堺屋太一の発言 (消費者問題等に関する特別委員会)

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○堺屋国務大臣 規制緩和というのは、結局、自由主義市場経済を目指すものでございます。
 自由主義市場経済とは何物かと申しますと、これは、十八世紀に産業革命が起こって、いろいろなやり方、商品、技術、いろいろなものが生まれてきたとき、どれがいいものであるかわからない。何しろ、当時は、聖書の言葉さえ疑われた時代ですから、どれがいいものか、役人にも学者にも選ばせるわけにはいかない。
 そういうときに、どうしたらいいか。イギリス人は、あらゆるものを市場で販売する権利を認める、いわゆる法の前の平等、こういう身分の人でなければこれはしちゃいけないとか、こういう権利を持っている人でなければそれをしちゃいけないとかということをなくして、自由に販売させる、いわゆる新規参入の自由ということを行いました。そして、どれがいいものかは、市場が、つまり買い手が選ぶんだ、消費者が選ぶんだという消費者主権を確立しようと。新規参入と消費者主権がセットになっているわけです。
 そういたしますと、当然、供給者、事業者の方は玄人でございまして、消費者の方は素人でございますから、玄人が素人をだましちゃいけない。だますのは簡単だから、これは抑えなきゃいけないというので、供給者の情報公開を義務づける一方、消費者には、消費の秘匿、何を消費したか、何を買ったかを隠す権利がある。こういう理念、概念を打ち立てた。これが自由経済の始まりであります。
 したがって、これを政治に適用したのが民主主義でございまして、だれでも立候補できる、そして、政治の消費者である投票をできるだけたくさん集めた者が当選し、それの多い政党が政権をとる。そして、立候補する人は供給者でございますから、必要な情報は公開しなきゃいけない、政治の消費者はだれに投票したか秘匿する権利がある、こういう仕掛けになったわけです。
 この例で考えていただきますとわかりますように、新規参入と消費者主権と情報公開が三点セットになっている。この制度の一番の利点は、まず第一に、競争によって、消費者が一番選べるものが残る、消費者好みのものが残る。これが安いものであるか高いものであるか、それはわかりません。だから、規制緩和によって保障されている最大のポイントは多様化、消費者の好きなものが残るということでございます。消費者の選んだものが残るということが最大のメリットです。
 第二番目には、新規参入が認められておりますから、どんどん、新しいやり方、創意工夫が生かされて、日進月歩、新しいものが生まれてくる。そして、それにまた消費者が支持をすれば、それが発展をする。そういう常に改善、改革が行われるというのが一番のメリットで、そういう仕組みをつくろうというのが、この規制緩和、自由化の基本的な考え方でございます。
 大規模小売店法にかかわりまして、累次規制緩和を行い、小売業にかなりの影響を与えておりますのも、大規模店でも小規模店でも、あるいは無店舗販売や通信販売、最近では電子商販売等、あらゆる形を認めることによって、消費者選択を広げていこうということです。その結果、いわゆる神の見えざる手というのが存在してくる。これによって、生き残るものは生き残り、繁栄するものは繁栄する、そういう仕掛けになっております。
 この神の見えざる手というのは、よく言えば神の見えざる手ですが、悪く言うとジャングルのおきてでございます。だから、ある段階である分野を見ますと、確かに弱肉強食が起こるのです。ところが、全体として見ると、ジャングルのおきてというのは、いわゆる極相、ある一定の形で、肉食獣がふえると草食獣が減って、肉食獣が飢え死にして、また草食獣がふえる。草食獣がふえると草が減って、それが減る。こういう神の見えざる手による自然調整が行われるものと期待しているわけです。
 そういったことをつくっていこうというわけでありますが、一方、現実の問題として見ますと、その間に、大規模店が出たので従来の商店が衰退をするという問題があります。しかも、この十年間の経験でいいますと、商店街の衰退が徐々に起こるのではなくして、ある日突然起こる。特に、地域商店街、夕げを買いに奥様方が来られるような商店街でございますと、お魚屋さんとお肉屋さんと八百屋さんのどれか一種類がなくなるとがっくり減る、客足がとまるというようなこともございます。そういった構造的な問題が後継者難と絡んで非常に重要な問題になってまいってきております。
 経済的、社会的には、長期的に見ると、先ほど申しました神の見えざる手による市場原理を貫徹することは大いなるプラスがあるわけでございますけれども、短期的にはあるいは部分的にはそういう弱肉強食というようなことも行われ、住みなれた土地を去らねばならない人も出てまいりますし、職業をかえなければならない人も出てくるという副作用もございます。また、一時的には、反社会的な商売が行われることもあります。新規参入を自由にいたしますれば、商売、小売店にいたしましても、サービス業にいたしましても、言論活動にいたしましても、反社会的なものが出てくる可能性があります。
 こういうものを官僚が取り締まるべきか、それとも、消費者の選択によってそういうものは排除されるのだと考えるべきか。自由主義市場経済の世の中では、あくまでも大衆を信頼いたしまして、そういうものは大衆が市場メカニズムで排除するのだと考えています。だから、できるだけ官僚はタッチしないで、一見反社会的なものができても、情報公開が確実であれば、必ず大衆が排除するはずである、市場競争が排除するはずである、こう考えているのでありますが、現実には必ずしも時間的にそのようになるとは限りません。
 そういう意味で、副作用をとめるために、多数の利益に対して少数の利益を守ろうということも必要になってまいります。市場原理を貫徹していく上で、この少数の利益、あるいはそれの間のタイミングのとり方等々の問題は、検討する必要のある課題だと思います。
 現在、ガソリンスタンドや酒類販売店につきましてこういった問題が起こっておりまして、ガソリンスタンドなどは一時、大変たくさんできました。土地の値上がりを待つためにスタンドにするというようなことも含めて過剰になったことがございまして、それが今、大廉売になっております。ちょっと最近とまったようですが、ことしに入ってまた始まっている、一部にはあるようでございますが、そういった時間的猶予をどう考えるかというのは、一つの問題として存在すると思います。
 今、この自由化の問題と規制緩和の問題と社会的な問題、このはざまが目立っている時代でございますけれども、長期的に見れば、私は、自由経済、市場経済というのを推進することが日本にとって必要であり、有利であると考えております。

発言情報

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発言者: 堺屋太一

speaker_id: 30364

日付: 1999-03-04

院: 衆議院

会議名: 消費者問題等に関する特別委員会