健康保険制度が一本化されていたなら今回のような拠出金論議もしなくて済んだのではないかと考えます。そのためにも、前提となる医療保険制度の抜本的改革を早急に実現するようお願いする次第であります。
 今回の拠出金についての二つの改正点は、国民健康保険にとって財政的には改善される内容であります。しかし、私どもは、現状が老人を全国民が公平に支えるという理念とかけ離れていることを問題にしているのであります。国民健康保険の運営を預かる立場として改正案には賛意を表しますが、素直に納得できるものではありません。
 まず、第一点目の老人加入率の上限問題でございますが、老人の医療費を国民全体で支えるとすれば、高齢化により特に大きな負担を担っている保険者を支援するのが制度の公平であります。何となれば、老人の加入率が高いことは各保険者や加入者に責任のないことであり、これによる大きな医療費負担を緩和する必要があるからです。このような事情に対し、老人加入率に上限を置いて高い拠出金負担を放置することは、制度の理念や法のもとの平等に反することと言わざるを得ません。上限という制約は、過疎化に悩む財政的にも困難な地域をさらに苦しめることになっています。
 老人保健制度の発足当初はこのような不公平な状態もごく一部の団体に限られていましたが、今やこの制約によって大きな負担を強いられる団体が、三千余りある国民健康保険者の三分の二以上になろうとしています。本来は上限を完全に撤廃すべきですが、少なくとも老人保健法に定められたとおり上限を超える団体が三%程度になるようにという基準が守られるべきであり、現状は違法な状態であると考えます。
 今回の改正案では、加入率の上限重二〇%に引き上げることとされておりますが、この場合でもなお三分の一、約一千二百の保険者が上限を超え、いわれのない負担が解消されないこととなります。さらに、法案では上限の改正は医療保険制度の抜本改革が行われるまでの間の措置となっていますが、制度改革がおくれた場合、異常事態を固定化することになりかねないという点について大きな危惧の念を抱いています。いつ制度改革がされるのか、目標時点を明確にすべきであると考えます。
 ちなみに、私が運営の責にあります守口市の国民健康保険にあっては、老人加入率が約一六%ですので、現行の老人加入率の上限二五%を下回っています。このため、今回の改正により被用者保険と同様むしろ負担が増加いたしますが、制度の公平という点ではやむを得ないと考えております。
 二点目は、退職被保険者についての拠出金問題であります。
 本来、全員が平等に負担すべき老人保健拠出金を退職被保険者は負担せず、その他の加入者に転嫁されています。なぜこのような不公平が放置されていたのでしょうか。今回、それを二分の一だけ是正しようということですが、なお半分が一般の国保加入者の負担として残されることについて不満が残ります。できるだけ早期に全面的な是正をお願いしたいと思います。
 以上、老人保健拠出金についての意見を申してまいりましたが、くどいようですが、今回の改正案は根本的な解決ではなく、十分納得しているわけではありません。現在の財政状況を若干改善できること、他の健康保険では負担が増加する場合もあることから、痛み分けという意味での理解をしているものであります。老人医療については、医療費総額の抑制などほかにも重要な問題がありますが、少なくとも財源負担のあり方としては公平を目指すことが理念の中心になければなりません。根本的には、年齢で切り分けるのではなく、若年者を含む総合的な保険制度を目指す中で解決すべきと考えます。
 次に、診療報酬の不正請求対策強化でありますが、現在の診療報酬支払いシステムは請求に不正がないことを前提として成立をしており、不正には無防備な状態にあります。このような信頼関係を破る行為は犯罪であり、厳正な対応を望むものであります。
 なお、不正防止については、患者自身が請求内容を確認できるような手だても講じるべきと考えます。技術的な検討も種々必要でしょうが、医療についても消費者保護の視点を重視すべきと考えます。
 また、この際付言すれば、診療報酬について請求内容の点検のあり方を大きく改善する必要があります。現在、国保連合会での点検に加えて各保険者においても再度点検をしていますが、旧態依然とした紙による請求方式を改め、一部地域で試行中の磁気による請求方式を早期に導入するなどして、事務の効率化、点検の充実を図るべきであります。
 以上、国民健康保険法改正案のうち、老人保健拠出金と不正請求対策について意見を申し上げましたが、これらはあくまでも与えられたテーマにすぎません。市町村国保の運営に当たっております全国三千有余の市町村長が最も訴えたい点は、このような狭い範囲の議論ではなく、より根本的な検討をしていただきたいというところにあります。国民福祉委員会の委員の皆さんにおかれましては、今回の改正案にとどまらず、引き続き医療保険制度の抜本改革実現に向け御尽力いただきますようお願いいたしまして、私の意見表明を終えたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 喜多洋三

speaker_id: 17569

日付: 1998-05-19

院: 参議院

会議名: 国民福祉委員会