植村正治の発言 (農林水産委員会)
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○参考人(植村正治君) 御指名をいただきました全漁連会長の植村でございます。水産基本法など重要法案の審議に当たりまして意見を述べる機会をいただき、大変感激をいたしております。心から感謝申し上げます。
私は、半農半漁の生まれでございます。現在も、農協の組合員、森林組合の組合員、漁業組合の一組合員として組合長の任に携わっております。ほぼ三十年近くになりますが、浜の活性化のために、浜を代表して意見を申し述べさせていただきたいと思います。
先生方のお力によりまして、日韓、日中漁業協定が締結され、発効を昨年の六月において見ることができました。我々は、これを機に、このような漁業基本法が国会に上程されるということは、日本の二百海里の枠組みを特定し、国民食料を安定的に生産、供給するという立場において極めて意義のあるものだと痛感いたしております。法案については、系統の意向を取り入れていただいておりまして、組織としては了解をいたしておるところでございます。
本日は、基本法を根幹とし、新たな時代に対応した政策の展開により、漁業、漁村が国民の方々に対する水産物の供給を初め、多面的な機能を果たしていくとともに、浜の漁業者に明るい展望を与え、真に漁業、漁村の活性化につながることを期待し、意見を申し述べます。
一つは、水産食料の安定供給についてであります。
漁業資源は再生産可能な資源であります。資源管理によりこの循環を適切に図っていけば、継続的な生産が可能であり、生産性、経済性も高いものと言えます。国民食料の確保は、国の基本的な責務の一つであり、動物性たんぱくの四割を供給する水産物の安定供給は国として重要なものと考えております。我が国二百海里の海の資源を回復させ、持続的利用体制を構築していくことがその基本であります。
基本法においてもうたわれている資源回復措置の必要性について、漁業者も十分に認識しております。しかし、減船、休漁等に伴う経営面に対する不安から、実践に係る計画策定が進まない実態もございます。水産食料の安定供給という資源回復計画の位置づけに基づき、高い観点から漁業経営の実態を踏まえた経営安定措置を講じていただき、漁業者の積極的な取り組みにより、早期に資源の回復が図られることを望むものであります。
また、これにあわせ、漁場環境の保全と積極的な放流事業など、つくり育てる漁業の展開により、魚のすみやすい豊かな海づくりを進める施策を強力に展開し、国内生産を基本とする安定供給体制を構築することが必要と考えております。
二つ目は、輸入問題であります。
輸入の増大に伴う価格の低迷が現在の漁業不振の要因になっていることは、先生方も十分に御理解をいただいているところであります。最近の状況は、漁獲が減少しながら魚価が安くなる、このダブル的な影響をもろに受けておる漁業は極めて厳しい経営に迫られております。
私どもも輸入に対抗するため、構造改革等の取り組みを進めてまいりますが、国においても、IQ制度の機能堅持とあわせ、我が国漁業に重大な損害が生じた場合、構造改革の支援並びにセーフガードの発動等による輸入制限措置を機動的に講じていただくことが必要と考えます。
また、人類全体の貴重な食料資源であり、有限な天然資源である水産物については、大自然の摂理を無視した競争原理に任せることには限界があります。鉱工業製品等とは異なり、資源の管理、持続的利用に貢献する貿易ルールが必要であるとの我が国の主張をWTO交渉においても貫いていただきたいと思います。
三つ目は、漁場のすみ分けについてであります。
漁業は、大型の漁船から零細なものまで階層の格差が大きく、同一漁場で同一の資源をめぐって競合している実態があります。本法十七条にも明記されているとおり、繁殖地の保護などに力を注ぎ、資源の持続的利用のためにも、また漁場の合理的な利用の観点からも、これらのすみ分け並びに調整機能の強化等、適切な措置をぜひ検討していただき、資源の枯渇と共倒れを防止し、お互いが持続的に発展していく方向が肝要と考えます。
また、海に囲まれた我が国の特性から、遊漁人口は急激に増大しております。海は国民の憩いの場であり、これに異を唱えるものではありませんが、一部の方の無秩序な多獲漁法をもってして資源に圧力を加えておる現状は見逃すことができません。
漁業者は法律に基づく規制や自主的な管理措置のもとで漁業を守っておりますが、遊漁は実質的にルールのない中で行われ、漁業とのトラブルも発生しているというのが実態でございます。資源管理や漁場保全について国民の方々と問題意識を共有化し、遊漁と漁業の共存の道を志向していくことが重要であると考えます。
四つ目は、担い手の育成と経営安定についてであります。
漁業者は、海を生活の場、生きがいの場として若いころから忍耐力や技術を培い漁業の発展を支えてきました。しかし、資源の減少、輸入増加や景気の後退による魚価の長期にわたる低迷など、漁業者の自助努力のみでは解決できない問題が山積しております。
安定供給の中心を担う経営体を積極的に育成していくため、実態に即した漁業共済制度の拡充など、資源や価格の著しい変動が経営に与える影響を緩和する措置を講じ、所得の安定、再生産の可能性を一定のプロセスのもと、めどを立てることができる制度の導入を図っていくべきではないかと考えております。
五つ目には、漁業、漁村の多面的機能についてであります。
食料供給の役割のほかに、水難事故全般の救助は、現場に最も近い漁業者、漁協が最前線で行っています。また、漁村は離島及び全国の沿岸域等、国土の外壁を取り囲み、麻薬、密入国者等の情報提供など、警察を初め国の機関に協力し、国土防衛的役割も日常的に果たしておるところでございます。救難所の設置などは、水難救済会百年の歴史の中で我々はボランティア活動としてこれを行っておるわけでございます。
このほか、植林による漁民の森づくりや、合成洗剤追放運動、対岸や川上からの流木や生活廃棄物の清掃活動等、漁業者の海を守る奉仕活動には長い歴史があります。これらの機能を継続的に発揮していくためには、漁業と漁村が活力を持って存続していくことが必要であり、幅広い理解が求められるところであります。
六つ目には、漁村の活性化と水産基盤整備についてであります。
漁業は、地域産業の核となって地方の時代を支える力となっております。漁業においては、女性や高齢者の参加が進んでおり、その活性化を図っていくことが重要だと考えております。現況、漁業に参加する六十歳以上、七十歳の就労者が最も高い産業ではなかろうかと考えております。後継者を初めとする新規参入者の定着を図っていくためにも、漁業地域全体としての所得の安定を図る取り組みを支援していただきたい。
また、都市部に比べて極端におくれておる生活雑排水が下水道整備もなされないまま漁場に流出いたしております。それは漁業、漁村だけじゃなくて、川上からの問題も潜んでおります。そして、中核都市とのアクセスの整備は、高度な医療や文化を短時間で享受できる大きなアクセスとして重要でございます。若者にとって、都市型の生活環境とこのルートをして密接な連携を保つことができ、魅力ある漁村の環境に定住することがその要因になっていると思います。
このような状況をお考えの上、この面での整備をしていただきたいわけでございますが、現状、まことに低い下水道整備地域は漁村でございます。二〇%にまだ満たない状況が現況でございます。このことは、市町村負担が非常に高いと。海辺の市町村は漁港づくりのための市町村負担も負っておる関係上、両方一緒に仕事に参画することができない状況から、今日的なおくれをとっておるという実情にあります。
水産を支える基盤として重要な漁港と漁場の整備については、失われた藻場、干潟の再生、沿岸、沖合漁場の造成、海の畑づくりと港づくりを一本化し、つくり育てる漁業の一層の推進を図り、資源の生産から流通まで一貫した総合的、効率的な事業展開が可能となるような法整備をお願いしたいと考えております。
最後に、基本法に示される理念を達成していくためには、漁業者みずからの取り組みが重要であるということは言うまでもありません。このため、実践の中核となる漁協の合併、再編に系統を挙げてさらに運動を強化してまいりますが、自主、自立、創造性を高めるためにも、リーダーの育成を初め、政策面の支援をぜひともよろしくお願いを申し上げます。
最後に、私ごとではありますが、私の漁協は、昭和四十五年に六つの組合が合併した千二百名の合併組合であります。合併当時に比して水揚げ高は数倍となっており、事業が大きな成果を上げております。中でもホタテ養殖漁業は四万トン近い生産を記録し、単協としては日本一の生産を上げておりますが、これも合併の成果だと考えております。
本県の日本海における漁獲状況、きのう、一昨日の状況でございますが、大変好転の兆しが出てまいりました。タイ、ブリを初めスルメイカの豊漁が続いております。これも国際漁業協定が効果を上げておる一因ではなかろうかと。このことは長崎県対馬あるいは山口県等の沿岸域における漁獲状況からも話し合われておるのが現状でございます。
漁業に生き、漁村に住む人々に自信と誇りを呼び起こし、国民食料を生産、供給する使命感を持って、資源管理型漁業の徹底、漁場環境保全、漁村集落の活性化を期し、明るく住みよい地域社会創出の核となり得る底力を十分発揮できるよう、今国会での早期成立を切にお願い申し上げて、私の意見陳述といたします。
どうもありがとうございました。