渕上貞雄の発言 (本会議)

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○渕上貞雄君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま議題となりました森喜朗内閣総理大臣の所信表明演説に対し、総理に質問をいたします。
 まず、二十二年ぶりに噴火に至った有珠山の活動によって、避難指示対象者、中でも不自由な避難所生活に耐えていらっしゃる住民の方々に心からお見舞いを申し上げます。
 住民と行政、学者の連帯がうまくいき、大きな混乱もないことは評価できます。忘れがちですが、温泉源がだめになってしまうなど、観光や漁業資源への影響による今後の生計への不安、避難者の労苦に対し、生活支援、雇用対策、産業対策、財政支援など政府の手厚い支援があってしかるべきと考えます。総理の御決意をお伺いいたします。
 志半ばにして倒れられ、今なお闘病中の小渕前総理の一日も早い御回復と公務への御復帰を御祈念申し上げる次第でございます。
 今回の政権交代は、まさに密室の中で派閥のボスが集まって国民そこのけで派閥力学、連立力学で後継を談合する、権力の私物化は決して許されることではありません。記者会見や答弁にしてもつじつまの合わないことばかりです。国民に虚偽の説明をした責任や、警察・自衛隊の不祥事について政治責任をとるべき人を留任させたことについて、総理のお考えをお示しください。
 次に、自由党の政権離脱と新たな自民、公明、保守の新連立政権の発足についてお尋ねいたします。
 政策協議も政策合意もない連立は初めてであり、理念、政策抜きの、ただ政権を維持するためだけの国民不在の談合連立です。小渕前総理の強いイニシアチブによって形成された自自公連立政権の枠組みが壊れたことに対し、幹事長でもあった総理の責任と、自自公政権と自公保政権の共通点と相違点についてのお考えをお伺いいたします。
 せっかくの所信表明は、小渕前総理の政策の継承、発展を基本姿勢としているためか、総理の肉声が聞こえてこない演説でした。総理の強調する日本新生内閣という言葉自体、出典は小渕前総理の日本経済の新生であり、小渕なき小渕内閣との感を改めて持ちました。
 情においては忍びがたいものがありますが、小渕前総理がこれまで何をやってきたかを真摯に問い直さなければなりません。周辺事態法、盗聴法、住民基本台帳法、憲法調査会の設置、日の丸・君が代法制化と憲法に挑戦する悪法の強行、衆議院比例定数削減法案の参議院で議論すら許さない暴挙、国民生活に大きな影響を与える年金法の強行。
 総理、国家主義的方向を強め、数の力による強権政治をも継承されるおつもりですか。政治に臨む姿勢についてお尋ねをいたします。
 さて、男女共同参画社会基本法が施行され、男女平等の視点からあらゆる施策の見直しが求められています。
 総理府が二月二十五日に発表した初の男女間暴力調査では、夫や恋人からの暴力、ドメスティック・バイオレンスの深刻な事態が浮き彫りになっています。日本は最後進国とも言われており、DVの防止及び被害者保護・援助のための法整備を含む総合的な施策の実施に向けた総理の御決意をお伺いいたします。
 重要な柱と位置づけられている教育改革について、所信では、創造性豊かな立派な人間をつくるとして具体的ではありませんでしたが、一月末の衆議院本会議の代表質問では戦後教育の基本理念と教育基本法の見直しにも言及されています。
 しかし、学級崩壊、不登校、いじめ、子供の自殺といった教育現場の悩みに対処するには、三十人学級や先生の研修、待遇、地域と学校との関係といった具体的な改革の中身を論議すべきであり、現在の教育の危機を教育基本法の見直しに結びつけようとするのは余りにも短絡的であると思います。財界と国家の視点に立った臨教審・新自由主義路線の浸透による格差、序列、選別の拡大、受験戦争激化という面をしっかり総括すべきです。
 人間と人間の働きかけそのものに教育の原点があります。まさに主権者の形成の問題であり、子供の自主性、自発性をどう引き出すのかが大事であって、教育を市場原理や国家統制にゆだねてはなりません。
 文部大臣でもあられた総理の教育改革に対する考えを改めてお尋ねいたします。
 経済運営についてお尋ねいたします。
 三月十三日、経済企画庁は二期連続のマイナス成長になったことを発表いたしました。これに対して小渕前総理は、九九年度の経済見通しの実質成長率〇・六%の達成が可能であると強弁されていました。総理もこの政府公約が達成できる状況にあるとお考えなのでしょうか。
 また、総理は、構造改革には痛みを伴うが、国民と痛みを分かち合い、進む覚悟と言われておりますが、リストラに苦しむ中高年世代の思いが通じているのですか。百万人に上ろうとする失業者、十万人の自己破産者、三万人の自殺者、男性の平均寿命の〇・〇三歳低下に不況による中高年世代の深刻さがあらわれています。
 福祉ヒューマンパワーの養成、教員の積極採用、山の守り手の養成、中小企業の育成、伝統工芸の活用など、地域に密着した公的な関与による雇用創出に力を入れるべきです。総理の御見解をお伺いいたします。
 小渕前総理の何でもありの財政出動で、国、地方の債務は六百四十五兆円にも上っています。財政再建の道筋が示されないことが国民の将来不安をあおり、それが消費低迷の一因となっています。私は、まず公共事業計画の延伸などによってこれ以上赤字をふやさないプログラムをつくった上で、国民的議論の場を設けることを提案いたします。
 総理、この際財政再建の道筋について、いつからどのように具体的に進めていこうというのか、しっかりと国民の前に示すべきです。
 また、将来不安を払拭するためにも、対症療法ではなく長期的視点に立って、医療、介護、福祉、年金の総合的な社会保障のビジョンを示すべきです。財政再建と社会保障のビジョンについて、総理の御所見をお伺いいたします。
 警察や自衛隊の不祥事が相次いでいます。問題は、内部の論理で組織防衛に専念する組織的犯罪が後を絶たないところにあります。治安や防衛を任務とする権力機関が国民の監視を逃れ聖域化されてきたこと自体、改革をしなければなりません。商法改正で監査役の権限を強化したように、これらの権力機関に対しても第三者による監視システム、国民の異議申し立て制度を設けることに踏み込むべきです。警察・自衛隊不祥事根絶に向けた改革策について、御見解をお伺いいたします。
 元国家公安委員長の秘書の交通違反の口きき事件が明らかになりました。政官財の癒着と、支持者に頼まれて役所に口をきくことは政治家本来の仕事であるという保守的な政治風土に大胆にメスを入れなければ、総理の言われる信頼される政府は実現できません。国会議員のあっせん利得行為を禁止するための地位利用収賄罪法の制定に向けた総理の御見解はいかがでしょうか。
 政治主導を標榜して導入された党首討論ですが、参議院としてみれば衆議院の皆さんに場所を貸すだけとなっています。また、党首討論を理由とした総理の国会出席の減少も大きな問題です。党首討論にかかわらず、予算や重要法案の審議の際には積極的に国会に出席すべきです。党首討論の改革に関する総理の御見解をお尋ねいたします。
 昨年、村山元総理を団長とする超党派訪朝団の成果によって、両国政府による国交正常化交渉が七年半ぶりに再開されました。そして今、六月十二日からの歴史的な南北首脳会談の開催によって、朝鮮半島情勢の劇的転換が行われようとしています。南北双方が敵視と憎悪を乗り越え、未来の統一へ向けた協調、協力に入り、日朝交渉の性格は大きく変わりました。朝韓におくれをとれば、日本の政治責任、歴史責任を果たせなくなります。懸案事項を解決していくためにも、前提にこだわり続けることなく、粘り強い話し合いと、その上に立った国交正常化が必要です。自社さ連立政権の当時の九七年十一月、団長として訪朝された森総理が、新段階の国交正常化へ向け、どのようなリーダーシップを発揮されようとしているのか、御決意をお伺いいたします。
 次に、エネルギー政策についてお尋ねいたします。
 EUは、二〇一〇年までに自然エネルギーの比率を域内総エネルギー消費量の一二%にする計画とのことであり、百万戸太陽光発電システム、一千万キロワット風力発電、一千万キロワットバイオマスなどの目標を掲げ、十兆円の投資を行う計画で、百万人の雇用創出と試算されています。自然エネルギーの普及がエネルギーを賄い、地球温暖化を抑制するだけでなく、産業振興と雇用の拡大の重要なかぎと位置づけられています。
 日本は、二〇一〇年に新エネルギー比率三%という低い目標しか掲げていませんが、地球温暖化防止京都会議の目標を達成するためにも、自然エネルギー比率を一〇%程度とすることを目指し、大胆な政策的投資を行うべきです。総理の御所見をお尋ねいたします。
 次に、農業・農村問題についてお伺いいたします。
 新基本法に基づく基本計画において、私たちが最低の条件として望んだ食料自給率五〇%の実現は拒否され、四五%の目標設定となったことは、この国の食料に責任を持つべき政治のあり方として疑問を禁じ得ません。また、農地の確保と担い手の確保にとって決定的に重要な価格支持が解体され、それにかわる所得政策が不十分なもとでは四五%の自給率達成さえ困難であります。総理はこの点どうお考えでしょうか。
 また、それとあわせ、荒廃の一途をたどる日本の森林・林業の再建について、時代の変化に見合う新基本法の策定を含め、どのように考えておられるのでしょうか。
 さらに、農林水産業の将来に不安を抱かせるWTO路線をどう改善していくのか。多国間投資協定づくりの挫折やWTOシアトル閣僚会議の決裂など、世界の市民運動と途上国の動向も踏まえた新総理の強いリーダーシップを期待したいのですが、御所見をお伺いいたします。
 さて、憲法調査会の議論も始まったにもかかわらず、総理の所信には国の基本法である憲法の二文字がありません。
 護憲を党是とする社民党として、二十一世紀への新しい日本の国づくりを目指す総理がどのような憲法観をお持ちなのか、国民の前に明らかにするよう強く求めるものです。
 総理が議員連盟の会長として関係の深いコスタリカは、一九四九年に常備軍を廃止しており、平和憲法で知られる国であります。コスタリカのアリアス元大統領は、九四年に来日された際、日本が憲法第九条を持ちながら自衛隊の増強や海外派兵を進めようとしていることに疑問を示し、環境、貧困、教育など経済的、社会的、文化的な分野で非軍事的な国際貢献を行うよう要望されたと聞いています。
 日本も、国際社会から期待されているのは非軍事的な協力であり、PKFの凍結解除や有事立法の法制化では世界から信頼される国家とはなり得ないのではないかと思いますが、総理、いかがでございましょうか。
 最後に、橋本元総理の退陣後、自民単独、自自、自自公、自公保と、国民の審判を受けない政権の組みかえが行われてきました。政権維持のためだけの無原則な連立であり、連立の枠組みが変化し、新たな内閣が構成された以上、改めて国民に信を問うことが憲政の常道です。一刻も早い解散・総選挙の断行を強く求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114715254X01520000412_009

発言者: 渕上貞雄

speaker_id: 19418

日付: 2000-04-12

院: 参議院

会議名: 本会議