前原誠司の発言 (本会議)
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○前原誠司君 私は、民主党を代表して、北朝鮮のミサイル発射について質問いたします。
去る八月三十一日正午過ぎ、北朝鮮は同国の東海岸から弾道ミサイルを発射し、燃料部分のブースターは日本海に落下し、弾頭部分は日本列島上空を通過して、三陸沖の太平洋に弾着しました。このたびの北朝鮮のミサイル発射は、事前に何の通告もなく、また国際法上も重大な疑義があり、ましてや我が国の上空を通過したということは、我が国の安全と国民の生命を脅かし、そして、何よりも日本国民を愚弄する極めて許しがたい行為であります。絶対に看過することはできません。
我が党は、北朝鮮に対し厳重に抗議し、二度とこうした行為を繰り返さないよう厳しく求めるとともに、日本国政府にも毅然とした対応を望む上で、以下、幾つかの質問を行います。
まず、政府の危機管理体制について質問します。
政府は、国会の答弁や記者会見で、八月中旬ごろから不穏な動きを察知しており、関係省庁に対して警戒するよう情報を流していたということであります。問題は、どの程度の緊張感を持って情報を分析していたかにあります。かなりの確度で発射すると考えていたのか、それとも、まさか本当に発射するとは思っていなかったのか。今後の危機管理体制を考える上でも、正直にお答えいただきたい。
また、北朝鮮に対しては思いとどまるよう注意を促したということですが、どのようなメッセージの伝え方をしたのですか。具体的にお答えください。結果的には、そのメッセージを無視して、北朝鮮はミサイルの発射を強行しました。本当に毅然とした申し入れを行ったのか、大いに疑念が残ります。総理自身の評価をお聞きいたします。
さて、十二時過ぎにはミサイルが発射されました。その後すぐに、米軍からの早期警戒情報伝達システムによって、その事実は我が国政府の知るところとなりました。弾着までに約十分間かかったと推測されていますが、早期警戒情報を入手した直後、最高指揮官としての総理あるいは防衛庁長官は、何らかの命令を自衛隊に対して下されたのか、また自衛隊はどう動いたのか、お答えください。
また、弾着後も、それが訓練であったとか、あるいは発射は一回きりだということは断定できません。続いてどのような行動に北朝鮮が出るのかを警戒する態勢を当然しかれたと思いますが、どのような警戒態勢をしかれたのか、お伺いします。
なお、防衛庁長官はその日、宿舎に帰られたと聞いております。情報の収集、解析がまだ十分なされていないときに、司令官が防衛庁を離れて家に戻られるのは、私の感覚からすれば、余りにも緊張感と自覚がなさ過ぎるのではないかと思いますが、反省を込めて防衛庁長官に御答弁いただきたい。
私が申し上げるまでもなく、危機管理体制を強化するためには、情報収集能力の向上が不可欠であります。偵察衛星の導入については、この事件以来前向きな発言が政府から続いてなされています。その必要性については我々も認めるところではありますが、そうであれば、今まさに行われている概算要求にせめて調査費でも計上すべきではありませんか。お答えください。
次に、北朝鮮への対応について質問します。
我が国の上空を通過する形でミサイルが発射され、しかも事前通告もなかったとすれば、私たちは、抗議するだけではなく、毅然とした対応をとる必要があります。そうでなければ、北朝鮮に、日本はこのような事態においても抗議や通り一遍の対抗措置をとるだけだというメッセージを伝えることになり、それがひいては次なる無謀な行為を誘発する危険すらあります。
一日に出された官房長官発表では、日朝国交正常化交渉と食糧などの支援と、KEDOの進行を米韓等との協議の上、当面見合わせるとされています。また、チャーター便も認めないと決定されました。総理、これだけで北朝鮮に日本の厳重な抗議の姿勢が十分伝わるとお考えでしょうか。
また、今後の動向次第では、政府全体でさらなる措置につき検討するとも発表されています。一部では二発目の可能性も報道されています。さらなる措置とは、具体的にどのようなことを想定しているのでしょうか。明確にお答えいただきたい。
さらに、国連安保理及び総会において、しかるべき形で問題提起をする可能性を探求するとも言われています。問題を提起する場合、日本は、国連が北朝鮮にどのような形で影響力を行使し、それによってどのような効果を期待して提起するのか。期待する国連の対応を具体的にお示しください。
一昨日の安全保障委員協議会で、東郷条約局長は、私の質問に答えて、今回の北朝鮮のミサイル発射は海洋法に違反している可能性が極めて高いと答弁されました。国際法違反と断定できれば、国際司法裁判所への提訴という方法もあり得ると思いますが、そのような方法をとるつもりがあるのかどうかもあわせてお伺いします。
次に、ミサイルの国際管理について質問します。
今回の事件に見られるように、多くの国で長射程のミサイルが開発され、またその技術が他国へ輸出されることによって、世界はミサイル拡散という新たな恐怖にさらされています。ただ北朝鮮一国にのみミサイルの開発、輸出の中止を求めても、抜本的な問題解決にはなりません。今こそ本腰を入れて、ミサイルの国際管理についての第一歩を踏み出さなければなりません。
しかし、核の問題と同様、現在既に持てる国はそのままで、新たに開発する国はだめだというのでは、不公平で説得力もなく、また国際管理は現実味を帯びてきません。したがって、米ロなど長射程のミサイルを既に持つ国にも段階的な数量の削減を説得しながら、新たに持とうとしてる国にも自制を求めるという国際的な枠組みをつくっていかなければなりません。条約化も含めて、日本としてそのイニシアチブをとるつもりがあるのかどうか、総理、御答弁ください。
最後に、今後の日本の防衛力の整備についてお尋ねします。
今まで政府は、第三国から誘導弾などを撃ち込まれた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の意味するところではないという解釈に基づいて、誘導弾を発射した敵基地に対する攻撃は憲法上も認められるとしてきました。仮に、今回のミサイル発射が日本領土内に対して行われたとき、この解釈に従えば、日本は北朝鮮の基地を攻撃することが憲法上も認められることになります。しかし、日本の自衛隊の現有能力では敵基地をたたくことは困難です。
今までの国会答弁では、もしそのような場合は、日米安保条約に基づいて、アメリカにその任を期待するとしてきました。総理、今もその答弁に変更はありませんでしょうか。
ミサイルの拡散には、それを阻止する努力は行いながらも、現実の戦われ方の中でミサイルが主流になってきた現状を考えたとき、今の防衛力整備が、時代の流れ、主流兵器の変化に対応できておらず、憲法上も認められた自衛権すらも満足に行使できない状況にあると言えるのではないでしょうか。単にTMDが必要か否かの議論でとどまるだけではなく、防衛大綱も見直し、防衛力整備の思想そのものを変更する時期に、もはや来ているのではないかと考えられます。
この点について総理の見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕