都村敦子の発言 (厚生委員会)

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○都村参考人 都村でございます。おはようございます。
 児童手当法改正案について意見を述べさせていただきます。
 最初に、現行の児童養育家庭に対する経済的支援の問題点について取り上げたいと思います。
 我が国の児童手当制度の特徴としましては、第一に、制度の実施が諸外国に比べて遅かったということが挙げられます。日本で導入されたときに、既に世界の六十二カ国で実施されておりました。これは図表一から二を御参照ください。小さく産んで大きく育てることをねらいとして創設された我が国の児童手当制度でありますが、満二十八歳の誕生日を迎えた現在、大きく成長したとは言いがたい状況になっております。
 特徴の第二は、社会保障制度における児童手当の位置づけが明確でないということであります。
 ベバリッジは、児童手当を、一方では両親が責任を果たすための補助として、他方では社会が新しい責任を引き受けたものとして重く位置づけました。
 図表の三をごらんいただきたいのですけれども、これは児童手当給付費の対GDP比を示しています。国の資源の児童手当への投入割合の高い国は、スウェーデンなど第一グループです。平均してGDPの二・七%を児童手当として支給しています。日本は〇・〇三%です。
 それから、図表四の方は社会保障制度の中における児童手当のウエートを示していますけれども、この数値は、スウェーデンの一四・四%から日本の〇・三%まで、国により大きな差異を示しております。
 三番目の特徴は、支給対象の範囲が限定されているということであります。これは年齢要件と所得制限によるものです。
 図表の五をごらんいただきたいのですけれども、真ん中のところに「年齢制限」とございますけれども、諸外国では児童手当は十六歳から十八歳まで、あるいは学生の場合はそれ以上まで支給されますが、日本は三歳までです。そのために、日本では義務教育終了前児童の一一・六%しか受給していないのですね。ですけれども、諸外国ではすべての国で一〇〇%が受給しております。
 第四は、子育てのための経済的支援としての機能が弱いということであります。
 図表の六をごらんいただきたいのですけれども、これは、子供二人を養育している平均的な勤労者世帯にとって給付は手取り年収の何%ぐらいかというものであります。一列目が児童手当ですけれども、多い国では一〇%以上を支給しているということですけれども、日本はゼロであります。ただし、児童手当のみを比較することによって子供の扶養に対する国の援助策を議論することは十分ではありません。というのは、税制の扶養控除(所得控除)あるいは税額控除がありますので、それも児童手当と類似の機能を果たしているからであります。それを合計したのが一番右端ですけれども、多いところでは一七%から一八%ですが、日本では一・九%ということで非常に給付の規模が小さなものになっております。図表の七は、より新しい年について、児童手当の対手取り年収比を示したものであります。
 五番目の特徴としましては、被用者と非被用者では異なる費用負担方式を採用しているということです。財源のうち、事業主拠出金の占める割合が高いということであります。
 我が国の児童養育家庭に対する経済的支援は、社会保障(児童手当)と税制(扶養控除)を通じる混合システムによって行われているという点が、第二の問題点として取り上げることができると思います。
 この両システムの給付の間には、その目的から見ても、また、それらが個人の可処分所得を増加させるという点から見ても、違いはありません。しかし、公平の視点から問題があります。
 そこでは扶養控除の価値を書いておきましたけれども、これは標準的な給与所得者である平均給与の人と平均給与の三倍を稼得している裕福な給与所得者を比較したものであります。表の上のところは、高校生の子供が二人いる世帯ですけれども、標準的な給与所得者は月に一万七千三百円、裕福な給与所得者は月に四万四百円が税制を通じて扶養手当として支給されているということであります。表の下側は、小学生と中学生の子供が一人ずついる場合であります。
 このように、高所得層は、中所得層あるいは低所得層よりも児童のために国から大きな援助を受けているわけですね。これは、社会全体の公平という観点からは問題を提起しております。
 次に、図表の九をごらんいただきたいのですけれども、この図は税制と社会保障という所得保障のサブシステムの生み出すパターン及びそれらの総合的な効果を示しております。一番上の太い線が両システムからの給付を合わせた総給付であります。横軸に所得をとっておりますけれども、最も所得の低いAグループでは児童手当のみ、その次の中ぐらいのBグループでは児童手当と税制から援助を受けます、それから、高所得のCグループでは税制のみということになっております。
 社会保障と税制における給付の総合的な効果は、税制における所得控除システムの逆進的な性格によって強く影響されています。税制の扶養控除の効果が支配的でありまして、児童手当がせっかく実施されているのですけれども、その効果を弱めております。
 次に、児童養育家庭に対する経済的支援改革の方向についてです。
 第一は、社会保障と税制との相互調整を図ることです。ILOの百二号条約の家族給付に関する最低基準ともかかわるのですが、児童手当を所得保障制度として十分に機能する仕組みにすることが必要であります。
 図表の八をごらんいただきたいのですけれども、年間収入の低い階層に属する児童の割合が増加してきております。Iが最も低いグループなんですけれども、九八年で見ますと、IとIIに属するグループが全体の約四割を占めるようになっております。
 政策目的をより有効に達成するためには、税制の扶養控除を廃止して、すべての給付を社会保障(児童手当)を通して支給することが必要であります。
 国際的な動向を見ますと、児童養育家庭に対する経済的支援は、所得控除から税額控除へ、税額控除から社会保障の現金給付、児童手当へと置きかえられる傾向が強くなっております。多くの国々が児童扶養控除を廃止して、児童手当に統合し、再分配効果を高めるという制度改革を行っております。例えばスウェーデンでは、一九四八年に児童手当が実施されたのですけれども、それと同時に児童扶養控除の方は廃止されております。
 経済的支援改革の第二は、経済活動へのアクティブな参加を容易にすることであります。これは、仕事と育児の両立支援を図るということ、すなわち、雇用環境の整備、育児休業の改善、保育サービスの充実等を図るということであります。育児休業給付については、雇用保険の改正によりまして、二〇〇一年の一月から休業前の賃金の二五%から四〇%に引き上げられることになりましたけれども、これは非常に評価できる改革であると思います。
 最後に、今回改正の評価についてでございますけれども、児童手当と類似の機能を持つ税制の扶養控除との統合に向けて初めて一歩を踏み出したこと、すなわち、改革の方向性は評価できます。イギリスのティトマスが一九五八年に問題提起をしたわけですけれども、それを端緒としまして、諸施策間の機能の類似性はヨーロッパでは広く認識されまして、児童手当の改革に影響を与えました。我が国では、このティトマスの問題提起から四十二年目の改革として、その意義は非常に大きいと思います。
 私自身、一九七七年から実証分析に基づきまして児童手当と税制の扶養控除との統合の必要性を取り上げてきましたので、今回の改正は非常に評価できるというふうに喜んでおります。
 ただし、今回の改正は経過措置としての部分的改正でありまして、社会保障と税制との相互調整が徹底して行われないため問題が残り、国民にとって非常にわかりにくい改正となっております。児童手当の大幅な拡充を積極的に推進すべき時期であるにもかかわらず、極めて小規模な改正にとどまっているのは非常に残念であると思います。ニードの高いグループにより大きい公的援助が行われるよう、早い時期に検討が行われることを期待いたします。
 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 都村敦子

speaker_id: 13930

日付: 2000-04-18

院: 衆議院

会議名: 厚生委員会