不破哲三の発言 (本会議)

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○不破哲三君 私は、日本共産党を代表し、最近の幾つかの問題に絞って森首相に質問いたします。
 まず、久世金融再生委員長の辞任の問題です。
 これは、辞任を承認しただけで済むことではありません。今回疑惑として問題になった諸点は、首相が事前に知っていたと聞きます。それなら、三菱信託銀行の利益供与の問題一つをとっても、特定の銀行と多年にわたって疑惑ある関係を持っていた人物をあえて金融問題の責任者の位置に据えた首相の任命責任は特別に重大であります。今までいろいろ弁明がありましたが、他の人がどう説明したかではなく、首相自身がどう考えて行動したかを経過的に説明願いたいと思います。
 第一に、首相は、任命の時点で疑惑にかかわる事実を具体的にどこまで知っていたかという点であります。第二に、その事実を知りながら、この人物がこの地位に適切だとなぜ判断したのかという問題であります。第三に、昨日は一転して久世氏の辞任を承認したわけだが、任命権者として、久世氏を任命したことの誤りを認めるのかという点であります。最後に、こういう人物をこの地位に据えたことについて、首相自身の任命責任を今どう考えているのか、またその責任をどう果たすつもりなのか、伺いたいと思います。(拍手)
 次に、そごうの問題であります。
 そごうの債権の買い取りを金融再生委員会が決定したとき、国民の間には怒りの声が沸き起こりました。その声の本質は、民間の一百貨店の経営の不始末に対し国民の税金を九百七十億円もつぎ込むことへの疑問であり、怒りでありました。
 当時、ある大学教授が、新聞に、「異議あり! このままでは資本主義がおかしくなる」という論説を書き、資本主義社会では絶対許されないことだとして、次のように述べていました。「阪神大震災の時に、多くのマンションが崩壊したが、住宅ローンを組んでようやくマイホームを持った人に対しても、借金の棒引きはされなかった。天災で住む場所を失った人たちのローンですら免除されなかったのに、でたらめな経営で悪化した会社に対する債権が棒引きされるというのは、どうみてもおかしい。正直者がばかを見る世の中になってしまったという印象です。」
 私は、この文章は、国民の怒りと疑問をそのまま代弁した批判だったと思います。
 政府は、国民の怒りの声を恐れて、その後にわかに方針を変更、そごうの経営者を口説いて、民事再生法による処理に方式を切りかえましたが、一企業の失敗に国民の税金をつぎ込むということには何の変わりもありません。しかも、つぎ込まれる税金の額は、今度の方式だともっとふえて、千二百億円を超えることは確実だと見られています。
 私がまず首相に聞きたいのは、この事態に対する根本的な考え方であります。民間企業である一百貨店が、自分自身の放漫な経営によって失敗し、破綻したというのに、その穴埋めに国民の税金をつぎ込むという大義名分は一体どこにあるのかという問題であります。
 そごうが融資を受けた銀行の一つに長期信用銀行があり、その銀行が一時国有化されたからだといっても、それは国民を納得させる理由にはなり得ません。この間に、中小企業の倒産は、昨年を例にとると、一年間で一万五千百三十五件、負債の総額は八兆六百四十億円にも上っています。その中で、そごうの破綻だけを特別扱いして、ここに国民の税金をつぎ込むなど、許されるはずがないではありませんか。
 次に、今回の直接の税金投入への引き金となった瑕疵担保特約について聞きたいと思います。
 金融再生委員会は、アメリカの投資グループに旧長銀を売り渡す際、相手側に都合のよい条件をいろいろとつけた上、新生銀行が引き継いだ債権の中に不良債権化する部分が出てきたら預金保険機構が買い戻す、つまり、国民の税金で買い戻すという特約を結びました。これが瑕疵担保特約であります。この特約があるから、新生銀行が融資関係を引き継いだ企業の経営が悪化すれば、それが百貨店であろうが他の分野の企業であろうが、国民の税金のつぎ込みに道が開かれることになります。
 この瑕疵担保特約は、私は、言語道断の契約だと思います。国民の税金をこんな横暴な勝手なやり方で使うことは、政府にゆだねられた権限を踏み越えたものであります。
 そこで聞きたい。あなた方は、一体、どういう根拠、どういう権限に基づいてこのような特約を結んだのですか。そして、この特約を結んだことについて、政府としての正当な行為だったと今でも考えているのですか。
 瑕疵担保特約が適用されるのはそごうだけではありません。旧長銀から融資関係を引き継いだ企業が経営悪化という事態を迎えるならば、国民の税金で債権を買い戻すことが再び問題になります。瑕疵担保特約の対象になる企業、つまり、新生銀行が旧長銀から融資関係を引き継いだ企業がどの範囲に上るのか、企業数や債権の総額など、その全貌を国会と国民に公表することを政府に求めたいのであります。(拍手)
 さらに、日本債券信用銀行の売り渡しについても、同じ内容の瑕疵担保特約が問題になっています。その話はどこまで進んでいるのか、今でも、この特約を結んだまま譲渡するつもりなのか、政府の見解を伺いたい。
 さらに、今起こっているのは、いわゆるモラルハザード、経済秩序の文字どおりの道義的崩壊の問題であります。どんな経済的失敗をしても最後には国民の税金で穴埋めがされる、こんなことの横行を許したら信頼ある経済社会など成り立ちませんが、そごう問題は、この風潮の危険な広がりを示しています。瑕疵担保特約を極めて安易に結んだというのも、どうせ最後は税金という許しがたい前提があったからではありませんか。
 このような風潮が横行し始めた根本が一昨年からの銀行支援策にあることを、今正面から見る必要があります。
 当時、焦点になったのは、金融業界の危機をだれの負担で解決するかという問題でした。私たち日本共産党は、諸外国の事例や戦前の日本の金融恐慌の事例も示しながら、銀行の不始末は銀行業界全体の負担で解決するというルールを守るべきことを最後まで主張しました。しかし、自民党も他の野党も、国民の税金を投入する仕組みをつくることを主張し、結局その線で金融再生法その他の立法が行われ、破綻銀行を一時国有化して国が丸抱えにする仕掛けや、銀行支援のための六十兆円、これは後に七十兆円に拡大しましたが、こういう枠組みがつくられました。
 このとき大義名分とされたのは、預金者保護であり金融システムの安定でした。しかし、銀行の不始末の穴埋めに国民の税金を使うという仕組みが一たんつくられたら、それは預金者保護などの言い分を超えてどこまでも広がり、ついにはそごうのような、破綻した銀行から金を借りている民間企業の不始末にも税金を平気でつぎ込むようになってきたのであります。今、そこに歯どめをかけることを真剣に考えるべきではありませんか。
 最後は国民の税金でという危険な風潮の根を絶つためには、今こそ問題の原点に立ち返り、公的資金の投入の仕掛けを凍結し、結果として新たな税金の投入となるようなことは一切行わないこと、既に投入した公的資金についても、最終的には銀行業界全体が負担すること、すなわち、銀行の不始末は銀行業界の負担で解決するという本来のルールに立ち戻る方向で金融秩序の立て直しを図るべきときだと考えます。政府にこのことの検討を求めるとともに、この機会に、銀行業界に対しても、経済社会の道義的な崩壊を食いとめるための真剣な検討を求めたいのであります。
 次は、中尾元建設大臣の収賄、汚職事件の問題です。
 この事件は一九九六年に起きました。金丸元副首相のゼネコン収賄疑惑が発覚したのが一九九三年でした。政府・自民党がその反省をしきりに強調しているさなかに、問題の建設業界との関係でこの収賄事件が起きたのであります。しかも、わいろの受け渡しに建設省の大臣室まで使われていること、若築建設との宴席には建設省の高級官僚や自民党のいわゆる大物政治家たちがしばしば同席していることなど、これまでに報じられてきただけでも、この汚職疑惑は極めて深刻で重大な内容を持っています。現在、政府の責任者であると同時に自民党の総裁の任にある者として、どういう考えでこの事件に臨んでいるかを森首相に伺いたいのであります。
 その上で、今後の対応の問題に進みます。
 まず、事件は検察の究明の対象に今なっていますが、検察が追及する刑事的犯罪の問題と政治的、道義的責任の問題とは別個の問題であります。検察が入っているからということで、政治的な全容の解明をなおざりにしがちな空気が一部にありますが、これでは政治の責任を果たせません。一体ここで何が起こったのか、建設省及び自民党の他の政治家のかかわり合いを含め、事件の全容を明らかにし、政治的、道義的な責任を明確にする政府及び自民党の責任は大きいと言わなければなりません。決意を持ってまず真相の解明に当たることを首相に求めるものであります。
 次に、こういう収賄、汚職事件を防止するためにも、野党が一致して提案しているあっせん利得罪の処罰法案の成立が急務であります。これは複雑な法律ではありません。政府・与党に収賄行為を根絶する意思があるならば、すぐにもこの国会で成立させることのできる法律であります。政府・与党が今、問題先送りの態度をとっているのは、残念のきわみであります。首相としての見解を伺いたいのであります。
 また、あっせん利得罪の制定は緊急の問題でありますが、これは、汚職、腐敗の全体からいえば、部分的な対応策です。汚職事件が起きるたびに政府は反省の弁を述べるが、汚職、腐敗は一掃されない、こういう状態が何十年も繰り返されてきました。汚職、腐敗の根絶のためには、やはりその大もととなっている企業・団体の政治献金そのものの禁止が必要であり、そこに今こそ足を踏み出すべきではありませんか。
 我が党は、この国会に引き続き企業・団体献金禁止法案を提出しましたが、この問題についての首相の見解を求めるものであります。
 さらに、公共事業をめぐる汚い裏取引などをなくすためには、汚職防止の立法と同時に、公共事業の制度そのものの改革が何よりも重要であります。
 まず、どこの事業に予算をつけるかのいわゆる箇所づけや、建設業者の選定を初め、公共事業予算の執行過程をガラス張りの公開されたものにし、政治家の不当な介入の余地のない仕組みを確立することであります。
 より根本的な問題は、事業の内容の問題です。日本の大型公共事業には、第一、事業の目的が定かでない、第二、初めから採算が度外視されている、第三、環境破壊の危険があるなど、最初から重大な欠陥が指摘されながら、毎年予算をつぎ込み続けているという欠陥事業が少なくありません。
 この点で、ヨーロッパやアメリカでは既に当たり前になっている住民、市民も参加する事業評価制度、これが日本にないということは重大な欠陥であります。早急にヨーロッパ、アメリカ並みの事業評価制度を確立し、今後着手する公共事業はもちろん現在進行中の事業についても、一定規模以上、例えば規模十億円以上の大型事業については必ずこの制度に基づく総点検を早急に行うことを提案したいのであります。
 この事業評価制度では、第一に、事業の必要性、採算性がどうか、環境への影響がどうか、この三つの角度から十分な吟味を行うこと、第二に、事業が始まってからではなく、計画、事前、事後の諸段階にわたる評価、特に計画段階での評価、点検を重視すること、第三に、住民、市民の参加を制度的に保障すること、この三点が特に重要であります。
 この改革は、公共事業の重点を国民生活優先の生活型の事業に大きく移していく上でも、むだな大型開発をなくして財政再建に道を開いていく上でも、建設的な役割を果たすはずであります。首相の見解を伺いたいと思います。
 次に、消費税の問題です。
 私は、四月十一日、あなたが首相に就任して直後の代表質問で、財政再建の問題に関連して、「国民全体、特に低所得者に大きな被害を与える消費税増税を視野に入れているのかどうか」について、首相の考えをただしました。そのときのあなたの答弁は、財政再建の中身は現時点で具体的に申し上げる状況にない、消費税のことは今後国民的な議論によって検討さるべき課題と考えると言うにとどまりました。
 それから既に三カ月であります。財政再建の問題は、これ以上の先延ばしを許さないところにまで来ています。税制の見直しについては、政府税調が先日、中期答申を発表しました。そこには、時期を決めてはいないものの、消費税増税が今後具体化すべき大きな方向として打ち出されており、国民の間に大きな不安を引き起こしています。
 それは、消費税が、国民の消費を直撃する生活課税であると同時に、生計費非課税の原則を無視して、低所得者からも高額所得者からも同じ税率で税を取り立てる、いわば弱い者いじめの税制だからであります。しかも、中期答申もある程度認めざるを得なくなったように、今日本の社会では、所得の低い者と高い者との間の格差の広がりが大きな問題になりつつあります。こういうときに消費税の増税が企てられたら、それが国民生活に深刻な被害を与えることは明瞭であります。
 今回の中期答申には税率引き上げの目標は明記していませんが、加藤会長は、まず一〇%への引き上げを目標とする旨、これまでに何度となく発言してきました。これを今年度の数字に当てはめてみると、消費税の総額は地方税分を合わせて二十五兆円となり、所得税の十八兆七千億円、法人税の九兆九千億円を大きく上回ることになります。これは弱い者いじめの税金が我が国の税制の最大の柱になることであって、一般庶民、特に弱い立場の低所得者にとっては我慢のできない事態になることは明瞭であります。
 首相は、所信表明でも、税制を含む財政構造改革に触れました。消費税増税をその構造改革の視野に入れているのかどうか、改めて伺いたいのであります。
 また、我が党は、国民生活を守る見地から、消費税という税制には反対の立場をとっており、今後、財政再建の進行の中で、その税率を引き下げ、さらに言えば、廃止に向かっていくことを段階的に進むよう提案してきました。
 今消費税の問題で緊急に必要なことは、多くの国民の切実な要求となっている食料品非課税の実施を決断することであります。これは、個人消費へのてこ入れという景気対策上の要望とも合致をするものであります。
 首相に、当面の緊急策として、消費税の食料非課税の実施への決断を求めたいのであります。
 次に、沖縄サミットの問題であります。
 私は、七月十八日の党首会談で、沖縄サミットについて、米軍基地の縮小、返還への転機となるような取り組みを首相に求めました。米軍基地が世界でも例がない形で集中し、県民が日々その被害にさらされている沖縄をわざわざサミットの会場に選んだ以上、沖縄県民もそこで基地問題がどう扱われるかをかたずをのんで見守ったことと思います。サミットの前の日、二万七千人の人間の鎖が広大な嘉手納基地を包囲した情景は、沖縄県民の心をあらわしたものとして、世界のマスコミが大きく注目しました。
 しかし、報道される限り、また国会でのあなたの報告を聞く限り、沖縄の基地問題への本気の取り組みは全く欠けていたと言わざるを得ません。聞こえてきたのは、沖縄県民に向かって米軍基地の重要性を強調するクリントン大統領の言葉だけでした。
 あなたは、サミットが平和のメッセージの発信の場になったと報告しました。それなら、伺いたい。サミットは基地の重圧に悩む沖縄県民にどのようなメッセージを発信したのか。二十世紀の最後の年に沖縄でサミットを開き、沖縄に基地を置いている国の大統領を迎える以上、二十一世紀には基地問題を解決するこういう道筋が開かれる、その第一歩として政府はこれこれの問題に取り組むなど、沖縄の悲願にこたえるメッセージの発信の場となるよう努力を尽くすのが日本政府の何よりの責務だったのではありませんか。
 さらに、沖縄で今論議の熱い焦点となっているのは、名護市での新たな基地建設の問題であります。私たちは、移転という名目であろうと、沖縄に新たな米軍基地を建設すること、特に最新鋭の前線基地を建設することには一貫して反対してきました。あなた方は基地建設を推進する態度をとってきましたが、自民党が推薦した県知事が、一昨年の選挙で県民に公約したのは、十五年たったら返還するという条件で基地を受け入れる、こういうことでした。この公約は、当然、知事をその条件で推薦したあなた方自身の公約であります。
 政府には、この公約を実現するために、アメリカ政府と正面から交渉する義務があります。残念ながら、これまで日米間では交渉らしい交渉が行われず、そのことに沖縄現地からは大きな批判が上がってきました。そのさなかでのサミットであります。首相はクリントン大統領との間で、この問題でどういう交渉をしたのか、はっきり伺いたい。
 大事なことは、使用期限十五年ということは、基地建設を受け入れるかどうかの前提にかかわる問題であって、建設した後で交渉すればよいという問題ではないということです。党首会談でも述べましたが、この条件が成立しないまま基地建設に着手することがあってはなりません。十五年期限を受け入れないというアメリカ側の態度が既に明らかになっている以上、基地建設そのものを直ちに放棄するのが当然ではありませんか。見解を伺います。
 なお、サミットについては、そこでのお金の使い方について国際的に大きな批判が上がっていることに、政府は耳を傾けるべきであります。沖縄サミットにかかった総費用は、総理府の集計によると八百十四億円に上るといいます。イギリスのマスコミでは、ドイツやイギリスで開かれた最近のサミット、例えば昨年のケルン・サミットでは費用約七億円、一昨年のバーミンガム・サミットでは費用約十一億円、これらと比較しながら、その八十倍から百倍にも当たる、ぜいたくで無神経な運営だったと一斉に批判の声を上げています。中には、この八百億円があれば貧困国の千二百万人の子供を学校に入れることができた、こういう指摘もあります。
 実際、サミットで議題になった世界の貧困国の問題だけでなく、我が日本の不況に苦しむ国民の生活の実態に照らしても、いささかの浪費も許されないはずの国の財政の実態に照らしても、今回のサミットの開き方は、日本の政府の見識を問われるものになったと言わなければなりません。サミットの主宰者である森首相の見解を伺いたいのであります。
 いよいよ二十一世紀は目前に迫りました。世紀が転換する節目とは、過去の慣行に惰性的にとらわれることなく、政治が本来あるべき姿を目指して、大胆な改革に挑戦するところにあります。私は、今幾つかの問題を取り上げましたが、国民が主人公という結党以来の立場を踏まえて、日本の政治と経済の改革のために引き続き努力する日本共産党の決意を述べて、質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

発言情報

speech_id: 114905254X00220000731_026

発言者: 不破哲三

speaker_id: 31749

日付: 2000-07-31

院: 衆議院

会議名: 本会議