労働・社会政策委員会

2000-05-23 参議院 全197発言

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会議録情報#0
平成十二年五月二十三日(火曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十三日
    辞任         補欠選任
     清水嘉与子君     佐藤 昭郎君
     直嶋 正行君     伊藤 基隆君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         吉岡 吉典君
    理 事
                大島 慶久君
                大野つや子君
                小山 孝雄君
                川橋 幸子君
                長谷川 清君
    委 員
                上杉 光弘君
                佐藤 昭郎君
                斉藤 滋宣君
                常田 享詳君
                溝手 顕正君
                伊藤 基隆君
                笹野 貞子君
                高嶋 良充君
                直嶋 正行君
                但馬 久美君
                浜四津敏子君
                八田ひろ子君
                大脇 雅子君
                高橋紀世子君
   委員以外の議員
       発議者      吉川 春子君
   国務大臣
       労働大臣     牧野 隆守君
   政務次官
       労働政務次官   長勢 甚遠君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山岸 完治君
   政府参考人
       法務大臣官房審
       議官       小池 信行君
       厚生省年金局長  矢野 朝水君
       労働省労政局長  澤田陽太郎君
       労働省労働基準
       局長       野寺 康幸君
       労働省職業安定
       局長       渡邊  信君
   参考人
       日本経営者団体
       連盟参与     成瀬 健生君
       弁護士      奥川 貴弥君
       弁護士      坂本  修君
       中小労組政策ネ
       ットワーク常任
       運営委員     小谷野 毅君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法
 律案(内閣提出、衆議院送付)
○企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働
 者の保護に関する法律案(橋本敦君外一名発議
 )
○政府参考人の出席要求に関する件

    ─────────────
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吉岡吉典#1
○委員長(吉岡吉典君) ただいまから労働・社会政策委員会を開会いたします。
 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案及び企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、参考人として、日本経営者団体連盟参与成瀬健生君、弁護士奥川貴弥君、弁護士坂本修君及び中小労組政策ネットワーク常任運営委員小谷野毅君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 本日の議事の進め方でございますが、成瀬参考人、奥川参考人、坂本参考人、小谷野参考人の順にお一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。
 なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、まず成瀬参考人からお願いいたします。成瀬参考人。
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成瀬健生#2
○参考人(成瀬健生君) 日経連参与をいたしております成瀬でございます。
 本日は、このような席で意見を述べる機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
 今回の法案につきましては、日経連といたしましては基本的に賛成の立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 今回の分割法制でございますが、これは企業の機動的な組織改編、これを可能にするという意味で、これからの国際競争の熾烈化の時代、企業が生き残るためにぜひ必要だ、不可欠であると考えておりまして、早期の成立、施行を望んでおるところでございます。
 最近、国際競争の激化の中で、スピード経営というふうなことが言われております。国際舞台でも、スピードフィッシュがスローフィッシュを食べる。昔はビッグフィッシュがスモールフィッシュを食べると言われておったのが、さま変わりになってきているというふうなことがございまして、企業の大小ではなくて、スピードを持った経営が大変大事だということが言われております。
 さらに、企業の規模につきましても、大きければいいということから適正規模を模索するというふうな動きが出てまいりまして、実際に、分割しないまでもカンパニー制度というふうな擬似的な分割のような形をとって採算性を高める、そういうふうな動きが出てきておるのが現実でございます。しかも、総合的な経営体制から専門化した経営体制というふうな形も言われるところでございまして、こうしたことが的確に迅速に行われませんと、日本の企業が国際競争の中で、また国内競争の中でもそうでございますが、健全に存立をし続けることができない、こういうふうな状況になっているのではないかということを痛感しておるところでございます。
 会社の分割につきましては、当然人間の移動を伴うわけでございまして、会社分割を真に実効あらしめる、うまくいく、こういうことのためには、財産その他、資産その他だけではございませんで、従業員をいかに新設会社へ迅速に円滑に移すか、こういうことが大変大事だというふうに思い、特に、日経連といたしましては、人間問題を専門に扱う団体としてこういう点には十分注意を払い、今までも、また今後も考えてまいりたいと思っているところでございます。
 そこで、今回の労働契約の承継等に関する法律案でございますけれども、従業員の移行の面において、権利義務関係を明確にしつつ円滑、迅速な会社分割を可能にするものであると私どもは理解をしておりまして、法案の趣旨に基本的に賛成するという立場でございます。
 また、その他の企業再編についてでございますけれども、合併につきましては包括承継でございまして、また営業譲渡につきましては当事者の合意を必要とする個別契約である、そのために立法の必要はないということが労働省の研究会の結果として報告書で述べられているところでございますが、これらにつきましてはそのとおりであると私どもは認識をいたしております。
 法案につきましては、私どもは大変合理性のあるものというふうに判断をいたしておりまして、営業単位の部分的包括承継という考え方は、非常に合理的であり、また迅速な経営の再編を可能にするということで大変合理性があると思いますし、またその中で異議申し立てなど必要に応じて従業員に適切な配慮をしているという点、この点も大変合理性のあるものであるというふうに判断をいたしているところでございます。
 ところで、戦後の日本の企業の発展でございますが、日経連の立場から申しますと、円滑な労使関係のもとで築かれてきた、初期においては大変波乱の時代もございましたけれども、それが成熟するとともに日本の経済成長も本格的なものになってきたというふうに考えておるわけでございまして、今後のグローバルな競争時代、また厳しい競争時代でございますけれども、企業が勝ち抜いていくためには、この円滑な労使関係というふうなものは不可欠だと考えております。今後もこれを何とか大切にし、育てていかなければならないと考えているわけでございます。
 会社の分割のような企業の改編、再編に当たりましても、労使の自治に基づく話し合いは重要でございまして、特に法案の修正案にもございます「雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める」、これは大変大事なことであるというふうに考えておる次第でございます。
 つけ加えますと、労使の自治によるといいますか、労使が自主的に話し合って物事を解決するという戦後の日本の労使関係の伝統が、世界にいわば冠たると言うと言い過ぎかもしれませんが、成熟した労使関係をつくってきたというふうに考えているわけでございます。自主的に労使がお互いに話し合うことによって解決するというのがベストである、こんなふうに考えております。
 実際に会社の分割が行われる場合でございますが、労働者への理解と協力を得るために労使協議は有効な方法であると思います。そして、実際に日本の企業の七割、八割について普及していると言われております労使協議制、こうしたものを活用する企業も多いと思います。
 ただ、労働者の理解と協力を求める方法はさまざまでございまして、最近は電子メディア等も発達し、社内のそうしたネットワークなども完備しているところもたくさんあるわけでございます。また、それぞれの企業がいろいろな形で労使のコミュニケーションをとる方法を考えているわけでございますが、企業ごと、多種多様な方法をとる可能性があるわけでございまして、画一的にこれこれでなければならないというふうなことはなじまないのではないか。そうした意味で、労使協議というふうな形で義務づけというふうなことよりも、労使の自治に任せるということがベストであると私どもは考えておるところでございます。
 最後になりますが、会社分割を契機としまして、リストラ、解雇、労働条件の不利益変更というふうなことが言われたり、また不採算部門の切り捨てのためにこうしたものを使うというふうな御意見がないわけでもございません。そうした危惧の声に対しましては、商法で、債務の履行の見通しがあること、これが会社分割の要件としてあるわけでございまして、これをきちんと理解いたしますと、不採算部門の切り捨て目的で会社分割、こういうことはできないように手当てがされているというふうに考えなければならない、そうであるというふうに思っております。
 また、いろいろなケースの不当解雇でございますとか不当な労働条件の不利益変更、こういうものにつきましては、今まで日本は日本なりの判例法理が確立しておるわけでございまして、そういうふうなものが適用され、法的手段としてはそうした点から日本的な考え方の中で十分なものが成立している、法的手当てとしては十分であるというふうに考えているところでございます。
 ただ、日経連といたしましては常々、不当な解雇、不当な不利益変更というふうなことは行われるべきではないということは会員企業に徹底して指導、啓発をしておりまして、そうしたものも日本の成熟した労使関係への一助になってきたのかなという自負心も多少は持っているところでございます。
 どうもありがとうございました。
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吉岡吉典#3
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
 次に、奥川参考人にお願いいたします。奥川参考人。
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奥川貴弥#4
○参考人(奥川貴弥君) 本日は、こういう機会を設けていただきまして、まことにありがとうございました。
 労働契約承継法について二、三意見を述べさせていただきます。
 今回のこの法律は、労働者を保護するというふうに第一条に書いてあるにもかかわらず、実質的に労働者を保護する規定が何ら規定されていないということに問題があると思います。
 そのことがどういう点で問題になるかといいますと、私は大きく分けて二つの問題が発生すると考えています。一つは、企業の再編の前後に予想されるリストラ解雇、整理解雇の問題、それから主として企業の再編後に行われる労働条件の切り下げを伴う不利益変更の問題、この二つの問題が恐らくこれから発生してくるであろうというふうに考えています。
 まず、リストラの問題について意見を述べたいと思います。
 今回の労働契約承継法は、いわば企業の部分的包括承継とそれから民法六百二十五条の労働者の同意の問題を実にテクニック的に解決したものであります。しかしながら、その法律が実際に企業の再編の中で使われるときに必ず行われるであろう整理解雇については何ら触れられておりません。
 皆さんのお手元にあると思われます参議院労働・社会政策委員会調査室が作成された参考資料の四十九ページに、会社分割を用いた金融機関の再編成の例が挙げられております。
 銀行が仮に三つが再編成される場合に、各銀行の中で、将来どのくらいの人員が必要でどのくらいが不要になるかということは当然話し合われるものだと思います。各銀行で、例えばA銀行は千人、B銀行は二千人、C銀行は三千人不要というふうにそれぞれ計画を立てて、再編の前にそれをリストラ解雇していく、もしくは整理していくということは当然行われるであろうし、話し合いの内容になってくると思われます。
 一般的に今までの合併だとか営業譲渡の例を見ても、多くの場合に整理解雇、リストラ解雇を伴っている例が普通であります。したがって、今度の企業の分割においても当然それは予測されることだと言わねばなりません。
 また、このような一般的な場合だけでなく、さらに、採算部門と不採算部門を分けて、不採算部門だけに好ましくない労働者もしくは整理予定の労働者を集約して、それで解雇をする、そういうようなことも絶対ないとは言い切れない。特に建設業界、ゼネコン等では、採算部門と不採算部門を二つに分けて、不採算部門を将来的には清算していくというような方法の一つの法律的な解決策としてこの法律が利用される可能性は十分あるものというふうに考えています。
 もちろん私はあらゆる整理解雇、リストラ解雇がいけないと言っているわけではありません。もちろん必要な場合もあると思います。しかし、安易に企業の再編成に伴うリストラを認めることは、多くの社会的不安、社会的コストを必ず招くものです。つまり、リストラ解雇によって家庭や社会の安定が非常に損なわれる、家庭の崩壊も起こり得る、またそういうことによって多くの労働者がうつ病になったり自殺をするというようなことすら発生しております。
 もちろん、国も失業が好ましいというふうには決して考えていないはずです。したがって、新たな雇用を創出するというようなことを再三明言しておりますし、今度の与党の共通公約の中にも五十万人の雇用を創出するというようなことが言われております。
 しかし、企業の再編成を進めていく中で、リストラ解雇を放置する以上、有効な失業者の減少を図ることはできないというふうに考えています。新たな雇用を創出するよりも、現在の会社の中ででき得る限り雇用の安定を図って労働者を雇用させる、雇用を維持していくということの方がはるかにコストも方法としても簡便であることは明らかだと思います。
 そういう観点から、民主党が企業の分割に伴っての労働者の解雇を禁止したことは一つの見識であろうかというふうに考えております。
 衆議院の法務委員会で政府は、この分割法案によって特に解雇が行われることはないだろうと、つまり判例によっていわゆる整理解雇の法理、四つの要件を必要とする整理解雇の法理が確立しているので心配はないというような答弁をされております。
 しかしながら、整理解雇の四要件、人員整理の必要性、解雇回避努力義務、整理解雇基準の合理性、解雇手続の妥当性、この四つの要件を満たさなければ整理解雇は適法ではない、違法であるという判例の法理について、最近、東京地方裁判所を初めとする幾つかの裁判例の中でこの考え方が揺らいでおります。
 つまり、最高裁判所の解雇権乱用の法理をもとにしたこの整理解雇の四要件に関する判例法理が一部否定されつつある。具体的に言いますと、従来、整理解雇の四つの要件については解雇権乱用の法理が基準になっておりますが、もともとの発端になっておりますが、前提になっておりますが、企業側に解雇をする理由の主張と立証を実務裁判上は課しておりました。適切な釈明をする等によって課しておりました。しかしながら、最近の裁判例の中には、会社側は理由を述べることなく解雇の意思表示ができると。労働者の方において解雇の理由を主張して、かつ証明しなければならないというような判例があらわれてきております。また、整理解雇の四要件についても、一部その要件を不要とする判例も出ております。つまり、政府答弁で言う整理解雇の四つの基準というものは今後必ず維持されるものとは限らないわけであります。
 こういう点から見ても、企業の再編成が多くのリストラを伴う以上、この際、労働者の雇用の安定を図るためにぜひとも整理解雇の基準を、民主党案のように禁止するのが一番好ましいかもわかりませんが、少なくとも最高裁判所の判例、それから今までの高裁判例などを集約した解雇法理に関する立法化、つまり労働者保護に関する裁判の後退化を防ぐための立法化をぜひとも私は必要とするというふうに考えております。
 それからもう一点は、主として企業の再編成後に行われるであろう労働条件の切り下げの問題についてであります。
 今までの裁判例を見ておりますと、多くの会社で、企業が合併、営業譲渡などによって幾つかの会社が一つになったような場合に、個々の会社の労働条件の食い違いを斉一化するために、労働条件の統一化を図るために労働条件の切り下げが行われております。これは裁判例を見ても明らかです。
 この労働条件の切り下げ、つまり、主として就業規則の変更によって、賃金だとか退職金だとか定年、それらの労働条件を悪い会社の水準に引き下げるということがしばしば見受けられます。今回の企業の分割によってもそういうことが恐らく発生するであろう。いい基準の方に、例えば三つの銀行のうちの一番いい銀行の労働条件にほかの銀行の労働条件を切り上げるというふうなことはまず行われないであろう。恐らく切り下げの方向でやられるであろう。この点については、最高裁判所が大曲市農協事件などでかなり厳格な法律要件を示しております。
 したがって、この点についてもぜひとも判例が後退化することのないように、この際、ぜひとも労働者保護法の中にこれらのことを組み入れて立法化していただきたいというふうに考えています。
 最後に、主として僕が言いたい、まとめ的なことを言いたいんですが、日本の労働者は今まで働き過ぎと言われるぐらいに働いてきました。労働時間も名目上は短縮化されているかもわかりませんが、実質はサービス残業等によって労働時間も決して短くはなっていません。また、働き過ぎによる自殺だとかうつ病などもいろいろ報告されております。
 企業の再編成、これがグローバルな企業の競争力をつけるために必要であるとしても、そのために今まで企業のために一生懸命働いた労働者を切り捨てたり、労働条件を切り下げることが当然のごとく許されるということには決してならないということだと思います。そのことが、もしそれを安易に行えば、それは、結局はいろんな意味で高い社会的コストを伴うことになり、日本全体を疲弊させるのではないかというふうに私は考えています。
 以上であります。どうもありがとうございました。
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吉岡吉典#5
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
 次に、坂本参考人にお願いいたします。坂本参考人。
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坂本修#6
○参考人(坂本修君) 参考人として大事な時間を与えられたことを本当に感謝する次第です。
 私は一九五九年に弁護士になり、以来一貫して四十一年間労働者の解雇事件などの裁判に携わってきました。今も携わっております。そうした経験に基づいて、当委員会で審議されております二つの法案について意見を述べます。
 完全失業者が三百五十万人に迫り、失業率が五%になろうとし、男性のリストラ性自殺が急速にふえています。私は、四十一年間経験したことのないリストラ合理化のあらしのもとで、朝日新聞が企業の生体解剖のメスだと報じた会社分割を認める以上、労働者を保護する特別の立法がどうしても必要であると深く考えます。この点については政府もまた認めるところであり、労働契約承継法はそのためのものだと言われております。
 問題は、どのような法律が必要であり、そしてこの二法案がそのようなものとして有効なものであるかどうかということが審議されるべきだと思います。
 労働契約承継法は、労働者を、会社分割の場合に対象を限定しております。現在盛んに行われておる営業譲渡などを使っての分社化などが外されております。これは同法案のそもそもの構造的な弱点であります。この点については、EUのいわゆる既得権指令と同じように、会社主体の再編の場合を広く対象としております労働者保護法の方が必要であり、かつ有効な法律だと私は考えます。
 また、実はこの問題でほとんど議論されていませんけれども、短期雇用労働者、契約社員、派遣社員、パートなどの人たちがこの会社の分割に当たってどういう処遇をされるのか、大きな問題があります。
 私は、そういうことを含めて、本当は本来の解雇規制法が必要だと考えるものであります。しかし、そのことをここで長く言っている時間がありませんので、会社分割にかかわって労働者の保護をどうするのかという問題に絞って以下申し上げます。
 労働者保護のために第一に必要なことは、移籍に当たっての労働者の同意権または異議権を認めるということだと思います。労働者承継法にはこれがございません。
 労働者保護法は、私たちは同意権と考えていますが、同意権ではありませんけれども、異議権を認め、異議申し立てによる労働契約は動かない、つまり前の会社に残ることを決め、異議申し立てに対する解雇など一切の不利益処遇を禁じております。実質上の同意権と言っていいと思います。
 一方、労働契約承継法の方は、民法六百二十五条の労働者の同意なしに他会社への雇用の移籍は認めないという規定を排除しております。こうなりますと、実際には不採算部門を新設分割してそこに労働者を集中的に移籍させる場合、あるいは逆に優良部門を新設会社の方に分割ないし吸収分割して前の会社を泥船あるいは空船にして沈没させてしまう場合などなど、労働者の目に見えるような被害があり、また、労働条件などでも、例えば通勤の問題などで大きな問題が起きるというのがわかっていても労働者は同意なき移籍を強制されることになります。これでは非常に困ったことになるんだというふうに思います。
 民法六百二十五条、明治以来のこの法律は、冷たい集中豪雨のような今のリストラに辛うじて労働者を守る役割をしていました。労働者保護のための法律だといいながら、このままの労働契約承継法では辛うじて身にまとっていたマントまで引きはがすような立法になってしまうのではないか。やはり同意権ないし異議権をきっちりと認めるべきだというふうに思うわけであります。
 第二の問題として必要なことは、分割を理由とする解雇の原則禁止を明記することであります。
 承継法は、主たる業務に従事する労働者を動かす場合に、残して連れていかないという場合には異議の申し立て権があって、その場合には契約が承継されるなどを規定しております。その限りでの一定の保護はあるわけです。
 しかし、実際の問題としましては、これについて、例えば事前に社内配転をしておいて、切る労働者は別の部門に移しておくとか、さまざまな法の潜脱ということが十分に考えられます。これは勘ぐりではないか、杞憂ではないかとおっしゃられるならば、時間がありませんけれども、私たちは何十という現実に分社化などを通じてそういう処遇をされた裁判や紛争を抱えているのでありまして、それは私が指摘したのは現実の危険です。
 一般に資本主義社会においてそういうことがしょっちゅう起きるんだということについては私の杞憂でないということについて、もう一つの例を挙げます。
 それは、EU、ヨーロッパ連合は既に一九七七年に、以上のようなことが頻発するという事態を前にして、企業主体の変更を理由とする解雇を禁止するという明確な条項をつくっております。やはり外国でも私が言ったようなことが起きるからこういう法律がつくられているんです。
 では、一九七七年、ヨーロッパにおいてこういう法律が必要であったけれども、今日の日本において必要はないのでしょうか。一々例を挙げるまでもなく、自殺者まで相次いでいるような今の過酷な合理化、人減らしは、こういう規定が今の日本においてこそ一九七七年のヨーロッパ以上に必要だということを証明しているものだと私は考えます。
 しばしば企業の機動的再編成とかメガコンペティションとかグローバルスタンダードとかと言われ、政府の答弁にもそれに類する答弁がございます。この答弁の致命的な弱点、率直に言うと偽りは、外国はそういうことをやっていると言うけれども、全部労働者保護の法律をつくって規制しているではないか。グローバルスタンダードと言うなら、なぜそのことがグローバルスタンダードにこの国ではならないのか。そちらの方のスタンダードは外しておいて、会社はどういうふうに動かしてもいいというのは明らかに立法として間違っているということであります。
 第三に、労働者及び労働組合に対して十分な事前情報を開示することです。
 同意権を認める立場ではもちろんですが、一定の限定された異議権を認める立場であっても、情報がなければ同意権も異議権も十分に労働者は行使できません。労働者の生活と権利を守ることを本来の責務とする労働組合もまた、こういう事前情報を得なければその権利を行使することができません。憲法が保障しております団結権、団体交渉権、その主体である労働組合が、自分の組合員さらには職場の労働者がどういうふうに今移籍されようとしているかについて情報を与えられないなどという立法は考えられないのです。
 この法律には、労働協約を結んでいる労働組合には事前情報を伝えるとなっています。これは重要なことです。しかし、なぜ労働協約を結んでいる労働組合に限定をするのでしょうか。何の合理性もないと私は考えます。労働組合はみずからの労働協約を守るためにのみ存在するのでありません。みずからの組合員及び組合に入っていない未組織の労働者を含めて、その人たちが人間らしく生き、働く権利を守る、これが憲法の保障し、労働組合法の保障している労働組合の本来の権利です。その組合に対してなぜ情報をこれだけ開示するのを嫌がるのか、なぜそのことがこの条文にないのか、私はこの法案の絶対に改めるべき問題だというふうに思っています。
 その次の、保障しなければならない誠実な事前協議の問題です。
 この法律の審議の中で二つの修正がされ、会社分割法の附則の方で労働者と事前協議することが義務づけられました。同じく労働契約承継法についても、分割会社は当該分割に当たり雇用する労働者の理解と協力を得るように努力するものとすることという努力義務が記載されました。よりましな修正だとは思っております。しかし、これでは私が言ったような同意権や異議権にかえるには余りにも力が弱いと思っています。しかし、力が弱いという批判をするだけで済まそうとは思っていません。力は弱いと思いますが、この協議を本当に一歩でも二歩でも実効のあるようなものにするために当院での審議を強く望むものであります。
 そのためには、先ほど申し上げました労働者及び組合に対する事前の情報開示というのが極めて重要であります。その次には、協議をやはり誠実に尽くすためには、協議期間の問題その他について実効のある協議にするためにいろんなことを考えなければいけません。
 例えば、日産村山の今回のリストラは約三千人の労働者を動かします。三千人の労働者に事前協議を本当にまじめにやろうと思うならば、相当の時間と手間暇をかけてやらなければなりません。事前協議は通知ではありません。そうだとすれば、この協議を尽くすために法的にどういう手段をとるかということをきっちりさせるべきであります。
 ちなみに、この事前協議については労働組合の事前協議権が明示されておりません。先ほど申し上げました労働組合の本来の職責、責務、そして権利から照らして、労働者との事前協議と同時に、労働組合に対する事前協議権を明示すべきです。これにつきまして、それはそもそも団交権があるんだということで逃げようとしても、それは実際に現場で苦しんできた私たちは到底納得できません。
 このような会社の組織変更に絡む問題に事前に労働組合が協議を申し入れた場合に、ほとんどの場合、それは経営権の問題であり人事権の問題であるということで団交は拒否されるのです。その団交拒否に対して不当労働行為として労働委員会に提訴しても、裁判所に提訴しても、およそ間に合わないのです。時間的には絶対間に合わない。しかも、その命令には強制権がありません。そうである以上、法律をもってリストラ、合理化の道具に使われかねないこの会社分割に当たって、労働組合に明確に団交権を保障するというのは最低限必要なことだというふうにかたく思うものであります。
 最後に、政府は、先ほど申しましたように、各国でも分割法制があるということを強調しています。しかし、それならばなぜ私が言いましたように既得権指令的なきっちりした労働者保護の法律をつくらないのでしょうか。それは余りにも片手落ちではないでしょうか。メガコンペティションを闘うというのならば、まさにグローバルスタンダードで競争したらいいと思います。この点につきましては、私の言っていることは日本共産党の提案した労働者保護法には全部書かれていると思いますし、衆議院段階で上程されておりました民主党の法案も同じ中身だったと思います。連合も全労連も全労協も、すべて私は同じような考えを述べておられるんだというふうに思います。
 それだけではありません。最後に一点だけつけ加えておきます。それは、EUの日本政府代表部で一九九五年から九八年に一等書記官として在任し活動されました濱口桂一郎さんという方が、あるシンポジウムで最近次のように語っております。
 EU諸国はやはり雇用を大事にするという方向を努力しているんだ。それに対して日本の流れは全くすべて逆転しておる。これを、ビッグバンを断行することなんだ、それ以外に道はないという風潮がある。しかし、それは一方的に労働者ばかりが被害をこうむることであって、世界の流れに反する。
 つい数年前までヨーロッパの日本政府代表部におられた一等書記官の方がそう言っておられるのです。労働者のナショナルセンターが求めていること、二つの政党が求めたこと、そして実は一等書記官が求めていることを私は述べているのです。
 四十一年間の弁護士生活を通じ、そして今たくさんのリストラ、合理化で苦しんでいる人たちの事件を担当している弁護士として、当院において今私が言ったことをぜひ参考にされ、一歩でも二歩でも事態の改善に役に立つように努力をしていただきたい。良識の府とされる参議院が五千四百万の労働者とその家族のために責務を果たされることを心から望んでやみません。
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吉岡吉典#7
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
 次に、小谷野参考人にお願いいたします。小谷野参考人。
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小谷野毅#8
○参考人(小谷野毅君) 陳述の機会を与えられました小谷野です。中小労組政策ネットワークという団体の常任運営委員をしております。
 中小労組政策ネットワークというのは、昨年十二月に結成をされました、主に中小企業に働く労働者それからいわゆる非正規雇用の労働者、こういった労働者の雇用問題や権利問題などについて活動をしている十一の労働組合、約二万人が結成をした政策運動体であります。
 日本の労働運動あるいは労働者の権利といった場合には、いわゆる正規に雇用されている、企業に正社員として雇われている労働者の問題を取り扱うのがこれまで通例であったし、それで十分事足りたのではないかと思いますけれども、後に述べるように、日本の産業は非常に大きな変貌を遂げておりますから、会社に正社員として雇われている人たちだけのことを論じて事足れりという時代ではないというふうに認識をします。
 実際に日本の経済というのは物づくりについて下請化が非常な勢いで進展をしましたから、例えば会社分割といった企業の大きな組織変動を伴った措置が講じられた場合に、正社員だけではなくて非正規雇用の労働者や下請労働者たちがどのような影響をこうむるのか、こういった観点から今回の法案を見てみると、極めて不十分と言わざるを得ないというのが結論であります。
 私どもの中小労組政策ネットワークに加盟をしている十一の労働組合の活動を、日常どんなことをしているかということをまず最初に御紹介したいですけれども、恐らく委員会に参集されておられる先生方のイメージでは、今日では日本は法治国家でありますから、労働者は労働組合に加入する権利を与えられ、職場の労働条件や雇用の問題について労働組合を通じて企業主と十分な団体交渉をする機会がある、まかり間違っても強行法規であるところの労働基準法などに違反するような労働条件が日常不断にまかり通る、こういったことはないというふうに恐らく思われているのではないかと思います。
 ところが、私たちが日常活動している分野では、下請中小企業が年じゅう親会社の経営変更に伴って企業が倒産をしたり、あるいは事業縮小が不可避的に行われたり、こういった場面で労働者の雇用をどう守るかという四苦八苦した活動をせざるを得ない状況にあります。また、労働組合をつくった場合に、労働組合そのものを認知しない、親会社の指示によって下請会社が労働組合つぶしを行う、こういったことも日常不断に起こっているわけです。
 そういった立場から、私は今回の労働契約承継法について二つの点で意見を申し上げたいと思います。
 まず、この労働契約承継法には、対象となる労働者が企業に雇用されている労働者という限定つきがなされています。労働者保護といった場合に果たしてこれで十分なのであるだろうかということをまず疑問として呈さざるを得ません。これでは日本の今の産業構造を考えた場合に、いわば水面上に出ている氷山の上の部分だけを論じていて、水面下で氷山の本体をなしているところの実態に何ら迫るところがない。比喩的な言い方ではなくて実態的に言えば、日本の生産の直接的な担い手である下請中小企業やあるいは今日の職場では多く生産の実態を担っている非正規雇用労働者の問題、こういった労働者の雇用や権利について保護をなすという意味から見ると、極めて不十分なのではないかと考えるところであります。
 私は今、日本の生産が下請化をしているという言い方をしましたが、例えば私が所属をしている労働組合は建設業での労働者の権利問題を主として取り扱っておりますけれども、御存じのように、建設業では大手のゼネコンの場合、例えば鹿島とか竹中といった大手の建設会社が看板を掲げている建設現場の工事の中で実際に三百人の労働者が働いているとしたらば、鹿島や竹中の正社員の労働者というのはごく一握り、わずか四、五人にすぎません。残りの二百九十五人、三百人近い人たちというのは、一次下請、二次下請、三次下請といったぐあいに重層的に下請雇用された労働者たちが実際には鹿島の名前であるいは竹中の名前で仕事をしているわけであります。会社分割においても、同じような側面から労働者に与える影響を考える必要があろうかと思います。
 私は、意見陳述メモの二枚目に図を添付いたしました。これを参照していただきたいのでありますけれども、便宜的に分類をすると、私のまず問題提起の第一点は、労働契約承継法が直接の議論の対象とし立法措置を講じている分割会社に正規雇用された労働者の労働契約の保護だけを論じるのでは極めて不十分であって、生産の実態の担い手であるところの下請企業の労働者あるいはそれに先立つ下請企業の経営権そのもの、営業そのものの保護策を十分に講じない限り、分割に伴う労働者保護を議会が十分に議論し立法措置を講じたとは言えないのではないかという点にあります。
 具体的に申し上げたいと思います。
 例えば、先ほど坂本参考人も触れられましたが、最近の大企業のリストラの代表例と言われる日産自動車の例を見てみますと、日産自動車がカルロス・ゴーンのもとで発表したリバイバルプランは、三カ年のうちに五つの工場を閉鎖し、そして同時に二万一千人の正規雇用労働者を削減するということが大きな骨組みとなって報じられました。
 リストラといった場合に、主として社会の耳目が集まるのは二万一千人の正規雇用労働者の雇用の問題ということになろうかと思いますが、もう一つ日産のリバイバルプランで大きく問題になっているのは下請業者の取り扱いであります。
 日産自動車には、系列会社として営業に参加をしている企業が会社発表では約千百五十社あります。日産のリバイバルプランは、この千百五十社のうち五百五十社を三カ年の間に整理して六百社に集約化すると言っております。つまり半分に整理淘汰をするのだと言っているわけです。しかも、ただ単に半分にするといういす取りゲームではありません。日産が提示した条件というのは、これまでの取引単価を二割削減する、二割のコスト低減にたえられない会社とは取引をしないという前提条件つきのいす取りゲームなわけであります。このような過酷ないす取りゲームを強いられて、その企業が存続できる保障がどこにあるというのでしょうか。
 下請企業の場合は、親会社のいわば言いなりで生産設備を更新したり、あるいは人員配置を行ったり、労働時間の決定などを行ってきているのは御承知のとおりであります。したがって、親会社からの仕事を一方的に取り上げられて、他の会社との取引を新たに開拓したり、あるいは十分な二次的な営業を開発して労働者の雇用を維持できる企業はほとんどないと言わざるを得ません。こうしたときに、下請労働者の雇用を守る措置は、残念ながら今の日本の法制度の中では全くないと言って過言ではないと思います。
 あるいはセメントメーカーの例を引いて申し上げたいと思います。セメント産業は日本の代表的な基幹産業の一つでありますけれども、業界の今トップと言われる太平洋セメントが最近二つの工場の分社化を提起しました。会社分割法を利用した会社分割の一つの先鞭であろうかと思います。太平洋セメントというのは御存じのように秩父セメント、小野田セメント、日本セメントという日本の有数のセメントメーカーが合併をしてできたセメント会社でありますけれども、この会社の場合、関東圏の秩父工場、それから北九州の香春工場、この二つの工場を分社化して生産合理化をするのだという計画を発表しました。
 当然のことながら、分社化をするので、その分社化をされる工場の労働者には労働条件切り下げが提起をされました。北九州の香春工場の場合、旧来の正社員の年収は七百万円前後でありましたが、分社化を機に五百万円程度に年収を切り下げるという提案がなされています。ここまでは正規雇用労働者の問題であります。
 労働契約承継法が成立をすると、分社、つまり会社分割を理由にしてこのような労働条件の一方的な不利益変更はなされてはならないという立法府での議論がどこまで実効あるものとして生きてくるのか、ここに私は重大な関心を抱きますが、同時に、正社員のこうした労働条件の不利益変更が下請業者や下請運送会社などにはどのような影響を与えているのか、この点についてぜひとも注目していただきたいと思います。
 北九州の香春工場には、系列のセメント輸送会社、つまり町中を走っているタンクローリー上のセメントの粉を取引先の生コン工場に運ぶ運送会社、これが多数出入りをしております。大手の運送会社で福岡トランスという百人規模の会社がありますが、ここでは最近香春工場の分社化に伴って五名の労働者への整理解雇が打ち出されました。しかも全員が労働組合員であります。会社が整理解雇の理由として持ち出したのは、仕事をもらっている親会社でさえ年収を二百万円前後切り下げるのだから、会社の取引条件も当然厳しくなってくる、親会社の年収を超えるような労働条件はましてまかりならない、よってもって人員合理化も労働条件の切り下げもやらせていただきます、それに承服していただけない労働者は指名解雇させていただきます、概略このような方針を打ち出して整理解雇を実行したわけであります。
 恐らく会社分割が実際に運用されるようになると、今申し上げたような日産型のリストラ、あるいは太平洋セメント型のリストラが日本の主要な産業の各場面で多発するのではないかというふうに、私たち中小労組政策ネットワークは警戒をしているわけであります。
 では、これに対する下請労働者の保護措置がどの程度あるのか。先ほど私は皆無であると申し上げました。衆議院の法務委員会や労働委員会の議論の中では、いや心配には及ばないんだという政府の答弁がありました。なぜならば、下請労働者の労働条件に影響を与えるような親会社の行為が使用者性に当たるものであるとなれば、それは旧来の判例法理の中で使用者概念の拡大の法理を用いて親会社との団体交渉を行って労働者の権利を確保することができるからだ、このような答弁がなされました。私は全くむなしい答弁だと思います。
 現に会社分割に伴って、取引されている例えばA社という会社の下請業者が十社あったとして、そのうちの三社が会社分割に伴って取引を打ち切られた、この取引打ち切りについてその三社の労働者たちがどうやって自分たちの雇用を守る運動をすればよいのか。明らかに会社分割が原因で自分たちの雇用が失われるわけでありますから、その雇用の保護や労働条件の問題に関して、当然のことながら親会社と協議をしたい。つまり、分割する会社と協議をしたい。ところが、現行の法制度や経営側の対応の代表例は、直接の雇用関係がないのだから下請労働者と団交する義務はない、不服であれば裁判、労働委員会に申し立てをすべきである、このような反応が返ってきます。
 そうした裁判、労働委員会を用いて権利救済をしようと思っても、会社分割はどんどん先に進んでいってしまいます。いつの間にか、もと雇われていた会社さえ親会社の契約打ち切りによって企業そのものがなくなってしまう。このような状態の中でどれほど耐えられる労働者がいるかとなれば、ほとんどいない。つまり、日本の下請の労働者がみずからの権利救済をする道がほとんどない、実効性のある措置がほとんど講じることができない。ここにどう光を当て、必要な保護措置を講ずるのか。この点についてぜひ委員会の今後の作業を期待したいところであります。
 次に、議論をされていないもう一つの問題について申し上げたいと思います。
 もう一つの問題は持ち株会社の団交権の問題であります。私は、意見陳述メモの二枚目の図に、分割会社の上に持ち株会社を書きました。法務委員会においても、あるいは衆議院の労働委員会においても、この会社分割制度というのは、日本の企業が持ち株会社制度を用いて企業グループを再編成するための重要な手段なのだという説明がなされました。
 ところで、この持ち株会社は企業として活動する前提として、従業員を直接雇用しない、これを最大の特色としております。市中には今持ち株会社の設立の仕方とか運用の仕方といったマニュアル本がたくさん出回っています。これらの中で強調されているのは、雇用責任を負わないのだから利潤原理に基づいて最大限の利益追求ができるのだ、利益追求の手段として持ち株会社の傘下にある各子会社に柔軟な利益目標を、最大限の利益目標を提起してこれの実行を迫ることができるのだという趣旨のくだりが多数書かれております。その事業子会社に働いている労働者の雇用や労働条件に思いをいたさない純粋持ち株会社の活動を無制限に放置しておいてよいのかという疑問をぜひ委員会の先生方に受けとめていただきたいと思います。
 労働省は昨年の十二月に、持ち株会社に対する例えば分割会社の従業員からする団交申し入れについて検討をした結果、中間報告を出しました。今後もし問題が生じたらば改めて検討を行うということで、持ち株会社との団交権問題については事実上結論を先送りしたという内容だと思いますけれども、これでは全く不十分だと思います。利益を追求する以上、労働者の雇用について責任を負わずして何の企業かという疑問を改めて提起しておきたいと思います。
 以上、下請労働者の団交権の問題並びに保護措置、そして持ち株会社問題、二つの点を私は申し上げましたが、必要なところから具体的に調査活動なり立法作業を速やかに行っていただきたいということを申し添えて、意見陳述を終わります。
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吉岡吉典#9
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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但馬久美#10
○但馬久美君 公明党・改革クラブの但馬久美でございます。与党を代表いたしまして質問させていただきます。
 きょう、参考人の四人の皆様方、当委員会にお忙しい中をおいでくださいまして、本当にありがとうございます。貴重な御意見を伺いまして、本来ならば全員の参考人の先生方に質問させていただきたいと思いますけれども、私は主に成瀬参考人を中心に質問させていただきたいと思っております。どうぞ御了解よろしくお願いいたします。
 それでは初めに、成瀬参考人、社会経済情勢においては企業間の国際的な競争が激化しているために企業の競争力を強化する必要がある、合併や営業譲渡等の既存の企業組織の再編の方法に加えまして、会社分割制度を導入することになったわけです。この点につきまして経営者側としてはどのようにお考えなのか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
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成瀬健生#11
○参考人(成瀬健生君) 先生の御認識のとおりでございまして、現在の社会経済情勢におきましては、企業間の先ほども申しました国際的な競争がますます激化する状況でございます。企業がその組織の再編成によって経営の効率性、適正単位、適正な専門能力の発揮というふうな、いわゆるコーポレートガバナンスも含めた実効性のある高度な経営をしていく。そのためには、経営者側にとってこの問題は喫緊の課題だというふうに考えておる次第でございます。
 そうした経営側の要請と申しますか、経営側の必要性に御理解いただきまして、平成九年には合併法制の合理化、十一年には株式交換・移転制度、さらに最近では産業再生法など法整備が着々と進められてきていると認識をしているわけでございます。それに加えまして、今回、国際的な競争の中でさらに我が国の企業が生き残るためにも、経済環境の変化等に的確に対応した企業組織の再編成としてその分割の問題、これはぜひ必要であるというふうに考えておる次第でございます。
 例えば、持ち株会社が下にある子会社を事業別にどういうメリットを生かしてそれぞれ特徴が生きるように再編成するか、こういうふうなことは大変重要でございますし、こういうものをいかに促進していくかということが可能になってまいると思います。それから、今までの例えば営業譲渡の場合でございますと、営業を停止する等のプロセスがありまして、大変時間がかかる、スピードが本当に重要になってくるということでございますと、営業を停止することなく行うことができるという法整備が本当に重要だというふうに考えているわけでございます。
 そういう意味で、会社分割制度の導入、ぜひとも必要と考えておりますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。
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但馬久美#12
○但馬久美君 ありがとうございました。
 それで、成瀬参考人にお伺いするんですけれども、今回の労働契約承継法案につきましては、衆議院において修正され、また参議院に送られてきたわけですけれども、その修正点、「分割会社は、当該分割に当たり、労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする。」という一条が追加されております。
 実際に会社分割を行う際に、労働者の不安、例えば会社分割の際は当然承継となっており異議申し立ての権利が付与されていないために、会社分割の際、雇用や労働条件の不利益変更が行われるんではないか、またあるいは、不採算部門の切り離しなど人員削減の手段に利用されるのではないかとの不安を解消するため、事前協議など徹底した労使の間のコミュニケーションをとることが大切ではないかと思います。先ほど坂本参考人からもお話がありましたように。特に日経連では、企業内に正しい人間関係の樹立、これを使命とされておりますね。この点について、経営者側としてはどのようにそれを認識されているのか、お伺いしたいと思います。
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成瀬健生#13
○参考人(成瀬健生君) 日経連の考え方まで引用していただきまして、大変ありがとうございます。
 企業の再編に当たりまして、やはり企業は人間が中心で仕事をしているものでございますから、労働者の理解と協力を得て実施することは最も重要だと考えております。これがうまくいかなければやっぱりうまくいかないだろうというふうに考えるわけでございます。
 したがって、会社分割の実施に当たりましても、衆議院において追加されました条文、「労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるもの」、これを含めまして、さらにそれを労働省令や指針でいろいろと細かい点を規定していただくことになるのかと思いますけれども、そうした趣旨も十分に生かしまして、労使の間で本当によいコミュニケーションを成功させることが分割後の会社の経営の成功にもつながるという立場から、労働者の理解と協力を得るということにつきましては積極的な努力をしていくということがぜひ必要だと思いますし、日経連はその意を体しまして努力をしてまいりたい、企業の経営者の方々に徹底してまいりたいと考えております。
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但馬久美#14
○但馬久美君 ありがとうございました。
 次に、会社分割が安易なリストラや不採算部門の切り落としにつながるとの懸念がさきの委員会におきましても議論になりました。私もこの問題点を提起させていただいたんですけれども、これに対しまして政府は、会社分割による不採算部門の切り捨てはできないし、また安易なリストラにつながるものでもないと答弁しております。
 労働者に対しては雇用不安を生じさせないように、可能な限りの雇用の確保を図りながら企業の再編が行われることが大原則ではないかと思います。
 現在は、企業組織の再編成を行うに当たっては合併または企業譲渡という手法が行われておりますけれども、こうした企業再編成時においてどのように労働者の保護を確保していかれるのか、またその際、どうしても人員削減を行わなければならない事態が生じた場合には、一般的にはどのような対応をなされるのか、その点をお聞かせください。
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成瀬健生#15
○参考人(成瀬健生君) 会社分割についての今回の商法の改正案の中で、当事者である各会社のいずれについても債務の履行の見込みがあることを要件とするという条文が含まれていると理解をいたしております。したがって、経営者としても、不採算部門を切り離してそしてそれを処分するために会社分割をするというふうなことは考えられないということは十分認識をいたしておるところでございます。基本的には、できるだけ経営効率を高くし、そして企業の発展を期するために分割をするというのが基本である、こんなふうに考えているところでございます。
 会社分割の場合も、合併、営業譲渡の場合も、従来の企業組織の再編の場合と同様でございますが、企業の効率化を図る、先ほど最初に申し上げました適正規模、それから企業の専門能力を発揮するような組織体につくりかえていく、こういうふうなことでございまして、安易なリストラというふうなことに使うべきものではないと考えております。
 多くの経営者は、健全な企業の経営者はそういうふうに考え、その中で労働者の雇用の維持を第一に考えているところであると思います。
 状況証拠と言ってはなんでございますけれども、このようなバブル崩壊以降十年来の不況の中で失業率が五%弱にとどまっているというのは、世界でもまれな労使の協調による雇用維持の成果だというふうに私どもは考えているところでございます。
 もちろん、そういうことを可能にした労使の慣行というものがあるわけでございまして、経営者は、今発表されております人員削減というふうな、新聞記事に出ておりますけれども、そういうものを見ましても、これはきちんと計算をしてみますと、退職者不補充というふうな形で、いわゆる生首を飛ばすというふうなことをしないということがほとんどでございます。
 これが基本でございまして、もし、人員を削減しなければならない、それ以上に削減しなければならないというふうな場合には、実際いろいろな活動を展開し、それは株主配当から役員賞与から、さらに管理職の給料から、場合によっては給与カット、それからワークシェアリングというふうなあらゆる方法を講じた上で、最終的な、どうしてもだめな場合には希望退職募集、それから最後には指名解雇ということも起こり得るわけでございますが。
 そうした大変な努力の末に、これは労使の間でもってある意味では話し合われつつやられるところでございますが、そうしたものを活用することによって、できるだけ雇用を維持するという努力をしているということは御理解を広くいただいているところではないかと思っております。
 ありがとうございました。
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但馬久美#16
○但馬久美君 いろいろ対応がありますけれども、これからの問題にもたくさん提起されていくと思います。どうもありがとうございました。
 次に、奥川参考人にお伺いしたいと思います。
 現在、営業譲渡における労働契約の承継については、譲渡会社と譲り受け会社との合意と労働者個別の同意が必要とされております。
 譲り受け会社へ移籍対象となる労働者の保護は図られていると思います。しかしその反面、この譲渡労働者の範囲は会社間の合意により決められるために、労働者によっては承継されない不利益が生ずる場合が想定されると思うんです。
 そのため、この営業譲渡についても当然承継として労働者に拒否権を付与することが必要ではないかということも言われております。これは先ほど坂本参考人の方からもお話がありましたけれども。
 そこで、EUの既得権指令によりますと、営業譲渡も含めて当然に承継されるというルールがつくられております。しかし、その結果、この営業譲渡を引き受ける会社が少なくなっているという声も聞くわけなんです。
 ということは、EU指令においてこの営業譲渡が当然承継されていることは、一見労働者に手厚いルールに見えますけれども、長期的に見た場合、雇用確保という観点から見て、果たして労働者のためになるかという疑問も抱くわけです。
 奥川参考人は、営業譲渡における労働者の保護のあり方についてどのような御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
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奥川貴弥#17
○参考人(奥川貴弥君) 今度の営業譲渡の問題についても、それから分割についても、いわゆる特定承継、包括承継、それから六百二十五条の関係で、いろんな組み合わせで解釈論がなされています。
 そのこと自体が問題なのではなくて、僕の認識は、例えば営業譲渡をやる場合なんかも、まず譲渡する方の会社が例えば全員の労働者を解雇して、それで営業譲渡をして、譲渡先に好ましい人だけを採用するとか、そういうふうに、営業譲渡そのものの中で解決できる問題ではなくて、その前後に行われるリストラ、それがやっぱり一番問題なのではないかというのが僕の考え方なんです。
 ですから、例えば今度の労働省の学者の先生たちがつくった、参考にありますね、あれを見ても、まさに概念法学というか法律の組み合わせばかり考えていて、実際の労働者の保護をどこまでしていけばいいかという、実際の社会の中で行われている営業譲渡とか会社の合併なんかに伴う事前事後のリストラに対する対処が全然なされていない。だから、そこの部分だけを幾ら解決しても果たして解決になるのだろうか、ならないというのが実は私の考え方なんです。
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但馬久美#18
○但馬久美君 ありがとうございました。
 これ、坂本参考人にも同じようにお伺いしていいでしょうか。
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坂本修#19
○参考人(坂本修君) ちょっと違うかもしれませんが、EUが営業譲渡につきましても会社合併などと同じように雇用契約はつながるんだ、承継するんだと決めたのが一九七七年です。それから今日まで長い時間がたっております。議員の質問されたような現象があるのかどうか、必ずしもヨーロッパ全部を知っているわけではありませんけれども、そのまま今日機能しているということは、やっぱりそれが労働者保護と経営の都合のバランスをとる上での今日の近代的なルールだというふうに思います。
 一点付加しますと、営業譲渡に当たってその譲渡される営業に従事した労働者は原則全部承継されるんだということは、戦後の混乱期でそんなことはできないということで、首を切っていいんだということで大問題になったんです。そのときに、東京地裁のその当時の柳川コートという労働部がかなりの議論をして、営業というのは、社会的に見たら財産もある債権もある債務もあるが、同時にそこで働いている人があって営業なんだと。それを移すならば、人間だけ外すということは、全くできないわけではないけれども、特別に合理的な理由がなければできないんだということで判例が確立をしたのです。
 ただし、最近は変なのがありまして、営業譲渡に当たって、特別にある労働組合員だけを排除するとか、そういう合意をして外してしまうケースがふえて、むしろ営業譲渡に当たっては労働者は原則承継されるというのは立法によって明確にすべきだというふうに私は考えております。
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但馬久美#20
○但馬久美君 いろいろとありがとうございました。
 それでは、私、時間も少ししかありませんので、あと聞いていなかった小谷野先生、よろしくお願いいたします。個別紛争への対応について伺いたいと思うんです。
 先般の労働基準法の改正によりまして、労働条件に関する紛争については都道府県労働局長が助言します、指導することもできます。この紛争解決援助制度が設けられましたけれども、この運用状況を見ますと、労働基準法等関係法令違反が認められないものの、何らかの具体的な処理が求められている件数、制度開始平成十一年三月までの半年間と平成十一年四月から九月までの半年間を比較しますと五千五百三十七件から七千七百八十件、四一%の増加となっております。
 このような個別の労使紛争については、最終的には裁判によって解決が図られるものと思いますけれども、現実的には、裁判となると先ほどからいろいろお話がありますように時間や費用がかかり、そしてまた個々の労働者が簡単に利用できるものになっておりません。したがって、今後ますます増加が予想される個別労使紛争、これを簡易にまた迅速に解決して労働者の救済を図るためには、現行の労働局長による紛争解決援助制度の活用に加えまして、この制度の拡充や強化することも検討すべきではないかと思いますけれども、この点についてどのように考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
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小谷野毅#21
○参考人(小谷野毅君) 私は、行政が個別労使紛争処理のための適切なサービス網をきちんと確立していくということは当然ながら必要なことだと思います。多くの事案の場合に労働者が相談をしやすい、そして適切な解決につながりやすいようなサービスを行政が提供するということは十分に必要なことだと思いますが、同時に、私は個別労使紛争処理において労働組合の役割をもっと明確に位置づけるべきではないかと思います。
 先ほど私の意見陳述の中でも、労働組合というと正規に雇用されている会社の従業員の人たちの組織というイメージが日本では強いですけれども、最近ではリストラされた労働者とか労働組合がない職場の労働者が、いわゆる片仮名ユニオンと言いますけれども、さまざまな個人加盟の労働相談を受け付けているいわば労働者の駆け込み寺のような運動組織が非常にふえているわけです。私どもの運動体もその一つでありますけれども。そうした労働運動体、ユニオン、これが本来、労働者に最も身近な相談機関であり紛争解決機関ではないかと自負をしています。こうしたユニオンなどの、いわば今風に言えばNPO型の運動といいましょうか、こういったものを行政府と対になった役割として奨励していく、そういうようなことが必要ではないかと思います。
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但馬久美#22
○但馬久美君 ありがとうございました。
 私、もう時間が参りましたので、四人の参考人の先生方、貴重な御意見をいろいろありがとうございました。
 以上でございます。
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川橋幸子#23
○川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。本日は、四人の参考人の方々に大変貴重なお話を伺いましてありがとうございます。
 四人の参考人の方々のお話ですけれども、成瀬参考人以外の三人の方々がどちらかといいますといわゆるグローバリゼーションの影の部分を非常に強く訴えられていらっしゃるという、そういう印象がございました。それに対しまして成瀬参考人は、世界は変わっている、経済社会は変化している、光の部分もあるんだというような感じの、そういうお話が大きかったような気がいたします。これは私の受けとめ方でございますが。
 客観的に考えれば、グローバリゼーションというのは、いいとか悪いとかということを超えまして、好むと好まざるとにかかわらず進んでいく、引き返すことはできないんだなというのが私個人の感じでございますけれども、その中でやはり影の部分のデメリットの部分を何とかもうちょっと少なくして手当てしていけないものだろうか、こんな気持ちを私は持つわけでございます。
 日本の企業は、これまでは終身雇用慣行というのはとても人間を大事にする、城は人なりということわざを引かれまして、終身雇用慣行というのは人を大事にする、人を育てるそういう雇用慣行だったんだと。外国から批判された場合にも、むしろこの中で能力開発が行われて雇用の安定が保たれるんだからということがつい四、五年前まで言われていたと思うのですけれども、このグローバリゼーションの中で今度はデメリットばかりが強調されているような気がいたしますけれども、まずその点について成瀬参考人にお話を伺いたいと思います。
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成瀬健生#24
○参考人(成瀬健生君) 先生おっしゃるとおりでございまして、グローバリゼーションはまさにもう避けられない事態だと思います。もちろん、日本として日本発の情報を世界に発信していくことは大変重要だと思います。しかし、まだ日本はそれほど強大でないところもございます。アメリカあり、でき上がったEUがあり、大変大きな力があるわけでございまして、日本は多少違った労使慣行、人間関係などを持ちつつ、日本としての情報を発信していくことが必要ではないかということは常々感ずるところでございますが、当然限界がございます。そうした中で、グローバリゼーションをある意味で受け入れつつ、それに適応して、その中でさらに日本的なよさというふうなものを残してどういうふうな経営ができるか、どういうふうな労使関係ができるかということを模索していかなければならないのではないかと思います。
 当然、雇用につきましても従来よりは流動化をしてくると思います。働く方の価値観の多様化もございまして、終身雇用で働きたいという人の数がどんどん新入社員の調査でも減ってきているということになっておりまして、ことしの私どもの調査では、新入社員訓練の中でアンケートをとりましたら、二割を切るというふうなところまで、この会社に一生いるという方の数が減ってくる、こんなことも出ております。
 そうした中で一体何を考えるかと、大変難しい御質問なんでございますけれども、企業といたしましては、やはり自分の会社の従業員にどういう力をつけてもらうかということを本気で考えなければならないだろうと思います。国際的にもいわゆるエンプロイアビリティーというふうなことが言われておりまして、我が社でも当然だけれども、場合によってはよその企業でも雇用される能力というふうなことかと理解しておるわけでございまして、俗称といいますか、砕いた言葉で言えばつぶしのきく人間というふうなことだなんて言われておるわけでございますが、こうした新しい時代に対応しつつ、しかしトータルで社会または産業社会に役立つ人間というふうなものをいかにつくるかということが企業の課題でございます。そうした点につきましては、さらなる努力を続けてまいりたい、こんなふうに考えております。
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川橋幸子#25
○川橋幸子君 今のお話の続きで、重ねてお伺いしたいと思うのですけれども、以前、企業はむしろ色がつかない、無色の新卒に入ってきてもらって、自分の企業の中でそれはトレーニングするんだというようなお話だったんですが、今のお話ですと、まさに個人個人が技能を磨いて、エンプロイアビリティーがある、働く能力がある、職業につく能力がある、そういうふうにトレーニングを、自己啓発してくださいよというふうに、こう変わっているように私は思います。ある種そういう変化は私も望ましいというんでしょうか、寄らば大樹の陰よりは個人が大事にされる、そのためには個人が自己啓発をするということはいいことだとは思うのです。
 ただ一方で、後で午後の質疑のときに大臣にも聞こうと思っているんですけれども、企業の雇用慣行がどうも再就職者の受け入れに対しては非常に門戸が狭い。特に年齢でもって、年齢を理由として再就職のチャンスをなかなか与えないというこの採用慣行というのは、今おっしゃったエンプロイアビリティーのある社会というものとちょっと反するのではないかというふうに思うのでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。
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成瀬健生#26
○参考人(成瀬健生君) これも大変難しい、今本当に重要な問題になっているところでございまして、お答え申し上げるのは大変難しいわけでございますけれども、確かに再雇用についてのバリアというのはかつてよりは随分少なくなってまいったと思います。特に、いわゆる第二新卒とか中途採用でもある程度の年齢以下の方につきましてはかなり流動化も起こり、問題のない企業の間を人間が動くというふうなことも起こりつつあるわけでございますが、おっしゃるように高齢者につきましてはかなり難しい面がございます。
 これは二つの点がございまして、一つは、従来、今ちょうど高齢者のような方々というのは、いわゆる今のエンプロイアビリティーといいますか、どこに行っても私はこれができますというふうな能力を企業として育てる、どうも時代が違ったものですからその点が不十分であるという面がどうしてもございます。何ができますかと言われて、そうですねと考えてしまうというふうな高齢者も少なくないということも言われるわけでございます。もちろん再訓練の機会はそれなりにつくらなきゃいけないという面はあるわけでございますが。もう一つは、今までのと申しますか、今でもそうでございますが、賃金体系がどうしても年功的なものがとれずにおりまして、年齢によって賃金水準が決まってくるということになってまいりますと、高齢者は賃金が比較的高い。企業としては雇用しにくい。この二つの、能力という面とそれから今まで成立していた賃金制度という面の二つが問題になっているかと思います。
 徐々にこの点は変わってきていることは事実でございますが、少し時間がかかるかな、その中で、多様でございますので、個人の自覚、それから企業が本当にその人の能力を買うというふうなことで、それなりのきちんとした賃金を払うということも含め、いろいろ検討をしつつ、また相談をしつつ、話し合いをしつつということで徐々に進む以外にないのかな、こんなふうに考えております。
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川橋幸子#27
○川橋幸子君 成瀬参考人に、日本の産業界代表に私が注文するという、こういう図式の発言というのは余りよくないのかもわかりませんけれども、その昔、こんな女にだれがしたという流行歌、古い歌がございます。今の経済界ないしは労働界を見ていますと、こんな労働者にだれがしたと言いたくもなるような部分があるような気がいたしますので、やはりそこは経営責任という点でも御努力賜りたいと、要望でございます。
 次は、奥川参考人にお伺いしたいと思います。
 奥川参考人も、グローバリゼーションの中でリストラが避けられないと。リストラって、真の意味のリストラでございますよ。単に人減らしのためのことをリストラとは申しませんで、本当の意味は、企業が生産性の高い部分に特化していくという意味でのリストラクチャリングでございますけれども、それが避けられないということをおっしゃりながらも、二点お挙げになられたわけですね。
 リストラというのは整理解雇を伴うのが普通なんだ、リストラというのは労働条件の不利益変更を伴っているのが普通なんだと。これが現実なんで、現実をよく国会議員も見てほしいという、こういうお話だったと思うんですけれども、何か非常に企業に対する不信感が強いような気がいたしますのでございますけれども、そのあたり、いかがなものでしょうか。理屈の上でそうじゃない企業もいるということはあるんじゃないかとは思うんですけれども、その辺の受けとめ方、お持ちになる印象を伺わせてください。
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奥川貴弥#28
○参考人(奥川貴弥君) 実は私も労働事件を多く手がけてきております。不信感というよりもむしろ事実として、企業の再編成というのは、人員をそのままにして再編成なんというのは僕は今まで恐らくなかったんではないか。これは必ず人員の整理は伴っていますし、それから労働条件の切り下げの問題でも、幾つかの会社が一緒になって、いい方の労働条件に合わせたという例も実は僕はほとんど知らないわけでして、不信感というよりも、事実からして、私の経験からして、恐らく企業の再編成に伴ってリストラも行われるだろうし、労働条件の切り下げも行われるだろうというふうに申し上げたわけです。
 それから、不信感という点から見ますと、それはこういう問題がありますね。一つは、例えば会社との、こういう企業の再編成の場合には労働組合としては労働者の処遇がどういうふうになるのかということは当然団体交渉で話し合われなければならないわけですが、そういう場合に会社が情報を公開しないという大問題があるわけです。つまり、例えば団体交渉で決算書等を当然示して説明しないといけないときに決算書を出さない。したがって、会社の財務内容だとか業務内容、業務内容というか営業状態というのは的確につかめないような面があります。そういう点から見れば、確かに経営者は、経営者代表の方がいらして申しわけないんですが、必ずしも労働者に公正な立場で常に説得したり説明をしているというふうには私は思っていません。
 だから、せっかくの御質問があったのであれなんですが、不信感を僕が持っているようにもし聞こえるとすれば、ぜひそれをなくすような方策、例えば簡単に言えば企業の持っている情報の公開みたいなものをきちんとするような法律だって考えられるし、そうやってやっぱり労働者に不信感を持たせないような法制度だとか企業のあり方というものを再検討しなければいけないというふうに僕は思います。
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川橋幸子#29
○川橋幸子君 不信感を持っているように感じられるなんて申し上げたのは実は私自身の感情移入がございまして、私自身もどちらかというと今のグローバリゼーションの中で日本の企業の対応というのはどうも御都合主義に過ぎるところがあるのではないかと。ちょっと関係者の方がいたら恐縮ですけれども、私自身も思っているということでございます。
 特に今回、奥川参考人には、衆議院の段階では共同修正ということでおろしましたけれども、民主党案を評価いただいたことをありがたいと思っております。
 それで、リストラを理由とする整理解雇、これを禁止する、あるいはリストラを理由とする労働条件の不利益変更、これは許されないんだと。判例理論上がそうなんだからということで法律に盛られなかったわけですが、私どもの主張は、逆に判例の中で確立されているものなら法律に明記していいではないか、どうしてそれができないんだろうかという話だったのでございます。
 先ほど、小谷野参考人の方からでしたでしょうか、あるいは坂本参考人でいらしたでしょうか、非常に冷たい法理論論争でもって今回の法律が練り上げられているという、そんな印象を伺ったわけでございますけれども、法理論でもここを何か論破するいい理屈というのがありましたら教えていただきたい、奥川参考人に伺いたいと思います。
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