葉山峻の発言 (本会議)
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○葉山峻君 民主党を代表いたしまして、衆議院に提出された住民基本台帳法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
政府提出の住民基本台帳法の一部改正案は、住民基本台帳ネットワークシステム導入のための法改正であります。
住民基本台帳ネットワークシステムとは、住民基本台帳を基礎にして、全国民に漏れなく十けたの住民票コードという名の統一番号をつけ、氏名、住所、性別、生年月日の四情報とともにコンピュターに入力して、それを、新たに設置する全国オンラインセンターに専用回線で結んで管理しようとするものであります。同時に、IC仕様のカードを発行して、個々人に持たせ、身分証明書として利用する計画でもあります。
このような住民基本台帳ネットワークシステムが一たん導入されれば、私たちの生活は根本的に変わってしまいます。赤ん坊からお年寄りまで、全国民が番号によって情報を管理され、番号なしには生きていけない社会が到来すると言って過言ではありません。
自分のコード番号を覚えられない人や、幼児や高齢者はどうするのか。全国民の個人情報をコンピューターで一括管理して、危険はないのか。個人のプライバシーはもとより、日本全体の情報がねらわれることはないのか。まさに、人間の尊厳と基本的人権とプライバシーにかかわる重大な問題であり、国民的な議論と、慎重な上にも慎重な審議が必要な大問題であります。(拍手)
余りにも多くの問題点をはらんだ改正法案ですが、以下の点に絞って、総理並びに自治大臣に質問をしたいと思います。
第一に、住民基本台帳は全国民を網羅するものであり、そのすべてに住民票コードという重複しない番号をつけることは、国民登録制度にほかなりません。改正案には、住民票コード番号を用いて行う、各省庁ごとの行政が別表の形で列挙されており、省庁間統一番号として使用されることになっています。つまり、住民票コードは、他省庁が幅広く共通番号として使用することになります。
既にさまざまな番号が生活の中に普及している社会であっても、それらは、例えば社会保険番号であったり、運転免許証であったり、学生証であったり、それぞれ用途の限られたものでありました。また、地域によっては、地域内での多目的な使い方を試みて、それなりの成果を上げているところもあります。
しかし、共通番号導入は、そうした従来の用途別番号や地域内番号とは本質的に違う。今日、納税者番号については議論のあるところでありますが、それはそれで別に、納税目的に限定した議論をすべきなのであります。恐れげもなく共通番号制の導入に踏み切ることは、軽率のそしりを免れません。国民総背番号制度に直結する危険なものだと憂慮する声が市民から上がり、識者らや日弁連などからも、法改正に反対する意見書が出されているゆえんであります。
第二に、個人情報保護の不備であります。
法案では、市町村が新たに設置されたコンピューターで住民台帳を管理し、ネットワークの部分を都道府県及び全国センター機能を果たす指定情報処理機関が担当するとしています。端末は、全国津々浦々まで設置されることになるのであります。そのすべてにわたってセキュリティーが保たれるという保障が、果たしてあるでしょうか。
法案では、専用回線でつなぐとしていますが、専用回線であっても、データを盗むことなど技術的には簡単だということは、もはや常識であります。ネットワーク化された情報の漏えいや盗用があった場合、それが市町村側で行われたのか、都道府県側なのか、指定情報処理機関側で行われたのか、追跡調査はほとんど不可能だと専門家らは言っております。
法案では、データの漏えいを防ぐ万全の措置をとると言いながら、他方で、電算機処理業務を外部に委託することができるとしています。データ処理の外部委託によって、個人情報が関係者によって持ち出される危険性が大きくなるのは自明のことです。
いわゆるハッカー犯罪やクラッカー犯罪は日々増大しており、遠い国の何者かが何カ国をも経由して、わずかなすき間から忍び込むなど、その手口もまさにグローバルなものとなっているのであります。一九九六年のアメリカの会計検査院の報告では、アメリカの国防総省に対するコンピューター攻撃は、年間二十五万回にも及び、そのうちの六五%は侵入に成功しているという、驚くべき数字が挙げられています。
被害は個人にとどまらず、全国民の情報を短時間に吸い出されてしまうという国家的被害を受けることも、絶対ないと言い切れるでしょうか。安全保障上も大問題であります。
総理と自治大臣は、個人情報保護がこれで本当に問題ないと思っておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
第三に、利用範囲の歯どめが不明確なことと、民間利用への禁止に何の歯どめもないことであります。
法案には、本人確認情報の提供を受けた者に対して、目的外利用をしてはならないと単に規定するだけで、使用済みの本人確認情報の消去も規定せず、提供目的違反に対して刑罰の定めもなく、国民の側からの中止請求権もないのであります。
データベース構築についても、一応、「他に提供されることが予定されているものを構成してはならない。」と書くものの、違反者が反復して違反するおそれがあるときは中止勧告、勧告に従わないときは従うよう命令し、それにも従わなければ罰則というような生ぬるさであります。罰則の中身も不明、これでは事実上、野放しになるのであります。このようなあいまいさの中に、将来のデータ結合の意図が透けて見えると指摘せざるを得ません。(拍手)
第四に、膨大な経費がかかる点であります。
ネットワークシステムの維持、管理、更新には、自治省が少な目に見積もった試算でも、初期投資四百億円、年間経費二百億円もかかるのであります。もし、将来のデータ結合など全く考えておらず、改正案のように、一部の行政機関が本人確認などの限られた分野にしか用いないとすれば、これは壮大なむだ遣いであります。
国民へのサービス向上という点についても、ほとんどメリットはありません。あるのは行政にとっての便利さだけであります。自治省が利点と宣伝する住民票の写しの広域交付も、実際には本籍表示を除く写しだけであり、運転免許証やパスポート申請に必要な本籍表示入りの写しは交付されないのであります。費用対効果の面からも、このような無謀な計画は、行革が求められ、また財政再建、立て直しが叫ばれている時代に、許されることではありません。
以上について、総理はどのようにお考えか、明快な御答弁をお願いしたいと思います。
第五に、カードの問題点であります。
住民基本台帳カードの交付は、任意の本人申請とされていますが、転入転出届の簡素化が、カードを持つ者にだけもたらされる例のように、カードの所持の有無によって、サービスの受け方や内容に差別が生じることが考えられます。さらに、行政側が本人確認のためにカードの提示を求めるようになれば、事実上はカード保有の強制、ひいては、国内版パスポートのように常時携帯の義務までエスカレートしないという保障は何もないのであります。
また、身分証明書としてそのカードを使用していくと言いますが、果たしてカード提示者が当人であるという確認が本当にできるのかどうか、疑問であります。
IC内蔵のそのカードには、八千字を書き込める容量があります。四情報とコード番号以外は書き込まないと自治省は強調し、法案でも一応そうなってはいますが、将来は何を書き加えるのか、どこまで範囲を広げるのか、不明であります。血液型、DNAを含む病歴、犯罪歴、所得、資産額などなど、カード内の記憶領域は自治体ごとの活用ができるようになっていますが、その点についても、国民総背番号制につながるとの批判を恐れてか、はっきりしないままであります。
ICカードの導入については、番号先進国でも、断念もしくは慎重であります。
韓国では、軍事政権時代に国民総背番号制が実施され、カードの常時携帯が義務づけられていますが、紙のカード、一部はプラスチックが、ICカードにかえられようとすることの危険性に気づいた市民運動と、電子カード化反対を大統領選挙の公約に掲げて当選した金大中政権の誕生によって、このほど住民カード電子化法案を葬り去ったのであります。
先月、私は、有志の国会議員と視察団を組んでソウルに出かけ、国会議員や市民運動の方々に話を聞いてきましたが、日本のような民主主義の国がこのような危険な制度を導入することはまさかないでしょうねと言われて、答えに窮しました。
小渕総理、日本政府はなぜ、この自治省の無謀な構想を採用しようとするのか、このカードには全く危険性がないと思っておられるのか、お答えをいただきたい。
最後に一つ、私が強調しておきたいことは、この法改正によって政府がつくり上げようとしている住民基本台帳ネットワークシステムが、情報の極めて高度な国家管理であり、昨今、国を挙げて推進しようとしているはずの地方分権に真っ向から逆らうものであるという点であります。
そもそも、現行の住民基本台帳制度は、市町村において住民の居住関係を公証し、住民に関する記録を正確かつ統一的に行うためのものであって、国の行政機関が住民基本台帳を他の目的に使用することを認めたこの改正案は、法律の目的に抵触し、逸脱していると言わざるを得ません。
住民基本台帳の事務は、本来、地方自治体の固有事務であります。地方から要望が上がっていないにもかかわらず、また、改正案の提出に当たって、当事者である地方自治体に説明も事情聴取もしていないのは、地方自治の軽視も甚だしいと、市長経験者の私は憤りを禁じ得ません。
既に九〇%を超える市町村で住民情報の電算処理が進んでおり、それぞれに工夫したシステムができ上がっています。そこへ国が口出しをして、唐突に一連番号を振れと命じるのは、国家の中央管理であり、まことに理不尽なことではありませんか。一九七〇年代から三十年近くの間に、全国の四割を超える自治体で個人情報保護条例がつくられています。その中には、外部とのオンライン結合禁止条項を盛り込んだ条例も数多くあるのです。今回の法改正は、そのあり方を否定するものであります。
総理並びに自治大臣、これが地方分権の推進に逆行しないと言い切れるでありましょうか。この点への答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕