金城睦の発言 (日米防衛協力のための指針に関する特別委員会)

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○参考人(金城睦君) 沖縄の弁護士の金城です。
 良識の府と言われていますこの参議院で意見を申し述べる機会を与えていただき、光栄に存じますとともに、感謝申し上げたいと思います。
 同時に、二十一世紀に向けて私たちのこの日本という国のあり方、その命運を決することになるほどのとてつもなく大きな問題を含んでおります周辺事態法などの新ガイドライン関連法案の審議においてわずか数名の者の意見を一日や二日聞くとか、あるいは公聴会を形式的に開くといった程度で事足れりとするようなことがあってはならない。何としてもたっぷり時間をかけて国民各界各層の声をじっくりお聞きになり、十分な情報公開のもとにあらゆる角度から問題点を掘り下げて検討し、慎重審議を尽くされるよう、まず要望したいという気持ちもいっぱいであります。
 私はいささか体調を崩して、またスケジュールも詰まっていましたけれども、事の重大性にかんがみ、万難を排した形で昨晩急遽沖縄から飛んでまいりました。
 一昨日の十一日、この場ででしょうか、野呂田防衛庁長官が、地理的条件からいっても基地が多く存在することを考えても、沖縄が真っ先に周辺事態の影響をもろに受ける、周辺事態に巻き込まれる可能性は沖縄が一番高いという趣旨の認識を示されました。その沖縄から参ったわけであります。後に舌足らずだったということで訂正をされたり、総理大臣が陳謝されるということもあったようですけれども、この点は沖縄ではマスコミでも大々的に報じられ、大きな関心を呼び起こし問題となっております。
 それはなぜか。言われるところの周辺事態、想定される周辺事態というものが沖縄の現実と直結しているからであります。沖縄には百三十万の人間が住んでいます。そして、そのほとんどが沖縄戦における犠牲者を親族に抱えており、いわばみんなが沖縄戦の遺族といったようなものです。日本政府の行為によって遂行された戦争、その沖縄戦において住民の三分の一から四分の一という者が犠牲となりました。その沖縄戦から五十有余年経過した今日においても、全国の七五%に及ぶ米軍基地が集中し、日夜基地被害に悩まされ、ミリタリーカラーに覆われ、準戦時体制といってもいいような状況下に置かれております。
 準戦時体制と申しましたが、朝鮮戦争やベトナム戦争あるいは湾岸戦争、こういった私たちの記憶に新しい戦争においては沖縄の米軍基地の動きは慌ただしく、直接的な攻撃基地あるいは後方としての兵たん基地といった役割が遺憾なく発揮され、そのときの状況は、準を取ってまさしく戦時体制そのものだったと言っても過言ではないものでありました。アメリカが戦争をすれば沖縄基地が使われる。そのため沖縄が戦時体制の一角に組み込まれて、沖縄県民の日常生活はもとより、生命にもかかわる重大な事態が生じたのであります。
 ベトナム戦争の最中に日本人船舶の修理工たちが大型タグボートでベトナム海域に派遣されたり、あるいは日本人がそのベトナムの戦場で負傷させられたり、あるいは大量の米兵たちが殺され、その死体処理のために沖縄の基地が使われたり、さらには、B52戦略爆撃機が核兵器の貯蔵が疑われていた弾薬庫のすぐ近くで墜落、炎上し、付近住民をしていきなり戦争だ、原爆が落ちたといったような恐怖に陥れられたり、原子力潜水艦が寄港して、コバルト60が検出され、放射能汚染の危険性が現実化したり、あすの命のない戦場に駆り立てられていく米兵たちが荒れ狂って基地周辺で強盗、殺人、暴行、傷害、器物損壊等、事件、事故を頻繁に起こしたり等々、まさに戦時体制状態でありました。
 このような戦場と直結する状態のもとで、沖縄県民は日常的に多くの困難を強いられ、無数の被害をこうむったのですが、海のかなたのベトナムなどにおいてはおびただしい数の無辜のベトナム民衆が無惨にも殺されていったのでありますし、さらにベトナムに派遣されたアメリカ兵たちもたくさん死んでいったのであります。
 このような状況が真っ先に生ずる可能性のあることを認識しながら、そして自衛隊も参加した新しい形で全国的にこれを拡大した形で到来することを想定し、これを可能にするような法的仕組み、整備、整理をしようとするのが今回の、ただいま審議中の新ガイドライン関連法の制定のねらいであり、問題の本質ではないかと思うのであります。ですから、沖縄では圧倒的多数の県民がこの法案に危惧を示し、反対しております。
 お配りしてあります資料、地元の沖縄タイムスの調査によれば、反対が五五%、賛成はその半分以下の二六%にすぎません。共同通信の全国調査では、これとは逆に賛成が六六%と大変多かったようでありますけれども、あれはあの不審船騒動の直後の調査でありました。
 実は、安保体制といいますか安保の問題そのものについても、あの九五年の少女の事件以前と以後とで、沖縄の問題、安保の問題の核心が全国民に知らされると、安保への評価もがらっと変わるのであります。それまでは、安保賛成派が圧倒的多数であったのに、あの問題が起こって後の九六年の春には、見直すべきだ、安保反対だというのと、賛成だ、維持すべきだという意見は五分五分でありました。そこまで変わるのであります。
 衆議院では多数の先生方が、ごく一部、何かささい、瑣末と言ったら怒られるかもしれませんが、そういう感じのする修正をし、賛成、可決いたしておりますけれども、良識の府でありますこの参議院におきましては、ぜひ先生方が、日本が戦争への道を開くという、参戦するための戦争法と言っていい本質を持つこの法案を簡単に認めてはならないのではないかと思うのであります。
 戦争は、ある日突然起こるものではありません。それに至るまでのさまざまな準備の蓄積があり、そして過程があります。今度の法案もその中での極めて重要な一里塚である、ターニングポイントをなすものだと思います。沖縄戦や広島、長崎の悲劇を生んだあの太平洋戦争への過程における国家総動員法に匹敵するくらいのものではないかとさえ思われるのであります。
 私たち日本国民は、あの太平洋戦争の反省の上に立って、もう二度と戦争はしないと誓い合って日本国憲法、平和憲法を制定したはずであります。沖縄戦や広島、長崎の悲劇に見られるように、はかり知れない自国民の犠牲と、二千万人に及ぶというアジアの民衆を殺害したほどの残酷な戦争の惨禍、この結末に対する反省はうそではなかったはずです。その場限りのいいかげんなものでもなかったはずです。全国民的な道義がかかっていたと思います。戦争はしない、武力による威嚇または武力の行使は放棄する、国の交戦権は認めないと明示した憲法のもとで、ウオーマニュアルと言われていますようなこの戦争をするための法律を制定するということは矛盾も甚だしいものではないでしょうか。
 国際社会に向かって国家的規模で大うそをつくということになりかねないと思うのです。本音と建前というものの使い分けの上手な日本人と言われますけれども、今度の場合はそんな生易しいものではないと思うんです。日本人全体が、日本全体がうそをつく国家との烙印を押されて、そうなっても返す言葉がないといったのではたまりません。
 今、沖縄ではSACOの合意の実施という形で新たに基地の強化が進められております。全国を覆う新ガイドライン法、この関連法の制定の動向と沖縄における基地強化の動向は車の両輪のごとく今進められているように思われます。安全保障とか国の生命線とか邦人の救助とか、いろいろその言葉そのものの持つ意味は重要だと思いますけれども、そういう言葉を使って行われたのが結末において間違いなく否定しようのない戦争の惨禍でありました。
 私は、もう時間がありませんので、最後に沖縄戦の実相に触れた後で、あの沖縄戦終えんの地、摩文仁の丘の一角に立ちます平和祈念資料館の展示の結びの言葉を御紹介申し上げて、私の意見を終わりたいんですが、それは、
 沖縄戦の実相にふれるたびに
 戦争というものは
 これほど残忍で これほど汚辱にまみれたものはないと思うのです
 この なまなましい体験の前では
 いかなる人でも
 戦争を肯定し美化することは できないはずです
 戦争をおこすのは たしかに 人間です
 しかし それ以上に
 戦争を 許さない努力のできるのも
 私たち 人間 ではないでしょうか
 戦後このかた 私たちは
 あらゆる戦争を憎み
 平和な島を建設せねば と思いつづけてきました
 これが
 あまりにも大きすぎた代償を払って得た
 ゆずることのできない
 私たちの信条なのです
 いろんな危機や問題があるときに、その危機をあおったり、それに武力で対抗するというような形ではなくて、この危機をなくすための努力、平和をつくる努力、そこにこそ全力を注ぐべきであるということを強調して終わりたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 金城睦

speaker_id: 4806

日付: 1999-05-13

院: 参議院

会議名: 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会