島田洋一の発言 (日米防衛協力のための指針に関する特別委員会)

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○島田洋一君 島田です。
 今、小林さんもちょっと触れられましたけれども、先日、新潟沖で不審な船が発見されて、それを日本側が追跡したものの、結局逃走を許したという事件があったわけです。後に日本政府は、これは北朝鮮の工作船であると断定して、北側に対して抗議も行いました。
 工作船といえば、北による拉致であると判断せざるを得ないような、そう見るのが自然である日本人行方不明事件というのが、過去に、特に日本海側で相当数発生しておる。この福井県からも、少なくとも二人の方々が拉致された疑惑が大変濃厚である。そのときも、あるいは有名な横田めぐみさんのようなケースにおいても、恐らく今回のような工作船に連れ込まれて乗せられていったということなんでありましょう。
 そういう福井や新潟等の拉致事件が起こったのは、もう二十年以上前であります。つまり、日本からの拉致を許して、被害者は捕らわれたまま、そういう極めて深刻な事態の発生から二十年以上たちながら、まだ、日本の領海を侵犯した工作船の逃走をみすみす許しておるというのが、残念ながら日本の現状である。
 今回も、ひょっとしたら、だれかが、拉致された日本人が、あの船に乗せられて、助けを待っておったのかもしれないわけです。ところが、現状では、仮に我々が工作船に連れ込まれて、日本政府がその工作船を発見しても、そのまま我々は北朝鮮の港まで連れていかれてしまう、そういう現実が改めてはっきりした。したがって、追跡して警告射撃もやった、一歩前進であるかもしれませんが、一歩前進だなどと評価しておるような場合では全然ないということをまず述べたいと思うわけです。
 現場の自衛官や海上保安庁の職員の方々などは、現行法の縛りの中で最大限の努力をされたようですが、それだけに、このシステム自体の欠陥、つまり、日本における安全保障体制、危機管理システムの著しい不備、おくれというものが非常に明確に示された象徴的な事件であった、単に海上警備の不備ということだけじゃなくて、全般的な欠陥を象徴する事件であったと思います。
 今回の周辺事態法案ですが、これは急がれるに至った経緯を見ても、明らかに、何よりも朝鮮半島有事、第二次朝鮮戦争、起こってほしくありませんが、それに備えた措置として大変重要なものであります。
 安全保障政策というのは、抽象論で議論していても意味ないですから、やはり我々が置かれた環境がどうなのか、つまり、どういう勢力と向き合っておるのかというところから、そこに立脚して考える必要があると思います。その点で、現在の北朝鮮政権、これがどういう性格の集団なのかということをはっきり押さえておくのが出発点になるだろう。
 現在の北朝鮮政権、これは本当に言語に絶するような人権じゅうりんを一般民衆に対して続けておる。ちょっとでも政府批判などをやれば、即座に、連座制のもと家族全員が強制収容所送り、あるいは公開の場での処刑、公開処刑などもまだ行われておる。飢え死に寸前の民衆から徴発した財というものを大量破壊兵器の開発・蓄積あるいは個人崇拝行事、幹部専用別荘の建設とかにつぎ込み続けておる。他国民に対する拉致行為あるいはテロ、破壊活動なども繰り返してきておるわけです。
 また、麻薬の製造、密輸、外貨の偽造等も組織的に行っておる疑いが濃厚である。北朝鮮における食糧危機の原因の一つが、実は優良な農地を麻薬用のケシ等の栽培に転用した結果である、理由の一つがそれであるということも最近明らかになってきておるわけです。そうして、麻薬の売買等でもうけた金は、また大量破壊兵器の開発・蓄積に回されておる。こういう集団と我々は直面しておるのだ。すなわち、日本も、今やはっきり危険地帯の内部に我々はおる、こういう現実を直視して、そこから安全保障政策を立てる必要があると考えるわけです。
 そういう有事に備えた体制づくり、これは二つの側面があって、一つは、攻められたとき、あるいは工作活動をしかけられたときに防御する防御体制の整備強化ということであり、もう一つ、二番目には、侵略が起こった場合に、侵略した側の指令系統の中枢部や軍事基地、施設に対する反撃体制を整備強化する。そのことによって抑止力の強化にもなるわけですし、不幸にして侵略が起こった場合には、その侵略の拡大を阻止して戦争の早期終結につなげることもできるわけです。
 そういう防御体制の整備、反撃体制の整備、両方が必要だと思うのですが、日本海側の福井に住む人間としては、特に防御面での不備というのを実感せざるを得ないわけです。それは、海上警備の不備もそうですし、また福井県は原発が集中的に立地しておる地域ですが、原子力発電所の警備も、まだまだというか、ほとんどろくな警備がなされていないという状態が続いている。
 また、今回も、自治大臣あるいは官房長官あたりが、日本にかなりの北朝鮮の工作員が入っておる、今回の不審船問題も絡んで、かなり北の工作員が日本に入っておるということを認めておるわけです。ところが、そういう工作員等が次々摘発されているというようなニュースも聞かないわけです。そうした工作員あるいは国内の協力者を摘発するというような体制もまだまだ不備である。そういう防御面での不備を大変強く我々は感じるわけです。
 したがって、今回の周辺事態法案のように、これは抑止力を高める反撃体制整備の一環としてのものですけれども、それとともに防御面での対策、テロ対策等、日本の場合、特に対テロ、対破壊工作ということになるわけですが、そういう防御面の対策も講じないといけない。
 この周辺事態法案に限りますと、反撃体制の整備の一環である。反撃ということになりますと、能力的にも当然米軍が中心になって、韓国軍がそれと一体となって軍事的対応をとる。危険地帯の内部におる日本としては、どう米軍をサポートするのかという課題にこたえようとするものであります。
 先ほど須藤さんも触れられましたけれども、侵略行為には、国際社会が協力して、必要とあれば軍事的手段も用いて対抗するんだという国連憲章の理念、集団安全保障の理念に基づくならば、日本も国連加盟国なんですから、当然、反撃あるいは侵略撃退行為に参加する。武力行使と一体となったというような表現がありますが、本来、そういう協力をするというのが筋であります。例えば、ヒトラーのような連中に対して中立を守るなどというのは、何ら倫理的に褒められた態度でも何でもないわけです。
 しかし、ここに、先ほどから話も出ていますように、日本国憲法の制約というものがある。本来ならば、国連憲章に則した形で日本国憲法を修正する、すなわち、集団安全保障体制の一員として責任を果たすんだということを明記する、これが筋であると思いますけれども、政治的には、困難だという判断が政治家の方々の間ではあるようです。
 便宜的ではありますが、憲法解釈の変更で対応しよう、集団的自衛権も実は認められていることがわかったんだというような、格好悪い話ですけれども、そういう憲法解釈の変更をすべきだという議論もありますが、それをやれば、もう少し筋の通った法案になったんじゃないかという気がいたします。
 日本政府は、今回そういう憲法解釈の変更も行わずに、この法案は、あくまで集団的自衛権の発動は憲法違反なんだという従来の憲法解釈の枠内におさまるものとして構成したんだ、そう述べております。実際、そのために、これはいわゆる後方支援、つまり日本として兵たん活動を行うものですが、その兵たん活動として、かなり不十分、不安定な形になってしまった。その分、抑止力は減殺されたわけで、問題があると思うのです。
 しかし、とにかく、大変危険な北朝鮮政権に対処する体制整備を急がないといけない。その必要にかんがみれば、修正を要する点はあると思いますけれども、速やかに成立させるべき趣旨の法案であると思うわけです。
 前方だとか後方だとかは、戦争になれば実際相手は区別しないという議論は全くそのとおりであると思います。つまり、攻撃されかねないというのはそのとおりであります。しかし、全然リスクを負わずに抑止力だけ高めようというような、そういう虫のいい話は現実世界ではやはり存在しません。
 特に、ここまで北朝鮮政権を危険な存在にさせるに当たっては、日本からのさまざまな物資の流れ、北朝鮮のハイテク兵器等は日本製品を部品として相当使っておるわけですが、そういう日本からの物資の流れを黙認してきた、ある種の勢力においては奨励さえしてきておった、そういう長年のツケは膨大であります。
 したがって、今になって全くリスクなしに北朝鮮側を抑止しようというのは虫がよ過ぎるし、事を先送りしても軍事的なリスクは減らない。それは、昨年のミサイル発射が示したように、継戦能力は、戦争を継続する能力はどんどん落ちていくかもしれませんが、しかし、やはり瞬間的な破壊力は、時とともに向こうは増大していくと見ておく必要があると思うわけです。
 最後に、修正が必要だと思われる点は、これは国会への報告となっておりますが、やはり承認ということに改める必要があるだろう。現実問題としては事後承認という形にならざるを得ないと思いますけれども、それは、すべての国会議員に明確な当事者意識を持って安全保障問題を考えてもらうという意味でも、やはり国会にきちんと関与してもらうということが必要である。また、我々一般国民も、選挙の際に、安全保障問題に関して見識のないような候補者には今後は入れては危ないという認識を持たないといけないわけですが、そういう有権者側の意識を高める意味でも国会の関与が必要であろう。
 今後、いろいろな面で反撃体制、つまり抑止力につながる反撃体制や防御体制を強化すべく、踏み込んだ対応を、これは第一歩にすぎませんが、どんどん国会の場で進めていっていただきたいと思います。
 以上です。

発言情報

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発言者: 島田洋一

speaker_id: 18458

日付: 1999-04-15

院: 衆議院

会議名: 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会