橋本敦の発言 (憲法調査会)

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○橋本敦君 日本共産党の橋本敦でございます。
 アメリカ調査団の皆さん、大変御苦労さまでございました。
 調査団の報告と本調査会の今後の調査に関連をして発言させていただきます。
 今回のアメリカ調査団の報告や日程を見ますと、アメリカ憲法と我が憲法との比較、特に人権保障問題が重要な課題になったのではないかと思います。
 まず、基本的人権の問題では、アメリカ憲法は修正条項で表現の自由などを明記していますが、日本国憲法のように憲法そのものによって基本的人権を具体的に明記しておりません。また、労働基本権や教育権などの社会権なども盛り込まれていません。このことは、調査団の報告のオコナー最高裁判事との懇談でも判事から述べられている状況であります。この点で、国民の基本的人権、社会権、生存権の保障を憲法で明記している日本国憲法は、アメリカと比べて大変すぐれた内容を持っていることがまず明らかではないかと思います。
 次に、調査団の報告では、アメリカ憲法と環境権、プライバシー権など、いわゆる新しい権利の問題が焦点の一つになったようであります。
 この点についてのアメリカの基本的見解は、報告書にもありますが、オコナー判事の、法律により確保するもので憲法を一々修正する状況にはないという発言にも代表されます。これは、同判事ばかりではなくて、米議会調査局や憲法学者との懇談でも出されたとのことでありますが、例えばジョージタウン大学のタシュネット憲法学教授も、新しい権利の問題について、人権問題などは憲法でないその他の立法措置で対処していくことができるし、これが大事であると語ったと小泉議員から報告を聞いております。
 これは、改正の手続と要件の厳しいいわゆる硬性憲法であるアメリカ憲法の特徴とも言えますが、同じ硬性憲法である日本国憲法においても参考にすべきことではないかと思います。すなわち、このことは新しい権利を理由に憲法を改正する必要性は必ずしもないということを示していると言えると思うのであります。
 次に、今後の調査会の運営と課題について発言をいたします。
 本調査会では、次回から国民主権と国の機構についてテーマ別の調査に入ることになりました。
 国民主権の問題は、当然憲法制定当時にも重要な問題になりました。当時の松本案では明治憲法と同様に国体護持が主張され、政府の改正案でも天皇制について国民至高の総意と規定するなど、いわゆる国民主権は明確ではなく、むしろ天皇主権を擁護するものでありました。
 こうした中で、日本共産党は、主権在民を明記した案を提出いたしました。明確に主権在民を主張した草案を提起したのは、当時の政党の中では日本共産党だけであったように思います。そして、審議の結果、国民の強い支持の前に、前文では「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と明記されるに至りました。
 振り返ってみますと、二十世紀は、これを大局的に見れば、民族の独立と諸国における主権在民の確立が歴史の大きな流れとなった世紀でありました。本調査会は、国民主権を調査テーマとするに当たって、こうした歴史の本流を踏まえて、天皇主権から国民主権となった歴史の発展方向に沿った現憲法の特徴と基本理念、世界の憲法との比較などについて、広範かつ総合的な調査を行うことが必要であると考えます。
 次に、日本国憲法のすぐれた内容である国民主権が現実政治の中でどのように実現されているのかどうか、これを明らかにすることも重要な調査課題であります。
 といいますのは、現在日本には日米安保体制のもとで全国各地に百三十カ所以上の米軍基地が存在しております。この基地はいわゆる治外法権のもとに置かれています。同時に、日米地位協定によって、米軍は、裁判権を初め、専用空域、航空法の適用除外などによる超低空飛行訓練など、ほしいままに行い、さまざまな特権を与えられております。
 米兵による無法な事件も繰り返されております。
 例えば、沖縄では、新年早々に、米海兵隊員による女子高生への強制わいせつ事件と、米兵、軍属による傷害・器物破壊事件が続発をいたしました。これに抗議をして、沖縄県議会では初めて海兵隊の削減決議を全会一致で可決しております。さらに、今月、沖縄北谷町で海兵隊員の連続放火事件が発生し、容疑者の身柄引き渡しをめぐって、町議会や県議会が地位協定改定を盛り込んだ決議をこれまた全会一致で採択しています。
 さらに、米空母艦載機によるNLPの問題では、先月、これに苦しむ全国五つの市長が集まって、住民に対する多大な人権侵害である訓練の中止を訴え、連携していくことが確認されております。
 こうした事例は、日本が安保体制下で、国民の人権のみならず日本の国民主権が制限されているのではないかという、こういう実態を如実に示しています。これを国民主権との原則でどう見るのか、本調査会でも重要な調査テーマとすべきであると思います。
 さらに、国政において国民主権がどのように具現され、国民主権に基づく国民の権利が国政運営上どのように実行されているのかを検証することも重要な課題であります。具体的には、国政選挙における一票の重み、格差是正の問題、国会の民主的運営と国民のための審議権の充実と保障をどうするか、こういったことも含めて調査すべきであると考えます。
 以上のように、世界でもすぐれた我が憲法の国民主権が現実政治の中に正しく生かされておらず、乖離、ゆがみが存在していることに注目する必要があります。憲法を守る立場からこのゆがみを正すことこそが必要であると考えます。本調査会では、このような乖離の実態を検討し、どう是正するかを検討することが重要であると考える次第であります。
 そのためには、憲法学者の皆さんからの貴重な参考意見を聞くことも必要ですが、それとともに、この調査会が主体的に広範かつ総合的な調査という観点に立って、各党各委員間の討論はもちろん、現実政治の実態について、政府に対する質疑、調査も行う、こういうことも必要であると考えております。
 以上の観点から今後の調査を進めていきたいと思います。
 以上であります。

発言情報

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発言者: 橋本敦

speaker_id: 7421

日付: 2001-02-21

院: 参議院

会議名: 憲法調査会