猪瀬直樹の発言 (行政監視委員会)
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○参考人(猪瀬直樹君) それでは意見を述べさせていただきます。
「日本国の研究」という本を書きまして、文芸春秋に九六年の秋から冬にかけて連載しまして、九七年に本にしました。今は文庫になっております。その後「続・日本国の研究」というのを九九年の三月に、一年前に出しました。
「日本国の研究」というタイトルにあえてしましたのは、これは単に特殊法人の問題だけではなくて、ここに現在の日本の危機的な状況が集中的にあらわれているというふうに思った次第であります。
司馬遼太郎さんが「この国のかたち」という本を書いておりますけれども、昭和五年、六年ごろから敗戦までの十数年間の日本は別国の観があり、自国を滅ぼしたばかりか他国にも迷惑をかけた、こういう言い方がありますけれども、基本的に一つの体制が制度疲労を起こすのは大体五十年ぐらいからそれ以降ではないかというふうに思います。実際に、昭和に入ったころには明治維新から六十年ぐらいたっていますけれども、まるで別の国のようであるというふうに司馬遼太郎さんがお書きになりました。
戦後また五十年ぐらいたって、もちろん既に五十年たつ前からいろいろ問題が出てきていたわけですけれども、現在の日本の、これはもう新聞やテレビでもよく言われるようになりましたのでだれでも知っているようになりましたけれども、小渕政権になってから特にふえましたが、日本国の財政赤字というのは六百四十五兆円に上っている、これは国内総生産五百兆円を上回っている、まるであたかも日本列島の中に見えない姿でかつての中国大陸が存在して、無数の不良債権が実感しにくい形で蓄積しているというふうに考えられるんじゃないかと。まさに今、日本はあの輝かしい戦後復興や高度経済成長を過ぎて、一生懸命頑張ってきたわけですけれども、まさに別国の観があるというふうに思わないではいられません。
そういうことで「日本国の研究」という本を書きました。きょうの参考資料として一部コピーして、回っていると思いますけれども、ぜひ最初から終わりまで、これは抜粋ですから、読んでいただければ問題点は一目瞭然ではないかというふうに思います。
僕が「日本国の研究」を書いて思ったのは、財政投融資の現場、つまり郵政民営化論というのがありますけれども、これは財政投融資の入り口でありますが、財政投融資の出口である特殊法人を含めた公益法人の財団法人、社団法人、もう少し言い直しますと、特殊法人、認可法人、社団法人、財団法人、こういった直接霞が関の建物の中にある役所ではなくほかのところに散らばっている、そういう役所に準ずる世界、国営企業だと思いますけれども、そうした国営企業並びに国営企業に準ずる会社が物すごい形でたくさんの税金のむだ遣いをしている、そういうことが明らかになってまいりました。
僕は、そういう財政投融資の現場を見ながらつぶさにいろいろと資料を請求し、そしてそれに対してさらにその資料の裏づけをとったり、あるいはまたそれについて質問したりということを繰り返して「日本国の研究」ができたわけですけれども、これほどひどくなっているとは思わなかったですね。
日本道路公団の問題は、既に皆さんも御承知だと思いますけれども、「日本国の研究」が書かれた後、新聞やテレビにも載りましたが、日本道路公団の下に七十近い子会社がある、これが全部株式会社である、この社長が全部道路公団の出身者である、こういう構造があって、これは日本道路公団の例を一つ挙げれば大体ほかのところもみんな同じパターンになっているのでわかりやすいかと思いますから説明しますが、日本道路公団の中に厚生会という互助会、冠婚葬祭のときにいろいろと金一封とか、入院したときにはお見舞金とか渡すような互助会がありますけれども、そういう互助会が出資して財団法人道路施設協会をつくっている、その財団法人道路施設協会の下に七十近い株式会社がある、こういう構図でありますが、そうすると日本道路公団と七十近い株式会社は直接の関係がないという建前になっています。これが非常に奇妙でありました。
この道路施設協会が全国のサービスエリア、パーキングエリアを全部持っている。つまり、道路公団本体から特別に借りて大家さんになって、そして民間企業に、例えばレストランならレストランが、あるいは売店が、あるいはガソリンスタンドがそのパーキングエリア、サービスエリアに入るときに大家さんになって一定の売り上げからお金を取る、つまり料率、例えばレストランだったら売り上げの二〇%を取るというふうな形で道路施設協会に自動的にお金が転がり込む、こういうシステムになっている。こういうシステムになっている道路施設協会が、僕の調べた当時では七十億円程度のお金を日本道路公団に支払い、売り上げが七百億円近くあった。利益が百億円ぐらいある。それで、道路公団の総裁が任期が終わると道路施設協会の理事長に天下る、こういう構造になっていた。
全国のサービスエリア、パーキングエリアというのはもう膨大な数でありまして、コーヒーカップのマークがあればパーキングエリアであり、フォークとナイフのマークがあればサービスエリアでありますけれども、十五キロごとにあるわけですから大変な利権になっている。
この道路施設協会が、先ほど申し上げましたように、出資して七十近い株式会社をつくっている。この株式会社、切符切りのおじさんから道路の清掃の会社から各地域のメンテナンスの会社からあらゆる会社を持っているわけです。そして、その七十近い株式会社と道路施設協会の総売り上げが僕の調査した当時では五千五百億円もあった。道路公団は二十二兆円の累積赤字を抱えながら我々利用者にその借金のツケを回す、あるいは財政投融資から借りたお金で四苦八苦して、財投のお金が二兆何千億円あって実際に道路工事に使うお金は一兆何千億円しかない、あとは返却していく、借りては返していく、こういうふうな非常に生産性の上がらない財務体質になったまま、しかしながら子会社やその他は大もうけしていて連結決算にもしていない。会計検査院が例えばチェックするとしたら、民間の七十近い株式会社は会計検査院が入っていく権利がありませんからそういうものはチェックされないということであります。
それで、いろいろとこの本に書いたり発言しておりましたが、その後日本道路公団と道路施設協会側では改善策を講じたいというふうなことを言っておりまして、結局どうなったかといいますと、道路施設協会は一つでは競争力がないので分割する、分割して二つになりましたと。九八年の秋から財団法人ハイウェイ交流センターというのが一つできた、それからもう一つは道路サービス機構だと。二つに分かれたのでこれで健全な競争をする、こういうふうなことを言っています。さらに、七十近い子会社は道路施設協会が直接出資するのではなく、都銀とか地銀とか生保とか損保とかゼネコンなどに株を渡すと。
ところが、一応そういう建前的な改革はしたけれども、実際には日本道路公団が特にこの七十近い子会社に仕事を与える場合に九〇%以上は随意契約であると、こういうことで一応建前上はあたかも競争するように見せながら、実質は全く変わっていない、こういうことが現実であります。つまり、一応問題点を指摘して、そして違うじゃないか、こんなことをやっていたらおかしいじゃないかということを言うと、とりあえずは形を変えて、じゃ直しましたよと形ばかり直してそれで終わってしまう、こういうことが言えるんじゃないかと思います。
住都公団というのがあります。今は都市基盤整備公団に名前は変わりましたけれども、この住都公団に当時資料を請求しましたら、財務諸表その他たくさんの数字を並べたデータをくれました。その数字を幾ら見ていてもよくわからない。どうも僕は頭がおかしいんじゃないかと思って公認会計士の人にこれを見てくれと言ったけれども、やっぱりわからないと。そういうわからない数字を出してくるということであります。
それで、何がわからなかったかというと、空き室、つまりどのくらいその分譲住宅が売れたか売れないか、そういう一番基本的な問題ですけれども、空き室率を算定したいとこちらは思ったわけですが、その空き室率がどうしてもわからない。たくさんの財務諸表を含めた数字をこちらに渡してくれるんですが、幾ら読んでも空き室率が実態とどうしても違ってくる。我々が見ている感覚と違う数字しか出てこない。おかしいじゃないかと。これはしようがないからケーススタディーをとって、現場でいろいろ調べてみた。数えてみたりした。夜になると電気が消えますから、電気が消えたところへ行って郵便受けを一戸一戸調べてこのマンションにどのぐらい入っているかと世帯数をチェックする、そういう例えば現象的なところでとりあえずチェックしながら実際の数字と照らし合わせてみる、そういうケーススタディーをとってやってみる。
そうすると、夜ですから電気がついているところ、消えているところというのはよくわかります。ずっとあるところで歩いていくと、真っ暗なビルが建っている。ビル丸ごと真っ暗で、つまりこれはでき上がっているのにもかかわらず売っていないわけです。それで数字の違いの意味がわかってきた。つまり、空き室率というのは、例えばマンションが百戸あって二十戸しか入っていなかったら空き室率は八〇%だと。ところが、横に真っ暗な全然売り出していないマンションがあった。そうすると、それは空き室率一〇〇%のはずですが、そこで当局の数字がおかしいのがわかったんです。
それで、住都公団に行って確認してみたら、その真っ暗な、つまり売り出していない空き室率一〇〇%のはずの建物というのはこれは空き室じゃない、こう言うわけです。なぜならば、空き室とは募集したものに対してどのくらい入ったかが空き室である、こう言うわけです。そうすると、それは一〇〇%空き室なのにもかかわらず建設中という建前になるわけです。そういうふうに当局の出してくる数字が合っているかどうかと一々チェックしていかないと信用できない。だから、そこのところが一番問題だと。
それでわかったので、おかしいじゃないかということで資金運用部、大蔵省理財局の方に僕は言いました。どうもおかしいということがいろいろあって、その後紆余曲折して住都公団の分譲は廃止になりました。都市基盤整備公団になっていくわけですけれども、あと賃貸でやっていくということになるわけです。
要するに、今、道路公団とか住都公団の例を挙げただけでもう既に十分にいろんな問題点がおわかりだと思いますが、つまり当局の出している数字だけではわからない。これはきちんと、もちろん会計検査院や総務庁の行政監察局とかいろいろありますけれども、これをきちっとチェックしていかないと、そういうチェックだけではわからない。あるいはいろいろなメディアがある、新聞社があってテレビ局があって、そういうメディアがあるけれども、そういうメディアもきちんと調べていない、そういうことになる。
したがって、この財政投融資の現場というものを今たまたま挙げただけですけれども、ほかにもたくさんあります。もう氷山の一角であります。こういう形でお金がどんどん我々の郵便貯金やいろんなものがそこへ融資されていくんだけれども、それが本当に返ってくるのかどうか、これが非常に怪しいですね。そのお金が返ってこなければ郵便貯金に税金を投入することになるわけでありまして、ほとんどもう危機的状況に来ていたんですね。そういう危機的状況に来ていたということを僕自身もこのときに初めて気がついた。こんなにひどい状況になっているとは思わなかった。それで、国民に警鐘を鳴らすためにこういう本を書いた。それでも、警鐘を鳴らしたとしても、それほど浸透しなかったですね、残念ながら。
小泉純一郎さんが郵政三事業民営化と、こうおっしゃいました。僕はそれは正しいと思う。正しいと思うけれども、どうしても話が入り口の方へ行っちゃった。僕は虎ノ門と言ったんですね。つまり、霞が関、永田町があります。皆さんは永田町にいて、霞が関に役所があります。もう一つ、虎ノ門があるぞと。つまり、特殊法人、認可法人、社団法人、財団法人がある虎ノ門。霞が関、永田町、虎ノ門、この三つで考えないと、虎ノ門という見えない地下茎のようなものがあって、そこの部分に光を当てていかない限りはこの問題は解決しないと。
僕は虎ノ門ということで一生懸命主張したんですけれども、郵政三事業民営化という話の方が郵便局が近所にあるものだからわかりやすくて、郵便局へ行けない、こういうふうなところで話が全部終わっちゃった。郵便局へ行けないんだけれども、それだけじゃないよと。入り口よりも出口が大事ですよと、入り口と同時に出口が一番大事ですよということを強調して、改めて強調してとりあえず最初の僕の意見にさせていただきたいと思います。
以上です。