岩本荘太の発言 (本会議)
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○岩本荘太君 私は、去る七月の参議院選挙で初当選したばかりの新人議員でありますが、今回、参議院の会の皆様のお許しをいただき、小渕内閣総理大臣の所信表明に対して、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
まず、今回の緊急経済対策のいけにえにされようとしている財政改革法の凍結について質問をいたします。
個人的な体験でありますが、先日、タクシーに乗ったときに今回の経済対策を報ずるニュースが流れておりました。それを聞いてドライバーが、こんなに大盤振る舞いできるお金が一体どこにあったのですかねと言うのであります。あれだけ財政の危機だと大騒ぎして決められた財革法が頭にあるからです。これが庶民の偽らざる気持ちだと私は思っております。
現下の経済情勢を眺めたとき、だれもが財革法を凍結してでも、まず景気対策を講じてもらいたいと願う気持ちでいっぱいであることは紛れもありません。しかし、同時に国の財政事情を気にしているのも事実であります。現実に年金法の改正などが見え隠れしております。
昨年、財革法が制定された当時、私は石川県の一職員として外から経緯を眺めておりました。そして何となく不安を感じておりました。というのも、過去何回も財政再建が叫ばれたものの、財政再建より景気対策だという声に押し切られて、最後は赤字国債の発行に至ったケースが多かったことを思い出したからであります。しかし、今回は法律にしてまで取り組もうとするのですから、これまでと対応がひとつ違います。これは本気だろうと思いました。
ところが、平成十年度当初予算には確かにある程度反映されたものの、その直後から当初予算の方針が全く消えてしまうかのごとき補正、補正の連続です。そしてその後の結果は残念ながら現在のひどい状態です。私と同じ気持ちになっている一般国民がほとんどだろうと思っております。これでは何のための財政改革だったのかと思うのが当然です。
私は、景気対策より財政改革を先にすべしと言っているのではありません。このような財政の引き締めと緩和が、国民の理解のないまま繰り返されては国民はたまったものではないと言いたいのです。国の財政状態は本当にどうなのか、政権を担当する責任者からしっかりと説明してもらわなければ国民は安心できないのであります。
国の借金の多寡を云々しているのではありません。財政に対する正しい認識を持っていなければ、国民はいつまた負担増が来るのか不安です。こういう気持ちでは、幾ら懐が暖かくなっても、将来に備えて貯蓄に走ってしまうのは目に見えております。緊急経済対策の実効性は絵にかいたもちでしかありません。
小渕総理は、今の財政状態をどのように認識し、今後どのように改善していこうと考えておられるのかおられないのか、その点をまず我々国民にはっきりさせてもらいたいのです。単なる財政上の数字合わせでは納得できるものではありません。多くの施策と関連があると思いますので、ぜひ総理に御答弁を願います。
また、今の赤字国債は、後年、今の若者を含めて我々の子孫に任されるわけですから、迷惑を受ける彼らの理解と了解が大切であります。そこで、若い人に対する国の財政事情の説明がぜひ必要であります。そういう人たちにどう説明しているのか、総理にお伺いいたします。
また、例えば大学の財政学講座などで取り上げてもらうようお願いする取り組みはいかがでしょうか、あわせてお尋ねいたします。
次に、地方分権についてお尋ねします。
総理も施政方針演説の中で、地方分権社会の推進をうたっておられます。私も今まで地方行政を担う一員としてその成果を大いに期待していた一人であります。二十一世紀の望ましい日本社会は地方主権社会だと確信しています。地方のことは地方が自主性を持って決めていく、個性豊かで潤いと活力に満ちた社会、地方を中心とした社会でなければならないと思っております。一極集中型で経済成長に重点を置いた戦後の復興の時代からの変換です。見方によっては経済の時代から文化の時代へ変換する、革命にも匹敵する大きな変換だと言えなくもありません。小手先でなく、国民全体で真剣に取り組んでいかなければなりません。
今、地方分権推進委員会でも精力的に議論されていることは承知しておりますが、地方の立場から眺めて何点か質問をさせていただきます。
まず、分権による地方の時代の確立は、単に権限の移譲にとどまらず、財源と人材の移譲が伴わなければ絶対に成功しないことは言うまでもありません。しかし、財源の移譲は税制に直結する難しい問題です。人材の問題にしても、有能な人材の確保が必要です。それぞれ大きな問題を内蔵しております。権限、財源、人材を三位一体として、どのように調和をとって対応していくのか、またこの先、分権社会が進むにつれ、さらに地方からいろいろ要求が出てくることも予想されます。そのときは国は出し惜しみをせず、十分に地方の意を酌み取って対応していただかねばなりません。今後の進め方について、明快なる答弁を総理にお願いいたします。
分権による地方主権の時代は、住民自身が参画して初めて花開くものであります。行政に携わらない一般住民にも正しく理解してもらい、積極的に参加してもらわなければなりません。これらの人たちにどう啓蒙して、どう体制を整えていくのか。国の問題だ地方の問題だと検討を譲り合うのでなく、国家的な課題としてどう取り組むのか、国としての考え方を地方に示すべきであると考えます。総理の御所見をお伺いいたします。
次に、農業問題についてお尋ねいたします。
平成九年四月、総理大臣が諮問されました食料、農業及び農村に係る基本的な政策に関する調査に対しまして、本年九月に答申がなされました。今後この答申に基づいて基本法を初めとする諸般にわたる法令が提出されることと思われますが、さきの農業基本法がほぼ三十五年続いたことを考えますと、新しい基本法は、この先長期間、日本農業のバイブルとして日本農業のかじ取り役を果たすものと思われます。したがって、さきの基本法の反省も含めて、現場の実態に即した、また現場の声を十分に反映したものでなくてはならないのは当然であります。その辺の御認識に関しまして、一、二点質問をさせていただきます。
答申は、食料・農業・農村政策の目標の一つとして、地域農業の発展に目を向け、地域の条件や特色を生かした自由で多様な経営展開を進めることを挙げています。今までの護送船団方式からの転換は、地方分権の時代にかなう時宜を得た農業のあり方であると思います。
そこで、お伺いいたします。これからの農業の担い手でありますが、昭和三十六年に制定された農業基本法に基づいて、ひたすら専業農家の育成に努めてきたのが今までの農政であったと理解していますが、その結果はどうであったか。専業農家は減少の一途をたどり、兼業農家がふえているのが現状です。これだけ長い期間努力してもそうならないのは、日本の体質に合わないと考えざるを得ません。もちろん、大規模経営の専業農家を支援することも大切ですが、日本農業を全体としてとらえれば、地域の実態に即して展開されている兼業による農業に対しても支援が必要と思います。農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。
また、最近、地域によってはサラリーマン生活を終えた高齢者が農業に真剣に取り組む傾向を見受けます。日本農業を支える力として評価すべきであると思います。また、活気と健康が維持されるのであれば、農業政策としてばかりではなく福祉政策としても意味を持つと思います。高齢者農業に対する取り組みについて、農林水産大臣にお伺いします。
また、福祉政策的観点から何らかの対応が図れないか、厚生大臣にもぜひ答弁をお願いいたします。
中山間地の活性化対策は、これからの日本にとって大きな課題です。条件不利地だからといって取り残すわけにはいきません。水資源や酸素供給など資源の源であり、また、国民全体の憩いの場でもあります。中山間地に住む人たちだけの問題ではなく、都会に住む人たちの問題としても理解していただかなければなりません。
デカップリングなどの所得補償制度を検討されているやにも聞いておりますが、生活の条件をしっかり確保することが大切であります。しっかりした教育環境や福祉厚生環境が整っていなければなりません。農林業対策だけでなく、総合的な対策が必要です。日本の国土にかかわる大切な問題です。どのように総合的に取り組んでいかれるのか、ぜひ総理にお答えを願います。
最後に、参議院に対する新人議員の率直な印象を述べさせていただきます。
多くの選挙民の皆様方から指摘されたことでもありますが、参議院の機能、存在意義がわからない、参議院が衆議院のカーボンコピーに見えるということであります。私自身も、第百四十三回の臨時国会に参加させていただき勉強いたしました。まだ理解が不十分ではありますが、また諸先輩を前にしてこのようなことを申すのは僣越かと思いますが、衆議院での審議で決定された党議がそのまま参議院に持ち込まれているように見えてならないのです。同じ党派であれば、衆議院にいようが参議院にいようが、意思統一されるのは当然のことかもしれません。しかし、これでは参議院の独自性が見えてきません。
参議院は参議院として独自に判断を下してこそ、二院制政治が健全に運営されるのだと信じております。押しボタン方式の導入等、参議院改革と呼ばれる改革は幾つか実現されております。その労は多といたしますが、もっと根本的な問題、参議院の独自性をどう発揮するか、個人の意見を尊重する、良識の府としての参議院をどう確立するか、参議院改革の課題は山積していると思います。
我々参議院の会は、それらの諸課題に取り組むことを旗印にして集まりました。それぞれの主義主張は一切拘束せず、議員経験に関係なく、並列の関係でつながった会派であります。これが良識の府の姿だと思っております。その存在そのものが一つの参議院改革だという信念を持って、今後も参議院改革に積極的に取り組んでいく覚悟であります。現在の二院制の現実とあり方について、政権政党のトップであられる政党人として、小渕総理の御所見をぜひ伺いたいと思います。
また、これも選挙期間中に学んだことでございますが、国民には今の政治がよく見えないという不満が多いのであります。そのことが政治に対する無関心層、無党派層を拡大させていると考えます。現場と密着した政治でなければ本当の政治とは言えません。現場にいる者の声が届かない、現場にいる者が理解できない政治では国民は離れていくのは当然であります。
もちろん、政治は決断と実行が大切であることは言をまちません。小渕総理がかつて対人地雷全面禁止条約の際に見せた毅然たる態度はいまだに印象に残っているところであります。が、一方で、総理のやり方がなかなか国民にはよく見えない、そのために支持されないというのも現実であります。
小渕総理御自身も所信表明の中で、国民一人一人の立場からの御意見を幅広く聞き、総理の考えを直接話す機会を積極的に設けてきたと、現場の声の大切さを述べておられます。大変結構な姿勢であると賛同を覚えるものでありますが、それだけにとどまらず、現場の評価を謙虚に聞く必要があります。そして、評価、理解が得られないときは潔く身を引くのが民主政治の原点であると信じております。現在、総理は国民にどのように評価されていると御認識されているのか、御所見をぜひお伺いするとともに、国民からどのような反応があったときに身を引くのかについても、あわせお伺いいたします。
私は、いまだいわゆる永田町の政治の駆け引きも政治用語も知らない身であります。選挙民の皆様にわかりやすい政治を公約して当選してまいりました。ぜひわかりやすい答弁をお願いする次第であります。私にお答えいただくというよりも、広く国民の皆様に理解してもらうという姿勢でお答えいただくようお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕