筆坂秀世の発言 (本会議)
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○筆坂秀世君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました斎藤十朗議長不信任決議案に賛成の立場から討論を行うものであります。
斎藤議長が昨年七月三十日、第百四十三国会で議長に選任された際、「まことに身に余る光栄であり、心より皆様に御礼申し上げますとともに、その責任の重大さを痛感いたしております。この上は、公正無私を旨として、議院の正常かつ円満な運営を図る」と言明されました。我が党は、この言明を信頼して斎藤議長の選任に賛成をしました。ところが斎藤議長の議会運営は、みずからの言明も、我が党などの信頼も大きく裏切るものだったと言わなければなりません。
中でも看過できないことの第一は、斎藤議長が、今開かれているまさにこの本会議で、みずからの職責を忘れ、参議院史上例を見ない不公正で横暴勝手な運営を行ったことであります。
言うまでもなく、主権者国民の代表として選ばれた議員にとって表決権は最も重要な権能とも言うべきものであります。だからこそ「注解参議院規則」は、表決について、「表決とは、議員が問題に対して賛否の意思を表明する行為であって、議員としての最も基本的な権能である。」と明記しているのであります。
ところが、斎藤議長は、既にこの本会議で実に四度にわたって我々の表決権を剥奪するという絶対にあってはならない暴挙を行ったのであります。これは、公正な運営を否定しない立場に立つ議長であるなら絶対に両立し得ないものであり、参議院の歴史にぬぐいがたい汚点を記したものと言わなければなりません。
参議院の歴史を振り返っても、PKO国会と言われた九二年六月の議院運営委員長解任決議案は十三時間、内閣総理大臣問責決議案は七時間、PKO特別委員長問責決議案は十三時間かけて記名投票が行われました。このときの長田裕二議長は時間制限などは行わない公正な運営を行われました。これと比較しても、斎藤議長の運営の異常さは明瞭であり、ここには天地の差があると言わなければなりません。
長田議長がこういう運営を行われたのはゆえなきことではありません。これこそが議会制民主主義の原理原則に照らして当然だったからであります。なぜなら、いわゆる牛歩戦術のような抵抗は議会制民主主義のもとにおける少数党の当然の抵抗の権利だからであります。
もし、こういう抵抗が認められないなら、今の自自公体制がそうであるように、多数党の数の力による横暴がまかり通るからであります。議会制民主主義は単純な多数決原理などではないからであります。多数決原理は、それが国民多数の世論、意思にかなってこそ裏づけを持ち、正当性を持つというのがいわばイロハのイであります。このことを斎藤議長がもし知らないとすれば、それだけでも議長の職責を務める資格はない、こう言わざるを得ません。
少数党が議会運営の民主的ルールに基づき合法的な手段、方法を駆使して抵抗することが当然の権利であることは欧米諸国でも同様であります。イギリスではオブストラクション、アメリカではフィリバスターなどが野党の抵抗戦術の制度的慣行として定着しているのはそのためであります。我が国でも実は当然のことであります。
私は、九二年五月二十七日の毎日新聞のコピーを見ました。それによれば、新憲法下の第一回国会、一九四七年、この国会で牛歩を採用したのは自由党だった。時の政府は、社会、民主、国協三党連立の片山内閣。炭鉱国営法案に反対した自由党は、衆議院本会議での記名投票の際、議席から演壇の投票箱までのんびり歩いて時間稼ぎをした。このため、採決は十一月二十日から二十四日までかかったとあります。何と五日間であります。牛歩戦術は、実は今ここで牛歩に反対している自民党、自由党両党の先輩の皆さんが始めたことなのであります。
河本敏夫元国務大臣も、読売新聞でかつて次のように語っておられました。牛歩戦術や不信任案連発は少数野党の反対手段として残すべきもので、物理的抵抗ではない、これが河本元国務大臣の言明でありました。あるいは学説でも、牛歩は違法な物理的抵抗や議事妨害とはせず、多数決の前提たる諸条件が満たされていないことに対する少数党の公明正大な抵抗として容認するというものであります。
今、日本経済は未曾有の消費不況に陥っていますが、その最大の原因をつくっている消費税導入に反対したときには、我が党や社会党が牛歩で徹底抗戦しました。このとき、ある新聞の社説は、参議院本会議では八十歳を超えた議員も十三年ぶりの徹夜牛歩に臨み、野党の意地を見せた。消費税には各種世論調査では大半が反対している。その世論を受けて、声なき声を代弁しようとする姿にある種の感動を覚えた人も多いはずだと評価しました。ここにこそ形骸化した議会制民主主義ではなく、国民の声を生かした生きた議会制民主主義の姿があると言わなければなりません。(拍手)実際、国民の意思を、声を反映して、このときさらなる徹底審議を行い、消費税の導入を見合わせていたなら、今日の消費不況はこれほどまでに深刻にはならなかったでしょう。
斎藤十朗議長の不信任に賛成する第二の理由は、だれもが異常と認める法務委員会の不正常を正す努力について何らの努力もしなかったことであります。そして、我が党や民主党、社民党などが同委員会に強く差し戻しを要求したにもかかわらず、本院の法務委員会において犯罪捜査のための通信傍受に関する法律、いわゆる盗聴法案など三法案が採決されたとして、あえて本会議開会を公報に職権で掲載、昨日からの本会議を強引に開催するという、院の運営に公正であるべき議長にあるまじき行為を行ったのであります。
議長がやるべきは、表決権の剥奪などではありません。不公正で異常な法務委員会の運営を正す方向での努力ではありませんか。やるべきことが全く逆立ちしていると言わなければなりません。これこそ参議院改革を標榜する議長の最大の任務でありながら、それを全く放棄したのですから、到底議長の職責を任せるわけにいかないのは当然ではありませんか。(拍手)
そもそも、この不正常な状態は、自民、公明、自由各党と法務委員長によるあり得べからざる暴力的な委員会運営で盗聴法など三法案を採決したと強弁していることから事の発端が生まれたのであります。
法務委員会の事態は、この間、何度もこの場で明らかにされたとおり、およそ委員会の民主的で公正な運営とはほど遠いものでありました。事実は、議員が質問しているさなか質疑打ち切り動議なるものを提出し、我が党議員や委員外小会派議員などの質問時間を不当にも打ち切って、委員長が指名もしていないいわば単なる不規則発言を質疑打ち切り動議と称して動議は可決されたなどとしたにすぎません。委員会運営の先例に反して、もともとなかった動議を可決することなどできるわけがありません。そして、その上に、さらに採決したという偽りをつけ加えただけであります。
この間、法務委員会では盗聴法案について、審議をすればするほど法案の反民主主義的な内容が明らかにされてきました。したがって、この法案の問題点を徹底的に解明するのは、国民から負託された国会の重大な責務であるにもかかわらず、我が党議員などの質問までも多数の力で強引に打ち切るなどは、議会制民主主義を根本から覆すものと言わなければなりません。(拍手)
こういう事態のもと、斎藤議長の果たすべき役割は、先ほど指摘したとおり、質疑打ち切り動議や採決なるものの経過を本院の先例などに照らして調査し、その無効を指摘して、法務委員会に差し戻すことであります。
かつて、一九七三年七月、運輸委員会、内閣委員会、文教委員会で審議の行われた国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案、さらには国立学校設置法等の一部を改正する法律案は、それぞれ採決が強行された後、再び委員会において質疑されたことが現にあるのであります。とりわけ、運輸委員会では、採決後に六回もの審議を重ね、改めて採決のやり直しを行いました。
本院にはこのようなすぐれた先例があり、委員会に差し戻すことは可能であったにもかかわらず、斎藤議長は、法務委員会の経過の調査を全く行わなかったばかりか、正常に復する努力を一切しなかったのであります。
盗聴法はもともと「通信の秘密は、これを侵してはならない。」との憲法二十一条の原則を真っ向から踏みにじり、国民の基本的人権を侵害する盗聴を合法化しようとするものであり、このような法案は本来廃案とすべきものであります。その上に、議会の民主的手続のじゅうりんをたび重ねて強引に強行成立させるなど、絶対にあってはならないことであります。(拍手)
斎藤議長の行ってきたたび重なる民主的運営のじゅうりんは、院の民主的運営に尽くさなければならない議長の任に全くふさわしくないことは明らかであり、不信任は当然だということを重ねて強調して、私の賛成討論を終わるものであります。(拍手)