水島裕の発言 (本会議)
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○水島裕君 ただいま提案されました法律案につき、私は、民友連を代表して、考えを述べ、幾つかの論点について政府の見解を求めたいと思います。
現行の伝染病予防法が成立して、本年で実に百一年が経過いたしました。その間の医学医療の進歩、公衆衛生水準の向上、人権尊重などについて現行法は対応ができなくなってきているのが状況でございます。それゆえ本法律改正は必要だと思いますが、果たして政府が感染症を十分理解して、感染症対策全体の見直しを提案されているか否か疑問に思います。以下、私どもの考えを述べ、政府の見解を明らかにしていただきたいと思います。
まず、個々のテーマに入る前に申し上げますが、過去の反省と基本理念を基本指針へ盛り込むことが必要ではないでしょうか。一九九七年十二月八日、公衆衛生審議会基本問題検討小委員会報告では、過去におけるハンセン病患者などへの差別やらい予防法の存続などについて深い反省が必要であると記されております。
次に、感染症対策で重要なことは、予防により感染の拡大が防げることであります。そのためには、患者の隔離など生活の制限が必要になることがあります。それだけに患者への人権の配慮あるいは良質の医療提供が必要です。まず、総理大臣に御意見をお聞きしたいことは、このような過去の反省と基本理念の盛り込みが重要ではないかということでございます。
私は、今回の法律案の目玉は三つあると思います。一つは、時代にマッチしていない伝染病予防法を改正し、エイズ予防法など三つの法律を廃止し、一本にまとめたことです。二つ目は、WHOも指摘しておりますが、極めて重篤になり得る新感染症に対する危機管理について、三つ目は、これまでの法律では余り強調されてこなかった患者の人権への配慮を打ち出していることでございます。
まず、第一の点ですが、一本の法律にしますと、例えば性病予防法で示されていた重要な事項がなくなります。これらについては特定感染症予防指針などで対応をするわけでございますが、果たして十分に対応できるかどうか、厚生大臣にお尋ねいたします。
次に、新感染症及び指定感染症対策に移ります。
インフルエンザであっても、人々に免疫のない新型インフルエンザ、例えば、一九一八年にはやりましたスペイン風邪でございますけれども、これは全世界で実に二千万人の人が亡くなりました。日本でも五十万人の死者が出たと推定されております。本法律案に出てくる細菌性感染症の治療は、現在では医学的にほとんど解決されていると言ってよい状態ですが、新型インフルエンザに関しましては、当時のスペイン風邪時代とその治療、予防の進歩というのは本質的に変わりはないわけであります。ですから、現在でも極めて危険な状態にあります。このことは、数カ月前の香港のインフルエンザで大騒ぎになったことからもわかります。
インフルエンザでこのような状態でございますので、極めて重篤な感染症が流行したとしたら、エイズやO157のときの十倍いや百倍のパニックになると思います。今回の法律でその対応ができるのでしょうか。
HIV感染症の確定診断のことを思い出してください。そのとき、某教授が抗体検査を米国に依頼し、その結果を厚生省に正しく伝えたかどうかということがはっきりせず、結局は薬害エイズの拡大を防げなかった経験があります。今回の法律にあるエボラ出血熱などの一類感染症の大部分は、現在やはり日本では確定診断がつかないと思います。まずつきません。日本はもっと研究、診断活動を盛んにして訓練しておくべきです。このような状態で新感染症が発生しても、日本では確定診断がつかず、また米国に検体を送り診断を仰ぐのではないでしょうか。
私は、国際協力を否定しているものではありませんが、やや専門的になりますが、診断のための抗原の保存、PCR法の実施、病原体ウイルスの培養などインフラの整備が日本で至急行われるべきだと思います。今のような状態で、この法律に合う行動を日本が十分にとれるとはとても思えません。人権の配慮のため、原則三日あるいは十日以内に退院とうたっておりますが、診断がつかなければ退院のさせようもございません。
エボラ出血熱ウイルスなど、つまり危険な病原体を扱うことのできる施設、これは研究とか診断の施設ですけれども、P4施設と申します。米英独その他の欧米先進国では、このP4施設が稼働していますが、日本では多分稼働しておりません。このような状態で研究や診断に対応できるのでしょうか。病室についても同じであります。今後、これらの施設、病室を至急設置ないし稼働するつもりはありませんでしょうか。厚生大臣にお尋ねいたします。
本法律案では、新感染症や指定感染症の予防、拡大防止、治療を強調していることは大いに賛成いたします。しかし、患者の隔離や交通の遮断といった事柄に終始し、本当の敵である病原体に対する対応が、今申しましたように欠如しております。また、最終的には病原体を絶滅させるということが何よりも大切であると思われませんでしょうか。私ども医学界の人間も努力いたしますが、厚生大臣の決意をお聞かせ願いたいと思います。
なお、危機管理に関してもう一つ質問いたします。
例えば、新型インフルエンザが流行した場合、その衛生上の予防は別としまして、医学的な予防はワクチンのみであります。そのためには、新型ウイルスを有精卵でふやし、ワクチンをつくらなければなりません。日本ではインフルエンザワクチンの接種が義務化から外されたので、増殖のための有精卵やワクチンの製造施設も不十分です。危機管理として、このような現状を厚生大臣はどうお考えでしょうか。また、ワクチンの研究も欧米に比べ極めて少ないと思いますが、この点についてもあわせてお答えいただきたいと思います。
次に、三つ目のテーマ、すなわち患者の人権への配慮について質問いたします。
隔離の長期化を避けるため、入院は三日あるいは十日以内とし、継続も含め、その決定は公平な協議会によるということは画期的なものと思われます。法律案を読んでいきますと、もう少し人権への配慮などの文言、特に医師が患者の人権に配慮するという文言があった方がよいと思いますが、細かい点については国民福祉委員会で議論をしたいと思います。私は、先ほどと同様、医学的にあるいはインフラの面で本法律が人権に配慮し、正しく実行されるかどうかを考えてみたいと思います。
まず、本法律案には四種類の感染症があるんですが、そのうち怖い方から一類、二類、三類感染症になりますが、それらの感染症を全く診たことのない日本の医師が、実に全体の九〇%ぐらいだということを認識していただきたいと思います。つまり、現状では、医師もみんなほとんどこういう感染症がわからないということであります。感染症専門医は今、日本で百人ぐらいしかおりません。仮にある程度わかる医師が診て法律どおり保健所に届けても、保健所の人はもっとわからない可能性があります。私の身近なところでも、このような例は幾つかありました。これではこの法律の文章がたとえ人権に十分配慮していても、実際どうかというと、依然として疑いがあるから隔離を続けるとか、あるいは保健所に材料を渡したけれども確定診断ができないなどということになりそうです。
そこで、私どもが提案したいのは、サブスペシャリティーであっても、十分の人数の感染症専門医の育成、国立感染症研究所情報センターと国立国際医療センター感染症病室の充実、それともう一つ、問題となる感染症が発生した場合、直ちにプロジェクトチームを結成することの三点であります。
先ほど申しましたように、現在、感染症の専門家の数は非常に少ないんです。二次医療圏に一つ、専門家が入った協議会をつくると法律案ではなっておりますが、実行できないのではないかと思います。二次医療圏の数を考えると、千名ぐらいの感染症専門医が必要ではないでしょうか。感染症が主たる専門でなくてもサブスペシャリティーでもよいと思いますが、海外での研修を含め、至急感染症専門の医師及び医療従事者の育成が必要と思われますが、厚生大臣、いかがでしょうか。そのためには大学病院などの教育研修病院を第二種感染症指定医療機関にするような方策はいかがでございましょうか。
米国で感染症の情報を管理し、適切に処理しているのをCDCと申しますが、そのCDCの職員は、全職員ですけれども、実に六千人おります。一方、日本の情報センターの職員は約二十人です。六千人と二十人であります。今後、どうしてもある程度のスタッフの充実は不可欠です。しかし、CDCの規模まで持っていくのは予算的にとても無理でしょうから、私が提案したいのは、問題となる感染症が発生した場合、直ちにプロジェクトチームを結成するべく常時から準備をしておくことです。民間からでもよいから、チーフとなるべき人を決め、対策を検討しておくことです。HIV感染症、O157のときも対応が不適切でした。法律案にさらなる危機管理の強化や人権の保障が盛り込まれるよう、委員会で審議を尽くしたいと思いますが、最後に橋本総理のお考えをお尋ねいたします。
私は、感染症対策として最も必要なことは、知識、経験を備え、人権に配慮でき、機敏に対応できる医師の育成と、種々申し上げましたインフラの整備と思いますが、いかがでしょうか。これなくしては、たとえ法律ができても、感染症、特に新感染症の予防も人権への配慮も、結局はできないことになるのではないでしょうか。
このことをお尋ねし、また強調し、私の代表質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕