堀井愼一の発言 (中小企業対策特別委員会)
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○参考人(堀井愼一君) 日本インベストメント・ファイナンスの堀井と申します。
本日は、中小企業国会と名づけられている御審議に参考人として意見を陳述しますことは非常に名誉なことだと深く感謝申し上げます。
中小企業基本法が三十六年ぶりに改定された、そして、特別保証制度の拡大延長、これが決まったことに対しまして、我々ベンチャーキャピタルに従事する者としては非常に高く評価したいと思っております。
現在審議中の主なもので、新事業創出促進法改正、特にこの中でストックオプションの枠の拡大とか、産業基盤整備基金による我々ベンチャーキャピタルに対する組合の出資であるとか、あるいは中小企業の無担保社債の発行とか、それからエンジェル税制の拡大等は衆議院を通過して本参議院で御審議の途中でございますが、我々ベンチャーキャピタルあるいはベンチャービジネスにとっても非常にこれが出たということは高く評価しております。
こういったベンチャー国会となぜ名づけるのかということでございますが、やはり今の日本はアメリカの十年前あるいは十五年前に非常に似ていると思うんです。例えば、十五年ほど前にアメリカはIBMあるいはビッグスリー、フォード、クライスラーそれからGM、ゼネラル・モーターズ等が大幅リストラをやりました。例えばIBMの場合、三十万人いた従業員を二年間で十万人も減らしたわけです。その一方、中小企業対策というのを盛んにやりまして、やはりマイクロソフトに見られるようなビル・ゲイツみたいな人が出てきたわけです、コンパックだとか、最近はヤフーとか。日本はまさに今その姿じゃないでしょうか。
これから大企業はいわゆる大幅なリストラ、特に今、けさのニュースでもやっていましたけれども、来年の新卒者は二四%も昨年より採用が少ないということですから失業率も拡大する。しかし、その受け皿をつくらなきゃいけないのがやっぱりベンチャービジネスの勃興ですから、そういう意味において、国会で審議されていますこともこれはわかるような気がしているわけでございます。
アメリカでは、それはどこがベンチャービジネスを支えたかといいますと、やはりベンチャーキャピタルの役割は非常に大きかったわけです。ちなみに、今ベンチャーキャピタルの資金であります投資事業組合、アメリカは今約八兆五千億ぐらいあります。日本は幾らかといいますと、その十分の一です。八千五百億です。エンジェルといいますか、エンジェルはベンチャーキャピタルファンドの約十倍の規模があります。約八十兆円と言われています。その人たちがいわゆるベンチャービジネスを支えているということだと思うんです。しかし、これからベンチャービジネスに対して、やはりそういった資金がどんどん出ていかなきゃいけないと思います。
これからの日本のキーワードは、やはり過去の清算と未来への挑戦、この二つに尽きるんじゃないかと思います。過去の清算とは当然バブルの処理、これはまだまだ時間がかかります。あと五年や十年はかかると思います。それとあと一つは、産業構造の転換をしていかなきゃいかぬ。従来型重厚長大の産業は新しいビジネスに変わらなきゃいかぬ、それが過去の清算です。過去の清算をしている間はやっぱり失業率が高まってくる、経済が疲弊する。それじゃどうすればいいか。これはやっぱり未来への挑戦、すなわちベンチャービジネスがアメリカのように出てこなければ日本の経済再生はないんじゃないかなというふうに昨今思っております。
日本にベンチャーキャピタルというのは大小合わせて百五十社ぐらいあると思いますが、私どもの業務について、ちょっとコマーシャルめいているかもしれませんが、私どものやっています業務を御理解いただければと思いまして「NIFの組織」という、日本インベストメント・ファイナンスですから日本ではニフ、ニフと言われています。海外ではNIF、NIFと言われていますが、その現状についてちょっとお話ししたいと思います。
NIFは、一九八二年に設立されましてちょうど十七年です。ただ、この十年間は本当に苦しみました。それはもうバブルの頂点が十年前。やはり株式市場がもう大幅に低迷した。そして、銀行の貸し渋りもあった。なかなかベンチャービジネスがないんです、探して歩いても。投資しようと思っても、どっちかというともう傾いているところが非常に多くて、なかなか対象がなかった。ただ、それもことしに入りまして情報通信を中心に若い人々がたくさん出てまいりまして、非常に手ごたえは感じております。
ただ、その十年間苦しんでいる間、我々は業務をやらなきゃいけないですから、そのために何をやったかということになりますと、海外で活動したわけです。アメリカ、台湾、ヨーロッパ、イスラエルでやりました。それは日本に十分な投資先がなかったからやったんです。ただ、三年前から日本の景気回復を予想して情報通信ベンチャーへ投資してやってきて、やっと最近手ごたえが出始めたということです。
「NIFの組織」の次の二ページをごらんいただきたいんですが、これは私どもの会社、日本で最大の大手はジャフコという野村系のベンチャーキャピタルですが、それに次いで私ども第二位ということになっていますが、投資実績、十七年間で投資累計は千二百六十四社、二千百九十二億円です。うち公開は三百三十六社、二六%の打率です。大体、ベンチャーキャピタルは三割の打率を上げれば大成功と言われています。ですから、十社のうち三社が公開すれば大成功ということですから、まあまあであったんじゃないかと自負しています。
現在、投資残高は八百五十一社、九百三十二億円、国内、海外の比率は六対四でございます。海外は非常にここのところ多くて、六対四になったわけです。
投資事業組合実績は三十六組合を過去やりまして、千三百三十五億円組成しました。IRRは東証の株価上昇率を常時しのいで、元本割れ償還はありません。ということは、皆さんはベンチャーファンドは非常に危険だとお思いでしょう。しかし、投資信託を過去に買っていたら今半値です。しかし、ベンチャーキャピタルのファンドでしたら元本割れはなかったという。ですから、打率二割六分でもまあ成功したという証拠でございます。
ことしになって非常に活発になったというふうに申し上げましたが、ことし九月十日にNIFニューテクノロジー99というのを八十億円で設立しました。このファンドというのはいろんな事業体とか金融機関から集めるんですが、去年までは非常に苦労していましたが、出資者が非常にふえてきて、いい手ごたえを感じています。来年は二百億円の設立予定でございます。
次のページをごらんいただきたいんですが、投資方針としては、私どもはインフォメーションテクノロジーを中心とした分野に特化しております。目ききとしてテクニカルアドバイザー、六人のプロがおります。この方々は大企業の研究所等に勤めていた方で、定年で退職なされた方がほとんどです。しかし、なかなか頭がさえていますし能力も非常に高い、非常に技術を見る目が高いので我々は助かっています。
方針としては、投資先へのハンズオン、ハンズオンという意味は育業という意味です。今まで、我々は証券系のベンチャーキャピタルですが、ただ投資するだけで何もしないという御批判があったんですが、これじゃ我々は今後通用しない。したがって、投資するだけじゃなくて、会社と、投資先とともに歩もう、いわゆる事業も手伝おう、そして公開まで持っていこうというのが我々の使命感だと思ってやっております。
ただ、今からお話しすることは私どもの悩み、ベンチャーキャピタルの悩みについてお話ししたいと思います。
次のページをお開きいただきたいんですが、棒グラフのあるものです。これは何のグラフか。これはGEMという国際組織の調査です。GEMというのはグローバル・エンタープレナーシップ・モニター、いわゆるグローバルに創業者を調査する機関です。昨年できました。日米欧主要七カ国にデンマーク、フィンランド、イスラエルを加えた十カ国のベンチャービジネスの調査研究所ができました。それがことしの十月にその調査結果をまとめました。きょうはそのエキスを抜粋しまして皆さんにお話ししたいんです。
起業家活動の比較、各国の十カ国のベンチャービジネスの専門家とそれから成人千人を対象にした調査です。
まず一番目、「起業家活動の活発さ」というのは起業予定率ですが、「現在のあなたは新しい事業を始める計画をお持ちですか」にイエスと答えた割合は、アメリカが最も高くて八・四%、日本が最も低くて一・六%でした。真ん中はイギリスです。それから二番目、「ベンチャー・ビジネスの対象となる機会」、これは、「あなたの周囲で、今後六ヶ月以内に新しい事業機会が生まれると思いますか」、自分の周りに事業をやろうとする人がいますかという調査です。アメリカは五七%。自分の周りに半分以上の人が何か独立してやってやろうという気分になっている。日本は三カ国中最低の一%でした。最後が重要です。「ベンチャー・ビジネスマンに対する社会的評価」、これは創業者の尊敬度です。「あなたの社会では、新しい事業や会社を始めることは立派なこととして認められていますか」。アメリカは実に九一%が尊敬されます。ビル・ゲイツは尊敬されているわけです。日本は八%です。
やはり、日本はどうも何かやきもち世界というのかジェラシーの世界というのか、若い人が創業してどんどん公開して金が入る、若造のくせにとか、何かきな臭いとか、そういう目で見る傾向が非常にあります。それはなかなか若い人がスピンアウトできない、創業者の尊敬度が足りないというのが我々の悩みです。
そして、それはどういうふうに経済に響くか。次のページをごらんいただきたいんですが、日米の新規開業数は、アメリカは日本の十倍の会社が毎年生まれています。九十万ぐらい。日本は十万ぐらいです。それがGDPとどう関係があるかというのがGEMの調査で出ました。縦軸は四半期平均のGDPの成長率です。横軸が起業予定率です。これでごらんになったら一目瞭然。アメリカは起業予定率も高い、GDPも高い。最近ではイスラエルが非常に高くなってきた。カナダも高い。日本をごらんください。ぽつんと左下、蚊帳の外です。日本の経済、復活するためには、やっぱりベンチャービジネスがたくさん出てくる。先ほど寺内さんも言っていましたけれども、廃業率の方が高いという現状ではとてもGDPが上がるということにはならないんじゃないかというリスクを我々は考えています。
それで最後のページですが、GEMがその結果、日本に指摘してきました。GEMから指摘された日本の特性、横並び文化の日本社会。制度や規範は独立心を促すようになっていない、創造性あるいは独立心も高い価値が置かれていない、多くの人が同じような生活水準であることを好む、多くの若者は自分のキャリアにとって転職は不利と考える、多くの人は小さな会社より大企業で働くことを好む、これがGEMから日本に対しての指摘でした。
そして、GEMは日本の政府へ提言しました。これはお聞きになっている方がいらっしゃるかもしれませんが、提言一、起業家支援や育成プログラムの整備よりも起業家に対するインセンティブの向上政策。今こうやって国会でいろいろと支援政策がどんどん議論されています。非常にそれは結構なことです。しかし、それだけでは起業家は出てこないということなんです。やはり起業家に対するインセンティブ、富も名誉も手に入る。ですから、起業家に対しての税制等、これも特別時限立法でもいいですから、何かつくるべきではないかというふうにGEMは言っているわけです。それぐらい日本は追い込まれている。
提言二、ベンチャー企業の絶対数をふやす。いわゆる起業という現象を身近な存在に、そのためのインフラづくり。今国会で五年後に年間創業率を二十四万社にするということを決めましたね。二十四万社というのは今の約倍です。五年後に本当に二十四万社創業するでしょうか。してくれれば、我々ベンチャーキャピタルにとっても万々歳です。多分無理ではないかなというふうに何となく、失礼を省みず申し上げますが、ちょっと無理ではないかなというふうに思っております。そのためのインフラづくりがまだ足りないんじゃないかと思っております。
それから、提言三は教育プログラム、いわゆるビジネスチャンスを見つけ出す能力を伸ばす。これは、アメリカはハーバード大学を出てベンチャービジネスマンになったってニュースになりませんけれども、日本では東大を出てベンチャービジネスをやるなんていったらニュースになっちゃいます。このこと自体がおかしい。アメリカはスタンフォード大学、いわゆるシリコンバレーの中心にスタンフォード大学が位置していますが、アメリカの大学生はみんなアントレプレナーになろうとして勉強しているわけです。
それから、起業家を称賛し、尊敬するような風土づくりをしたらどうですかとGEMは政府に提言しています。
最後に、必要な起業家インセンティブ、これは我々の提案ですが、ベンチャー政策、支援策より、いわゆるインセンティブを付与するようなアプローチがどうしても必要ではないか。アメリカンドリームではないんですけれども、起業家として成功すれば名誉も富も入る。やっぱりそのためにはキャピタルゲインの撤廃。あるいは相続税も、日本は七〇%です。アメリカは五五%、ドイツは三〇%。あるいはキャピタルゲイン課税は二六%です。こういったものを、いわゆる時限立法でもいいですから、ベンチャービジネス向けだけでもいいですからやっていただけるといいんではないかなと。
それから、起業家活動の国家経営への貢献を社会に知らしめる、いわゆる表彰することです。国民栄誉賞なんていうのがあります。これはスポーツに非常に功績があった人とか、そういった国民栄誉賞がある。あるいは勲一等とか勲二等とかという勲章もある。だけれども、勲一等、勲二等は過去に対する勲章です。ですから、ぜひベンチャービジネスに立ち上がった人に対して何らかの、やっぱり小渕総理大臣が表彰するというふうなことをやれば、多くの若者がそれを追っかけるんではないかというふうに思っています。
以上でございます。ありがとうございました。