角田義一の発言 (本会議)
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○角田義一君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま提案されましたいわゆる周辺事態法案外二件につきまして、総理並びに関係大臣にお尋ねいたします。
総理はあすから十二年ぶりにアメリカを公式訪問すると承っております。我が国にとりまして、日米関係の安定を目指すことは極めて重要な課題であります。この首脳会談におきまして総理は、日本の国益のためにいかなる基本的な立場に立ち何を主張されるのか、まずもってはっきりその所信を承りたいと存じます。
コソボ問題は、まことに悲惨、深刻であります。日本政府としての基本的立場をどう御主張なさるのか、特にNATOの空爆についてどのような立場を日本政府はとるのか、明確に主張すべきだと思います。
また、ロシア等の和平交渉、調停工作をどう評価し、我が国として和平にどう貢献するおつもりなのか、さらに難民救済について我が国はいかなる貢献をするのか、総理の御見解を承りたいと存じます。
さて、民主党は、今回の自民、公明、自由三党の修正された周辺事態法案に反対であります。民主党は、この新しい日米防衛協力関係が、憲法九条の専守防衛と個別自衛権の範囲、自衛隊の公海や領土外での武力行使の禁止、また、日米安保条約の枠の堅持、さらに国会の事前承認を軸にシビリアンコントロールの確保が担保できる、そういう法律案にしなくてはならない、こういう立場から八項目の修正を政府・自民党に提案しておりました。このことは、日米安保条約に基づく日米関係や国連の平和活動は、我が国の平和と安全を確保する安全保障政策、防衛政策にかかわる問題でありまして、可能な限り与野党が一致して法案成立を図ることが我が国の国益であるというふうに私どもは信じておるからであります。その立場で民主党は真剣に国会審議に参加し、意見を申し上げ、最終的に修正案を提出したのであります。
しかし、自民党は、国民的合意を広範に得なければならない安全保障、防衛政策という極めて重要な法案を、野党第一党である民主党の修正要求を棚上げにし、訪米する小渕総理の手土産として、かつての国対政治顔負けの三党による修正をし、衆議院で可決いたしました。
自衛隊の船舶検査の項を法案から削除し、今後三党によって新しい法律をつくるそうであります。しかし、この修正法案は、まさに三活動の一つであった船舶検査が削除されたわけですから、欠陥法案であります。
このような欠陥法案をやすやすと政府が受け入れるとすれば、小渕内閣は理念と見識をすべて放棄し、政策の軸など何もないことを内外に明らかにするようなものではありませんか。政権維持のためにきゅうきゅうとして総理の訪米前に何が何でも成立させようとしたことに始まり、三会派がおのおのの党利党略を最優先させ、ガイドライン審議を政策論争ではなくて政局論争におとしめた責任、とりわけ政府・自民党を代表する総理の責任は極めて重大であると申し上げなければなりません。
これは議会制民主主義の否定であり、決して国民に理解されるものではなく、結果的に日米関係を傷つける可能性すらあると私は思います。まことに遺憾千万であり、これについての総理の所信を承りたいと存じます。
多くの国民は、冷戦が終わって既に十年もたったのに、どうして日米安保体制の強化が必要なのかと感じておられると思います。今日までの政府の答弁や説明は、この素朴な疑問に明快な答えを示しておりません。今回のガイドライン関連法案によって、日本が求めない戦争に巻き込まれるのではないか、あるいはより深くアメリカの世界戦略に組み込まれていくのではないかという国民の不安は決して消えておりません。アジアの周辺国では、このガイドラインによって日本の軍事大国化につながるのではないかという懸念が絶えません。
これらの疑問や不安にこたえていくのが政府の責務であります。国民が納得できる説明をするのが政府の責任であります。こうした観点から幾つかの点について御質問いたします。
まず第一に、政府は国民に対して、冷戦終結後既に十年近く経過しておる、こういう状況にありながら、新たに日本の周辺事態と称してアジア太平洋地域にアメリカが展開する軍事行動になぜ日本が支援し協力しなければならないのか、これについての合理的な説明が必要であります。
個別的自衛権のもと専守防衛に徹するという憲法九条の趣旨、解釈を逸脱し、日米安保を集団的自衛権による集団的安全保障体制に質的に転換を図ることではないかという、こういう危惧が国民にあります。その不安感の払拭は不可欠であります。
私は、この問題に臨むに当たって、憲法の前文の、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを国民は決意し、この憲法を制定した、このことを改めて主張し、この国民の決意に反するような、それを踏みにじるような政策を我々は断固拒否します。
小渕総理、今あなたが目指しておる周辺事態対米支援、対米協力はこの決意にもとることはないのか、こうした仕組みをつくることによって再び国民に惨禍をもたらすことはないと一点の疑いもなく断言できるのか、国民に向かってはっきりと語っていただきたい。総理の所信を承りたいと思います。
第二に、周辺諸国の間には、このガイドラインは、日米協力の枠組みを拡大させ、日本が専守防衛から一歩踏み出して、アジア太平洋地域で覇権を求めようとしておるのではないかという懸念が存在をするのは事実であります。
念のため確認しておきますが、専守防衛とは、相手国から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう、これが一貫した政府の姿勢であります、今日まで。相手国から武力攻撃を受けたときとは、通常考えられるのは我が国領域に対する武力攻撃があったときであります。これに対して自衛隊が受動的にとる防衛行動、それが専守防衛の意味するところであります。
ところが、周辺事態法案では、自衛隊は、我が国の領域内に限らず、周辺地域という公の海、公の空にまで出かけ、そこで積極的に対米支援、対米協力をし、その結果として、事態の状況いかんによっては武器使用があり得ることを想定しているのであります。それが果たして受動的な防衛戦略の姿勢と言えるでありましょうか。専守防衛に徹した自衛隊の行動と言えるでありましょうか。このような自衛隊の行動が国民の真の理解を得られるでありましょうか。
要するに、今政府が行おうとしている周辺事態対米支援、対米協力の選択は、専守防衛の一線を踏み越えることになりはしないかという疑問を私どもは払拭できません。小渕総理の明快な答弁を求めるものであります。
第三に、基本計画の国会承認問題であります。
民主党は、緊急時には措置実施後直ちに国会承認を求めることがあっても、あくまで事前の国会承認を基本とし、周辺事態の認定、基本計画、自衛隊の出動を三位一体としてその承認を求めてきました。総理は、周辺事態の基本計画の決定、変更について、国会承認を必要としないと主張しておられました。武力行使を含まないんだ、国民の権利義務に関係はないんだ、迅速な決定が必要だと言ってこられました。
しかし、皆さん、いわゆる日米のガイドラインの共同宣言では、日米両国政府は周辺事態が発生することのないよう外交上のあらゆる努力を払う、また、周辺事態が予測される場合でも、日米両国政府は事態拡大を抑制するため外交上のあらゆる努力を払うと記載されております。
言うまでもなく、日本の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態は、ある日あるとき突然に発生するのではなくて、まさにこの共同宣言で言っているとおり、周辺事態の未然防止と事態の拡大抑制を図る政府の外交上の努力が必ず先行することは当然のことであります。したがって、外交上の努力もむなしく周辺事態が発生することがあっても、その間に国会論議を経て国会の事前承認を迅速に行うことは十分に可能であります。
周辺事態の認定、基本計画、自衛隊の出動といった全体が国会承認の対象にならなければ、国民が期待している国会のシビリアンコントロールが十分機能いたしません。国会のシビリアンコントロール確立に対する総理の決意を承りたいと存じます。
第四に、事前協議についてお尋ねします。
日本有事の場合を除き、日本を基地とする米軍と他国との戦争に日本が巻き込まれぬために、在日米軍の配置や装備に重大な変更があったとき、並びに日本の基地から米軍が他国を攻撃するために直接発進するときは、日本政府に事前協議を義務づけたものです。しかし、このガイドライン、共同宣言には「事前協議」の文字が削除されております。どうしてそうなったのか、政府の見解をまず聞きたい。
とりわけ在日米軍、わけても在沖縄海兵隊の段階的撤収を求める声の高まりを封殺して、朝鮮民主主義人民共和国の核疑惑以来、朝鮮半島有事を想定して、そのときには自衛隊を中核とした国を挙げての後方支援態勢の確立を求めているのではないか、そして在日米軍基地から朝鮮半島有事で出撃するときは事前協議は行わないとしようとしているんだ、こういう意見もあります。事前協議についての政府の明快な見解を求めます。
政府の周辺事態法案提案の真意は、朝鮮有事の米軍を想定した、自衛隊を初め国を挙げての後方支援態勢確立にあるのではないかという懸念もあります。政府の見解を明確にお聞かせ願いたい。
第五に、沖縄問題があります。
周辺事態に出動する米軍の拠点に沖縄がなるのではないかという沖縄県民の不安は大変なものであります。この新ガイドラインと、懸案であります沖縄基地の整理、縮小に関する日米協議は橋本政権下で行われました。しかし、今日、普天間の飛行場の移転を初め、基地の整理、縮小問題は難航しております。嘉手納基地では、周辺自治体と住民の反対を押し切って、既に移転が決まっているパラシュート降下訓練が実施され、県民の怒りと不安を高めております。都合のいい日米安保ガイドラインだけを具体化し、都合の悪い沖縄基地の整理、縮小は置き去りにするんですか。小渕総理の見解と、沖縄基地の整理、縮小について、沖縄の心を体したいと言われてきた官房長官の答弁を求めます。
第六に、日本の外交戦略の問題であります。
新ガイドラインによる周辺事態法案において、日本が外交戦略とそのための装置をほとんど持っていないまま、米軍との軍事協力が決められようとしているのであります。先ほどの朝鮮半島有事の例をとってもすぐわかります。アメリカは、朝鮮民主主義人民共和国との間に、米朝関係の基礎である枠組み合意があり、米朝会談や四者会談という正式の外交装置を維持し、外交と軍事が一体となってアメリカの国益確保の戦略をダイナミックに展開しております。それに比較して、残念ながら日本には、長期間の外交的無策の結果、朝鮮半島の緊張事態にイニシアチブを発揮できる装置もチャンネルもありません。日本が、周辺事態という軍事衝突回避のための戦略とそれを実行するための外交装置も持たないまま、領土外での米軍との軍事協力の議論に踏み込むことは極めて危険であります。
内閣総理大臣による周辺事態の認定も、日本独自の判断であると政府は主張してきました。しかし、そのためには、その以前の段階で、日本政府が独自で相当程度情勢が熟知できるような外交努力を持たなければ、結局、米国の決定の後追いをせざるを得ないということになりはしないんですか。日本は独自の判断で周辺事態を認定できる外交努力が積み上げられていますか。日本と朝鮮半島を含む安全保障を確立するための我が国の外交戦略は一体何ですか。この際、明らかにしていただきたいと思うのであります。
最後に申し上げたい。私は、要は、周辺事態法案が必要となるような事態を我が国周辺につくり出さないようにすることが最も重要であることを強調したいのであります。そのために総理は身命を賭すべきなのであります。そのためにも政府には一層の外交努力が求められるのであります。当面、対応を迫られている朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化に向けてどのような外交努力をし、打開していくのか、総理の決意をお聞かせください。
私は、冷戦終結後におけるみずからの国益をしっかりと認識し、その観点から、新ガイドラインに基づく対米協力では、あくまでも専守防衛の枠組みを堅持しつつ、その範囲内での協力にとどめるべきであることを再度強調して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕