大見忠弘の発言 (経済・産業委員会)
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○参考人(大見忠弘君) 東北大学の大見でございます。
お手元に横長のA4の資料が届いていると思うんですが、「産業再生・強化策 新産業創出 科学技術創造立国を目指して」、こういうタイトルになっております。
現在、私は、東北大学の中に去年四月九日に発足した未来科学技術共同研究センターに所属しております。このセンターは、これまで大学の役割は新しい学問、技術をつくり上げるということが役割だったわけですけれども、新産業創出ということがメーンのターゲットになった、大学では初めてのセンターではないかというふうに思っております。
次のページを見ていただきたいと思うんですが、私自身の紹介も兼ねて、産業の強化あるいは新産業創出といったことにおける大学の役割を中心に御紹介したいと思います。
私自身の専門は、半導体エレクトロニクス、半導体集積回路。この技術は、二十一世紀のかなめの産業になる情報通信であるとかバイオ技術、すべてのこういった最先端産業の基盤になる技術であろうというふうに考えております。
大学の役割が新しい学問、技術の創出であるということを考えますと、大学が持つべき能力あるいはインフラの技術、そういったものがどういうものであるかということを簡単に御紹介したいと思うんですが、新しい学問、技術というのはまず一人の研究者の頭の中に芽生えてきます。着想の内容が新しければ新しいほど、そのことが正しいか否かを判断できる人は世界じゅうにだれもいません。この着想が正しいか否かを判断できるのは、正しく行われた実験結果だけがその正否を判断いたします。どういうことかと申し上げると、現在の常識、定説から考えていかに不自然、奇想天外に思えても、百回やって百回とも同じ結果が出ればその着想は正しいと言わざるを得ないんだろう、こういうことになります。
そうすると、次のページへ行っていただきたいんですが、何だかわけのわからない要因で結果が左右されない完全な再現性を有する実験技術、計測や分析技術を含みますけれども、こういった完全な再現性を有する実験技術というものを持たない限り、新しい学問、技術の創出は不可能だということになります。
大学が備えるべき要件としては、世界じゅう、だれも正しいかどうかわからないことを完全に実証できる完全な実験技術を備えるということが不可欠の要件になってまいります。これは実験環境を完全に制御するということが必然的に要求されます。
私どもの場合には、結果として、ごみであるとかあるいは分子上、原子上の不純物を完全に除去し、静電気であるとか磁場変動だとか、ちょっと専門的で申しわけないんですが、あらゆる変動が結果に影響を与えるものですから、そういったものを全部排除したスーパークリーンルームの技術というものが必要になってまいります。
スーパークリーンルームというのは、材料から始まってその加工技術、表面処理の技術、あるいは材料、部品を組み合わせた施工技術、新しい部品、新しいシステム、こういった総合技術の典型例になってまいります。
ここら辺に今、大学のありようというのが問われているんだろうと思うんですが、従来型の学部学科体制で大学というのは編成されているものですから、すべての学問・技術分野に及ぶ横断的な広い分野の技術というものをどういう形で学生たちに伝えていくか、そういう問題を抱えているだろうと思います。
このスーパークリーンルームの技術を東北大学で全く新しいコンセプトのものでつくり上げたわけですが、結果として、この技術が最先端の半導体産業であるとか液晶ディスプレー産業あるいは磁気記録産業などの基盤技術になっていきました。
東北大学でつくられたこのスーパークリーンルームの技術というのは、その後のこういった分野の世界のお手本になっております。典型的な例は、一九八〇年代の半ばにいわばつぶれかかっていたインテルが全面的にこの東北大学の技術を導入して五年後には世界のトップに躍り出る、今のインテルの強さというのはよく御承知ではないかと思うんですが、そういう役割を果たしております。
〔委員長退席、理事成瀬守重君着席〕
次のページへ行っていただきたいんですが、産業競争力強化という上で産学連携が本当の意味で必要になった時代が来ているということを申し上げたいと思います。
まず、研究開発体制の劇的な変化ということを御認識いただきたいと思うんですが、今世紀の前半から一九七〇年のころまで、これはリニアモデルと言われる時代で、まず基礎研究が行われて、その基礎研究をベースにして応用研究を展開して、実用化研究を経て実用化、事業化というのがなされます。これが比較的長い間続いたものですから、今でも多くの大学人あるいは企業の研究者がこのリニアモデルにとらわれている。実際は一九七〇年のころから研究開発体制ががらっと変わっております。
下に書いてございますが、実社会の非常に強いニーズに対して最適解を最短時間で与えるというために、必要とあらば基礎研究も応用研究も実用化研究も同時並行的にやっていくんだという形に変わっております。ですから、かつて基礎研究をやる人たちは人里離れたところでこっそり研究をしていればそれでいいよという時代が長いこと続いたんですけれども、基礎研究そのものに実社会の非常に強いニーズが直接反映するという形をとらないと今の世界の体制には到底追いつかない、そういう状況になっているということの認識が日本ではまだ大変薄いのではないかというふうに感じております。
次のページへ行っていただきたいんですが、このスタイルが、アメリカ、ヨーロッパで今非常に強くあらわれている典型的な研究開発のひな形です。
まず、実社会の要求に対する最適解を与えるターゲットといったものを掲げる、名前がなかなかいい名前がないものですから、映画のプロデューサー等に匹敵する、プロデューサーという名前が書いてございます。
〔理事成瀬守重君退席、委員長着席〕
こういうものが五年後、十年後、二十年後に必要になるぞということを洞察して、新しいターゲットを掲げて、その目標に至る必要な技術を全部まとめ上げて、この研究開発課題をやり遂げる人並びに資金を調達してくる、実際に仕事を実施するという役割をこのプロデューサーが負います。
ここで非常に大事なことは、五年後、十年後、二十年後の実社会の要求、社会構造、産業構造はどうなっているのか、どうあるべきなのかということを予見、洞察する能力、先を読むということが非常に大事だということです。読み間違ったらこの研究開発プロジェクトは全滅になります。
次のページへ行っていただきたいと思うんですが、同じく産学連携の必然性ということが書いてございますが、大学と企業の役割が書いてございます。
非常に役割が違っているということを強く認識すべきだと思うんですが、企業はまずお客さんへの供給義務というものを負っておりますから、毎日毎日必要なものをつくり続けていかなければなりません。そういう状況の中では、現在の技術、現状の技術に頭がとらわれるという物の考え方になります。結果として、多くの企業の研究開発者たちは、現在の技術から将来を見るという物の考え方にどうしてもなるんです。そうでなきゃまた困るわけです、毎日物をつくってお客さんに届けてもらわないといけないですから。結果として、技術体系トータル、パラダイムが転換するようなときには企業は対応が難しいということにならざるを得ません。
一方の大学ですけれども、大学の大きな特徴は二つあります。一つは、十八歳の学部学生から講義をしなければいけません。どんなに研究に忙しくて、もう徹夜で研究をしていようとも、週に何回かは学部学生の講義に私どもは出かけてまいります。学部の学生諸君に教えることというのは、その学問分野の定石、原理原則を教えることになります。結果として、大学人はいつでも原理原則にのっとって物を考えるということが日常化しております。一方、お客さんへの供給義務ということがありませんから、現状の技術に一切拘束されないで、将来の理想の姿とか極限の姿、あるべき姿というものを理論的に考える能力を日常的に持っている人たちになります。
これはどういうことを意味するかというと、パラダイムシフトを伴うような新しい学問、技術の創出というのはほとんどやはり大学から起こってくるということです。歴史的に見ても、ほとんどの新技術というのは大学周辺から生まれているということは間違いございません。やはり国トータルの科学技術創造立国といった大きなグランドデザインを描くときには、もちろん例外はありますけれども、新技術創出というところを主として大学人に担当させて、実用化、事業化というところを企業がやっていくということが最も効率のいい姿だろうというふうに思います。
次のページへ行っていただきたいんですが、さらに産学連携の必然性というところで、現実問題として、実際に今つくられ続けている最先端の製品というものは理論極限にほとんど近いところのものを大量生産でつくるということを要求されます。結果として、経験と勘に基づく生産技術では到底対応できない。学問に裏づけられた科学的な生産技術というものがない限りは、コスト競争で世界に勝っていくということができない。こういうことから産学連携というのはもう絶対に必要だということになります。
産学連携ということをやっていくときに、企業側のことをこれは書いてございますが、そのアイテムを実施するか否かの決断の速さが絶対的に必要になります。
これはどういうことかというと、時代が進めば進むほど私どもが活用できる技術の内容は豊富になってまいります。コンピューターの例を頭に描いていただくと自明だと思うんですが、十年前のコンピューターと今のコンピューターでは全く性能が違います。これはどういうことを意味するかというと、ある研究開発のターゲットを立てたときに、それを具現化するまでの時間が時代とともにどんどん短くなるということです。決断がおくれればもう勝負にならない。ここのところが先ほど樋口会長が言われていた経営の刷新その他ということにつながるんだと思うんです。
結果として、こういうことを言うとしかられるかもしれませんが、大企業は新技術開発、事業化にほとんど役に立たない。決断が遅いからです。大企業の稟議書などを一度見ていただけるといいと思うんですが、A4の紙に判こを押す枠が五十も六十もあって、稟議を書く部分の方が三分の一ぐらいしかない。そういう稟議書が世の中に出回っていて、これはおかしいと思うセンシティビティーを失っているんです。やはりベンチャー企業というのは非常に重要だというふうに考えております。
次のページへ行っていただきたいんですが、我が国の産業競争力強化ということは、もう言うまでもなく、日本が持っている資産を、特にここは「知的資産」と書いてございますが、有効活用することだと。
二つ目に括弧書きで、長い間これはアメリカから日本に言われたことなんですが、「ハイテクあって、ハイテクビジネス無し」と。ビジネスは全部アメリカが生み出してくるもののしっぽにくっついてビジネスをやりますよということになれてきてしまった。やはりビジネススコープ、ビジネスマインドを持った人材を積極的に活用していくという制度が非常に重要であろう。
同時に、悲観してばかりいる必要はないので、国内にすべての産業を持っている国というのは日本、アメリカ、ドイツ等、世界でもごく限られた国しかありません。こういった総合力を有効活用すれば非常に強い国になっていきますというふうに思っております。
思い出していただきたいことが下に三つ書いてございます。一九八〇年代なんですが、アメリカを中心とする諸外国から日本が袋だたきに遭った代表的な三つのイシューが書いてございます。基礎研究ただ乗り、産業育成というようなものを政府が支援するのはダーティーワークだ、日本人は働き過ぎ。これに残念ながら日本は完全にひっかかったというふうに私は思います。個人的な感想を言うと、国際的な謀略ではないかという気がしております。
今回の法案に関しては、私どもは大変喜んでおります。非常に決定の早かったことに心から敬意を申し上げたいというふうに考えております。
私の近いところの、研究開発の活性化ということに関してだけ意見を申し上げたいと思うんですが、今の大競争時代というのは世界じゅうの知恵比べなんです。いかに物を考えて早く手を打って具現化するか。日本版バイ・ドール法と言われる、国の資金で誕生したパテントをそれにコントリビュートした企業に持たせるという法案ですが、私どもは大歓迎でございます。
今の時代はもうすべてスピードが勝負ですから、国が絡むというようなことになるとどうしてもミスをしないミスをしないという発想の方々が多いものですから、スピードが遅くなります。私も一緒に産業界と仕事をしながら、でき上がったパテントは大概の場合、持ち分五〇、五〇でやってまいりました。理由は簡単です。自分たちのものだと思わなければ必死になって事業化しないということです。
もう一つ大事なことは、先ほども申し上げたように、新しい技術の事業化ということになると大きな企業よりも小さな企業がほとんど手がけます。そういう人たちが死に物狂いで努力したときに、事業を乗っ取られちゃうというようなことでは困るものですから、お金をたくさん持っている強い企業から特許で守ってやるということが非常に大事ではないかということで、特許の重要性を認識しております。
今でも大学には産学共同研究制度というのがあるんですけれども、ほとんどの企業はこの制度を使いたがりません。どういうことかというと、特許が自分たちのものにならないから、結果として制度があっても生きないということなんです。
時間をオーバーしておりますが、この日本版バイ・ドール法というのは私どもにとってはもう待ちに待った法案ではないかというふうに考えております。
それから、TLOの特許料軽減等に関して、科学技術創造立国というのは簡単に言うと、新しい産業の源流になるような基本特許をたくさん確立することだと思います。前半に申し上げたように、新しい技術というのは大学からほとんど出てまいりますから、その技術を民間に移転するTLOにこういった措置をとっていただくということは、大学のアクティビティーが大変高くなるという意味で、ぜひとも即刻進めていただきたいというのが私ども大学人からのお願いでございます。
時間を超過して大変申しわけありません。