喜多洋三の発言 (厚生委員会)
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○喜多参考人 大阪府の守口市長の喜多でございます。
衆議院厚生委員会の皆さんにおかれましては、医療、福祉などの分野において日ごろから御尽力いただき、心から敬意を表する次第でございます。また、本日は、市町村の国民健康保険事業を預かる立場から意見を申し述べる機会をいただき、深く感謝をいたしております。
さて、このたび、健康保険法等の改正案を御審議いただいておりますが、内容については必ずしもすべてに納得いたしているわけではありません。しかし、医療保険制度の抜本改革への第一歩として位置づけられる点もございますので、今回の改正に引き続き、早急に大きな第二歩を踏み出していただきたいという思いを込め、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
改正案についての意見を申し上げる前に、御承知の事項かとは思いますが、いま一度国民健康保険の厳しい状況について申し述べたいと思います。
国民皆保険の下支えをしている国民健康保険は、制度の構造上、退職後の被用者が国民健康保険に異動することに加え、近年の少子高齢化や産業構造の変化によりまして、高齢者や低所得者の割合が極めて高くなっております。この結果、組合健保や政管健保等との間に大きな負担格差が生じており、同時に、財政基盤は極めて脆弱になっております。
例えば、老人加入率を見ますと、健保組合の二・九%、政管健保の五・六%に対し、国保は二四・六%に上っています。老人以外の平均年齢におきましても国保は高く、被用者保険との間には十歳程度の開きがあります。
また、所得の面で見ますと、組合健保や政管健保では到底考えがたい所得のない世帯も、国保にあっては二割以上をも占めております。世帯の年間平均所得につきましても、組合健保の三百八十三万円に対し国保は百七十九万円と、二倍を超える大きな開きがあります。ちなみに、私ども守口市についても、所得のない世帯が二九%あり、他の市町村国保同様、極めて厳しい財政運営を強いられております。
このような構造的な問題に加え、長引く経済の低迷が大きな影を落としておりますが、従来から低所得者が多い国保にあって、失業等による無職世帯の増加や平均所得の減少の影響は最も深刻であります。例えば、守口市における一世帯当たりの総所得金額は、平成九年度から十一年度にかけて百八十万円から百五十二万円と減少しており、年率では八%の減少となっているのが現実であります。
このような状況で、国保加入者の保険料に対する負担感は限界に達して、これ以上負担を求めることが極めて困難になっておりますところへ、今年度から介護保険のいわゆる二号保険料が上乗せされることとされました。全国の市町村長は、収納率低下の財政影響も非常に懸念をしております。
さらに、老人医療費を中心とする医療費の急増が、財政運営に重くのしかかっています。高齢者の医療費は若人の五倍となっておりますが、引き続き高い伸びを示しております。これに伴い、国保が拠出する老人保健拠出金も急速に増加しており、守口市の例をとってみましても、国保で集めた保険料のうち、約五割が老健拠出金に充てられております。老健拠出金の負担にあえいでいるのは被用者保険だけではなく、国保にとっても深刻な問題となっております。
このように、市町村国保の財政状況は一段と危機的な状況になっていることは明らかでありますが、制度を支えるため、各市町村は、国保特別会計に対して多額の繰り入れをせざるを得ない状況に追い込まれております。赤字補てん等のために法定外の繰り入れを行っている市町村は、平成十年度で全体の約六割、その総額は三千六十億円に上っており、他の理由による繰り入れも合わせますと、実に七千億円に近い支援になっています。国保は既に自立性を失っていると言っても過言ではありません。もちろん、多くの市町村は収納率向上等にさまざまな努力をしているところでありますが、こうした危機的な状況は保険者の努力を超えたものとなっていることをぜひ御理解いただきたいと思います。
国保のみならず医療保険全体が置かれている厳しい現状を打開し、長期的な安定を図るには、医療保険制度の抜本改革なくしては不可能であります。市町村国保を預かる立場から申し上げれば、医療保険制度全般に切り込み、給付と負担の公平を基本とするすべての国民を対象とした医療保険制度の一本化を実現すべきであると考えており、あわせて医療提供のあり方などの大胆な改革が実現されますと、これまで申し上げたような問題も解決するものと考えます。
さて、今回の改正案について具体的な意見を申し上げたいと思います。
まず、老人保健法関連で、一点目は、老人医療費の定率一割負担についてでございます。低所得者対策や高負担対策を講じることにより、サービス利用時の負担を定率とすることは、介護保険との整合性など、一定の理念に沿った内容と考えます。この点は、これまでの高齢者医療問題の議論や介護保険制度の検討過程で合意が形成されてきていると認識をしております。ただ、医療機関の種類により負担上限の設定方法に差を設けるなど、国民にとって非常にわかりにくいものになっております。できれば制度は簡素にという思いはありますが、やむを得ないのであれば、周知についての努力、医療機関での明示などを徹底していただきたいと思います。
二点目に、薬剤の一部負担廃止についてでございますが、廃止の結論自体に異論を挟むものではございません。薬剤使用の適正化を図るという理由で導入されたものが、その目的を達したとは言えない状況で廃止されることには、大いに疑問を持っております。現行の負担方式を合理的と考えるものではありませんし、試行錯誤することも必要とは思いますが、わずか三年ほど前に実施された制度を適切な評価、保険者負担に転嫁される財源についての整理、理念的な裏づけもなく短期間で変更されるのは、今後提起される制度改正案の信頼性を失わせることになるのではないかと危惧いたしております。制度改正のあり方の面で御一考願いたいと考えております。
次に、国民健康保険法関連でございます。
一点目は、高額療養費の見直しについてでございます。
最近の所得階層の分化により、高額所得者と低所得者の格差が拡大しているようでございますが、適切な負担能力評価のもと、上位所得者への負担と低所得者への軽減という配慮は当然時宜にかなったものと言えます。今後、その基準については、家計での負担水準を検証しながら改定していくことが肝要と考えます。
二点目は、いわゆる住所地特例についてでございます。
この制度は、病院所在市町村が入院を理由とする転入者への財政負担を軽減するために設けられたものでございますが、これまで市町村側が要望してきた事項でもあるので、基本的には賛成でございます。
しかしながら、国民健康保険での適用拡大、介護保険への拡大により、今後、他市転出者へのサービスを提供していかなければならないケースが増加するものと想定されます。場合によっては、住所地市町村と国民健康保険、介護保険の保険者がいずれも異なることも生じてまいります。住民が受ける各種サービスが、種類によってはそれぞれ異なる市町村から提供されるということは、サービスを受ける側、提供する側にとり、選挙権を通じての意思表示ができないなど、不自然な状況を生むことになります。財政的な配慮は当然としても、保険者のあり方、市町村行政という面で将来的にはこの制度の再検討が必要ではないかということを指摘しておきたいと思います。
以上、制度改正につきまして意見を申し述べましたが、国民健康保険のみならず、多くの健保組合、政府管掌保険までもが制度維持が困難になる状況に直面しております。抜本改革の必要性についての声が上がり、長い期間議論されてきたにもかかわらず何度も先送りされ、医療保険に携わる者には不信感と焦りが生じています。予定されている平成十四年の改革は必ず目に見える大きな前進がなければならない、さもなくばそのツケは結局、国民に回ってくることになります。高齢化のピークを目前に控えた今、改革は待ったなしの状況である、この点をぜひ直視していただきたいと思います。残された一年余の期間、委員の皆さんを初め関係者の必死の努力をお願いいたしたいと思います。
再度申しますが、抜本改革の第一歩として、引き続く第二歩に大きな期待を込めて、今回の改正に賛意を表します。
御清聴ありがとうございました。(拍手)