笹森清の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(笹森清君) はい。ありがとうございます。
まず冒頭、私の方からは、二〇〇一年度の政府予算案に対する基本的な考え方、評価について明らかにさせていただきたいと思うんですが、連合の立場できょうは発言をさせてもらうというのは、一億二千五百万人の日本国民の中で給与生計世帯、言いかえればサラリーマン世帯、全体の八二・七%おります。したがって、この八割を超すサラリーマン層のもう一つの側面は、給料が一〇〇%捕捉をされていて源泉徴収で完全に納税をしている団体ということになるわけで、その働く人たち全体をまだカバーはしておりませんが、約八百万人を組織している世界で三番目のナショナルセンター、言ってみればタックスペイヤーの立場からの部分も含めて御意見を申し上げさせていただきたいというふうに思っております。
そういう内容から申し上げますと、今、八割を超す勤労国民、これが直面をしております生活の不安、これをどう打開しようとするのかというものにこたえる内容になっていないのではないかというのが率直な評価でございます。したがって、これからの勤労国民の生活の安定を図って政策を抜本的に強化するためには二〇〇一年度の政府予算案を修正していただきたいというのが私の基本的な考え方でございます。
まず、国民が今一番求めている課題について申し上げたいと思いますが、私は一昨年来、日本は言葉の一番最初にイニシアル、アルファベットの頭文字がKで始まる課題、これが七つ取りつかれておって、この七つのKの課題をいかに除去するかということが極めて重要だということをずっと訴えさせていただきました。国会の中でも幾つか申し上げたことがございますが、この七つのKを解決することが経済を好転させ、雇用状況を改善させ、ひいてはそれにリーダーシップを発揮する政治がいかに重要かということを国民全体が認識するということにつながるのではないかというふうに思っておりましたが、この七つの不安は一年を超えても解決をされておらず、言ってみれば七が十四にふえ、そして今や三倍の二十一にもなるというような極めて深刻な状況になっています。
まず冒頭申し上げた七つのKの課題というのは何かということを申し上げると、一つは、きょうの主題のテーマになりますが、景気の回復のK、二つ目が雇用の改善のK。そして、次の三つが社会保障に関係をする三点セットになりますけれども、国民年金、健康保険、介護保険システム。そして、国民のだれもが何とかしなければいけないけれどもどうにも何にもできないというもどかしさを今感じている教育のK、さらには地球的規模の環境の改善。
一年間、これを直さなければ日本も世界もよくならない、こう申し上げてきたし、どんなアンケート調査をとっても、国民の最大の関心事は冒頭申し上げた景気と雇用、この二つに尽きていたわけですが、残念ながらこれが全く改善をされず、したがって国民はこの恐怖におびえ、そして先行き不安を極めて深刻に受けとめて消費を手控え、したがって社会活力が落ちる、そしてそのことによって景気の低迷がずっと続いているという悪循環をつなげているわけです。
そこに二倍、三倍のKがふえた。一つは、直接経済には関係をいたしませんが、警察不祥事の続発のK。そして、金融不安が再発をもうしているのではないかという金融不安のK。さらに、六百六十六兆円という極めて巨額な国債、地方債を抱えるという国債の増発問題。加えて、今年度の予算の中の、これは後ほど指摘をさせていただきますが、公共事業のあり方という公共事業のK。そして、経済問題には直接関係をいたしませんが、KSD事件、機密費の問題あるいは原子力潜水艦のえひめ丸の事故に象徴されるような危機管理の問題等々で、これまでで十四のKになるわけです。
ここに加えて、きわめつけに景気や雇用に影響し始めましたのが株価のK、そして金利のK。加えて、少年法の改正等に伴う刑法、これからの日本の進路を決める憲法、そういった問題をいかに国会の中でビジョンを出してもらうかという国策、国のビジョンに対するK。加えて、国会がこういう問題についてしっかりと政策論議をし、国民の方を向いた政策を立案していただいているのかということに対する国会機能のKというようなものを加えていきますと二十を超えてしまうというような今の状況になっているわけです。
この問題を特に国会の中で早急に解決していただきたい。そのために本年度の予算はどうなっているのかという問題二点について次に指摘をさせていただきたいと思います。
御承知のように、二〇〇一年度の政府予算案は一般会計が約八十三兆円、当初に比べまして二・七%の減額になっております。そして、この中の一般歳出は約四十九兆円、この部分については前年比で一・二%増加をしております。言ってみれば、三年連続の大型予算を組んだということにはなっておりますが、しかしその内容は、今Kの課題の方でも触れましたように、史上最悪の雇用、失業の状況について、あるいは生活の先行き不安を解消するという積極対策が入っているかということについては、これは欠けているというふうに言わざるを得ないというふうに思っております。
働く側の立場からすると、雇用の改善は、これが実際に解決をされれば景気回復に必ずつながる、だから経済と景気の回復は雇用の対策が最大の決め手である、こういうふうに思っておりますけれども、先月末発表されました数字からいいますと、四・九%、三百十七万人という失業者の数になっております。毎年の統計の実態から申し上げれば、三月末、通常の数値に〇・二%失業の状況は悪い数字が足されます。そうなると、日本では今まで経験したことのない五%という失業率を初めて目の当たりにするという状況に直面しかねない。気持ちとしてはそうなってほしくはないと思っておりますが、今の状況からいうと、そのことが必ずなりそうだという状況になっておりまして、これは四%台高どまり、三百万人という失業者の数にこの一年間我々自身も含めて麻痺をしてしまっておりましたけれども、五%という数字をのぞいた途端に極めてムードは一変するんではないかというふうに思っております。
特に、このことがサラリーマンの人たちに与えるプレッシャーははかり知れなくなるだろうというふうに感じておりまして、そういう意味では、けさ八時から厚生労働大臣の呼びかけで厚生労働大臣と労使の代表が緊急的な雇用改善の連絡会議を持ちました。ここの中では具体的な話が解決するというような状況にはなっておりませんが、共通的に一致した認識は、今申し上げた五%を超えるような失業率の状況になったときに今のような手だてでとても間に合わないということは共通認識になっておりまして、そういう意味では、今年度の政府予算がこの中で失業対策予算として入れてありますが、全体の金額の中から見ればわずか四千二百九十八億円にしかすぎないという部分について、最悪の雇用状況を打開しようとする意欲が全く感じられないということを指摘しておきたいと思います。
そして二つ目は、景気対策として公共事業費が前年度並みに九兆四千億円計上されておりますけれども、新たな特別枠の施策が七千億円にすぎませんで、言ってみれば、従来型の事業の継続が中心となっております。この五年間に六十兆円を上回る公共事業が行われたにもかかわらず、景気回復が進まないで雇用がさらに悪化をしているということを反省するならば、このような従来のやり方を継続する公共事業は国債発行のみを増大させかねないものだというふうに批判をせざるを得ないというふうに思っております。
国債を含めて六百六十六兆円の赤字、日本人が借金を負っているという部分について、これは額が大き過ぎてどの程度の金額か全くイメージがわきません。しかし、単純に計算をしてみますと、これを一日百万円ずつ返済したとして一体一兆円返すのに何年かかるのかと。一日百万円、一年三百六十五日、三億六千五百万円、一日百万円返せば年間で出ます。千年かかって三千六百五十億円であります。一兆円返すのに約二千七百年かかるんです。
これの六百六十六倍という極めて想像もつかない気の遠くなるような借財を今抱えている部分について、これが国民生活や景気回復のために使われたならまだしも、先ほどのKの課題で申し上げたように、全然逆な方向に機能させているという部分について、予算の中でいかにこのことを改善させるかということを真剣に受けとめていただきたいというふうに思っております。
それから、もう一つの要因は、国民の先行き不安感をどう除去できるかということでありますが、社会保障の三点セットのKでも申し上げたように、年金、医療の部分について、政府の施策がどちらかといえば収支悪化で財源問題を重点的に宣伝するということになっていきますので、その宣伝は必要なのかもしれませんが、じゃ、しからば改善策をどうするのかということについては全く触れていかないという部分について不安感がますます増大をする、その中で自己負担増や給付の切り下げというものが強行されてくるということが大きく響いておりまして、これが国民が消費マインドを喚起しないという最大の理由になっているのではないか。
私自身は、六百六十六兆円という借財に対して国民の預貯金が千三百五十兆円、約倍もあるわけですので、経済のファンダメンタルズはそんなに悪いというふうには思っておりませんし、潜在的な能力が高いとは思うんですが、しかしこれが動かないという部分が、そこに最大の欠点があるということをぜひ考えた予算運営をさせていただかなければいけないのではないかというふうに思っております。
そして、今雇用の問題、五%の危機感を申し上げました。これは私自身は、労働団体の事務局長という立場から申し上げれば、危機感どころか恐怖感すら覚えております。
ならないように祈ってはおりますけれども、このことに対して、連合は昨年、組合員二万五千人に対するアンケート調査を行いました。この中では、回答者のうちの二一%が自分の家計の消費支出を減らしたというふうに回答を寄せております。その主な理由としては、収入が減ったからというのが最大の原因でありまして、これが五割。それから、ローンなどの返済がふえたり、失業したら収入が減るという不安があるからリストラに備えるんだというようなことの回答が三割で、かなり働く人たちは家計の緊縮財政を余儀なくされているということでありまして、これが今申し上げた千三百五十兆円が全く動かないということにつながっているわけで、消費抑制の大きな原因になっております。
このことについては、悪化がとまらないで五%台に乗っていく、特に新卒の就職率が極めてまだまだ悪い、状況が改善をしないということに対していかに予算を張りつけるかということが今、緊急対策として求められているのではないかというふうに思っておりまして、今の申し上げた中からいえば、二十万人に達する大学、高卒の未就職者、この人たちに対する改善と、今一番雇用のミスマッチが発生をしている部分の中では、職業訓練に対する対策費、これは政府の予算の中では十一万人弱しか予算が計上されておりませんけれども、三百万人を上回る自発的な失業者と非自発的な失業者、やむを得ずというふうに失業させられた人たちがこのうちの三分の一、百万人を超すというような数から見れば、職業訓練等も含めた予算の充実を早急に手だてとして行わなければいけないのではないか。言ってみれば、先ほど申し上げたように、雇用対策の強化は最大の景気対策の強化になるということをぜひ御理解いただいておきたいと思います。
それからその次に、九日の日に発表されました与党三党の緊急経済対策の部分について、これは予算との関係もありますので評価について触れたいと思いますが、緊急対策の内容は、金庫株の解禁とかあるいは新しい金融緩和や物価安定目標などの的確な金融政策あるいは新市場の開拓による雇用創出につながるんだと、こういうことを打ち出してはおります。
しかし、現在の経済状態が危機的になったという現状認識については、この部分では共有ができるにいたしましても、そうであるならば、なぜこの緊急経済対策を二〇〇一年度の経済予算の中に、本年度の予算の中に組み込まないのかということを御指摘しておきたいと思います。
その上で、金庫株の解禁だとかあるいは株式の買い上げ機構の創設などの新たなる制度の改革は、我が国の企業制度のあり方を踏まえて、本来的であれば労使のいろいろな協議も含めながら中期的な視点に立った対策が講じられるべきではないかと思っておりますが、今言われていることは、目先の株式市場対策として何か安易にそのことに対するだけの導入を図りたい、こういうような感じが私どもとしては受けとめられております。この部分については、安易に導入すべき課題ではないということを指摘しておきたいと思います。
加えて、ITだとか医療、福祉、環境、こういった分野での開発事業、これについては、内容的なものからいえば、私どももきょうお配りをしてある資料の中でもいろいろと触れさせていただいておりますので、早急に実現をするという手だてをこの中では講ずるべきではないかというふうに思っております。
今申し上げたような視点に立ちまして、政府予算を抜本修正すべきであるという項目について幾つか申し上げたいと思いますが、まず修正をしていただきたい項目の第一は、雇用創出対策の抜本強化の問題です。
雇用対策の問題につきましては、ヨーロッパ諸国と比較をしますと、日本の場合には規模がかなり小さい。OECDの雇用レポート、九三年あるいは二〇〇〇年の数字から見ましても、これは極めて小さいということが指摘をされます。具体的な数字については羅列をいたしませんが、日本は〇・六一%にすぎないということだけ申し上げておきたいと思います。
それから、二〇〇一年度の予算案の雇用対策費、先ほども申し上げましたけれども、雇用保険の特別会計を含めても四兆円弱なんですね。これはGDP比で〇・八%程度にしかなりません。失業率は四・九、先ほど申し上げたように、五%という危機的なラインもさらに超えそうだという状況の中の戦後最悪の失業状況を打開するためには、この雇用対策費の大幅増に組み替えていただく必要が、これはもう何が何でも必要だということを申し上げておきたいと思います。
さらに、若者向けの雇用創出、あるいは先ほども申し上げましたが、職業訓練、能力開発、これについても諸外国に比べて極めて小さいという特色があるということで抜本強化をしていただきたいというふうに思います。
今、お手元にお配りをしております連合の政策の重点課題の中では、ここの部分については雇用対策として百四十万人の雇用創出をしていただきたいという対策を出しました。ここについては追加費用として二兆円で実施していただきたいということを私どもとしては求めておりますが、費用の部分からいえば、公共事業の定義を拡充すれば、現行の公共事業の予算を組み替えることで実現ができるのではないかというふうに考えております。
そして二つ目は、社会保障基盤の改善策の問題でありまして、これについては、まず何よりも第一の優先課題としては、基礎年金の国庫負担の部分を現行の三分の一から二分の一へ引き上げていただくことを二〇〇一年度の予算に計上していただきたい。これが国民が将来の先行き不安を解消する一番のネックになっている部分の手だてになるのではないかというふうに考えております。
それから、老人保健や診療保険体制、こういったものについても、あるいは高齢者医療制度の創設なども含めて、二〇〇一年度から実施する予算に修正をしていただきたいということであります。
そして、介護の部分あるいは保育の部分、これについては、でき得れば男女がともに家庭と仕事が安心して営めるという仕事と家庭の両立支援につながるような法改正、そのことを含めて育児・介護休業制度、あるいはパート労働者、派遣労働者を含めたすべての労働者に対して安心して家庭と仕事が営めるという施策についての予算を重点的に組み替えていただきたいということを二つ目に申し上げたいと思います。
それから三つ目は、公共事業の問題でありまして、これについてはすべての公共事業が悪いというふうには申し上げませんけれども、何回もいろいろなところで、もう既にマスコミ等でも明らかにされておりますように、いい公共事業と悪い公共事業、これを完全に峻別をした中での予算の配分の見直し、これは徹底的に行っていただかねばいけないのではないかというふうに思っております。
それから、機密費の問題につきましては、予算項目からは減額修正をされて当然だというふうに申し上げておきたいと思います。
それから、財政構造改革の問題でありますけれども、先ほどから申し上げているように、六百六十六兆円に達する見込みとなっている部分について、現在の予算の歳出構造を生活重視型に改めて、その上で財政の質を改革するということをまず第一段階としては明確にしていただきたいと、このことをきょうは申し上げておきたいと思います。
以上、五つの観点からの予算修正項目ということで、時間の関係もありますので、あとは御質問等があればお答えをする中で補足をさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、繰り返しますけれども、雇用の改善が最大の景気・経済対策であるということをぜひ御理解いただいた予算の中身にしていただきたいことを申し上げて、陳述を終わらせていただきます。