雨宮孝子の発言 (法務委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(雨宮孝子君) ただいま御紹介にあずかりました松蔭女子大学の雨宮でございます。
 本日は、中間法人法案に対して意見を述べさせていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
 中間法人法案に対し最初に結論を述べさせていただければ、今国会に法律案として提出されている中間法人法案に対しては、反対ではありませんが、積極的には賛成できません。
 反対でないという理由は、この中間法人法案によって、これまで非営利でありますが積極的に公益も目的としない、言いかえれば共益的な団体、例えば同窓会、趣味の会などの法人化がこの法律によって可能となる点は評価できると思います。特に、同窓会会館など不動産を所有している団体は法人化して法人名義で登記するメリットはあります。
 しかしながら、この法案は、社員の共通の利益を目的とし、剰余金を社員に分配しないことを目的とする社団が対象となるもので、例えばワーカーズコレクティブのように、場合によっては剰余金を分配できる非営利団体には適用されません。ただ、分配をするということでは、これは非営利と言わないという考え方もあるかもしれませんけれども。また、財団の形をとる団体をすくい上げることはできません。そういう意味では、公益と営利のすき間をすべて埋めるということはできないと思います。
 積極的に賛成できないという理由として大きな点は、民法の法人に関する規定に問題があるからです。
 民法では、民法の規定か他の法律の規定によるものしか法人を認めていません。民法では第三十四条の公益法人、非営利で、かつ公益を目的として主務官庁の許可を得たものと、それから三十五条に営利の社団法人の規定が置いてあります。それしか置いていないとも言えます。つまり、積極的に公益も営利も目的としていない、いわゆる非営利団体の法人化についてはすべて特別法にゆだねられているというところに問題があるわけです。現状では、包括的に非営利団体を法人化する法律はありませんので、その公益と営利のすき間を埋めるために個別の特別法は既に百八十以上を超えています。つまり、すき間を埋めるために法律をつくるということに問題があると思うんです。
 また、営利法人については、一定の要件、資本金の額、公証人による定款の認証等が充足すれば当然に法人になれる準則主義をとっているのに対し、民法の公益法人は、法定要件の具備に加え、法人設立の許可をするかどうかをその団体の事業内容を所管する役所の自由裁量にゆだねる許可主義をとっており、その設立は容易ではありません。
 そこで、九八年三月には、規模の小さい市民団体でも簡易に法人化できるようにすることによって民間の非営利公益活動をやりやすくするための特定非営利活動促進法ができました。この部分は解決しましたが、非営利だけでくくる法人法がないために、営利ではないけれども積極的に公益も目的としない、いわば公益と営利の中間に位置する団体の取り扱いにつき、今回の法人法のように中間法人制度を設けるべきではないかとの検討は、古くは一九六四年の臨時行政調査会の許認可等の改革の中で指摘され、さらに七一年、法制審議会では、休眠法人の整理と中間法人が検討事項になっていました。この法制審議会では、単に中間法人を創設するというだけでなく、非営利法人の一般法にするかどうかも議論されて、結果的には法人制度の根幹にかかわる問題なので早急には結論が出なかったようです。さらに、一九八五年、また九二年、総務庁による公益法人の行政監察結果に基づく勧告では、公益に関しない非営利団体についても中間法人としての法人格を付与することが指摘されています。
 現在の中間法人法へ至る経緯をさらに見ますと、九六年、与党の行政改革プロジェクトチームのまとめました公益法人の運営等に関する提言では、民間団体にとって非営利の法人格を取得する手段が民法三十四条による以外にないために、例えば多くの業界団体などが公益法人になっていることの問題性を指摘しています。そして、中長期的には民法を見直して、準則主義による非営利法人の設立を可能にするよう検討すべきとしています。これを受けて、九六年、閣議決定で公益法人の設立許可及び指導監督基準ができ、その中で、経過措置として、既に設立している法人で、民法の規定上やむを得ず公益法人になっているものについては抜本的な法人制度の改革を待って対応するということになったのです。それで、これを実現すべく、法務省の中に法人制度研究会が発足しまして、非営利で共益的な団体に対する法人化が検討されたことは皆様も御存じのとおりです。
 続いて、法制審議会民法部会に法人制度分科会が設置され、いわゆる中間法人制度の創設が検討されることになったのです。ここでは、民法改正による非営利一般法を制定することについても一応検討されたというふうに報告はなっております。そこでは、関連法の多い民法改正は非常に時間がかかり、現実的でなく、それゆえ特別法として中間法人制度の検討を行うことにされたというふうに書いてあります。ここは実は問題だと思うんです。時間がかかるのが現実的でないならば、いつならば民法改正ができるのでしょうか。というのも、与党プロジェクトチームの提言では、中長期的には民法を見直すこと、閣議決定では抜本的な法人制度の改革を念頭に入れているにもかかわらず、そのどちらでもない特別法による中間法人制度の検討だけに終わっているからです。
 結果として、中間法人として法人格を取得できる団体は限定的で、この法律ができたとしても公益と営利の間に存在するさまざまな非営利の団体すべてを法人化できるわけではないことは前に述べたとおりです。既に百八十以上ある特別法がふえるだけということも言えるかもしれません。
 もともとこの中間法人の創設については二つの目的があったようです。一つは、公益を広く解釈して無理に公益法人に入っているいわゆる同業者団体や互助団体等を中間法人へ移行させるため、もう一つは、現行制度では法人格を持ち得ない同窓会や互助会などを法人化させることであります。どちらかといいますと、前者の目的が強いように思えました。
 ところが、中間試案に入っていた公益法人からの組織変更の規定はなくなっています。公益法人から中間法人へ組織変更する場合、中間試案では、財産をそのまま持っていって解散時には残余財産を分配できるとした点が、これは脱法的な行為になるから、入らなかったことについては私はいいと思います。その規定がなくなった今、この中間法人制度を使って法人化する団体はどれほどいるのかということについてはちょっと疑問に思います。
 また、これがさきに述べた閣議決定に言う抜本的な法人制度の改革と言えるのでしょうか。この規定がなくなったからには公益法人から中間法人への組織変更は強制されないと理解していいのでしょうか。我が国の統一のとれていない法人法にさらに特別法が加わり、その内容を複雑にするだけに終わらなければよいと私は思っております。この法律の存在で、今後、規模の小さい公益団体は特定非営利活動法人へ、非営利だけれども公益性の少ない団体は中間法人へというふうに分類され、本来の公益法人の増加を抑制、言いかえればふやさないようにすることが目的であっては私はならないというふうに思います。
 もともと公益法人になっている中間法人的な団体については、昭和四十七年の公益法人監督事務連絡協議会の申し合わせ事項に、同窓会、同好会など構成員相互の親睦、連絡、意見交換などを主たる目的とするもの、あるいは特定団体、特定職域の者のみを対象とする福利厚生、相互救済を主たる目的とするものは両方とも公益法人の許可をすることはできないというふうに規定されているんですね。申し合わせ事項ですから法律ではありませんが。
 そういう状態の中で、公益性もないのに主務官庁が許可をしたのならその判断が問題なのでありますし、当初は公益性のある事業をしていましたが、後にメンバーの利益だけを追求する事業しかしなくなったのなら、監督者としての主務官庁は行政指導で公益性のある事業をするように指導するのが必要なわけです。それでも公益性のない事業しかしないのなら、許可の取り消しを行うのが筋であります。許可の取り消しができないので、移行させるための受け皿としての中間法人制度を創設するのは問題です。
 もっとわからないのは、同業者団体はすべて共益的な団体なのでしょうか。経済団体でも公益的な活動をしているものはたくさんあります。まず、同業者団体の定義をどのように考えているかも不明であります。
 それから、中間法人制度を公益法人の制度改革と結びつけて議論されることが多いのですが、公益性の少ない団体がすべて不祥事を起こしている、あるいは起こす可能性があると考えるのは少し暴論です。
 つまり、税の優遇を受けていながら公益性のない活動をしているのは確かに問題です。不祥事を起こしている法人の多くは、監督する側の主務官庁と監督される側の法人の役員に元の上司がいるなど、監督がスムーズにいかない、あるいは理事や監事がその責任をきちんと負っていないということが理由であることが多くあります。また、最近では、官主導で設立された公益法人に、現在、財政的な問題を抱えている法人がたくさん見られます。とすると、主務官庁の監督を強化しても、これでは不祥事はなくならないと思います。また、監督を強化すると、民間の多様なニーズに即応できる自由さと柔軟さが信条の民間公益活動がゆがめられてしまいます。
 そこで、監督強化ではなく、徹底した情報公開をし、多くの市民に事業内容や財務内容を透明にすることによって支援するかどうかを判断してもらう方がいいと考えています。アメリカでは、例えば役員の報酬を持っている大きい順に五位までは全部情報公開されています。また、できれば癒着の温床になる許可監督制は廃止すべきであると私は考えております。
 民法改正の必要性は、九八年に全会一致で成立しました特定非営利活動促進法の審議過程でも何度も議論されました。たまたま特定という用語がついたのは、非営利だけでくくる特別法はできないために十二項目に限定せざるを得なかったという事情もあります。その附帯決議では、民法の公益法人制度の改革、改正にも言及しています。
 では、民法改正ではどのようにすればよいかという問いに対してはいろんな考え方があると思いますが、例えば非営利法人と営利法人に分け、非営利法人の中から公益性のあるものは公益法人として特別法で扱うか、あるいは民法の中に特別の款あるいは章を置くこともできるかもしれません。とにかく、基本法である民法に法人に関する一般規定を置きまして、特別法では、こういう言い方はいいのかわかりませんが、事業法に関する規定を整備すればよいのではないでしょうか。その際、民法には、理事の責任の明確化や情報公開の義務化、あるいは現在ない合併の規定、また社団や財団の定義などを規定すべきと考えています。
 例えば、ドイツでは、一定の要件を整えて地区裁判所に届け出る登録社団、エーファオと言っていますが、これでは当初七人の社員が必要とされていますが、その後それが五人になっても有効ですが、社団の定義では三人以上を社団といいますので、三人を欠く場合には法人格が取り消されます。このように、基本的な考え方を民法に規定することは非常に重要ではないかというふうに思います。
 なお、現在のように公益法人に許可されると自動的に法人税だけが優遇されるために、法人化を厳しくするという点が問題でありまして、法人化と税の優遇は分けて考えるべきだと思います。税制優遇の根拠をどう考えるかで多くの非営利公益法人が優遇を受けることになるのか、あるいは公益をどう考えるかということでそれが狭められるかということは議論があるところだと思います。多くの国では法人化と税制優遇は切り離されています。
 最後に、この中間法人も含め、また公益法人全般に関して、日本の民間の公益活動を促進するという意味では法改正が大変必要なんですけれども、じゃそれを悪用する者に対してどうしたらいいかということについて、アメリカのNPOに適用される税制優遇の悪用防止手段として五年前に認められた、それがまた同じような名前なんですが、中間的制裁制度というのを御紹介します。
 皆さんのお手元のレジュメの三枚目に記載されています。このインターメディエート・サンクションと言っているのは、ここで言う中間とは、許可の取り消しか、あるいは注意ぐらいで何もしないかの間の制裁という意味で中間的というふうな言葉を使っています。この規定を見ますと、現在問題になっています財団法人のKSD問題には有効な手段かと思われるから御紹介させていただきたいと思います。
 つまり、非営利で税の優遇を受けている法人の役員が法人の財産を私的に流用する、あるいは過大に報酬を受けるというような場合に、その私的流用した部分あるいは過大にもらった部分の額に二五%の課税をするとともに、私的に流用した額あるいは過大に受けた報酬を法人に全額返還する義務を課しているのです。もし一定期間に返還しない場合には二〇〇%の課税がなされるというものなのです。
 団体の許可を、法人の、これはアメリカでは法人というよりも非営利という資格の許可なんですが、それを取り消されて困るのは団体の会員たちですから、こういった非営利団体ということの資格を取り消しではなく、いわば懲罰的な措置をとるという意味になっています。これならば、役員を相手に訴訟を行わずとも損害額が法人に入ることになります。ただし、我が国では税を懲罰的に使うことは余りなされていません。今後の検討事項かと思います。
 早口でございましたが、私の意見はこれで終わらせていただきます。

発言情報

speech_id: 115115206X01120010607_005

発言者: 雨宮孝子

speaker_id: 31450

日付: 2001-06-07

院: 参議院

会議名: 法務委員会