朝日俊弘の発言 (本会議)

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○朝日俊弘君 私は、同僚の本岡議員の質問に引き続きまして、民主党・新緑風会を代表し、過日行われました小渕総理の施政方針演説に対し、特に社会保障制度にかかわる課題に絞って、総理及び関係大臣に質問させていただきます。
 まず冒頭に、社会保障制度改革に関する総理の基本的な認識について改めて問い直しておかねばなりません。
 といいますのは、総理は施政方針演説の中で、「皆健康で豊かで安心して生活できる社会をつくるために、」「安心への挑戦に取り組みます。」と、それなりに決意を述べておられます。しかし、その現状認識の部分について見ますと、「世界に例を見ない少子高齢化が進行する中で、国民の間には社会保障制度の将来に不安を感じる声も出ております。」と述べられているにすぎません。率直に申し上げて、総理の御認識はこの程度のものなのでしょうか。私に言わせれば、この問題に関して国民の皆さんは、政府・厚生省がいつまでたっても抜本的な改革の道筋を示すことができないため、もはや不安とか不信とかいうレベルを通り越して、いら立ちとある種のあきらめさえ感じているというのが実感なのではないでしょうか。
 しかも、この間、小渕内閣は、例えば基礎年金の抜本的な見直しあるいは医療保険制度の抜本改革など、基本的な改革、構造的な改革はことごとく先送りする一方で、介護保険の保険料徴収を半年間だけ凍結してみたり、あるいは老人の薬剤費一部自己負担を免除してみたり、いわばその場しのぎ的、場当たり的そして人気取り的な制度いじりを繰り返してきたにすぎないのではないでしょうか。しかも、こうしたやり方は社会保障制度そのものの本来のあり方をゆがめます。国民にとってますますわかりにくい制度になっていきます。その結果、社会保障制度への信頼感をかえって失わせるものと言うほかありません。
 これからの諸改革を進めていくに当たって、総理には最低限今申し上げたような問題意識と自覚を持って取り組んでいただかなければいけないと思うのですが、改めて社会保障制度改革に向けての総理の基本認識をお伺いしたいと思います。
 次に、社会保障制度改革の各論に入って、現在、本院で継続審議となっております年金制度改正の中身について幾つかお尋ねをしておきたいと思います。
 つい先月、社会保険庁が発表した九八年度の事業概況によりますと、国民年金の保険料未納者は二三・四%と過去最悪の数字を示しております。これに加えて保険料免除者が一九・九%ありますから、そのこととあわせて考えれば、これまでにも再三指摘されてきたことではありますが、国民年金制度の空洞化はここにきわまれりという状況になっていると言わざるを得ません。
 もはや制度の抜本的な見直しを先延ばしすることは許されません。私ども民主党は既に一年前、昨年の通常国会において提案をさせていただいておりますが、今こそ基礎年金に対する国庫負担を現行の三分の一から二分の一に引き上げるとともに、保険料は凍結するのではなくてむしろ相応する額を引き下げること。あわせて、次期財政再計算までのできる限り早い時期に全額税方式に転換を図ること。そして、そのための道筋を明らかに示すことが何よりも必要であります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 このように、プラス方向への制度改革の道筋を明確に示すことによって、初めて国民年金制度そのものに対する国民の不安感あるいは不信感を多少なりとも和らげることができるのではないでしょうか。この点に関する総理のお考えをお聞かせください。
 さて、今回の改正案は、前回、基礎年金の改正に続いて厚生年金部分についても支給開始年齢を段階的に引き上げるとしております。一体、今日のような雇用情勢の中にあって何ゆえ支給開始年齢を強引に引き上げようとなさるのか、私には全く理解できません。
 この点について、総理御自身の委嘱を受けて本年一月にまとめられた「二十一世紀日本の構想」の中でも次のように指摘をされております。高齢者の雇用と無関係に年金支給開始年齢だけを引き上げるのでは、ただでさえ老後の不安を感じている中高年齢層の不安を増幅させ、彼らを生活防衛貯蓄の増強に追い立てるばかりであると明確に述べられており、私もそのとおりだと思います。
 改めて指摘するまでもなく、我が国の失業率は多少持ち直したとはいえ四・五%前後と相変わらず高く、その中でも年齢階層別の有効求人倍率を見ますと、例えば三十五歳から四十四歳が〇・八九であるのに比べて、五十五歳から五十九歳では〇・一四と極端に低くなっています。こうした数字は中高年の雇用状況がいかに厳しいかを物語っていると思います。
 このような現実があるにもかかわらず、それでもなお総理は厚生年金の支給開始年齢を引き上げるおつもりなのでしょうか。それは、リストラされて再就職もままならない中高年の皆さんの不安感を一層募らせることになり、ひいては不幸にして自殺に追い込まれる人々をさらに増加させることになりはしませんか。それとも、総理には中高年者の雇用情勢を一気に改善させることができる何らかの秘策がおありなのでしょうか。中高年者の雇用確保対策のあり方を含めて、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
 次に、年金の給付水準のあり方に関してお尋ねをいたします。
 今回の改正案では、現行制度の枠組みをそのまま維持した上で、給付と負担の関係だけを見て可能な限り給付水準の引き下げを図ろうという内容になっていると断ぜざるを得ません。
 このような考え方にとらわれて給付水準を設定していこうとすれば、これまでもそうであったように、財政再計算のたびに、負担は可能な限り引き上げよう、給付は可能な限り引き下げようということになり、皮肉なことに制度改正のたびに年金制度に対する信頼を損なうということになりかねません。いや、既にそうなっているのではないかと私には思えてなりません。
 しかし、これから本格的な高齢社会を迎えて、高齢者の皆さんにも例えば医療保険、介護保険の保険料を納めていただく、さらにサービスを利用した皆さんには一定の利用者負担をしていただく必要がある。とすれば、高齢者にとって主要な所得保障の柱である年金の給付水準はそのような費用を負担できるような水準でなければなりません。
 言いかえれば、そうした保険料等を差し引いた残りが現実的な手取りの年金額となるわけであります。こうした考え方を基本に据えながら必要な給付水準の確保を図るべきではないかと思います。そうした観点から考えて、給付水準を物価にスライドさせ、そして賃金水準にも実質的にスライドさせていく手法は今後も維持していくべきと考えますが、この点については担当の厚生大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、社会保障制度改革のもう一つの大きな課題であります医療制度及び医療保険制度改革についてお尋ねしたいと思います。
 まず初めに、つい先日、医療保険制度の改正について取りまとめられた社会保障制度審議会の答申に関連してお伺いしたいと思います。
 同審議会の答申は、冒頭で、「今回も抜本改革が先送りされたのは遺憾というほかない。」と、極めて厳しい調子の書き出しとなっており、続いて、「医療保険制度の抜本改革は、もはや一刻も猶予すべきではない。」と断言をしております。
 その上で、これまでと同様、関係者間において意見の対立が解消されず、改革内容の取りまとめとその実現がおくれるようでは大変問題であるとの認識のもとに、特別の法律に基づいて、独立かつ中立の立場から抜本改革案を作成する臨時医療制度改革調査会(仮称)、略して医療臨調の設置を求めていることについて、ここはぜひ総理並びに厚生大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
 ちなみに、私は、この間の経緯を振り返る中で、この答申にも的確に述べられていますように、医療制度及び医療保険制度の抜本改革を阻害してきたのは、従来の利害調整型の政策合意形成プロセスが有効に機能し得なくなったこと、その上、そのような状況にありながら政治の側が適切なリーダーシップを発揮できず、逆に、一たんまとまりかけたものを白紙撤回させるなど、かえって事態を混乱させたことが決定的な要因であったと受けとめております。その意味で、この制度審の意見に私は全面的に賛成であることを申し添えておきたいと思います。
 ところで、改めて総理の施政方針演説を読み返してみますと、総理はこの医療改革の問題についてはたった一言、ある文章の中で、「また、医療制度改革を進めるとともに、」と、たったこれだけしか触れられていません。文字数にしてわずか十数文字であります。なぜなのでしょうか。何ゆえ総理は施政方針演説の中で医療制度改革の問題について、たったこれだけしか触れられないのでしょうか。しかも、ここで述べられている医療制度改革の中身は一体何を指して言っておられるのか、さっぱりわかりません。
 改めて申し上げるまでもなく、今春に予定をされております診療報酬改定をめぐって、診療側と支払い側の対立は、昨年来極めて厳しい状況が続いております。それだけに、来年度予算編成とも密接に絡んだ形で、この医療制度改革は今国会における当面の最重要課題の一つだというふうに私は考えます。総理のお考えである医療制度改革の中身について、改めてお答えをいただきたいと思います。
 さて、本年四月には介護保険制度の実施を迎えており、その時期に合わせて介護保険制度と老人保健制度、両制度間の整合性を保つための法改正は必須の作業であったと思いますし、少なくともある時期までは、そのような観点から、関係する審議会において検討作業が進められていたというふうに私は理解をしております。
 ところが、最近になって政府・厚生省は、医療保険制度改革は二年間先送りするという決定をしたと報じられています。これでは明らかに政府の約束違反だと思いませんか。思い起こしていただきたい。平成九年度の健康保険法の改正のとき、二年後には医療制度及び医療保険制度の抜本改革を必ず行うと約束をされ、いわばこれは政府の公約となっていたはずであります。
 平成九年度改正の中身は、御承知のとおり、専ら保険料の引き上げと患者自己負担の増に終始した内容となっており、そのときは、健康保険財政を支えるために緊急避難的に負担をお願いせざるを得ないけれども、ことしは平成十二年、平成十二年までには薬価制度や診療報酬のあり方、医療提供体制及び高齢者医療保険制度等にかかわる抜本改革を行う、だから平成九年度改正は何とか御理解をいただきたいという説明が何度も行われたわけであります。
 さて、今回提案されようとしている健康保険法等の改正案の中身は、実はそのような抜本的な改革の中身は一切入っておりません。抜本改革の部分は先送りした上で、またしても専ら自己負担増を求める内容となっており、私は到底容認できるものではないと思います。一体、これまでの約束はどうなっていたのですか。医療保険制度改革の二年間先送りということは本当ですか。この点については、厚生大臣の明確な答弁を求めておきたいと思います。
 最後に、今通常国会は与党三党がみずから描いたシナリオどおりの会議日程を強引に進めると、まことに異例ずくめの国会運営の中でありました。その中で、本院で継続審議となっていました年金関連法案についても、国民福祉委員会でのいささか一方的な審議が進められているやに聞き及んでおります。
 しかし、今回提案されている年金関連法案の中身は、はっきり申し上げて二十一世紀の社会保障制度改革の第一歩としての改革案には到底値しないものと断ぜざるを得ません。したがって、私は、現在提出されている関連法案のすべてを廃案とし、一日も早く新しい国会で新しい年金制度改革を提出して改めて審議をやり直す、このことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114715254X00520000210_013

発言者: 朝日俊弘

speaker_id: 25759

日付: 2000-02-10

院: 参議院

会議名: 本会議