春名直章の発言 (憲法調査会)
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○春名委員 日本共産党の春名直章でございます。
十分間発言します。
この一年間、特に本臨時国会での調査会を振り返って、感想を述べ、討論に参加したいと思います。
九月十一日に発生したアメリカへの同時多発テロ、それに対する報復戦争という重大な情勢の中で、テロ根絶のために世界と日本が何をなすべきかが鋭く問われてまいりました。日本国憲法の広範かつ総合的な調査を目的とする憲法調査会でも、この間、国際連合と安全保障のサブテーマによる参考人質疑、国際社会における日本の役割とのサブテーマによる名古屋地方公聴会が開催されました。今、日本の貢献、進路をめぐって、憲法九条が熱い焦点となっております。
調査を行って印象深かったことは、多くの参考人や陳述人から、米英軍によるアフガニスタンへの軍事攻撃とそれへの自衛隊の参戦という日本の対応について疑問視する意見が出されたことであります。
大沼保昭参考人は、アメリカの武力行使はテロリストに対して勝利することができるかもしれないが、テロリズムを根絶することは困難と述べて、米軍の軍事行動について国際法上の根拠は乏しいと明言され、日本がなすべきこととして、国連を中心にした制裁と、国連の枠組みを通した復興問題、貧富の格差の是正、宗教的な憎悪を鎮静化させる問題の解決のために日本が主体性を持って一刻も早く行動すべきと提言されました。
武者小路公秀参考人も、日本がアメリカの友好国であれば、アメリカが間違ったことをすればそれを正すのが友達、日本はただ言うことを聞くだけだから信用されていない、今度の米軍支援についても、アメリカに認められることだけを考えて、本当にテロ問題をどう解決するかは考えていないと厳しく指摘し、テロ対策は必要だが、それは軍事的にやるべきではない、憲法の制約ではなく、日本は一つの信念を持って、軍事的対応ではテロ対策にならない、そういうはっきりした立場をとるべきであったと述べておられます。そして、今こそ憲法の平和主義に立った国際貢献が求められているとの発言も多数寄せられました。
名古屋の地方公聴会では、川畑博昭陳述人が、ペルー大使館への赴任の経験から、目の前でテロを経験し、それへの暴力による報復では何も問題は解決しないことを実感したと述べて、すぐに武力をという発想自体がその武力行使の悲劇を知らない平和ぼけそのもの、テロに屈しない姿勢とは、いかに忍耐と時間を要しようとも、対話による和解を実現することと発言されました。
西英子陳述人も、テロに対する報復は次のテロを生み出し、際限ない悪循環に陥ること、テロの背景にある貧困の解決のために、中東諸国と友好的な関係にある日本は、自衛隊の派遣ではなく、NGOなどと協力して、被災者と難民救済のために人道支援を緊急に行うことを強調されています。
田口富久治陳述人は、日本の貢献は非軍事貢献の方向をとるべきであること、国連難民高等弁務官事務所やユニセフなどの活動への協力が必要であると強調されました。
日本政府がインド洋への護衛艦などの派遣を決めた瞬間に実施された世論調査では、派遣を支持しないが急速にふえ、五割を超えたことも注目しなければなりません。
こうした参考人や陳述人の意見、国民世論には、私は根拠があると考えています。戦争を違法化した一九二八年のパリ不戦条約、そして一九四五年の国際連合憲章は、武力行使そのものを違法化することを明確にいたしました。その流れの先端にあるのが日本国憲法であります。九条一項で「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と宣言し、第二項で、そのための手段である「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と明記し、国連憲章の精神を一層進めているのであります。
地方公聴会でも、田口陳述人が、脱軍事化の国際規範としての戦争違法化の規定という点では、この国連憲章の規定と日本国憲法の前文及び第九条には確固たる共通性がある、国連憲章も日本国憲法九条も、日本の国際貢献のあり方としては、軍事的貢献を原則として予想していないと陳述されています。
こうした世界の流れに沿っているからこそ、日本国憲法が国民に信頼され、この憲法に沿ってこそ日本らしい貢献ができるとの発言が相次いでいるのでありましょう。ここにこそ、真に国際社会から信頼される日本の進路があると私は確信するものであります。そして、こうした意見を聞くにつけ、小泉内閣が米軍支援として強行した一連の法律がいかに憲法をずたずたにして、そして国民意識から乖離したものか、厳しく指摘せざるを得ないのであります。
なお、憲法前文と九条には、すき間などありません。世界の人々との平和的共存への道へ日本国民が努力を尽くすという立場で、一体をなしているということをつけ加えておきたいと思います。憲法調査会として、政府の実施している憲法違反の実態をこそリアルに調査することが、切実に今求められていると考えます。
また、今国会では、首相公選制についても議論がなされました。小泉首相がその導入に意欲を持ち、七月に私的諮問機関まで立ち上げるという状況のもと、当調査会でも、世界で初めて首相公選制を導入したイスラエルへの調査、また参考人からの意見聴取が行われました。そこで明らかになったことは、首相公選制を支持し推進する意見はほとんどなかったということであります。
イスラエルの海外調査では、首相公選制は失敗だったということが共通して語られました。長谷部恭男参考人は、首相公選によって政党の役割が機能不全を起こし、議会に首相を支持する安定した与党が存在しなくなり、結局、首相が有権者に提示した政策を実行する手段を奪われ、指導力強化につながらないこと、そして国民の期待をも裏切ることになるとの見解を表明されました。また、これが改憲の入り口という文脈で出されていることについて疑義が唱えられました。森田朗参考人も、議会とは別な正当性の根拠を持たせることになる首相公選制に、積極的な賛成はできない旨を述べました。
最後に、基本的人権の保障について述べたいと思います。
武者小路参考人は、国連人権委員会の中の人種差別撤廃委員会が日本政府の報告を審議したときの最終所見から、日本の人権保障の問題点について指摘がなされました。今、こうした角度からの日本における人権保障の実態を調査することが非常に重要だと私は考えております。
それは人種差別の問題だけではありません。例えば、国連の社会権規約委員会がことしの八月三十一日に出した日本政府に対する報告書を見ますと、労働者の人権問題として、長時間労働の問題、中高年の労働者に対する人権侵害の問題が指摘され、その是正を求める勧告がなされております。
今、国際社会の中で人権保障はどこまで進み、日本の人権保障はグローバルスタンダードから見て一体どうなっているのか、この点の調査が不可欠であります。今日、大企業のリストラによる失業の増大、自殺者の増加など、ますます深刻化する人権状況が横たわっております。今こそ、生存権、労働基本権、財産権、教育権など、日本国憲法のもとでの人権状況についての掘り下げた調査が必要ではないでしょうか。これらの点を今後の調査の重要テーマとすることを強く希望いたしまして、私の発言を終わりたいと思います。
ありがとうございました。