成瀬健生の発言 (労働・社会政策委員会)
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○参考人(成瀬健生君) 日経連参与をいたしております成瀬でございます。
本日は、このような席で意見を述べる機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
今回の法案につきましては、日経連といたしましては基本的に賛成の立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。
今回の分割法制でございますが、これは企業の機動的な組織改編、これを可能にするという意味で、これからの国際競争の熾烈化の時代、企業が生き残るためにぜひ必要だ、不可欠であると考えておりまして、早期の成立、施行を望んでおるところでございます。
最近、国際競争の激化の中で、スピード経営というふうなことが言われております。国際舞台でも、スピードフィッシュがスローフィッシュを食べる。昔はビッグフィッシュがスモールフィッシュを食べると言われておったのが、さま変わりになってきているというふうなことがございまして、企業の大小ではなくて、スピードを持った経営が大変大事だということが言われております。
さらに、企業の規模につきましても、大きければいいということから適正規模を模索するというふうな動きが出てまいりまして、実際に、分割しないまでもカンパニー制度というふうな擬似的な分割のような形をとって採算性を高める、そういうふうな動きが出てきておるのが現実でございます。しかも、総合的な経営体制から専門化した経営体制というふうな形も言われるところでございまして、こうしたことが的確に迅速に行われませんと、日本の企業が国際競争の中で、また国内競争の中でもそうでございますが、健全に存立をし続けることができない、こういうふうな状況になっているのではないかということを痛感しておるところでございます。
会社の分割につきましては、当然人間の移動を伴うわけでございまして、会社分割を真に実効あらしめる、うまくいく、こういうことのためには、財産その他、資産その他だけではございませんで、従業員をいかに新設会社へ迅速に円滑に移すか、こういうことが大変大事だというふうに思い、特に、日経連といたしましては、人間問題を専門に扱う団体としてこういう点には十分注意を払い、今までも、また今後も考えてまいりたいと思っているところでございます。
そこで、今回の労働契約の承継等に関する法律案でございますけれども、従業員の移行の面において、権利義務関係を明確にしつつ円滑、迅速な会社分割を可能にするものであると私どもは理解をしておりまして、法案の趣旨に基本的に賛成するという立場でございます。
また、その他の企業再編についてでございますけれども、合併につきましては包括承継でございまして、また営業譲渡につきましては当事者の合意を必要とする個別契約である、そのために立法の必要はないということが労働省の研究会の結果として報告書で述べられているところでございますが、これらにつきましてはそのとおりであると私どもは認識をいたしております。
法案につきましては、私どもは大変合理性のあるものというふうに判断をいたしておりまして、営業単位の部分的包括承継という考え方は、非常に合理的であり、また迅速な経営の再編を可能にするということで大変合理性があると思いますし、またその中で異議申し立てなど必要に応じて従業員に適切な配慮をしているという点、この点も大変合理性のあるものであるというふうに判断をいたしているところでございます。
ところで、戦後の日本の企業の発展でございますが、日経連の立場から申しますと、円滑な労使関係のもとで築かれてきた、初期においては大変波乱の時代もございましたけれども、それが成熟するとともに日本の経済成長も本格的なものになってきたというふうに考えておるわけでございまして、今後のグローバルな競争時代、また厳しい競争時代でございますけれども、企業が勝ち抜いていくためには、この円滑な労使関係というふうなものは不可欠だと考えております。今後もこれを何とか大切にし、育てていかなければならないと考えているわけでございます。
会社の分割のような企業の改編、再編に当たりましても、労使の自治に基づく話し合いは重要でございまして、特に法案の修正案にもございます「雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める」、これは大変大事なことであるというふうに考えておる次第でございます。
つけ加えますと、労使の自治によるといいますか、労使が自主的に話し合って物事を解決するという戦後の日本の労使関係の伝統が、世界にいわば冠たると言うと言い過ぎかもしれませんが、成熟した労使関係をつくってきたというふうに考えているわけでございます。自主的に労使がお互いに話し合うことによって解決するというのがベストである、こんなふうに考えております。
実際に会社の分割が行われる場合でございますが、労働者への理解と協力を得るために労使協議は有効な方法であると思います。そして、実際に日本の企業の七割、八割について普及していると言われております労使協議制、こうしたものを活用する企業も多いと思います。
ただ、労働者の理解と協力を求める方法はさまざまでございまして、最近は電子メディア等も発達し、社内のそうしたネットワークなども完備しているところもたくさんあるわけでございます。また、それぞれの企業がいろいろな形で労使のコミュニケーションをとる方法を考えているわけでございますが、企業ごと、多種多様な方法をとる可能性があるわけでございまして、画一的にこれこれでなければならないというふうなことはなじまないのではないか。そうした意味で、労使協議というふうな形で義務づけというふうなことよりも、労使の自治に任せるということがベストであると私どもは考えておるところでございます。
最後になりますが、会社分割を契機としまして、リストラ、解雇、労働条件の不利益変更というふうなことが言われたり、また不採算部門の切り捨てのためにこうしたものを使うというふうな御意見がないわけでもございません。そうした危惧の声に対しましては、商法で、債務の履行の見通しがあること、これが会社分割の要件としてあるわけでございまして、これをきちんと理解いたしますと、不採算部門の切り捨て目的で会社分割、こういうことはできないように手当てがされているというふうに考えなければならない、そうであるというふうに思っております。
また、いろいろなケースの不当解雇でございますとか不当な労働条件の不利益変更、こういうものにつきましては、今まで日本は日本なりの判例法理が確立しておるわけでございまして、そういうふうなものが適用され、法的手段としてはそうした点から日本的な考え方の中で十分なものが成立している、法的手当てとしては十分であるというふうに考えているところでございます。
ただ、日経連といたしましては常々、不当な解雇、不当な不利益変更というふうなことは行われるべきではないということは会員企業に徹底して指導、啓発をしておりまして、そうしたものも日本の成熟した労使関係への一助になってきたのかなという自負心も多少は持っているところでございます。
どうもありがとうございました。