倉田栄喜の発言 (本会議)
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○倉田栄喜君 ただいま議題となりました犯罪被害者等の保護を図るための法律案と民主党案について、公明党・改革クラブを代表して質問いたします。
命のとうとさを最大の価値と考える社会にあって、犯罪によってその命を奪われた被害者とその家族に対し、我が国の捜査、裁判、執行という司法システムは、どのような立場を用意してきたのか、今、改めてじくじたる思いがいたします。
現在の刑事裁判は被害者を疎外するシステムになっていて、一人の人間の死に対する尊厳や血の通ったものを何一つ見出すことができないという被害者の声に、自分で復讐したいという被害者遺族の叫びに、我が国の司法システムは本当に信頼に足るべく機能しているのでしょうか。
法務大臣にお聞きします。なぜ刑罰権は国家に独占されているのですか。法秩序の維持という目的の中に、被害者の権利と被害回復の立場は含まれないのですか。改めて確認したいと思います。
私は、被害者が、司法システムの中で単に保護の対象者ではなく、被害者の知る権利も含め権利の主体者として位置づけられなくてはならないと主張してきました。しかし、被害者とその家族に対する現状は、保護の対象どころか保護のらち外にあり、刑事システムにあっては、証拠資料としての扱いしか受けていないというのが現実です。
犯罪の被害者には、いつでも、だれでも、ある日突然、思いもかけずになってしまうのに、一たん被害者になれば、治療、生活維持、精神的ケア、被害の回復等、すべて自己責任で解決しなければならないのです。
犯罪が社会から生まれ、だれもが被害者になる可能性がある以上、犯罪被害者に権利を認め、医療と生活への保障や精神的支援などの被害回復のための制度を創設することは国や社会の当然の義務であるとの主張は、我が国では通用しない主張なのでしょうか。
法務大臣、なぜ、我が国刑事訴訟の世界は被害者の立場を今日まで無視してきたのでしょうか。裁判というシステムが、お上の権威によるお上のものであり、国民のものであるという意識がなかったからということでしょうか。
亡くなった被害者のかわりに、言うことは言い聞くことは聞いてようやく仏壇に報告できる気持ちになるというのが、被害者遺族にとって偽らざる心情であろうと思います。
一九九九年五月十五日、全国被害者支援ネットワークによって採択された、公正な処遇を受ける権利、情報を提供される権利、被害回復の権利、意見を述べる権利、支援を受ける権利、再被害から守られる権利、平穏かつ安全に生活する権利という七つの権利主張に対して、どのようにお考えでしょうか。法務大臣の見解を求めます。
国家公安委員長にお尋ねいたします。
法務総合研究所がこの三月に発表した犯罪被害実態調査によれば、個人で犯罪の被害に遭った場合、実際に警察に被害を届け出る割合は、強盗で三〇・八%、性的暴行で九・七%、暴行、脅迫で二一・三%ということであります。被害に遭っても警察に届けない被害者が多いのはなぜでしょうか。
愛知県で起こった少年による五千万円もの恐喝事件、被害届を出したのに、警察は捜査を放置したとの報道がありますが、どうなっているのでしょうか。
警察による被害者連絡制度は、被害者と家族の気持ちにこたえるものになっているでしょうか。捜査の密行性とかプライバシーとかの理由で、被害者の知りたいという気持ちにこたえていないことが多いのではないでしょうか。
犯罪被害給付制度についても申し上げれば、その要求や支給額について、抜本的に拡充すべきではないでしょうか。国務大臣としてもお考えをお聞かせください。
法務大臣、今回の法案で、被害者等に公判手続の傍聴手続が規定されたことは評価しますが、今後、配偶者の兄弟姉妹など、その範囲はさらに広げるべきではないでしょうか。
また、公判記録の閲覧、謄写は、加害者への賠償請求に必要な場合等正当な理由がある場合に限定されていますが、公開法廷の記録である以上、公判中であっても被害者に対しては公開が原則であるべきではないでしょうか。
関連する刑事訴訟法の一部を改正する法律案において、公判における被害者等の意見の陳述は、意見陳述が認められる被害者等の範囲はどこまででしょうか。精神的障害も含めて、本人が意見陳述することができない場合も多いと思いますが、その場合、家族の意見陳述は認められていますか。証人の付き添いとともに、被害者と家族の付き添いは保障されますか。刑の執行及び保釈と終了について、希望する被害者等には通知できないのでしょうか。
さて、被害者問題については、精神障害者による事件の被害者と少年による事件の被害者の立場について特に申し上げたいと思います。
これらの事件による被害者とその家族は、一般の犯罪被害者以上にその立場が抑制されることになります。命のとうとさが全く同等であるべきなのに、被害者とその家族にとって、加害者がだれであろうとその苦しみと悲しみが少なくなるはずがないのに、一方は犯罪の成否という問題で、他方は少年の健全育成というために、情報提供を受ける権利も意見を陳述する権利も蚊帳の外にあると言っても過言ではありません。
加害者の人権保障や、国家を少年の親として加害少年の更生を目的とし、これらによって社会を非行、犯罪から守ることを価値とすることで、被害者の立場が必要以上に抑制されていると考えざるを得ません。そうであるとすれば、その抑制分に見合うだけの保障を考えてようやくバランスがとれるのではないでしょうか。
もちろん、人権の保障や少年審判の理念の中で可能な限り被害者の知る権利や意見陳述の権利の実現を目指すべきこととしても、その理念と目的ゆえに抑制される代償措置としての支援制度を確立すべきであると思います。
一つは、国費による被害者弁護人制度を確立すること、さらにもう一つは、保護者の監督責任を民法の不法行為理論ではなく、少年の保護監督者責任とともに、国親思想というのであれば、国も含めた保護者としての賠償責任を明確に定めた方がよいのではないでしょうか。これらについて、法務大臣の御所見をお尋ねいたします。
民主党提案の犯罪被害者基本法は、犯罪被害者の支援対策を基本法の目的としていますが、せっかく野党の立場で提案されるのであれば、我が国の刑事システムにおける被害者の権利者としての立場をもっと明確に掲げるべきではなかったでしょうか。例えば、基本法は、刑事手続について、犯罪被害者等に対して適切な取り扱いがなされるような必要な措置を求めていますが、権利の主体者ではなく保護の対象者としての措置を求めているにすぎないように見えますが、どうでしょうか。
犯罪被害者らの叫びは、せめて加害者に認められる具体的な権利を被害者にも認めてほしいということだと思います。
さらに、この基本法の哲学と理念では、我が国の司法システム、ひいては現行刑事訴訟法や少年法をどうお考えになるのか、具体的な考え方が見えません。提案者にお聞きしたいと思います。
最後に申し上げたいと思いますが、法務大臣、近時、リストラティブ・ジャスティスと呼ばれる考え方が注目されています。回復的正義あるいは刑事和解モデルなどと訳されるようでありますが、この考え方の特徴は、従来の刑事司法における加害者を処罰するという考え方から、被害者が受けた損害の回復を求めるという発想の転換にあります。
今、私たちは、現行の司法システムが国民の信頼にこたえているのかどうか、刑罰権を国家が独占しているのは本当に何のためなのか、社会秩序の維持や犯罪の防止のためには、被害者、加害者、そして犯罪が発生した地域がそれぞれの立場を超えて共同して取り組むべきであるという考え方について、ぜひとも研究、検討していただきたいということを強く申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣臼井日出男君登壇〕