保岡興治の発言 (法務委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○国務大臣(保岡興治君) それでは、当面する法務行政の重要施策について御説明いたします。
 委員長を初め委員の皆様の御指導、御支援をいただきたいと存じます。
 改めて申すまでもなく、法務行政の基本的使命は法秩序の維持と国民の権利の保全を通して国民生活の安定向上を図ることであり、この使命を果たすことは国民が安全にかつ安心して暮らせる平穏な社会を築くために欠くことができないところであります。今、社会は二十一世紀を間近にし、大きな変革期にありますが、この時代に法務行政が国民のニーズに的確にこたえ、その使命をよりよく果たすためには、改めて国民の視点に立って必要な改革を進めていくことが求められています。
 私は、こうした認識のもとに、急激に変化していく時代の要請を踏まえつつ、国民の期待にこたえられる法務行政の実現に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 さて、当面の重要施策について申し述べますと、第一は司法制度改革であります。
 司法は、近代国家の基本である法の支配を現実のものとする役割を担う国民生活にとって極めて重要な基盤となるべきものでありますが、社会の急激な変化、とりわけ事後監視・救済型への転換の中で司法の役割はより一層重要なものになると考えられ、来るべき新たな時代に向けて司法機能の充実強化を図っていくことが不可欠となっております。
 司法制度改革は、本内閣が課題として掲げる日本新生に向けての取り組みの大きな柱であり、私としては、司法制度を所管する法務省の責任者として、内閣に設置された司法制度改革審議会の審議に最大限協力をしてまいるとともに、時代の変化に即応し、国民のニーズにこたえられる司法制度を速やかに実現できるよう、司法の機能の質的、量的な拡充に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 第二は、民事、刑事の基本法の見直しについてであります。
 まず、民事法の整備につきましては、現下の最大の課題である経済構造改革を支える一環として倒産法制の全面的な見直しがあります。その第一として、昨年、民事再生法が成立し、新たな再建型手続が構築されましたが、昨今の厳しい経済情勢にかんがみ、さらにサラリーマンや小規模事業主などの個人債務者についての再生手続及び経済活動の国際化に対応するための国際倒産法制を整備する必要があるため、次期国会にはこれらの関係法案を提出したいと考えております。
 他方、刑事法の分野においては、特に少年による凶悪犯罪が社会の耳目を集めている状況であり、極めて憂慮すべき事態であります。少年非行対策につきましては、社会を挙げて取り組んでいく必要がある重要な課題であると認識しており、衆議院法務委員会における少年非行対策に関する決議を初めとする幅広い御論議や御意見を踏まえつつ、そのあり方について早急に検討してまいりたいと考えております。
 第三は、治安の確保及び法秩序の維持についてであります。
 最近における我が国の犯罪情勢を見ますと、刑法犯の認知件数が増加傾向にあり、とりわけ組織的犯罪は平穏な市民生活に対して看過しがたい脅威を及ぼしていることが見逃せません。
 このような情勢を踏まえ、いわゆる組織的犯罪対策三法等の適正かつ効果的な運用を図るとともに、さきの九州・沖縄サミットのコミュニケでも確認されたように、国連国際組織犯罪条約等の本年中の採択を目指して今後ともG8各国と協力するなど、犯罪に対する国際社会の取り組みに引き続き貢献し、我が国の治安を脅かす各種犯罪に対して引き続き厳正に対処し、法秩序の維持に万全を期してまいりたいと考えております。
 また、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づき、三年間の観察処分に付されているオウム真理教に対しましては、公安調査庁において、本年二月以降、教団施設への立入検査の実施等を行っておりますが、同教団は依然として麻原彰晃こと松本智津夫を絶対とする教義を維持しつつ活動を活発化させており、今後もその活動実態を明らかにすべく鋭意調査分析を行ってまいりたいと考えております。
 第四は、人権擁護行政の今後のあり方についてであります。
 これにつきましては、人権擁護推進審議会において平成九年以来熱心な審議がされておりますが、昨年七月にいただいた人権啓発を総合的かつ効果的に推進するための諸施策についての提言を最大限尊重し、人権啓発に関する施策の一層の充実を図り、国民に人権尊重の思想が広く浸透していくよう努めてまいるとともに、今後、同審議会において議論が行われている人権が侵害された場合における被害者救済制度のあり方等についての調査審議の結果も踏まえ、人権の世紀と言われる二十一世紀にふさわしい被害者救済制度の確立のための具体的施策を策定してまいりたいと考えております。
 第五は、出入国管理行政の充実強化についてであります。
 出入国管理行政が果たすべき役割は国際化の著しい進展に伴いますます大きくなっておりますが、私は、この三月に策定された第二次出入国管理基本計画を踏まえ、我が国社会が必要とする外国人労働者の円滑な受け入れ、研修・技能実習制度の整備拡充、学術・文化・青少年交流の推進などを行ってまいりたいと考えております。
 他方、我が国には約二十五万人の不法残留者に加え、集団密航等により潜在する不法入国者も存在し、そのほとんどが不法就労活動に従事しているものと推定されるほか、これらの者の一部によって引き起こされる犯罪も増加するなど、我が国社会にさまざまな悪影響が及んでいることから、今後とも入管体制の強化は不可欠であり、これら不法滞在外国人については、関係省庁と緊密な連携により積極的な取り締まりを推進し、その着実な減少を図っていく所存であります。
 このほか、犯罪者の矯正処遇における少年を含めた個々の被収容者の特性、犯罪傾向に応じた適切な処遇や計画的かつ効果的な矯正教育の推進、外国人受刑者の円滑な社会復帰等を目的とする受刑者移送制度の実施に必要な国内法整備のための準備作業、保護司活動の充実強化と更生保護施設の基盤整備などによる保護観察の一層の充実強化、コンピューターネットワークにより登記情報を提供する制度及び商業登記に基づく電子認証制度の運用などのIT社会の基盤整備を図るための施策の推進、国等が関与する訴訟の迅速化の実現及び情報公開法の施行に伴う関係訴訟への対応を含めた訟務事務の強化、民事法律扶助法の制定を受けての法律扶助制度の一層の整備の検討などが当面の大きな課題であります。
 このように、法務行政には取り組むべき課題が山積しておりますが、我が国の社会の変革、とりわけ規制緩和を含めた行政改革が進む中にあって、司法を代表とする社会的なセーフティーネットの重要性を忘れてはならないことを最後に強調したいのであります。安全で公正な法秩序を維持するための検察を初めとし、この分野で多くを担う法務行政においては、情報技術などによる事務の効率化を行うべきことは当然ではありますが、最後によるべきところは人であり、各種業務における人的体制の充実にはとりわけ力を入れてまいりたいと考えております。
 この課題の多い時期に当たり、委員長を初め委員の皆様の一層の御理解と御指導を賜りまして、法務大臣としての重責を果たしていくことが私の使命と考えております。上田総括政務次官とともに全力を尽くす所存でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

発言情報

speech_id: 114915206X00120000809_010

発言者: 保岡興治

speaker_id: 16198

日付: 2000-08-09

院: 参議院

会議名: 法務委員会