知久馬二三子の発言 (本会議)
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○知久馬二三子君 私は、ただいま議題となりました住民基本台帳法の一部を改正する法律案につきまして、社会民主党・市民連合を代表して、総理並びに関係大臣に質問させていただきます。
この法律案につきましては、昨年、国会に提出する過程で、我が党は、自治省と数次にわたって折衝を行い、多くの問題点の解明に努めてまいりました。しかし、その中でも依然不明な点が多く、今回改めて質問させていただくことを、まずもってお断りいたします。
現行の住民基本台帳法は、市町村において住民の居住関係を公証し、住民に関する記録を正確かつ統一的に行うことによって、住民の利便の増進を図るというところに第一の目的があります。しかし、今回の改正案で実現しようとする住民基本台帳ネットワークシステムは、市町村においてと定めた住民基本台帳の制度を根幹から変更するものであり、国の行政機関等が、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他住民に関する事務の処理の基礎とするための住民基本台帳を、他の目的に使用することをも認めております。
今回の改正は、現行の住民基本台帳法の目的を大きく踏み外すものであると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。
個人の情報の保護に関して無防備な現行住民基本台帳制度に、全く異質な住民基本台帳ネットワークシステムを、単に情報の正確性や導入コストの面から最適であるとして導入しようとしている点に、さまざまな問題の根本的な原因があると考えるものでございます。本来、住民から見て、最も身近なものであるはずの住民基本台帳の法律が、今回の改正案では、法律的にも極めてわかりにくい構成となっています。それ一つとっても、この法改正にはかなり無理があるのではないでしょうか。
私たちの日常の国民生活において、直ちに住民票が必要になるような事態がたびたびあるでしょうか。また、結局窓口に行かざるを得ないことになります。今回の改正で本当に住民の利便性が上がるのか、疑問を持たざるを得ません。それほど効率的と言えない住民基本台帳のネットワークシステムに、初期投資約四百億円、年間経費二百億円と言われる費用をかける意味は、一体どこにあるのでしょうか。
行政機関が収集し利用している個人情報は、犯罪情報、税務、医療、教育、年金、福祉、家族情報、国勢調査など多種多様であります。現在、各行政機関は法令の目的の範囲内で行っているものであり、一応限定されております。しかし、住民基本台帳ネットワークシステムは、将来すべての行政機関をオンラインで結ぶことなどによって、このような個人情報の結合と集積を招く危険性を持っていると言わざるを得ません。
そこで、総理にお伺いいたしますが、政府は、日本のこれからの行政システムの中で個別番号制をとるのか、また総合的な番号制をとろうと考えておられるのか、その将来構想を明らかにしていただきたいと思います。
個人のプライバシー問題に着目し、その保護に努めてきた地方自治体は少なくありません。個人情報保護条例を設けている自治体は千四百七団体、規則や規定などにより個人情報保護対策を講じている自治体を含めますと、二千二百七十三の団体があり、全国の六八・六%にも及んでいます。中央官庁などとのオンライン接続の禁止を定めている自治体も五百六十五団体を数えております。
選挙人名簿登録や国民健康保険など、多くの行政事務の台帳が住民基本台帳へと一本化され、コンピューター化も進みましたが、日本の行政の現場では、部落差別や民族差別など、個人のプライバシーをめぐる問題が日常的に起こってまいりました。経済的に見れば非効率と思われるオンライン接続の禁止措置も、結婚や就職などの住民にとって重大な局面で個人情報をめぐるトラブルがもたらした深刻な結果に対して、多くの自治体が努力され、つくり上げられてきたものと考えるものでございます。
政府は、行政の情報化の推進の名のもとに、地方自治体に対してオンライン接続禁止の見直しを求めてきましたが、こうしたプライバシー保護にかかわる全国の自治体の努力に対して、どのように評価されているのか、見解を承りたい。また、この法律改正について、どれだけの自治体から、どのような要望があったのかを明らかにしていただきたいものでございます。
そもそも情報の主権者が住民であることを考えれば、本改正案では、本人情報の開示請求、訂正、利用状況の開示、苦情処理機関、カード交付の任意性の保護と、カードを持たない住民に対する不利益扱いの排除、カードへの情報付加に対する拒否権などについて、明確にされているとは言えません。
しかも、条例の制定によって、自治体が個人情報の利用を拡大していくことができることについては、当然一定の制限があると考えます。とりわけ権力行政については制限されてしかるべきと考えますが、この点についての御見解を承りたいと思います。
次に、海外では、特に欧州連合、EUにおいて、一九九五年十月、個人データ処理に係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関する欧州議会及び理事会の指令が採択され、九八年の十月に発効しています。これによれば、十分なレベルの個人情報の保護措置を講じていない第三国への個人データの移転を禁止しております。EU個人データ保護指令の発効を受けて、我が国より個人データ保護の面で進んでいる米国でさえ、EUと協議に入っているとも聞いております。
我が国においては、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律が一九八九年十月から施行されていますが、民間部門では全く立法がなされておらず、OECDの勧告を受けて、通産省や郵政省において個人情報保護のガイドラインが策定されているだけであります。
そこで、お尋ねいたしますが、EUは日本の個人情報保護の現状をどのように見ているのでしょうか。さらに、日本政府はこの問題でEUに対してどのような基本的対応をしていくのかを明らかにしていただきたい。
最後ですが、本人確認情報が、情報主体である国民の知らない間に、ネットワークを通じて市町村から他の市町村、都道府県、国、法人へと提供され、いつ、どこへ提供されたのか開示されることはない。しかも、その提供先の用途は、この法案の別表に掲げられた特定の事務に限らず、条例で定める事務、国の行政機関の所掌事務といったように、無限定なものとなっています。
このような個人情報の利用の仕方を考えれば、今必要なことは、民間部門を含めた包括的な個人情報保護法であります。それを欠いたまま住民基本台帳ネットワークシステムを構築することは、まさしく国民のプライバシーに対する実害を生じさせる危険性が高いと言わざるを得ません。この点につきまして総理の御所見をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕