大沼保昭の発言 (憲法調査会)

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○大沼参考人 私は、日本が自衛隊を含めて世界の平和秩序をつくり出して、それを維持していくのにもっと積極的な役割を果たす、日本はぜひそうすべきだというふうに信じておりますけれども、とにかくその仕事を進める上で大切なのは、日本が極めて明確な形で第二次大戦が日本の侵略戦争であったということを認めて、植民地支配についての具体的な反省、償いの気持ちを示す、そういう政策を進めると同時に、その事実を日本政府とメディア、さまざまなNGOが一体となって世界に発信していくことが非常に重要だというふうに思っています。
 よく戦争責任の問題で、ドイツは反省しているけれども日本は反省していないと言われまして、私はこれは甚だ一面的な評価だと思いますけれども、残念ながら、こういう評価は国際社会にもはや定着してしまった。定着した一つの非常に大きな理由は、ブラント首相が、ポーランドに行って、ワルシャワのユダヤ人ゲットーを訪ねて、そこでひざまずいたわけです。それでわびた。それが全世界的に報道されて、これがドイツの真摯な反省を示す象徴的な行為として定着する。ブラント首相は、たしか翌年、ノーベル平和賞をいただいたと思います。
 つまり、国家の指導者の象徴的な行動というのは非常に大きな意味を持つんですね。それを、残念ながら、戦後、日本の政府は一貫してやってくることができなかった。その結果として、日本政府は、積極的な国際平和、国際安全保障活動をやる上で常に近隣諸国に疑惑の目で見られて、PKO活動のような何ら問題のない、日本としては胸を張ってやることができるはずの行動でさえ近隣諸国に一々言いわけをしなければならない、本体業務を凍結するという愚かなことをこれまでずっと続けてきているわけです。
 やはりそれは、日本の指導者が、そういうだれの目にもわかるような形の、日本は悪いことをやったんだ、もう二度とやらないんだというメッセージを世界に発して、その上で、日本は積極的に自衛隊も出して国際平和秩序の建設に邁進するんだという行動をとるべきだというふうに思います。
 私は、小泉総理の考え方にはいろいろ違う点、例えば小泉総理が靖国参拝に行くと言い張られたことは非常に大きな間違いだったと思って、朝日にもそういうことを書きましたし、そのほかの点でも若干の意見の違いはありますけれども、小泉総理が持っておられる得がたい資質というのは、民衆に届く声を持っているということだと思うんです。これは、これまでの日本の総理がなかなか持ち得なかった資質だと思うんです。それをぜひ活用して、韓国なり中国の民衆に、本当に日本は悪かったと思っていると、例えば元慰安婦のところに行って、深々とお辞儀して元慰安婦を抱きかかえてあげるとか、そういう象徴的な行動をぜひ私はとっていただきたい。
 お金のことについては、私は、九五年に、日本政府と国民、双方が拠金し合って、大規模な、兆単位のいわば補償基金をつくって、それで一切これまでの日本のいわゆる戦後処理にかかわる問題を処理すべきだということを主張しましたけれども、当時は村山政権時代で、それを大変小さくした形のアジア女性基金ということになったわけです。今の経済状況では、私は、それが現実的な提案と言えるかどうかは非常に疑問に思っております。
 ドイツのやっていることを見ても、個々の犠牲者に対する現実の補償の額というのは、決してそんな大きいものではないんです。日本は、例えば元慰安婦に対しては、国民の償い金が二百万円で、政府の医療福祉事業が三百万円、合わせて五百万円を韓国と台湾の元慰安婦の被害者に対してはお払いしているわけですけれども、これは国際的な標準から見れば極めて高い。ドイツのいろいろなケースの補償よりも非常に高いものです。
 なぜそれが評価されないのかというと、結局、日本がそういうことをやっていることの発信が決定的に不足している。これは私、外務省にもずっと言ってきましたし、メディアに対しても言ってきました。日本がこれまでそれなりのことをやってきたんだということを発信する、世界のどの国の人が見ても、ああなるほど、日本はあの戦争のことについて反省しているんだということが非常に明快な形でわかる行動を指導者がとり、また、それを日本国全体を挙げて発信する。それと並行して、自衛隊をまずはPKOのようにその世界的な公共性というものが高く認知されている活動に参加させていく、できれば韓国や中国の部隊と一緒に活動させる、そういう工夫を凝らしていくべきだろうというふうに思います。

発言情報

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発言者: 大沼保昭

speaker_id: 13023

日付: 2001-10-25

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会