山崎泰彦の発言 (国民福祉委員会)
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○参考人(山崎泰彦君) 上智大学の山崎でございます。本日は、国民健康保険法等の一部を改正する法律案について意見を申し述べる機会を与えていただきましたことにつき、心からお礼申し上げます。
私に求められていますのは、改正法案のうち老人保健制度における老人医療費拠出金の見直しについてであります。
御承知のように、我が国の医療保険制度は、大きくは被用者保険と国民健康保険に分かれ、さらに被用者保険につきましては健保組合や共済組合が設立され、また国民健康保険では市町村国保のほかに同業者による国保組合も設立されているわけであります。こういったことは、職域の労働者や地域住民の自治というものに価値を置いた分権的な皆保険体制だというふうに私は見ております。したがって、経営努力による効率的な運営だとか個別集団の加入者の意向を反映した事業運営が可能になるというメリットがあります。
しかし、その半面で、この体制のもとでは保険者間の財政力格差の発生が避けがたいために、その調整が皆保険達成以来今日に至るまでの一貫した大きな課題になってまいりました。つまり、個別集団内の連帯と社会保障という観点から求められる国民全体の連帯をどのように調和させるかということであります。調整の方法は二つあります。一つは財政力に応じた国庫負担の傾斜配分であります。もう一つは保険者間の財政調整でありまして、現在の医療保険制度はこの二つの調整方法を巧みに組み合わせているものであります。
ところで、見直しが提案されています老人保健制度の老人医療費拠出金は、財政調整の手法として導入されたもので、老人加入率という個別の保険者の責任に帰せられない構造的な格差要因に着目して、国民連帯の観点からすべての保険者がひとしく老人を支えるというのが調整の趣旨であります。その趣旨からしますと、拠出金の算定基礎となる老人加入率の見直しにおいて、依然として三〇%という上限があり、この上限を超過する保険者数の割合が国保では三八%、医療保険の全保険者に対する割合でも二三%も残るというのは、やはり大きな問題があります。
同様に、退職者に係る老人医療費拠出金につきましても、退職被保険者等が支える側に回っていないわけでありまして、その分だけ一般被保険者の保険料等に負担がしわ寄せされているわけであります。しかも、退職者の比率が今後高まるにつれて、さらに矛盾が拡大するという放置できない問題があります。私は退職者医療制度創設時のケアレスミスだと思っております。本来は退職者に係る拠出金についてはその全額を退職者医療制度によって負担すべきなのであって、提案されている二分の一の負担というものには理論的な根拠はなく、日本的な利害調整の産物として提案されているとしか考えられません。
いずれにしましても、現在の制度の調整の趣旨に照らしますと、極めて不十分な提案ではありますが、現状よりは改善されるという意味において改正法案を承認したいというふうに思います。
しかしながら、二十一世紀の高齢社会を展望したとき、現在の老人保健制度の費用負担の仕組みには限界があって、歴史的使命、役割を終えつつあるのではないかというふうに考えております。その意味で、老人医療費拠出金の見直しにおいて、改正法案が医療保険制度等の抜本的な改革が行われるまでの間の暫定的か措置としていることには、基本的に賛成するわけであります。
さて、高齢社会に対応した医療保険制度の抜本改革を進めていく上で大きなヒントになるのは、平成十二年度からスタートします介護保険制度であります。現在の老人保健制度につきましては、制度創設以来、拠出金をめぐっては被用者保険対国保、さらに一部負担や診療報酬をめぐっては保険者対診療担当者という激しい抗争が展開されてきました。しかし、介護保険制度の骨格につきましては、今申し上げた利害が対立している関係団体の間でも最終的には合意を得たわけであります。それは、次に述べるような理由によるものと私は考えております。
第一は、既存の社会保険制度から分離した独自の保険制度だということであります。年金や医療保険の保険者は、介護保険の保険料徴収をお手伝いするいわば協力機関として位置づけられています。したがって、介護保険料の徴収によって年金や医療保険の財政が圧迫されるというものではありませんから、財政の透明性が確保されています。
第二は、被用者と自営業者等の区別のない一本化された制度だということであります。少なくとも六十五歳以上の高齢世代につきましては、保険料の算定方法も含めて完全に同一基準になりますから、世代内の公平性が確保されます。
第三は、高齢世代にも個人単位で負担能力に応じた適切な財源負担を求めでいるということであります。一人当たりの平均的な保険料は高齢世代、現役世代ともに同一でありますから、現役世代が減り、高齢世代がふえても保険料収入には影響しない仕組みになっているわけであります。つまり、保険料負担面での世代間の所得移転は生じない、そういう意味で高齢社会対応型の財政システムであります。
第四は、保険者を市町村にお願いすることによって、市町村が第一号被保険者の保険料を財源として介護給付の支給限度額を引き上げたり、独自の給付を設けることも可能になりました。老人保健制度では市町村は実施主体ではありますが、財政的にはその大半を医療保険制度からの拠出金だとか、国や都道府県の公費負担に依存しています。そういった関係からしますと、市町村独自の施策は老人保健制度では極めて大きな制約を受けているわけであります。つまり、地方分権を推進するという観点からも、介護保険制度は評価できるわけであります。
私は、この介護保険につきましては当初からの推進論者でありました。しかし、制定された介護保険制度が完全なものだとは思っておりません。しかし、多くの関係者の間で合意を得たということに大きな価値を置きたいと思います。また、今申し上げましたように、新しい時代を切り開くことのできる可能性を秘めている制度であることも確かだと思います。
この介護保険の考え方を基本にして、老人保健制度にかわる高齢者医療制度を構築することこそが医療保険制度の抜本改革への道を切り開くものと考えております。
以上で私の意見陳述を終わります。
ありがとうございました。