笹森清の発言 (日米防衛協力のための指針に関する特別委員会)

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○笹森参考人 おはようございます。連合の笹森でございます。
 今回、お呼びをいただきまして大変光栄に存じておりますが、連合の立場から申し上げますと、組織の中では、労働四団体が統一をされてからちょうど十年目になります、十年たちますが、この外交防衛、ガイドラインの問題については、国民世論と同じように、連合としては完全に意見が一致をしているというような状況にはなっておりません。なっておらないということが余計に、国民の声をどういうふうにまとめるかという立場でやらなければいけない連合の役割もあるのかなというふうに考えまして、ややお招きを受けたときに逡巡はいたしましたけれども、そういうような立場での意見を申し述べさせていただければ、こういう思いの中で本日出席をさせていただきました。
 そういう意味では、連合は八百万の構成人員がおりますが、国民の一部を代表する立場、そういう意味合いを今申し上げたように込めまして、上程をされているガイドライン関連法案に関する意見を申し述べたいというふうに思っています。
 まず、民主主義のルールに沿ったこの国会という場で、不明点や疑念点に対して明らかにした上で、政治的な対応を図ってほしいということが要請の一つ目の部分です。
 それから二つ目は、労働組合という立場から、国民レベル、組合員という言葉を私どもは使いますが、市民生活をしている国民でありますので、そういった生活の不安や生命の危機に至る事項、すなわち、この法案の中で取り扱われておりますいわゆる第九条の民間協力、施設提供についての主張、ここの部分を私どもとしては重要視した意見を申し上げたいというふうに思っております。
 陳述の仕方といたしましては、ガイドラインに対する考え方について触れさせていただきまして、その上で、本法案にかかわる明らかにしていただきたい事項の内容についての意見という手順を踏ませていただきたいというふうに思います。
 まず一番目が、日米の新ガイドラインに対する連合の立場での見解であります。
 この新ガイドラインにつきましては、九五年の一月に、自民党、社会党、さきがけの連立政権時代における村山政権下において、村山総理、クリントン大統領による会談での日米安全保障体制堅持の重要性の再認識、こういう観点から会談が行われまして、それを受けまして九六年の四月に、橋本内閣における橋本・クリントン会談、日米首脳会談での日米安保共同宣言を経て、九七年の九月に日米双方における最終確認を経て合意したものだ、こういうふうに今認識をしております。
 したがって、この経過から見ますと、国民の審判を受けずに成立をした二政権下において合意に達したこの新しいガイドラインについては、日米双方の国家的な合意だというふうに重く受けとめはいたしますけれども、国民側の今までの長い経過から申し上げますと、ガイドラインについて、重くは受けとめるけれども、明らかにさせていただかなければならない内容というのがかなり多くある。このことについて、国会の中でルールにのっとった対応をしていただいた上で、締結をするなら国民の疑念が解消される方向になるようにということをまず第一番目に申し上げたいと思います。
 その上で、旧ガイドラインが日米共同作戦計画を基軸に置いた日本有事対応であったというふうに私どもは理解をしておりますが、この新しいガイドラインについては、日米の相互協力計画を基軸に置いた周辺有事対応になっている。それにもかかわらず、本来日本有事対応であったはずの日米安全保障条約の再定義を行ったけれども条約の改定を行わずに日米双方で合意をしたというところに、最大の問題点があるのではないかというふうに考えております。
 したがって、日米安全保障条約は本来二国間同盟であったものを、この新しいガイドラインの設定によりまして、本来の日米安全保障条約を改定せずに地域全体の安全保障を担保するものに変質をさせてしまったのではないかというふうに思っております。
 連合は、私どもみずからが十年をかけてつくりました連合の「国の基本政策」の中では、現行の安全保障条約を維持していくということについては確認をしておりますが、今申し上げたような条約改定を行わないで安全保障条約を変質させたということについては問題視せざるを得ないのではないかというふうに思っております。
 それから、周辺事態法にかかわる問題についても、日本周辺地域、後方地域という用語に関係をして、この新ガイドラインの時点から明確化されていない。このことが不明確なまま合意をされるとするならば、我が国の将来に対する不安と疑問を生じざるを得ないということも申し上げておきたいと思います。
 さらに、この日米新ガイドラインにつきましては、米軍活動における日本の支援として民間協力及び自治体の施設提供がうたわれておりますけれども、日本有事対応から周辺有事対応に拡大をされた新ガイドラインにおいて、協力、提供の必要性が生じるのかどうか、このことについては疑問があります。
 そういったような観点の中から、各項目について、私どもの考え方を幾つか申し上げたいと思います。
 まず、この法案は、昨年四月の百四十二回通常国会において、橋本内閣により政府提案がされて、審議未了のまま小渕内閣の方に引き継がれ、今回政府提案として審議をされている性格を持つものでありますけれども、内閣における連立の枠組みが変わったというにもかかわらず、原案のまま審議をすることに矛盾がないのかどうか、このことをまず指摘をした上で、個別課題について申し上げます。
 まず、周辺事態安全確保法案につきましては、民主主義のルールにのっとりまして、当然の権利として国民の意思により周辺事態に必要となる措置の基本計画を停止、修正できる機能を持つべきであるということがまず第一点です。
 この考え方に基づきまして、その具体的な機能としては、法案に定められた基本計画において、その措置の実行に当たっては国会承認とし、その方法については、緊急を要する場合の事後承認を除いてすべて事前承認にすべきだというふうに思っております。
 私どもがマスコミ報道等で仄聞をしている中では、自衛隊の出動の是非のみを国会承認の対象とすることで調整を進めているように聞こえておりますけれども、現行の自衛隊法での日本への直接攻撃に対する自衛隊の出動は理解ができるにいたしましても、周辺事態という範囲での自衛隊出動のみが国会承認となることは、出動時点や出動範囲の面からも不明確でありまして、不安と疑問を生じざるを得ません。政府は、基本計画まで触れると膨大な作業量と時間がかかる、こういうふうに言っているようでありますが、緊急を要する場合を除きましてという断り書きをしているにもかかわらず、なぜ時間的余裕もある周辺事態にこれまでかたくなに対応についてできないというふうにこだわるのか理解ができないところでありまして、自衛隊の出動のみというのは、ただ単に有事体制と周辺事態を同一視した考え方ではないかというふうに受けとめております。
 また、事前承認後の対応につきましては、経過事後の歯どめ見直し措置として、十五日、三十日、六十日条項といったような承認後の経過見直し措置を入れまして、対応措置の早期解決に努力をすべきではないかというふうに思っております。
 それから、周辺事態の定義につきまして、これは明確になっておらないというのが受けとめ方でありまして、ぜひこの国会の場を通じて明らかにしていただきたい。その場合におきましては、あくまでも防衛的性格を持つべきものであって、法案が現行の日米安全保障条約に根拠を置くべきことを明確に記すべきであるというふうに考えます。
 さらに、周辺事態の範囲につきましては国会審議の決定にゆだねていきたいというふうに思っておりまして、労働組合の立場からその線引きについて言及をするというようなつもりは全くありませんが、今申し上げたような定義及び国際地政学の観点から、おのずとその範囲は限定をされてくるのではないかというふうに考えております。
 そういった意味で、周辺事態の発生におきまして、法案にかかわる重要個別課題が生じた場合においても、国会承認によって歯どめを講じる措置をとるべきだ、そのことも明記をするべきである。
 さらに、武器の使用及び武力行使、後方支援活動における武器の使用、船舶検査、機雷除去等、この法案の争点になっている事項についても、国会審議の過程の中で明確にしていただきたい。そのことが国民の不安と疑念を取り除くことになるのではないかというふうに思っております。
 さらに加えまして、この法案の措置のうち、冒頭申し上げた民間協力、施設提供の部分の問題についてでありますけれども、周辺事態という特性から、自衛隊の守備範囲のみで可能か精査の上で、可能であれば新ガイドラインでは立法上の義務づけを行わないということを明記してあることを根拠にして、削除をすべきではないかというふうに思います。審議の上、仮に削除不可であるというふうになった場合には、国会において、民主主義のルールにのっとって、具体的当該協力内容を明らかにして点検精査をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 また、この件にかかわりまして具体的措置が生じた場合におきましては、国会承認により担保すべき最重要事項とすべきで、そのことの取り扱いもぜひ御理解がいただければというふうに思っておりますが、この点につきましては労働組合の立場から強く主張をしていきたい点でありまして、私どもの加盟組織の中には今までに何回かこの危険な作業にかかわらざるを得なかったという立場に置かれた組織があります。中には被弾を受けたケースもありまして、有事体制でもない周辺事態においてもここまで一般的な国民の生命を危険にさらしていいものかどうか、この国会の中でぜひ慎重に審議をしていただきたいというふうに思っております。
 それから、この法案の成立を前提にいたしまして、市民運動としての、港湾施設を持つ各自治体に対しまして外国艦船に非核証明書提示の義務づけを行ういわゆる神戸方式、これは函館、高知というふうにいろいろありますが、私どもは、神戸方式の条例請願が行われている実態について、運動を地域に居住する生活者の不安を解消する観点から理解をしていきたいというのが連合の基本的な態度であります。したがって、この民主主義のルールにのっとり行われておる運動が、政治的な意図で妨害をされるようなことがあってはならないのではないかというふうに考えていることも申し上げておきたいと思います。
 あわせまして、この法案に関連をいたしまして、民間協力、施設提供において、昨年、沖縄県道百四号線越えの米軍実弾演習本土移転による、矢臼別、北富士、王城寺原での演習に伴いまして、輸送ルートの変更、民間航空機による輸送、兵員、兵器輸送の国道使用、地元病院の緊急医療支援要請等が行われた事実があります。このような既成事実についても国会の中でぜひ明らかにしていくべきであります。
 加えて、日本の国内において七割の米軍基地を抱える沖縄を初めとする演習地におけるアメリカ海兵隊員による不祥事等、看過されている現実を直視して、改めて、一方的に我が国国民に負担を押しつける日米地位協定についても、国会の中で審議をし、性格づけやその対応について明確にしていただきたいというふうに思っております。
 これに加えまして、最近の新聞報道、これは三月二十二日付の朝日新聞になりますが、この中で明らかにされていたのは、この法案では基本原則だけにとどめて、法案以外、例えて言うならば日米地位協定第二条四項(b)の件、自衛隊法、港湾法、航空法、特別措置法の一部等々に民間協力や施設提供等が容易にできるように法律化されていることに、新たなる疑念を持たざるを得ないというふうに思っております。
 この中身が、特に防衛施設庁関連の特別措置法の土地収用におきまして、新規の使用、収用を入れ込ませているというふうに受けとめられる内容になっておるわけでありまして、法律の拡大解釈以外の何物でもないのではないかというふうに私どもは考えております。
 この内容につきましては、地方分権法の一部を占めている内容でありますが、地方分権法とは何の関係もないというふうに考えられておりますので、ガイドライン法案に明記をされないものがほかの法律で適用されるということになりますと、国家に対する不安と恐れが増大するのみで、得策ではないというふうに思っております。したがって、今国会においてこの点についてもぜひ明らかにされるように御要請をしたいと思います。
 連合としての立場の中では、冒頭申し上げたように、まとまっていない中での、そのことが逆に国民の声になるのではないかという思いの中で出席をさせていただきまして、意見を申し上げさせていただきました。どうかよろしくお願いしたいと思います。(拍手)

発言情報

speech_id: 114504963X00619990407_004

発言者: 笹森清

speaker_id: 7244

日付: 1999-04-07

院: 衆議院

会議名: 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会