水野誠一の発言 (本会議)

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○水野誠一君 私は時間を守って討論をしたいと思います。
 私は、参議院の会の同僚議員の許しを得て、組織犯罪対策関連三法案に残念ながら反対の立場から討論を行います。(拍手)
 なぜ残念ながらと申し上げたかといえば、従前より私は、近年の国内犯罪においてはその凶悪化、巧妙化といった著しい質の変化が進行しており、捜査機能にも時代に対応した能力の向上が求められているという認識のもと、通信傍受法案についてもその必要性には一定の理解を示してきたからであります。
 しかし、捜査手法としての通信傍受はまさに一種の劇薬であり、その効果のみを期待して安易に導入を図るのは危険であると言わざるを得ません。厳格な運用が担保され得るのか否か、開かれた場である国会の委員会審議を通じての十分な議論が必要だったはずであります。
 平成十年当時のさきがけが政府原案の提出を容認したのも、まさに開かれた場での十分な論議が不可欠であるとの判断に基づくものでありました。
 そうした観点から見ると、一連の法務委員会の審議時間はともかくとしても、今月九日の委員会における乱闘騒ぎの中、いわゆる強行採決がされたと言われることは、残念ながらこれが国民に納得の得られる審議のあり方であるとは言いがたいと考えるものであります。(拍手)
 また、内容的な面からは、これまでの本法案の審議の過程において、幾つかの論点につき法務省側の答弁に微妙な揺らぎが見られたことについて申し上げなければなりません。
 例えば先月六日、私自身、委員外委員として法務委員会での質問の機会をいただき、法案十一条のいわゆる通信事業者の協力義務の問題について触れさせていただきました。
 インターネットプロバイダーなどの事業者が捜査官への協力を拒んだ場合に通信傍受は実行されるかという問いに対して、無理やりそれを押してまで傍受をすることはあり得ないという答弁がなされました。これは、以前聞いていた、事業者が協力を拒んだ場合には捜査機関が自力執行することになり、結果としては傍受の実施がなされるという法務省からの説明とは大きく異なるものであります。
 また、いかなる手法によって通信記録を採取するのかといった専門的、技術的な点についての答弁もあいまいなものでした。
 これらの問題からもわかるように、インターネットの傍受に関して言えば、電話とはシステムやその成熟度が全く異なるものなのに、十分な検討がなされないまま法案の中に組み込まれようとしているという拙速の感は免れないものだと思います。
 また、法案十五条に関連し、報道機関等も通信傍受の対象から除外すべきであるという一部の主張があります。法務省はこれに配慮して、ある時期以降、運用上配慮するという趣旨の説明がなされております。これによって残った問題は、報道機関等の範囲をどう定義するかという点ではなく、逆に、憲法上保護されるべき通信の秘密の範囲が、その職種等によって、しかも運用上変わり得るということを認めているという問題であります。
 つまり、法律に定められる場合を除き、保障されるべき通信の秘密は万人に対してひとしくあるべきで、かつ最高レベルの配慮であることはもとより当然であり、運用において差があり得るという説明にはいささか奇異な印象をぬぐえないものであります。
 委員会審議の過程において政府側答弁がこうした揺らぎを見せていることが、法案自体しっかりとしたシステムに裏打ちされていないという印象を国民に与えてしまったことは大いに残念であるとともに、逆に言えば現場での大幅な裁量を許すことになるのではという懸念にほかなりません。厳格な運用という観点からも疑問が残ります。
 また一方では、一般的な盗聴行為を取り締まる法律が電気通信事業法、有線電気通信法以外にないという事実や、盗聴器がちまたで大量に安価で販売されていることが放置されている事実などについても、十分な対応が論議されないままに通信傍受法案だけがひとり歩きし始めるというアンバランスさも看過することができません。
 私は、六月九日に行われました本法案に対する代表質問において、通信傍受法案に関しては、国民の基本的人権にかかわる多くの論点を含んでおり、衆議院において十分な審議が行われないまま強行採決に及んだことについて、そうした秩序を欠いた法案審議のあり方が、立法府の歴史においてあしき先例となるばかりか、国民生活の将来に重大な禍根を残す結果を招きかねないということを強く指摘させていただきました。
 さらに、こうした重要法案の審議に当たり、万一良識の府たる参議院においても同様のことが行われれば、それはまさに立法府の機能不全をみずから露呈するものであり、真摯な議論を望む国民の信頼を回復することがますます難しくなることを我々は肝に銘じるべきであるとも申し上げさせていただきました。
 かくして、組織犯罪対策関連三法案が六月一日に参議院に送付されて以来およそ七十日、その間に法務委員会では、趣旨説明一回、対政府質疑八回、参考人聴取二回、公聴会一回と、計十二回、約五十時間の審議が行われました。これは、実質二十三時間程度と言われている衆議院の審議時間を大幅に上回るものであります。
 しかし、時間数で衆議院を超えたかどうかは国民には余り重要な関心事ではありません。むしろ、七十日間という審議日数があったにもかかわらず、将来の国民生活に多大な影響を与える本法案が、終局場面で委員長席に与野党議員が詰め寄り、つかみ合いの中で強行採決が行われるという異常事態を迎えざるを得なかったということが極めて不適切であります。これは立法府が、そして良識の府たる参議院が、そのあるべき姿から遠くかけ離れた現状にあることを国民に露呈したものと言わざるを得ません。
 さらにつけ加えれば、参議院での委員会審議に衆議院議員が多数押しかけ、あまつさえその後の乱闘に加わったという出来事は異常な事態であり、許せない行為と言わざるを得ません。
 残念ながら、こんな状態で重要なこの三法案を立法することは、それがいかに必要な法律であったとしても、国民に対して大きな不信感を与え、何かうさん臭いものに見せてしまう結果となりました。これは将来に大きな禍根を残すものと考えざるを得ません。
 以上の理由により、いま一度審議を深めるべきであり、現時点での拙速な法案成立については残念ながら賛成することはできません。
 しかしながら、本日の本会議における議長の注意を無視した一部の議員の態度、そこから起きた混乱については、原因がいかなるものであったにせよ、良識の府たる参議院にふさわしいものではない。そして、議長の権威、ひいては参議院の権威失墜につながるものであることについて、私たち参議院の会一同、遺憾に感じていることを申し添えて、私の討論を終わります。(拍手)

発言情報

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発言者: 水野誠一

speaker_id: 844

日付: 1999-08-12

院: 参議院

会議名: 本会議