水野誠一の発言 (本会議)
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○水野誠一君 参議院クラブを代表しまして、今議題となっております消費者契約法案について質問をさせていただきます。
繰り返しになりますが、国民生活センターや全国の消費生活センターに寄せられた苦情・相談件数は、平成十年度において約四十一万件とこの十年で三倍に増加し、そのうち約八割を占める三十二万件が販売方法、契約、解約に関するもので占められていると聞いております。さらに、こうした数字も実際のトラブル件数に比べればわずか数%にすぎず、まさに氷山の一角であると説明されております。まことに憂慮すべき事態を示すデータであると言わざるを得ません。
国民の生活様式が多様化し、また産業構造やコミュニケーション手段がますます高度化、複雑化する中で、経済取引をめぐる消費者の置かれた環境は刻々と変化を遂げております。
時代のニーズに応じてさまざまな商品やサービスが市場に登場し、消費者はみずからの賢明な選択を通じてそれらの価値を享受するわけですが、その供給される価値が多様化し、消費者にとって選択の自由が拡大すること自体はまさに喜ばしい経済社会の発展過程であると考えます。
しかし一方で、そうした商品やサービスの価値多様化の進展は、ある意味では必然的に情報について詳しい者とそうでない者、すなわち情報の偏在や偏りを生み出しました。その結果として顕在化したのが本法案の提案理由にある消費者と事業者の間の情報力や交渉力の圧倒的格差と申せましょう。
消費者契約法の制定そのものに対する慎重論の中には、規制緩和の流れに逆行する、適正な活動をしている多くの事業者を萎縮させるといった指摘もございました。しかし、公正なルールの確立、消費者、事業者双方の自己責任を問い得る環境整備といった法案の趣旨が貫かれさえすれば、それが即、規制緩和の流れに逆行し、事業者の萎縮などを招くものにはならないと考えます。
さらに、現状を放置することによって、一部の悪徳事業者のために多くの良心的事業者がこうむる経済的デメリットや、新事業、新業態を創造し経済を活性化させるための環境整備の必要性を考え合わせれば、きちんとした手続で契約が結ばれるようにするための一般ルールを定める本法案の意義は極めて重大なものであると考えます。
そこで、まず重要になることは、何をもって公正なルールとするかを明確に認識しておくことではないかと考えます。契約行為における公正とは、お互いが十分な情報を持ち、お互いが自由な判断を許されることではないか。そして、さらに重要なのは、当事者それぞれがその情報と判断にはっきりと責任を持つことではないかと考えますが、まずは経済企画庁長官にこの点についての御認識を伺いたいと思います。
次に、消費者の啓蒙と教育のあり方に関して伺います。
規制緩和が進み、個人の判断が尊重される世の中において、契約の持つ意味はますます増大していくものと考えます。
過去にも、マルチまがい商法や安易なクレジットカード利用による多重債務者の急増などといった問題が取りざたされるたびに消費者教育の重要性がうたわれてきました。しかし、我が国の消費者教育政策はいまだ道半ばといった印象を否めません。
さらに、今後はインターネットの普及などによってこれまで存在しなかった全く新しい流通が始まります。流通の経路はますます多様化し複雑化することが予想されます。その中で、広い意味での情報の偏在は今後も存在し続けるであろうというのが私の率直な見解であり、そうであればこそ、消費者一人一人に対する啓蒙教育の重要性は今後ますます増大していくものと考えます。
教育政策全般にも言えることでありますが、消費者教育の難しさの一つには、その到達点をいかなるところに設定するかという問題があると思います。この点につき長官の御所見を伺いたいと思います。
関連して、高齢者への対応について伺います。
消費者契約法制定の背景には、もう一つ、金融ビッグバンなどの規制緩和、介護保険の導入などにより、高齢者がサービスを購買する機会が広がるという社会情勢があります。
九二年に経済企画庁が行った高齢化に伴う消費問題の総合調査では、高齢者のみで暮らす世帯がふえる中で、新たなシルバー向け製品やサービスが増加している一方、高齢者を対象とした悪質商法がますます巧妙化する傾向が明らかにされています。
当時のアンケートでは、回答した全国の消費生活センターのうち三六%が過去五年間に高齢者からの苦情がふえたと回答しており、高齢者の判断力の低下、孤独感、健康不安をねらった商法に絡むトラブルの相談が大半を占めていたと言われております。
以降、有料老人ホームをめぐる契約トラブルの問題や、あり得ない高配当をうたって老後の蓄えから貴重なとらの子をだまし取るといった事件も後を絶たず、そのたびに高齢者向けの情報提供、消費者教育の重要性が指摘されてきたところであります。
消費者契約法の意義は大変重要であると考えますが、これをもって高齢者を取り巻くトラブルに歯どめがかかると考えるのは余りにも非現実的と言わざるを得ません。殊に、高齢者にとっては法律の意義や効果を啓蒙するチャネルが限られることも念頭に置かなければいけません。
高齢化社会に向かう中で、本法案をまさに実効あるものとするためには、特に高齢者に対するきめ細かい消費者啓蒙、情報提供のための施策が車の両輪として講じられるべきだと考えますが、この点につき経済企画庁長官の御所見を伺いたいと思います。
最後に、今後の消費者行政のあり方について伺います。
消費者契約法の民法や個別業法との関係については、従来、事業者と消費者との間のトラブルが宅建業法や訪問販売法といった個別の業法で調整されていたのに対し、消費者契約法はどの事業にも適用できる共通ルールであり、既に施行されている製造物責任法と並ぶ消費者保護法の車の両輪として、基本法である民法と個別業法の中間に位置づけられるものと説明されております。
もともと消費者契約法には、規制緩和後の消費者と事業者との公正なルールをつくるという目標がございました。経済取引に関しては規制をなるべく取り払い、事業者や消費者の自由な決定に任せる、問題が起きた場合には明確なルールに従って解決するという流れをさらに推し進める法案であると理解をしております。
つまり、我が国の消費者行政が、行政による事前規制から司法などによる事後監視・救済型、ルール重視型行政へと移行することを示すものであると考えますが、今後の消費者行政における政府の役割について、長官の御所見を伺いたいと思います。
また、本法案は、およそ六年間という長い真剣な議論が重ねられた末に実を結ぼうとしている重要法案であります。その過程では、有識者、弁護士会、消費者団体などからも、これからの消費者行政のあり方を正面から見据えた数多くの貴重な提案が積み重ねられました。政府においては、その一つ一つを柔軟かつ真摯に受けとめ、法律の実効性を確かなものとしていくことが当然の責務であると考えます。
さらに、民主党から修正案も提起されている中、さらなる議論とブラッシュアップの可能性などの点についても長官の姿勢をお示しいただくことをお願いしまして、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣堺屋太一君登壇、拍手〕