速水優の発言 (財務金融委員会)
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○速水参考人 御説明申し上げます。
日本銀行は、昨年の十二月、平成十二年度上期の通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出いたしました。この機に、日本銀行の金融政策運営につきまして総括的に御説明する場をいただきましたことに、厚く御礼申し上げます。
昨年の報告書提出の後、日本経済の情勢は大きく変化をいたしまして、本年二月以降、日本銀行は、金融政策運営面で機動的、弾力的に幾つかの措置を講じてまいりました。
そこで本席では、まず私から、最近の日本経済の動向につきましてその認識と、金融政策運営の考え方につきまして申し述べさせていただきたいと思います。
昨年中の日本経済を振り返りますと、景気は企業部門を中心に持ち直しの動きが次第に明確化してきて、生産、収益、設備投資、これらは増加を続けるなど、緩やかな回復過程をたどっておりました。しかしながら、その後の経済の足取りは、順調というわけにはまいりませんでした。
その背景としましては、まず、米国経済が、昨年半ばごろまでの五%前後といった高い成長から、昨年秋以降は、大方の予想を上回るテンポで急激に減速、スピードダウンしたことが挙げられます。さらに、米国経済との結びつきの強い韓国、台湾など一部の東アジア諸国でも、景気のスローダウンが明確になってまいりました。
こうした海外経済の急激な減速を受けまして、日本経済も、昨年末以降、景気回復のテンポが鈍化いたしまして、このところ足踏み状態になっていると判断されます。先行きにつきましても、当面は停滞色の強い展開が続く可能性が高いと考えられます。
この間、物価も弱含みを続けておりまして、ただいま申し述べたような実体経済の動きを踏まえますと、今後、需要の弱さを反映した物価低下圧力が強まる懸念があると考えられます。
また、金融・資本市場の動きを見ますと、IT関連を中心とする世界的な株価調整の動きに加えまして、日本経済の先行きに対する不透明感の強まりもあって、我が国の株価も、昨年秋以降、下落傾向が目立ってまいりました。為替市場や債券市場でも、円安や長期金利の低下といった動きが進みました。
こうした市場経済の動向には、ただいま申しましたように、海外経済の減速やこれを受けた国内経済情勢の変化に加えて、不良債権問題の解決を初めとする日本経済の構造改革のおくれに対する内外の懸念も影響しているように思われます。
このような経済情勢の変化や金融市場の動向を踏まえまして、日本銀行では、本年二月以降、金融政策面で幾つかの措置を講じてまいりました。
まず、二月九日の金融政策決定会合では、公定歩合により受動的に貸し出しを行っていく、いわゆるロンバート型貸出制度の新設など、幾つかの流動性供給方法の改善策を講じました。その上で、新たにこの貸し出しの適用金利となる公定歩合について、〇・一五%ポイントの引き下げを実施いたしました。
次いで、二月二十八日の決定会合におきましては、生産の減少といった経済情勢の変化を踏まえまして、コールレートの誘導水準及び公定歩合をそれぞれ〇・一%ポイント引き下げるという金融緩和措置を決定いたしました。
さらに、先週三月十九日の決定会合におきましては、日本銀行は、通常では行われないような思い切った金融緩和に踏み切ることを決定いたしました。この措置は、日本銀行として、物価が継続的に下落することを防止し、持続的な経済成長のための基盤を整備するという観点から、断固たる決意をもって実施に踏み切った次第でございます。
金融緩和措置の具体的な内容を説明しますと、まず、金融市場調節の主たる操作目標を、これまでの翌日物コールレートという金利から、日本銀行当座預金残高という資金の量に変更いたしました。
同時に、この新しい金融調節方式を、消費者物価の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで続けていくということを決定いたしました。これは、こうした思い切った政策を継続する条件について明確なコミットメントを行うことを通じて、より長目の金利に働きかけるとともに、日本銀行として、物価の継続的な上昇と同様、継続的な下落も許容しないという強い決意を示すものであります。
こうした新しい金融調節方式のもとで、それまで四兆円前後でありました日本銀行当座預金残高を、当面、五兆円程度に増額することにいたしました。この結果、翌日物のコールレートは、通常はゼロ%近辺で推移するものと考えられます。実際、その後のコールレートの動きもこうした推移をたどりつつあります。
なお、資金供給のためのオペレーションに未達、いわゆる札割れといったようなことが多発するケースなども、資金を円滑に供給する上で必要とされる場合には、現在月四千億円のペースで行っております長期国債の買い入れ、これを増額することもあわせて決定いたしました。ただし、言うまでもありませんが、これは、国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではございません。今回、こうした趣旨を明らかにするため、日本銀行が保有する長期国債の残高は日本銀行券の発行残高を上限とするという明確な歯どめを設けた次第でございます。
以上、今回の思い切った金融緩和措置の内容を説明いたしましたが、こうした措置がその効果を十分に発揮し、日本経済の持続的な成長軌道への復帰が実現されるためには、不良債権問題の解決を初め、金融システム面や経済、産業の面での構造改革の進展が不可欠の条件であると考えられます。
実際、過去十年間、日本経済は、景気循環という観点から見て、何度か回復の動きが見られましたが、結局、力強い回復を迎えることなく、景気後退に直面するという事態を繰り返してまいりました。今回、景気が再び足踏み状態となっておりますのは、先ほど申しましたとおり、短期的には、米国を中心とする海外経済の予想以上の急激な減速が主因と見られます。しかし、より根本的な問題は、さまざまな構造的課題が依然未解決のまま残っているということにあると考えられます。
もとより、構造改革は痛みを伴うプロセスでありますが、こうした痛みを乗り越えて改革を進めない限り、日本経済の持続的な成長を確保していくことは期待しがたいと思う次第でございます。
日本銀行としては、今後とも適切な金融政策運営に努めてまいる所存でございますが、同時に、構造改革に向けた各方面における抜本的な取り組みが速やかに進展することを強く期待しておる次第でございます。
御清聴ありがとうございました。