久世公堯の発言 (憲法調査会)

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○久世公堯君 自由民主党の久世でございます。
 ただいまは内閣法制局が憲法を初めとする法令の解釈を行う立場について触れられた後、国会、内閣、裁判所等に係る憲法解釈について御説明がありました。どうもありがとうございました。
 我々が憲法を議論する際には、必ず個々の条文の解釈が問題であります。これは、現行憲法がその制定の経緯においていわゆるGHQ案が基本になったために、その背景となる思想がわかりづらいということもあり、また憲法の規定の仕方が概括的、抽象的であることにも起因するものであると思いますけれども、それにしても国の根幹にかかわる部分ですら憲法学者の間で通説とか少数説とか、いろいろあるような状況でございます。
 私は、憲法はだれが有権的に解釈するのかという点について常々考えてまいりました。そして、ただいまお聞きいたしました内閣法制局の憲法に係る解釈は、あくまでも政府としての解釈ということであり、またその政府の解釈が国会や裁判所の裁判の解釈に優越するものでないこともこれまた当然のことと受けとめた次第でございます。
 このような憲法解釈についての内閣法制局の立場を前提として、以下三点に絞ってお尋ねをいたします。
 まず第一は、政治的リーダーシップと国会及び内閣との関連について伺います。
 最近は、国民の価値観が多様化し、社会経済情勢が大きく変化する中で、過去の実例だけを参考に国のかじ取りを行うのは大変難しい時代になってまいりました。そういう状況のもとにおいては、国の基本となる政策は官僚に任せておくのではなく、政治家が主導権を持って、みずからの責任を持って決めることが大事であると思います。その意味で、国会の役割というものはますます高まっていると言ってもよいと思います。
 そこで、国権の最高機関である国会がその意思を表明するものである国会決議、今国会でもいろいろと具体的な問題について論じられておりますけれども、国会決議は大変に重いものがあると考えております。この国会決議の法的な意義についてどのように認識しておられるか、お尋ねをいたします。
 政治主導の問題で最も重要なのは、内閣における内閣総理大臣のリーダーシップの問題です。昨今の我が国をめぐる内外の諸情勢は予断を許さないものがあります。特に、過去に前例のないような案件で高度な政治判断が求められるような場面や、有事、大規模災害などの緊急事態が発生したときなどでは首相のリーダーシップの発揮がぜひとも必要であると考えます。
 ところが、我が国の憲法では、国の行政権は合議体である内閣が担うことになっており、首相が一人で行政権を担うアメリカの大統領制とは基本的に異なるわけでございます。先ほど申し上げましたような場面におきまして政府が迅速かつ的確に対応できなければ、国として重大な事態に立ち至らないとも限りません。一月六日の行政改革で首相の権限と内閣機能が大幅に強化され、首相の発議権の行使等の改革が行われました。この改革で一歩前進はいたしましたが、この点を含めて、現行憲法におきましては、かかる場面に迅速に対応できるよう首相のリーダーシップが十分に発揮できる仕組みがとれるでしょうか。あわせてお尋ねをいたします。
 なお、ただいまの点に関連をいたしまして、閣僚がみずからの政治的信条を述べたことに対して、しばしば閣内不統一との批判や指摘を受けることがありますが、閣内不統一と呼ぶべき問題が生ずるのは正確には一体どのような場面なのか、お尋ねをしたいと思います。
 第二番目に、今の質問にやや関連をいたしますが、首相公選制についてお尋ねをいたします。
 小泉総理は、国民の政治参加の道を広げることの重要性から、国会議員の推薦を受けて広く国民の中から首相を選ぶ仕組み、いわゆる首相公選制と言われているものですが、これを提唱されており、有識者から成る懇談会を立ち上げて国民に具体案を提示したいと言われております。この首相公選制は、昭和三十年代に活動した政府の憲法調査会、私はここに二年間勤務をしたわけでございますが、そこでも活発に議論をされました。当時、若き日の中曽根康弘元総理が、大統領型の首相公選制を唱えられたことをきのうのように思い出しております。もとより、首相公選制を導入するためには憲法を改正しなければならないでしょうが、単に首相を国民から直接選ぶ規定を置けば済むという問題ではなく、現行憲法下の議院内閣制を大きく変えることになると思われますが、この点はいかがお考えでございましょうか。
 最後に、第三に、司法制度改革、なかんずく国民の司法参加についてお尋ねをいたします。
 現在、政府に置かれております司法制度改革審議会においては、今月の中旬、たしか六月十二日と聞いておりますが、司法のさまざまな分野における制度改革を盛り込んだ最終報告が取りまとめられる予定と聞いております。この司法制度改革の検討の中では国民の司法参加を進めることが重要な柱になっているようですが、そのために裁判官のほかに一般国民である裁判員を裁判に関与させる、いわゆる参審制の導入が提唱されているとのことであります。これは、いわば素人が参加した法廷で裁かれるということであり、憲法では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定をされておりますが、憲法上問題はないでしょうか。お尋ねをいたします。
 また、このことと関連をいたしまして、司法については公正な裁判を実現するための独立性の保障など、国民主権との関係では国会や内閣と異なる要求があると考えますが、いかがお考えでございましょうか。
 以上三点について、お尋ねをいたしたいと思います。

発言情報

speech_id: 115114184X00920010606_004

発言者: 久世公堯

speaker_id: 7115

日付: 2001-06-06

院: 参議院

会議名: 憲法調査会