高野博師の発言 (憲法調査会)

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○高野博師君 二点、自分の意見を述べたいと思います。
 一つは、憲法と歴史総括についてでありますが、先ほども戦前は悪で戦後は善だといった単純な認識は改めるべきではないかといった趣旨の御意見もありました。
 そこで、憲法を議論する際に、歴史的な視点あるいは歴史観というのは非常に重要ではないかと思います。現憲法の歴史的な制定過程を調査することも大切であると思いますが、より広範により深く我が国の現代史を総括する中で、明治憲法、そして現行憲法の位置づけをすべきではないかと思います。当然、制定過程も含まれると思います。一度きちんと歴史の総括をした上で、特に戦前、戦後あるいは戦争そのもの、その総括をした上で、将来の国家像を考えて憲法を議論すべきではないか。歴史の二面性という点からすれば、客観的な総括は極めて難しいとは思いますが、避けては通れないのではないかと思います。正しい歴史認識、歴史観なくして客観的な憲法の議論というのはできないのではないかと思います。
 もう一つは、二十一世紀の新しい人権についてお話ししたいと思います。
 一つは、先ほども個人的な自由権と社会的な生存権について言及がありましたが、現憲法の人権規定というのは、いわばフランス革命以来の西欧個人主義の古典的な人権が主体であります。これらの諸権利というのは、自己決定能力を有する者が自己責任で自己完結的に実現する権利であります。
 それでは、自己決定能力がない者、喪失している者、あるいはそういう機会を奪われている者の権利はどうなるのか。例えば、自己決定能力のない子供の権利はどうなのか。また、高齢化社会を迎えての、例えば痴呆症にある高齢者の場合はどうか。さらに、病人とか知的障害者の権利というのはどうなのか。施設に入っている者、あるいは受刑者といえども権利を有しているのではないか、そしてそれはどういう権利なのかということであります。
 これらの人たちはいずれも一個の人間としての独立の主体性を持っている。つまり、人間としての尊厳を実現する権利を有しているはずであります。子どもの権利条約が規定している子供を権利の主体者ととらえた意見表明権はその最たるものでありますが、その本質は人間関係を形成する権利であります。
 二十一世紀に連なる最も新しい権利と言われる人間としての尊厳を実現する権利についても、ぜひこの場で議論をしていただきたいと思います。この権利についてもし憲法に盛り込むことができるとすれば、画期的な、世界の少なくとも形式上は憲法上は人権先進国という評価がされるのではないかと思います。
 以上です。

発言情報

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発言者: 高野博師

speaker_id: 15245

日付: 2000-03-03

院: 参議院

会議名: 憲法調査会